技術図書館電極式の昇温器は距離と回路で守る湯そのものに電流を流す装置なので、人から離すのが先。次に回路を分け、接地と電位で仕上げるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
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出典:電気設備の技術基準の解釈 第198条第3項

電極式温泉昇温器は、温泉水に電流を通して発熱させ、温度を上昇させる装置です。温泉施設や旅館などで使われ、感電を防ぐための決まりが解釈第198条第3項にあります。本記事では、電気設備の技術基準の解釈にもとづいて整理します。

使用電圧は、300V以下 第一号。
専用の、絶縁変圧器 第二号。
遮へい装置から浴槽まで、1.5m以上 第五号。
遮へい装置の電極に、A種接地 第八号。
ペン太ペン太
温泉のお湯に直接電流を流して温めるんですか!?
ハリタハリタ
電極式温泉昇温器ですね。専用の絶縁変圧器と遮へい装置で、入浴者を守る決まりがあります。

この記事で押さえる3つのこと

  • 使用電圧300V以下、専用の絶縁変圧器を通す。
  • 遮へい装置は水管に沿って50cm・1.5m以上離す。
  • 遮へい装置の電極にA種、絶縁変圧器にD種。
この記事の道案内
距離の数値は、2つ目の項にまとめています。

1. 使用電圧と絶縁変圧器

昇温器は、300V以下 第一号。
絶縁変圧器は、300V以下・D種 第二号イ・ロ。
2,000Vを、1分間 第二号ハ。
1次側に、開閉器と遮断器 第三号。
  • 昇温器は、水管で送られる温泉水を温めて、水管で浴槽へ送る電極式の温水器です。使用電圧は300V以下です(解釈第198条第3項第一号)
  • 昇温器と給水ポンプの電動機に電気を送る電路には、絶縁変圧器を施設します。使用電圧300V以下、鉄心と金属製外箱にD種接地、交流2,000Vを1分間加える試験に耐えるものです(第二号)
  • 絶縁変圧器の1次側には、開閉器と過電流遮断器を各極に施設します。過電流遮断器が開閉できるなら、過電流遮断器だけでもかまいません(第三号)
  • 2次側には、昇温器と給水ポンプに直結する電動機のほかの電気機械器具(配線器具を除く)をつなぎません(第四号)
ペン太ペン太
給水ポンプは別の回路にするんですよね?
ハリタハリタ
解釈では、昇温器と同じ絶縁変圧器の2次側につなぎます。ほかの機器はつながないのがポイントです。
確認する項目 解釈の決まり
昇温器の使用電圧 300V以下
絶縁変圧器 300V以下・D種
絶縁耐力 2,000Vで1分間
1次側 開閉器+過電流遮断器
2次側 昇温器とポンプだけ
たとえるなら
絶縁変圧器は、温泉の電気の専用玄関
ほかの部屋の電気と混ざらないように、昇温器には専用の玄関(絶縁変圧器)から電気を入れます。2次側には、昇温器と給水ポンプの電動機しかつなぎません。
ここに注意!
「給水ポンプは、昇温器と別回路にする」ではありません。
解釈では、絶縁変圧器の2次側に昇温器と給水ポンプに直結する電動機をつなぎ、それ以外の電気機械器具はつなぎません(第四号)。
ここまでのポイント
  • 昇温器の使用電圧は300V以下
  • 絶縁変圧器(300V以下・D種・2,000V1分)を施設し、1次側に開閉器と過電流遮断器
  • 2次側は昇温器と給水ポンプの電動機だけ


2. 遮へい装置・水管・給水ポンプ

2次側は、昇温器とポンプだけ 第四号。
ポンプは、昇温器と遮へいの間 第六号。
簡易接触防護措置を、施す 第六号。
C種接地なら、この限りでない ただし書。
  • 昇温器の水の流入口と流出口には、遮へい装置を設けます。水管に沿って、遮へい装置と昇温器は50cm以上、遮へい装置と浴槽は1.5m以上離します(第五号)
流入口と流出口に、遮へい装置 第五号。
昇温器から、50cm以上 水管に沿って。
浴槽まで、1.5m以上 水管に沿って。
その間の水管は、絶縁性・耐水性 第七号。
  • 給水ポンプは、昇温器と遮へい装置との間に施設し、ポンプと電動機には簡易接触防護措置を施します。ポンプにC種接地工事を施すなら、この限りではありません(第六号)
  • 昇温器と遮へい装置との間、遮へい装置から水管に沿って1.5mまでの水管は、絶縁性と耐水性のある堅ろうなものにし、水せん等を施設しません(第七号)
思いこみ 正しくは
底面から水平1.5m 水管に沿って1.5m
すぐそばに遮へい 50cm以上離す
ポンプは別回路 同じ絶縁変圧器の2次側
ポンプはどこでも 昇温器と遮へいの間
途中に水せん 付けない
たとえるなら
遮へい装置は、お湯の通り道の関所
お湯は昇温器を出ると関所(遮へい装置)を通ってから浴槽へ向かいます。関所と浴槽の間は、水管に沿って1.5m以上あけます。
ここに注意!
「浴槽の底面から、水平に1.5m離す」ではありません。
解釈は、遮へい装置と浴槽との距離を水管に沿って1.5m以上、遮へい装置と昇温器との距離を水管に沿って50cm以上とします(解釈第198条第3項第五号)。
ここに注意!
「ポンプは、どこに置いてもよい」ではありません。
給水ポンプは昇温器と遮へい装置との間に施設し、ポンプと電動機に簡易接触防護措置を施します。ポンプにC種接地工事を施すなら、この限りではありません(第六号)。
ここに注意!
「途中の水管に、水せんを付けてよい」ではありません。
昇温器と遮へい装置との間、遮へい装置から1.5mまでの水管は、絶縁性と耐水性のある堅ろうなものにし、水せん等を施設しません(第七号)。
ここまでのポイント
  • 遮へい装置は水管に沿って昇温器から50cm以上、浴槽まで1.5m以上
  • 給水ポンプは昇温器と遮へい装置の間、その間の水管は絶縁性・耐水性で水せんなし


