地震大国、日本。
耐震クラスの判断基準と
機器の選定方法について知りたい!
- 耐震クラスについて調べている方
- ケーブルラックの耐震施工について調べている方
- 盤の耐震施工について調べている方
✅ この記事でわかること
「耐震クラス」とは何か、どのように分類されるか
- 「耐震種別(A種・B種・SA種など)」との違いと関係性
- 建物用途・機器の重要度による耐震クラスの決まり方
- 耐震クラスの適用階(上層・中間・下層階)の考え方
- 「設置場所」は支持されている階で判断するというポイント
- 耐震支持が不要(適用除外)となる条件一覧
- 電気配線(金属管・ダクト・バスダクト等)の耐震支持間隔ルール
- 2005年版と2014年版指針の改訂の背景と変更点
- 耐震設計で耐震クラスの確認が必須である理由

- 関連記事
- 参考にした書式
- クイックトピックス
- 耐震設計の指針について
- 建築設備の耐震設計・施工は「2014年版指針」で見直されました
- 大地震で判明した建築設備の弱点
- 2014年版での主な変更点
- ✅ 耐震クラスとは?建物の“役割”で決まる地震対策レベル
- 🏢 どんな建物に、どのクラス?
- ✅ 耐震クラスの選定基準を整理すると…
- 🏢 耐震クラスはどうやって決める?
- ✍️ ここまでのまとめ
- 🏢 耐震クラスは「どの階」にも同じでいい?適用階の考え方とは
- 設置場所の考え方について
- 🔄 2005年版から2014年版へ──耐震設計指針はこう変わった
- 📋 指針2014|耐震支持の適用ルール
- ✅ 「耐震クラス」と「耐震種別」はどう違う?
- ✍️ ここまでのまとめ
- ⚡ 耐震支持間隔とは?
- 🔌 対象となる電気配線とは?
- 📏 支持間隔の基本ルール(指針2014より)
- 🧩 耐震クラスと耐震種別の違いと関係を正しく理解しよう
- ⚠️ 耐震クラスの確認は、設計の出発点です
- 📌 まとめ:まず「クラス」、次に「種別」
- 関連記事
- マニュアルでも詳しく解説しています
- まとめ
関連記事


