- ✨ 失敗しないための設計・検討ガイドライン
- 📘 マニュアル目次
- 🔌 1. 高圧受電設備の結線図と使用機器
- 🛠️ 2. 設計手順(検討項目と要点)
- 💡 3. 電力需給用計器用変成器(VCT)、電力量計(Wh)
- 🛡️ 4. 断路器(DS: Disconnecting Switches / 89R)
- 🏗️ 5. 主遮断装置の形式、受電設備方式、設備容量
- ⚡ 6. CB形受電設備(Circuit Breaker)
- 💡 7. PF・S形受電設備(Power Fuse & Switch)
- 📈 8. 計器・計測器
- 🛡️ 9. 保護装置
- 10. 監視・制御装置
- 💡 11. 変成器(VT)、変流器(CT)、零相変流器(ZCT)
- 🛑 12. 停電復電現象と対策(UVR を活用した安全対策)
- 🌎 13. 接地工事(安全確保の基本)
- 📏 14. キュービクルの配置と保有距離
- 🔥 15. 認定キュービクル、推奨キュービクル(法規と設置)
✨ 失敗しないための設計・検討ガイドライン
設計実務者が迷わず、迅速に、そして安全に設計を進めるために必要な手順と要点を、よりわかりやすい解説形式でまとめました。
📘 マニュアル目次
項目名 | 概要 |
高圧受電設備の結線図と使用機器 | 設計図面で使用される主要機器の略称と構成要素の役割 |
設計手順(検討項目と要点) | 短絡電流に基づく機器・電線選定の基準と具体的なステップ |
電力需給用計器用変成器、電力量計 | 設置場所の決定(電力会社別)と設計上の留意点 |
断路器 | 選定要件、機能、規格、インターロックの要点 |
主遮断装置の形式、受電設備方式、設備容量 | 設備容量の制限、受電形式の定義、施設場所の検討 |
CB形受電設備 | 遮断器(CB/VCB)の種類、規格、選定要件、DSとの関係、操作・引外し方式 |
PF・S形受電設備 | 選定要件、容量制限、 の種類、ヒューズ選定例 |
計器・計測器 | 標準/オプション計器、電子式マルチメータ()の採用 |
保護装置 | /// の役割、整定方法、電力会社との協調 |
監視・制御装置 | 運転状態の監視項目、警報の種類、計測方法 |
変成器、変流器、零相変流器 | VT/CTの役割と定格検討項目 |
停電復電現象と対策 | 一時停電や瞬時電圧低下に対する設備の挙動と対策 |
接地工事 | A種・D種の適用と抵抗値、避雷器用接地極の取り扱い |
キュービクルの配置と保有距離 | 点検・操作に必要な離隔距離の確保 |
認定キュービクル、推奨キュービクル | 設置目的によるキュービクルの選定基準と屋外設置時の法規 |
🔌 1. 高圧受電設備の結線図と使用機器
高圧受電設備は、電力会社から電気を受け取り、施設内で安全に使用するために必要な機器で構成されています。ここでは、設計図面や現場で使われる主要機器の略称と名称、そして制御回路で使用される制御器具番号をまとめました。
略称 | 名称 | 制御器具番号 (JEM1090) | 役割 |
電力需給用計器用変成器 | 電力計 () や力率計 () などに測定用の電圧・電流を供給 | ||
電力量計 | 使用電力量を積算・計量 | ||
断路器 | 無負荷の電路を開閉し、機器の点検・安全確保に使用(負荷電流は開閉しない) | ||
遮断器 | 事故電流(短絡・過負荷)や負荷電流を開閉し、電路を遮断・保護 | ||
変成器(計器用変圧器) | 高電圧を測定に適した電圧 () に変換 | ||
変流器 | 大電流を測定に適した小電流 () に変換 | ||
過電流継電器 | 過電流を検出し、遮断器 () に遮断信号を出力し、設備を保護 | ||
交流不足電圧継電器 | 電圧低下を検出し、遮断器 () に遮断信号を出力し、設備を保護 | ||
自動力率調整装置 | コンデンサを自動投入/開放し、設備全体の力率を改善 | ||
電圧計 | 電圧を測定 | ||
電流計 | 電流を測定 | ||
電力計 | 電力を測定 | ||
力率計 | 力率を測定 | ||
電圧切換開閉器 | 電圧計 () に加える電圧を選択 | ||
