建築消防|消火器の設置基準
消火器の設置基準
🎯この章で学べること
ハリタ先生
ペン太さん、防火管理者として消火器の設置基準を理解することはとても重要です。一緒に勉強していきましょう!
ペン太
はい!建物によって必要な消火器が違うんですよね?しっかりマスターします!
この章の学習目標
- ✓消火器の設置が必要な建物を判断できるようになる
- ✓能力単位の計算方法を習得する
- ✓消火器の正しい設置場所と注意点を覚える
ℹ️消火器設置の基本ルール
ハリタ先生
まずは、どのような建物に消火器を設置する必要があるのか、基本から見ていきましょう。設置基準の表から対象建物と面積(地階・無窓階・3階以上の階はそれぞれの階の床面積)を確認して選定しましょう。
消火器の設置義務の判断基準
消火器の設置が必要かどうかは、建物の構造や用途、そして延べ面積によって決まります。
一般的に、延べ面積が150㎡以上ある建物には消火器の設置が必要です。ただし、延べ面積が150㎡未満であっても、特定の条件を満たすと設置義務が発生します。例えば、地階、無窓階、3階以上の階があり、その床面積が50㎡以上の防火対象物には、延べ面積に関わらず設置が必要です。
設置基準の一例
令別表第1項目 | 防火対象物 | 一般 | 地階・無窓階 又は3階以上 |
---|---|---|---|
(延面積㎡)以上 | (床面積㎡)以上 | ||
(1) | イ● 劇 場 等 ロ● 集 会 場 等 |
イ:全部 ロ:150 |
イ:一般と同じ ロ:50 |
ペン太
なるほど!建物の広さが一番のポイントなんですね!
💡能力単位とは?
ハリタ先生
消火器の性能を示す大事な指標「能力単位」について、もう少し掘り下げてみましょう。これは、消火器1本でどのくらいの規模の火災を消せるかを表す数値です。
能力単位の基本的な考え方
能力単位は、消火器の消火能力を客観的に評価するために定められたものです。数値が大きいほど消火能力が高く、より広い範囲や大きな火災に対応できることを意味します。
建物に設置する消火器の数は、建物の延べ面積などから計算した「必要な能力単位」を、設置する消火器の能力単位の合計で満たすように決定します。
豆知識:能力単位と火災の種類
能力単位の数値は、火災の種類(A火災、B火災)ごとに個別に定められています。「A-3, B-7」と表記されている消火器は、A火災には3単位の、B火災には7単位の消火能力を持つことを示しています。
ペン太
なるほど、数字が大きいほどすごいんですね!これで安心して消火器を選べそうです!
📐能力単位の計算方法
ハリタ先生
消火器の設置について欠かせないものが「能力単位」です。このセクションでは、建物に必要な能力単位をどのように計算するかを学びます。
能力単位の算定表
建物の種類や構造によって、必要な能力単位を算出するための面積の基準が異なります。以下の表で、防火対象物と構造区分に応じた算定基準を確認しましょう。
防火対象物の区分 | 説明 | |
---|---|---|
構造区分: 一般のもの | 構造区分: 特定主要構造部を耐火構造としたもの | |
令別表第1 (1)項イ、(2)項、(16の2)項、 (16の3)項、(17)項に掲げる防火対象物 |
能力単位の合計数 ≧ 延べ面積又は床面積/50㎡ | 能力単位の合計数 ≧ 延べ面積又は床面積/100㎡ |
上記の表は一例です。建物の用途や構造によって基準は細かく分かれています。例えば、火気を多く使用する場所では、**25㎡ごと**に1単位の能力が必要といった、より厳しい基準が適用されることもあります。
能力単位の緩和
消火器の設置が必要な場所に、屋内消火栓やスプリンクラー設備などを、消防法で定められた技術基準に則って適正に設けた場合、その有効範囲内では必要な能力単位を減らすことができます。
※ただし、**11階以上の階**ではスプリンクラー等による緩和は適用されません。また、能力単位は減らせますが、**歩行距離の基準は変わりません**ので注意が必要です。
ペン太
色々な建物に対応できるように、基準が細かく分かれているんですね!緩和措置も知っておくと便利そうです!
👷消火器の設置場所と注意点
ハリタ先生
さて、消火器の設置場所は、ただ置けば良いというわけではありません。火災発生時に確実に使えるように、細かなルールが定められています。
消火器設置の重要ポイント
消火器は建物の各階に少なくとも1つは設置しなければなりません。
防火対象物のどの部分からも、消火器まで歩行距離で20m以内(大型消火器は30m以内)に設置することが義務付けられています。
少量危険物や指定可燃物、変電設備、火気使用設備など、特に火災の危険性が高い場所には、建物の面積に関わらず消火器の設置が必要です。
設置場所で想定される火災の種類に適応した消火器を選びましょう。例えば、変電設備には電気火災に対応した消火器を設置します。
床面から1.5m以下の高さに設置します。子供やお年寄りでも手が届きやすいように配慮しましょう。
屋外、厨房、蒸気やガスが発生する場所では、錆びや劣化を防ぐため、格納箱に収納するなどの防護措置が必要です。
設置した消火器の直近には、消火器の存在を示す標識を設置します。標識には大きさや色の規格が定められています。
ペン太
消火器の設置場所には、使いやすさや安全性が考えられているんですね!