参考にした書式
クイックトピックス
- 耐震クラスS:特定の施設 で 重要機器
- 耐震クラスA:特定の施設 で 一般機器
- 耐震クラスA:一般の施設 で 特定機器
- 耐震クラスB:一般の施設 で 一般機器
耐震設計の指針について
建築設備の耐震設計・施工は「2014年版指針」で見直されました
建築物の安全性を守るうえで欠かせないのが「建築設備の耐震対策」です。これに関しては、**国土交通省監修の「建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)」**に詳しく定められています。
この指針は、2005年版からの改訂版であり、特に2011年に発生した**東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)**の被害を教訓として、内容が見直されました。
大地震で判明した建築設備の弱点
東日本大震災では、多くの建物の設備に以下のような被害が発生しました。
-
配管を固定するつかみ金具が外れる
-
置き基礎が動いて設備が損傷
-
配管の端部や分岐部で破損
-
吊り金具や埋め込み金具の強度不足による脱落
これらの被害は、日常では気づきにくい設備の弱点が露呈した例です。
2014年版での主な変更点
このような被害を踏まえ、2014年の改訂で以下のポイントが新たに強化されました。
✅ 横引き配管などへの「耐震支持」が明確化
従来よりも、横方向に設置された配管などにも地震時の揺れに備えた支持が必要であることが明記されました。
✅ 「耐震支持の種類と適用範囲」の整理
どのような耐震支持がどこに必要なのかを種類ごとに整理し、設計や施工で判断しやすくなっています。
✅ 耐震クラスとは?建物の“役割”で決まる地震対策レベル
建物や設備の耐震対策を考えるとき、重要になるのが**「耐震クラス」**という考え方です。
この耐震クラスは、「官庁施設の総合耐震計画基準および同解説」に基づいており、地震後にその建物をどのような用途・状態で使いたいかによって、求められる耐震性能が変わります。
🏢 どんな建物に、どのクラス?
以下のように、建物の使い方や目的に応じて耐震クラスが決まります。
🟥 防災拠点として機能させたい建物
→ 耐震クラス SまたはA
災害時でも継続して使用する必要がある建物(例:防災センター、災害対策本部など)は、非常に高い耐震性能が求められます。
🟧 一般の事務所など通常業務を行う建物
→ 耐震クラス AまたはB
震災後の早期復旧が求められるが、即時の稼働は不要な建物に該当します。一般的な官公庁施設や事務所などがこの対象になります。
⚙️ 設備機器の重要度による分類
-
重要機器(非常用電源、ポンプ、制御盤など)
→ 被災後すぐに使用される設備のため、SまたはAクラスの耐震対策が必要です。 -
一般機器(照明、換気扇など)
→ 復旧の優先度は高くないため、AまたはBクラスでの判断となります。
✅ 耐震クラスの選定基準を整理すると…
耐震クラスの考え方をシンプルにまとめると、以下のように建物の用途×機器の重要度によって分類されます。
🏢 耐震クラスはどうやって決める?
耐震クラスの選定は、建物の役割や使い方をもとに、施主や設計事務所が判断します。
たとえば、防災拠点や医療施設などの重要な施設であれば、より高いクラス(SやA)が必要になります。
✍️ ここまでのまとめ
- 耐震クラスは「建物の用途」と「設備の重要度」で決まる
- S〜Bクラスまであり、それぞれ必要な耐震対策が異なる
- 選定は設計初期段階で、施設の使い方を踏まえて決定される
🏢 耐震クラスは「どの階」にも同じでいい?適用階の考え方とは
建築設備の耐震設計では、「耐震クラス」だけでなく、それがどの階に適用されるのかという「適用階」の考え方も重要です。
特に地震時の揺れが大きくなる上層階は、より厳格な耐震性能が求められることがあります。
このように、耐震クラスは建物全体で一律に決めるものではなく、階ごとに適用を検討する必要があるのです。
本記事では、その判断基準や考え方についてわかりやすく解説していきます。
上層階の定義
✅ 階数ごとの「上層階」区分ルール
建物の階数 | 上層階の定義 |
---|---|
2~6階建て | 最上階のみ(例:4階建てなら4階が対象) |
7~9階建て | 上層2階(例:9階建てなら8・9階) |
10~12階建て | 上層3階(例:11階建てなら9・10・11階) |
13階以上 | 上層4階(例:15階建てなら12~15階) |
このように、建物の高さが高くなるほど、上層階の範囲も広がっていくのがポイントです。
設備の設計段階では、「どの階に設置されるか」に応じて耐震クラスの適用レベルを検討する必要があります。
中間階の定義
適用階の考え方について
「中間階」とは、1階や地下階、そして上層階を除いた残りの階層を指します。
つまり、上層階に該当しない2階以上の階が中間階として扱われます。
中間階を正しく判断するためには、まず建物が何階建てかを確認することが大切です。
というのも、上層階の範囲は建物の高さ(階数)によって変わるため、それによって「どこが中間階なのか」も自動的に決まってくるからです。
例として、10階建ての建物であれば、上層階は8〜10階なので、中間階は2〜7階となります。
このように、「耐震クラスの適用階」を判断するには、建物の全体構成を把握することが前提になります。
中間階は上層階を除くため建物が何階建てなのかを確認しましょう
設置場所の考え方について