電流切換開閉器 | 電流計 () に加える電流を選択 | ||
電圧用試験端子 | の 次側回路の試験用端子 | ||
電流用試験端子 | の 次側回路の試験用端子 |
🛠️ 2. 設計手順(検討項目と要点)
受変電設備の設計は、短絡電流の検討が機器選定の鍵となります。以下の手順と要点をチェックしながら設計を進めてください。
(1) 設計の基本手順とチェックリスト
フェーズ | 検討項目 | 要点(チェックリスト) |
計画 | 受電設備方式・容量決定 | を基準に 形か 形かを決定する。 負荷設備(電動機など)の有無も確認。 |
短絡電流計算 | 受電点の短絡電流を算出し、遮断器 () や断路器 () の定格を決定する。 | |
機器選定 | 主遮断装置・機器選定 | 短絡電流をクリアする定格耐電流の機器を選定する。 |
保護協調 | 遮断器や継電器の動作時間を調整し、事故時に最小限の範囲で電路を切り離せるようにする。 | |
配置計画 | 機器配置・保有距離 | 点検・操作に必要な離隔距離 ( や など)を確保し、安全性を最優先する。 |
(2) 短絡電流と機器・電線の選定
短絡電流の大きさによって、受電設備の主要機器の容量と電線の太さが以下のように決まります。特に短絡電流が大きい( 以下)場合は、機器の定格を上げる必要があります。
機器、電線 | 系統の短絡電流と機器の電気容量 |
以下 | |
(注 ) | |
(注 ) | |
(注 )電線 () の最小太さの算出例
の式より、 で計算。
- ()の場合:
- ()の場合:
(注 )高圧母線()の電線の最小太さ:
主遮断器 サイクル遮断、リレータイム 秒で計算されます。
💡 3. 電力需給用計器用変成器(VCT)、電力量計(Wh)
や の設置場所は、電力会社との契約上、非常に重要です。設計時に以下の点を確認してください。
(1) 設置場所の検討要点
検討項目 | 要点 |
電力会社の機器手配 | 九州電力は電柱に取り付けることが多く、他の電力会社では受電設備内に取り付けることが多い。 |
引込み方式 | 地中引込みの場合は、、 ともに受電設備内に取り付ける。 |
設置スペース | 、 を受電設備内に取り付ける場合は、需要家側で設置スペースを確保する必要がある。 |
🛡️ 4. 断路器(DS: Disconnecting Switches / 89R)
断路器 () は、電路を切り離すためのもので、負荷電流を遮断する機能はありません。メンテナンスや安全確保のために、無負荷の電路を開閉する機器です。
(1) 断路器の定義と機能
項目 | 詳細な解説 |
定義 | 定格電圧のもとに、単に充電された電路を開閉するために用いられるもので、負荷電流の開閉を目的としません。 |
機能 | 無負荷の電路(無電圧回路)を、メンテナンスや安全対策のために開閉します。負荷電流の開閉はできず、一般的に 未満の励磁電流程度しか開閉できません。 |
(2) 規格、種類、表記事例
項目 | 詳細 |
準拠規格 | (屋内用高圧断路器)、 (断路器)など。 |
種類(極数・投入方式) | 単極単投 ()、三極(連動)単投 () などがあります。 |
表記事例 | (単極単投形断路器 個) |
(三極単投形断路器 個) |
(3) 断路器の定格例
短絡電流への耐力を考慮した定格が定められています。
定格電圧 [kV] | \multicolumn{5}{ | c | }{7.2} |
定格電流 |
|||
定格短時間耐電流 |
\multicolumn{2}{ | c | |
準拠規格 | \multicolumn{3}{ | c | }{} |
(4) 選定要件と適用時の留意点
断路器の選定にあたっては、以下の つの要件を満たす必要があります。また、インターロックの有無を確認し、安全な設置に努めてください。
選定要件 | 具体的な基準 |
定格電圧 | 系統の定格電圧を満足すること。 |
電流容量 | 最大負荷電流以上の電流容量のものであること。 |
短絡電流耐量 | 受電点の短絡電流以上の定格短時間耐電流容量のものであること。 |