🚶歩行距離について詳しく見てみよう
ハリタ先生
先ほど出てきた「歩行距離」について、もう少し詳しく説明します。実際に建物のレイアウトを考えてみましょう。
歩行距離の考え方
建物のどこからでも消火器まで歩行距離20m以内になるように配置する決まりです。(大型消火器の場合は30m以内)
これは、火災が起きた際に、人が安全に消火器までたどり着ける最短の経路を指します。直線距離ではなく、通路や障害物を避けて実際に歩く距離で計測することが重要です。
迂回が必要な物品
歩行距離を測る際には、人が通行できない障害物を考慮して迂回しなければなりません。以下のような物品が該当します。
- 床に固定されているもの(家具、棚、生産用の機械など)
- 移動が容易ではないもの(重量物や大型の家具など)
👉 逆に、移動が容易なもの(軽くて大きくないもの)は迂回しなくても良いとされています。
ペン太
なるほど!ただ直線距離を測るんじゃなくて、実際に歩く道のりを考えるんですね!
❓ペン太の質問コーナー
ペン太
先生、消火器の標識について質問です!最近、イラストの標識をよく見かけるのですが、これも認められるんですか?
ハリタ先生
良い質問ですね!はい、消防法では、消火器が直接視認できる状態で設置されている場合、日本工業規格(JIS Z8210)に定めるピクトグラムの標識(9cm角以上)を設けることで、規定の標識を設けなくても良いとされています。ピクトグラムも適切に使えばOKですよ!
なお、近年、外国人来訪者が増加傾向にあることから、令別表第1(1)項イ、(5)項イ及び(10)項に掲げる用途に供される防火対象物等、多数の外国人来訪者の利用が想定される施設に対し、当該ピクトグラムを設置するよう指導することが望ましいとされています。
📖今回の学習のまとめ
1. 消火器設置の判断基準
消火器の設置義務は、主に建物の**延べ面積**が**150㎡以上**かどうかで決まります。ただし、地階や無窓階など、特定の条件に該当する場合は**50㎡以上**で設置が必要です。
2. 能力単位の計算
消火器の消火能力は**能力単位**で示されます。建物に必要な能力単位は、建物の種類や面積に応じて計算します。一般的な建物では**100㎡ごと**に1単位、火気を多く使う場所では**25㎡ごと**に1単位の能力が必要となります。
3. 設置場所の重要ルール
消火器の設置場所には、以下の重要なルールがあります。
- すべての階に最低1つは設置する。
- 消火器まで**歩行距離20m以内**に配置する。
- 床面から**高さ1.5m以下**の場所に設置する。
- 屋外などでは、劣化を防ぐための**防護措置**を行う。
ペン太
まとめがあると、今日学んだことをしっかり整理できますね!ありがとうございます!
🧠重要用語フラッシュカード
ペン太
先生、たくさん用語が出てきましたね。カードでしっかり復習します!
カードをクリックして、用語と意味を確認し、記憶を定着させましょう。
建築用途別設置基準算定表
ひと目でわかる!
消火器設置義務 判定ツール
あなたの建物に消火器は必要?簡単な質問に答えるだけで、消防法に基づく設置義務の有無がわかります。
消火器とは?
消火器は、火災の初期段階で火を消し止めるための最も身近で有効な消防用設備です。消防車が到着するまでの間に火災の延焼を防ぎ、被害を最小限に抑える重要な役割を果たします。このツールを使って、あなたの建物に法的な設置義務があるかを確認し、安全対策にお役立てください。
基本情報
STEP 1:建物の用途は?
建物の主な用途を選択してください。
STEP 2:建物の延べ面積は? (㎡)
建物全体の床面積の合計を入力してください。
STEP 3:地階・無窓階・3階以上の階は?
該当する階はありますか?
STEP 3-1:その階の床面積は? (㎡)
地階・無窓階・3階以上の階のうち、最も大きい床面積を入力してください。
STEP 4:少量危険物・指定可燃物は?
指定された量の危険物や可燃物を取り扱っていますか?
判定結果
建物の情報を入力・選択し、[判定する]ボタンを押してください。
判定履歴
算定ロジックの概要
以下のいずれかの条件に合致する場合、消火器の設置義務があります。
防火対象物 | 一般 (延べ面積) |
地階・無窓階・3階以上の階 (床面積) |
判定結果 |
---|---|---|---|
少量危険物・指定可燃物 ※ | 指定数量以上 | – | 義務あり |
※注記: 少量危険物は指定数量の1/5以上、指定可燃物は指定数量以上で設置義務が生じます。 |
|||
地階・無窓階・3階以上の階 | – | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(1)項イ 劇場等 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(1)項ロ 集会場等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(2)項 キャバレー等 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(3)項 飲食店等 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(4)項 百貨店等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(5)項イ 旅館等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(5)項ロ 共同住宅等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(6)項イ(1) 病院 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(6)項イ(2) 有床診療所 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(6)項イ(3) 病院・有床診療所等 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(6)項イ(4) 無床診療所等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(6)項ロ 老人短期入所施設等 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
(6)項ハ 老人デイサービスセンター等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(6)項ニ 特別支援学校等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(7)項 学校等 | ≧ 300㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(8)項 図書館等 | ≧ 300㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(9)項イ 蒸気浴場等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(9)項ロ 一般浴場 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(10)項 車両停車場等 | ≧ 300㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(11)項 神社等 | ≧ 300㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(12)項イ 工場等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(12)項ロ スタジオ等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(13)項イ 車庫等 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(13)項ロ 特殊格納庫 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(14)項 倉庫 | ≧ 150㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(15)項 前各項以外 | ≧ 300㎡ | ≧ 50㎡ | 義務あり |
(16)項 複合用途 | 各用途による | 各用途による | 要確認 |
(16の2)項, (16の3)項, (17)項 | 面積に関わらず | 面積に関わらず | 義務あり |
上記のいずれにも合致しない場合 | – | – | 義務なし |