設備の「設置場所」は、**“どの階にあるか”ではなく、“どの階から支持されているか”**で判断されます。
つまり、配管やダクトなどが1階に設置されていたとしても、それが2階の天井から吊られている場合は「2階に設置されている」とみなされるのです。
この場合、2階が上層階や中間階に該当していれば、その階に応じた耐震クラスの適用が必要になります。
このように、実際の“見た目の設置階”ではなく、“構造的にどこに依存しているか”がポイントです。
耐震設計では、こうした支持階の考え方を踏まえて、正しいクラスの適用を行うことが求められます。
横引き配管・立て配管の耐震支持が不要となるケース
設備の耐震設計では、基本的に耐震クラスに応じた支持が必要ですが、特定の条件に該当する場合は「適用除外」として耐震支持が不要になることがあります。
✅ 適用除外となる主なケース
(1)電線管・金属ダクト・バスダクトなど
以下のいずれかに該当する場合は除外されます:
-
φ82mm以下の単独金属管
-
周長80cm以下の電気配線類
-
定格電流600A以下のバスダクト
-
吊り長さが平均20cm以下の電気配線
(2)ケーブルラック
以下の条件を満たすケーブルラックも除外対象です:
-
幅400mm未満のケーブルラック
-
吊り長さが平均20cm以下のもの
このように、配線や配管のサイズや吊り方が小規模・軽量な場合には、過度な耐震支持を省略しても良いというルールがあります。
ただし、実際の判断は現場の設計条件や構造との兼ね合いで決定するため、図面や仕様確認が重要です。
✅ 横引き配管・立て配管の耐震支持【適用除外一覧】
区分 | 対象 | 適用除外の条件 |
---|---|---|
(1)電線管・金属ダクト・バスダクト等 | 単独金属管 | 外径 φ82mm 以下 |
電気配線 | 周長80cm 以下 | |
バスダクト | 定格電流600A 以下 | |
電気配線全般 | 吊り長さが平均20cm 以下 | |
(2)ケーブルラック | ケーブルラック | 幅400mm 未満 または 吊り長さが平均20cm 以下 |
この表のように、軽量かつ短い配管や配線は、耐震支持の対象外となる場合があります。
ただし、実際の適用除外の判断は設計者や監理者によって最終的に確認・判断が必要です。
🔄 2005年版から2014年版へ──耐震設計指針はこう変わった
建築設備の耐震設計において指針となる「建築設備耐震設計・施工指針」は、2005年版から2014年版へと大きく見直されました。
この改訂の背景には、2011年に発生した東日本大震災による甚大な被害があります。地震によって明らかになった設備の弱点や新たな課題を受けて、2014年版ではより実践的かつ具体的な耐震対策が求められるようになりました。
建築設備耐震設計・施工指針の耐震支持の適用表
📋 指針2014|耐震支持の適用ルール
この表は、設置場所の階層・設備の種類ごとに、どの程度の耐震支持を求めるかを明記したものです。
🏢 適用階層ごとの基本方針
設置場所 | 耐震クラスA・B対象設備 | 耐震クラスS対象設備 |
---|---|---|
上層階・屋上・塔屋 | 原則としてA種支持材を設置 ※配線は12m以内ごとに設置 |
SA種支持材を設置(12m以内) |
中間階 | 配線は12m以内ごとにA種またはB種を設置 | A種支持材(12m以内) |
地階・1階 | 配線などは条件によりB種または適用除外も可能 | A種支持材(12m以内) |
※「A種」「SA種」は耐震性能の区分で、SA種の方が高性能です。
✅ 「耐震クラス」と「耐震種別」はどう違う?
項目 | 説明 | 例 |
---|---|---|
耐震クラス | 建物や設備がどの程度の耐震性能を求められるかを示す分類 | クラスS、A、B |
耐震種別 | 実際に使う耐震支持部材の仕様・強度レベル | A種、B種、SA種など |
🏢 耐震クラスとは?
-
設備や機器の重要性や建物の用途に応じて設定されるレベル
-
例:災害時に機能維持が必要な設備 → 耐震クラスS
-
設備ごとに「このくらいの耐震性能が必要です」という目標や基準
🛠 耐震種別とは?
-
耐震支持材(ブラケットやアンカーなど)の仕様や強度のランク
-
「A種」「B種」などがあり、A種の方が高強度・高性能
-
耐震クラスに応じて、どの種別の部材を使えばよいかが決まる
🔁 両者の関係性
耐震クラスで「必要な耐震性能のレベル」が決まり、
→ そのレベルを満たすために「どの耐震種別(A種・B種など)の部材を使うか」が決まります。
例:
-
耐震クラスSの場合 → SA種の支持材が必要
-
耐震クラスAの場合 → A種の支持材を使えばOK
✍️ ここまでのまとめ
- 耐震クラス:必要とされる性能のランク
- 耐震種別:その性能を満たすための実際の部材のランク
- クラスが先に決まり、それに合った種別の部材を選ぶのが基本です
⚡ 耐震支持間隔とは?
電気配線設備において「耐震支持間隔」とは、地震時の揺れに備え、機器や配線をどの程度の間隔でしっかり固定(支持)する必要があるかを定めた距離のことです。
これは、過剰な変形や脱落を防ぐための重要な設計条件です。
🔌 対象となる電気配線とは?
この項目で対象となるのは以下のような堅固な電気系統の配線材料です:
-
金属管
-
金属ダクト
-
バスダクト
📏 支持間隔の基本ルール(指針2014より)
設置される階層と耐震クラスに応じて、支持間隔が定められています。
耐震支持間隔|電気配線(金属管・金属ダクト・バスダクトなど)
耐震種別【A種・B種】