選定例 | 負荷電流 の場合、定格 で良いが、短絡電流が を超えている場合は、 以上のものを選定する。 |
🚨 断路器適用時の留意点
- 主遮断装置の 次側には、点検・安全のために必ず断路器を取り付ける。
- 遮断器が引出形であっても、主遮断装置の 次側には必ず断路器を取り付ける。
- 分岐遮断器が固定式の場合は必ず断路器を取り付けるが、引出形の場合は必ずしも取り付ける必要はない。
- 分岐遮断器を引出形から固定式に変更した場合は、断路器の取り付けを忘れないこと。
🏗️ 5. 主遮断装置の形式、受電設備方式、設備容量
受変電設備の形式は、主に設備容量と設置場所によって決定されます。
(1) 主遮断装置の形式と容量制限
主遮断装置には、遮断器()を用いる 形と、電力ヒューズ()と高圧交流負荷開閉器()を用いる 形の 種類があります。
特にキュービクル式の受電設備には、容量によって使用できる形式に制限があります。
受電設備方式 | 主遮断装置の形式 | CB 形 [kVA] | PF⋅S 形 [kVA] |
箱に収めないもの | 屋外式 | 制限なし | |
柱上式 | 使用しない | ||
地上式 | 制限なし | ||
屋内式 | 制限なし | ||
箱に収めるもの | キュービクル ( に適合) | ||
上記以外 ( に準じるものなど) | 制限なし |
(2) 受電形式の分類:開放式と箱式
形式 | 分類 | 定義と特徴 |
開放式 | 自立開放式 | 電気機器・装置を、鉄パイプで組みたてた枠(フレーム)に取り付けた受電設備です。機器がむき出しのため、広い設置面積と安全柵が必要です。 |
箱式 | 箱式 | 電気機器・装置を、鋼材で作成した箱内に取り付けた受電設備です。閉鎖型、キュービクル式、縮小形などがあり、設置面積を抑え、安全性が高いのが特徴です。 |
(3) 受電設備の施設場所と方法
受電設備の設置は、屋内式と屋外式に大別されます。
施設場所 | 設置方法 | 解説と留意事項 |
屋内式 | 1. 床上式 | 床面に平基礎を設けて設置する方法。 |
2. 架台式 | 鉄骨などで架台を組みたて設置する方法。 | |
(注) キュービクルを高所の開放された場所に施設する場合、周囲の保有距離が を超える場合を除き、高さ 以上の柵を設けるなどの墜落防止措置を施すこと。 | ||
屋外式 | 1. 地上式 | 地上に下駄基礎、又は平基礎を設けて設置する方法。 |
2. 柱上式 | 電柱の上に開閉器、変圧器を設置する方法。 | |
(注) 柱上式は、保守点検に不便であるため、他の方式を使用することが困難な場合に限り使用すること。 | ||
3. 屋上式 | 建物の屋上に下駄基礎、又は平基礎を設けて設置する方法。 |
⚡ 6. CB形受電設備(Circuit Breaker)
形受電設備は、主遮断装置として**遮断器()**を使用した受電方式です。大容量・高信頼性の施設で採用されます。
(1) 遮断器の種類と規格
項目 | 詳細な解説 |
種類 | 磁気遮断器、ガス遮断器、真空遮断器()などがあるが、高圧受電設備では**真空遮断器()**が、性能、価格、取り扱いやすさの点から推奨される。 |
規格 | 高圧交流遮断器は、 に適合するもの、又は 以外のものは**** 規格を準用することが推奨される。(国際規格 , なども参考) |
定格例 |
📄 高圧交流遮断器の定格例
| 定格電圧 | \multicolumn{2}{|c|}{} | | :— | :— | :— | | 定格電流 | | | | 定格遮断電流 () | () | () | | 据付方式 | \multicolumn{2}{|c|}{固定形(パネル取り付け)、引出形} |
(2) 遮断器の選定と断路器()の適用
遮断器の選定では、定格電圧・電流だけでなく、短絡電流に対する定格短時間耐電流が最も重要です。
選定要件 | 具体的な基準 |
定格電圧 | 系統の定格電圧を満足すること。 |
最大負荷電流 | 最大負荷電流以上の電流容量のものであること。 |
短絡電流耐量 | 受電点の短絡電流以上の定格短時間耐電流容量のものであること。 |