3. 接地と外箱

遮へい装置の電極に、A種接地 第八号。
接地極は、共用しない 第八号。
絶縁変圧器に、D種接地 第二号ロ。
外箱は、絶縁性・耐水性 第九号。
  • 遮へい装置の電極にはA種接地工事を施し、接地極は水道管路を接地極に使う場合を除いて、ほかの接地工事の接地極と共用しません(第八号)。A種の接地線は第17条(直径2.6mm以上の軟銅線など)によります
  • 絶縁変圧器の鉄心と金属製外箱には、D種接地工事を施します(第二号ロ)
  • 昇温器と遮へい装置の外箱は、絶縁性と耐水性のある堅ろうなものにします(第九号)
  • 電極と大地との間の電位(3V/cm以下)は、解釈第198条第3項にはありません。内線規程で確かめます
ペン太ペン太
温泉のお湯に直接電気を流すの?それは怖いなあ…。
ハリタハリタ
だから専用の絶縁変圧器で切り離して、遮へい装置を水管に沿って浴槽から1.5m以上離すんだ。遮へい装置の電極にはA種接地を施すよ。
どこに 接地・決まり
遮へい装置の電極 A種(接地極は専用)
絶縁変圧器 D種(鉄心・外箱)
昇温器・遮へいの外箱 絶縁性・耐水性
電位3V/cm 内線規程で確認
たとえるなら
A種の専用接地極は、自分だけの避難路
ほかの人と共用の避難路だと混み合います。遮へい装置の電極の接地極も、水道管路を使う場合を除いて、ほかの接地工事と共用しません。
ここに注意!
「遮へい装置の接地は、ほかと共用してよい」ではありません。
遮へい装置の電極にはA種接地工事を施し、接地極は水道管路を接地極に使う場合を除いて、ほかの接地工事の接地極と共用しません(第八号)。
ここに注意!
「電位3V/cm以下は、解釈の決まり」ではありません。
解釈第198条第3項には、電極と大地との間の電位の値はありません。電位の値は、内線規程で確かめます。
ここまでのポイント
  • 遮へい装置の電極にA種接地(接地極は共用しない)
  • 絶縁変圧器の鉄心と外箱にD種接地、昇温器と遮へい装置の外箱は絶縁性・耐水性
  • 電位3V/cm以下は内線規程で確かめる


よくある質問(FAQ)

Q1. 電源の決まりは? 300V・絶縁変圧器。
Q2. 距離の決まりは? 50cm・1.5m。
Q3. 接地の決まりは? A種・D種。
3V/cmの電位は? 内線規程で確かめる。
Q. 電極式温泉昇温器とは何ですか?
A. 水管で送られる温泉水を電極で温め、水管で浴槽へ送る電極式の温水器です。解釈第198条第3項に施設の決まりがあります。
Q. 昇温器の設置位置の基準は?
A. 昇温器の水の流入口と流出口に遮へい装置を設け、水管に沿って遮へい装置と昇温器を50cm以上、遮へい装置と浴槽を1.5m以上離します(第五号)。その間の水管は絶縁性と耐水性のある堅ろうなものにし、水せん等を付けません(第七号)。
Q. 給水ポンプの電源はどうしますか?
A. 昇温器と給水ポンプの電動機には、使用電圧300V以下の絶縁変圧器を通して電気を送ります。2次側には昇温器とポンプの電動機以外の電気機械器具をつなぎません(第二号・第四号)。ポンプは昇温器と遮へい装置の間に置き、簡易接触防護措置を施します(C種接地なら不要。第六号)。
Q. 接地と絶縁耐力の基準は?
A. 遮へい装置の電極にA種接地工事(接地極はほかと共用しない)、絶縁変圧器の鉄心と外箱にD種接地工事を施します。絶縁変圧器は交流2,000Vを1分間加える試験に耐えるものです(第二号・第八号)。電位3V/cm以下は内線規程で確かめます。

まとめ|絶縁変圧器と遮へい、そして専用の接地

温泉水そのものに電気を流す装置のため、「専用の絶縁変圧器」「遮へい装置と水管に沿った距離」「遮へい装置の電極のA種接地」の3点が安全の柱になります。

確認する項目 決まり
使用電圧 300V以下
絶縁変圧器 300V以下・2,000V1分
2次側 昇温器とポンプだけ
遮へい装置 50cm・1.5m(水管沿い)
給水ポンプ 間に置き簡易接触防護
水管 絶縁性・耐水性・水せんなし
接地 A種(遮へい)・D種(変圧器)
外箱 絶縁性・耐水性

絶縁変圧器の2次側には昇温器と給水ポンプの電動機しかつなげないので、盤の回路構成を決める段階で専用の系統にしておくと、後から手を入れずに済みます。

ペン太ペン太
接地まわりで覚える数字はありますか?
ハリタハリタ
遮へい装置の電極はA種で接地極は専用、絶縁変圧器はD種です。A種の接地線は直径2.6mm以上の軟銅線などですよ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。