耐震種別【S種】

耐震支持間隔|ダクト
耐震種別【A種・B種】

耐震種別【S種】

🧩 耐震クラスと耐震種別の違いと関係を正しく理解しよう
建築設備の耐震設計においては、「耐震クラス」と「耐震種別」の違いを正しく理解することが重要です。
-
耐震クラスは、建物や設備がどれだけの耐震性能を求められるかを示す「要求レベル」
→ S・A・Bなど、設備や建物用途ごとに設定されます。 -
耐震種別は、その要求に応えるために使う実際の支持部材の仕様・強度レベル
→ A種、B種、SA種など、支持材の性能に応じた区分です。
つまり、耐震クラスで「どの程度の強さが必要か」を定め、耐震種別で「それをどう実現するか」を選ぶという関係になります。
例えば、耐震クラスSが求められる設備であれば、SA種などの高性能な支持材が必要です。
逆にクラスBの設備であれば、B種支持材で対応可能なケースがほとんどです。
設備の種類や建物の階層、設置位置などにより必要な条件は変わりますが、
**基本の考え方は「クラスで基準を定め、種別で実行する」**という流れです。
この関係性を押さえておくことで、より合理的かつ安全な耐震設計が可能になります。
⚠️ 耐震クラスの確認は、設計の出発点です
耐震設計を行ううえで、最も重要かつ最初に確認すべきなのが「耐震クラス」です。
耐震クラスは、建物や設備が地震後にどのように機能しなければならないかという観点から決定されます。
つまり、クラスの設定を誤ると、過剰設計や耐震性能不足といった重大なトラブルにつながる可能性があります。
✅ 耐震種別の選定も「クラス」によって決まる
使用する支持材(A種、SA種など)を選ぶにも、まず耐震クラスが分かっていなければ正しく選べません。
-
クラスS → SA種の支持材が必要
-
クラスA → A種の支持材で対応
-
クラスB → B種でも可 など
📌 まとめ:まず「クラス」、次に「種別」
設計や施工に入る前に、必ず次の点を確認しましょう:
- ✅ 施主や設計者と耐震クラスの確認を行う
- ✅ 図面や仕様書にクラスが明記されているかを確認
- ✅ クラスに合った耐震種別を選定する
関連記事
マニュアルでも詳しく解説しています


まとめ
耐震クラスの基本的な分類
建物用途
- 特定の施設
- 一般の施設
機器の用途
- 重要機器
- 一般機器
耐震クラス『S』:特定の施設で重要機器
耐震クラス『A』:特定の施設で一般機器
耐震クラス『A』:一般の施設で特定機器
耐震クラス『B』:一般の施設で一般機器

横引き配管及び立て配管の適用除外項目
以下の項目に該当する場合、耐震クラスごとの耐震支持は適用除外となる
(1)電線管、金属ダクト、バスダクトなど
- a)φ82以下の単独金属管
- b)周長80cm以下の電気配線
- c)定格電流600A以下のバスダクト
- d)吊り長さが平均20cm以下の電気配線
(2)ケーブルラック
- a)幅400㎜未満のもの
- b)吊り長さが平均20cm以下のケーブルラック
建築設備耐震設計・施工指針の耐震支持の適用表