選定例 | 負荷電流 の場合、定格 で良いが、短絡電流 を超える場合は 以上のものを選定する。 |
短絡電流による 定格電流の選定基準
受電点の短絡電流 [kA] (MVA) | 8kV 末満 (100) | 8 以上 12.5 以下 (160) |
定格電流 |
🚨 遮断器と の関係
- は、断路機能がないため、必ず (断路器)と組み合わせて使用する。
- 引出形は、主回路接触部に断路機能があり、主遮断装置でない場合は は省略できる。
(3) その他の選定項目と引外し(トリップ)方式
遮断器の操作・制御方法によって、機種や引外し(トリップ)方式を選定します。
遮断器の選定項目
選定項目 | 標準 | 要望、打ち合わせによる方法 |
取付け方式 | 据置(固定)式(盤面取付け) | 引出形 |
操作方式 | 手動バネ式(投入電源無し・遠方操作しない場合) | 電動バネ式(投入電源が必要・遠方操作・自動制御等を行う場合)/電磁操作式 |
引外し方式と操作の詳細
保護継電器が事故を検出した際の遮断器の引外し方法は、制御電源や電圧の種類によって決定します。
引外し方式 | 略称 | 操作・電源 |
電圧引外し | 電源より供給。 の場合は と組み合わせて使用。 | |
不足電圧引外し | 電源より供給。電圧低下にて強制遮断。 | |
過電流引外し | 操作電源不要。 の電流により遮断。 | |
コンデンサ引外し | コンデンサの放電エネルギーにより遮断。 |
: Condenser Trip Device
注記: 保護継電器の種類によって引外し方式を合わせることが必要です。
- 過電流継電器 () および地絡継電器 () の場合は、電流引外し方式と電圧引外し方式の 種類があります。
- 地絡方向継電器 () の場合は、電圧引外し方式のみです。
💡 7. PF・S形受電設備(Power Fuse & Switch)
形受電設備は、主遮断装置に電力ヒューズ()を、開閉装置に高圧交流負荷開閉器()を使用した受電方式です。 以下の比較的小容量の施設で採用されます。
(1) 選定要件と容量制限
- 形は、キュービクル式の場合 以下でなければならない。
- 電力会社と過電流保護協調が取れること。( の選定が重要)
- 負荷設備に高圧電動機を有しないこと。(電動機の突入電流による 溶断を防ぐため)
(2) LBSの選定と設置の留意点
- 主遮断装置として使用する**限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器()**は、引き外し電源を必要としない機械的引外し式のストライカヒューズ付開閉器を使用すること。
- の相間には絶縁バリヤー( 相の場合は 枚)を取り付けること。
(3) 主遮断装置用限流ヒューズ(PF)の選定例
形受電設備の主遮断装置用限流ヒューズの選定は、変圧器容量によって決定します。
- 選定例: 単相変圧器 、三相変圧器 の場合 (:一般用、:変圧器 次側用)
📈 8. 計器・計測器
高圧受電設備に取り付けることが標準とされる計器と、必要に応じてオプションで取り付ける計器があります。
(1) 標準とオプションの計器
分類 | 機器 | 略称 |
標準施設 | 電圧計、電流計、電力計、力率計 | または |
オプション | 電力量計、周波数計、無効電力量計、最大需要電力計など |
注記: 主遮断装置の形式が 形式の場合は、原則として計器・計測器は設けないこととされています。
(2) 電子式マルチメータ(DMM)の採用
- **電子式マルチメータ()**は、電圧、電流、抵抗などの複数の量を 台で測定できる機能を集約した装置です。
- 採用理由: 省スペース、省配線、省力化、経済性などの理由から採用例が増えています。
- 特徴: オープンネットワークに対応した伝送・通信機能により、理想的な計測システムを構築できます。
🛡️ 9. 保護装置
保護装置(継電器)は、短絡や地絡などの電気事故時に、速やかに遮断器 () を動作させ、事故の拡大を防ぐための設備の守り役です。
(1) 過電流継電器()
項目 | 詳細な解説 |
役割 | 入力電流が整定値を超えた時に動作する継電器。(過電流には過負荷電流と短絡電流がある) |
構成 | (変流器)と (遮断器)と組み合わせて使用する。 |
整定 | 施工時は、** のタップ(動作電流整定)とレバー(動作時間整定)**を決定する。 |
協調 | 電力会社の保護装置は、リレーの動作整定値 以上の事故電流を 秒で遮断するため、自家用側の整定値はこれより短くし、保護協調を取る。 |
(2) 不足電圧継電器()
項目 | 詳細な解説 |
役割 | 電圧値が整定値以下になった時に動作する継電器。 |
整定値 | 動作電圧は定格電圧の 、動作時間は** 秒**に整定することが多い。 |
採用ケース | 復電時に順次起動する場合や、復電時自動運転すると危険な工場(大規模施設)などに、必要に応じて取り付ける。 |
機能 | 停電時には、高圧発電機に起動信号を出す。 |
(3) 地絡継電器()
項目 | 詳細な解説 |
役割 | 地絡事故時に、整定値を超えた時に動作する継電器。 |
構成 | (零相変流器)と組み合わせて使用する。 |
整定 | 動作電流 、動作時間 秒に整定する。 |
協調 | 電力会社の地絡保護装置は、事故発生後 秒で動作するため、自家用側はこれより早く動作させ、協調を取る。 |
(4) 地絡方向継電器()
項目 | 詳細な解説 |
採用ケース | 地絡継電器()が不要動作する恐れがある時に採用する。(受電点が ヶ所以上の場合など) |
役割 | 地絡事故時に、地絡電流の方向性を判別し、整定値を超えた時に動作する継電器。 |
構成 | 、(零相電圧検出装置)と組み合わせて使用する。 |
整定 | 動作電流 、動作時間 秒に整定する。 |
10. 監視・制御装置
監視・制御装置は、受電設備の運転状態の見える化と、異常時の迅速な対応のために必要です。
項目 | 監視・計測する内容 |
運転状態の監視 | 開閉器、遮断器類の開閉状態。 |
警報 | 各種保護継電器の動作、高圧機器(:変圧器、:進相コンデンサ、:直列リアクトル)の異常、低圧回路漏電()の検出、電力ヒューズ () 溶断、低圧母線サーマルリレー () 動作。 |
計測 | 電圧、電流、電力、力率、高調波電流。 |
計量 | 電力量。 |
監視・計測方法 | 中央監視装置、警報盤など。 |
💡 11. 変成器(VT)、変流器(CT)、零相変流器(ZCT)
計器や保護継電器を動作させるために、高圧・大電流を変成する重要な機器です。
(1) と の仕様と選定(まとめ)
VT 仕様 | CT 仕様 |
定格 次電圧 | |
定格 次電圧 | |
定格負担 |
、、 |
(2) 変流器()の選定時の検討項目
の選定には、以下の つの項目を検討し、機器の性能を保証する必要があります。高圧受電設備では、一般的に推奨される基準値があります。
検討項目 | 検討内容と高圧受電設備の標準 |
定格負担 | 次側に接続される負荷の大きさ。その計器用変成器の性能・特性を保証する負担を示します。 高圧受電設備であれば、 でよい。 |
過電流強度 (定格耐電流) | が短絡電流に耐えられるかを示す定数。 高圧受電設備であれば、 倍でよい。 |
過電流定数 | の定格 次電流の 倍までは比誤差が 以下であることを示す定数。 高圧受電設備であれば、 を標準とする。 |
(3) 零相変流器()
項目 | 詳細な解説 |
役割 | 線路電流中に含まれる零相電流を検出するための変流器で、地絡保護に用いる。 |
構成 | 次導体としての三相又は単相の導体全てを鉄心窓に通し、微小電流検出のためパーマロイなどの高透磁率材料を用いる。 |
規格 | 定格零相 次電流は 、定格零相 次電流は である。( の規格) |
短絡電流耐量 | は、受電点の三相短絡電流に耐える強度が必要です。定格 次電流は次式により計算し、 の標準値から選定します。 |
- :受電点の三相短絡電流、:配電用変電所の遮断時間
🛑 12. 停電復電現象と対策(UVR を活用した安全対策)
停電後の復電時には、設備や機器に大きな負担がかかる現象が発生することがあります。
(1) 発生しうる現象
- 電動機の危険な運転: 復電と同時に電動機が運転すると危険な場合がある。
- 過電流による遮断器動作: 復電時に変圧器又は負荷が一斉投入されることにより、過電流継電器 () が動作する恐れがある。
(2) 対策の要点
- 不足電圧継電器()の設置: 受電部に を取り付け、停電時には主遮断器を にし、手動で遮断器や開閉器を投入する運用とする。
- 負荷の群分割: 変圧器や負荷を群分割し、順次投入することで、復電時の突入電流による の不要動作を防ぐ。
🌎 13. 接地工事(安全確保の基本)
高圧受電設備における接地工事は、感電防止、機器の保護、電位上昇の抑制といった安全確保のために必須であり、 種と 種の 種類が主に用いられます。
接地工事の施設箇所 | 接地工事の種類 | 接地抵抗值 |
ケーブルのシールド、高圧機器(、 など)の鉄台、及び金属製外箱、受電盤箱、 次回路、電力需給用計器用変成器外箱、電力量計 | 種 | |
避雷器(他の接地極と共用しない、単独接地とする) | 種 | |
及び 次回路、 次回路、 次回路、キュービクル外箱 | 種 |
注記: 最近は 種と 種の接地工事を共用する場合が多いです。
📏 14. キュービクルの配置と保有距離
キュービクルの配置にあたっては、保守・点検作業の安全性と効率を確保するため、**離隔距離(保有距離)**を確保することが電気設備技術基準で義務付けられています。
(1) キュービクル本体の保有距離の基準
保有距離を確保する部分 | 保有距離 [m] | 解説 |
点検を行う面 | 以上 | 内部機器の点検・調整に必要な最低限のスペース。 |
操作を行う面 | +保安上有効な距離以上 | 開閉器や遮断器の操作、計測などを行うスペース。 |
溶接などの構造で換気口がある面 | 以上 | 換気口から熱気や排気が出るため、最低限のスペースを確保します。 |
溶接などの構造で換気口がない面 | 離隔距離は不要です。 |
(2) 受電設備に使用する配電盤などの最小保有距離
キュービクル内部や受電室内の高圧・低圧配電盤、変圧器などの機器配置についても、安全な作業空間を確保するための最小離隔距離が定められています。(単位:)
部位別・機器別 | 前面 又は 操作面 | 背面 又は 点検面 | 列相互間 (点検を行う面) | その他の面 |
高圧配電盤 | ||||
低圧配電盤 | ||||
変圧器類など |
(注)「列相互間」は機器類を 列以上設ける場合をいいます。
🚨 注意事項
- 高所設置の対策: キュービクルを高所の開放された場所に施設する場合、周囲の保有距離が を超える場合を除き、高さ 以上の柵を設けるなどの墜落防止措置を施します。
🔥 15. 認定キュービクル、推奨キュービクル(法規と設置)
キュービクルには、その用途と目的によって、一般社団法人日本電気協会が定めた認定基準と推奨基準があります。
(1) 認定キュービクルの定義
認定キュービクルは、消防法第 条に定める消防設備等の電源を確保するため、(一社)日本電気協会が制定した「キュービクル式非常電源専用受電設備認定基準」に適合した、特に信頼性の高いキュービクルです。
(2) 推奨キュービクルの定義
推奨キュービクルは、自家用高圧需要家受電設備の安全確保及び電気事業者への波及事故を防止するため、(一社)日本電気協会が制定した「キュービクル式高圧受電設備推奨基準」に適合したキュービクルです。
(3) 屋外における受電設備の設置例(消防法第 条関連)
屋外に受電設備を設置する場合、火災予防の観点から建築物との離隔距離が定められています。
- 原則: 屋外に設置する場合は、建築物から 離す必要があります。
- 例外: 受電設備と面する部分が不燃材でつくられていれば とすることができます。
- 届出: 設置前には、所轄の消防署と事前に打ち合わせを行う必要があります。
(4) 設置場所検討の留意事項
- キュービクルの設置にあたっては、電気設備技術基準の解釈に加えて、消防法や建築基準法、自治体の条例などを確認する必要があります。
- 特に、消防法上の危険物施設やガス設備などからの離隔距離も、別途考慮しなければなりません。