分岐線の長さを測ろう
幹線分岐のサイズはどうやって選定するの?
分岐側の過電流遮断器の省略ってなに?
内線規程や参考書などで”分岐した幹線の過電流遮断器の省略”の記述を目にすることがあるかと思います。これは幹線の分岐側に過電流遮断器を施設することが前提としており、分岐側の幹線の許容電流×係数以上の許容電流であれば過電流遮断器を省略可能ということになります。しかし過電流遮断器を施設しなければいけないという認識が薄いため条件を満足していない場合でも過電流遮断器を省略している場合があります。条件をよく理解し適正な計画ができるようにしましょう。
- 分岐した細い幹線に施設する過電流遮断器の省略について知りたい方
- 幹線サイズの選定方法を知りたい方
- 分岐幹線の選定方法を知りたい方
クイックトピックス
幹線の敷設方法として単独幹線、分岐幹線があります。
分岐幹線の場合、主幹の過電流遮断器と別に分岐幹線側に過電流遮断器が必要となります。
- 分岐した幹線の許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの55%以上の場合(分岐した幹線の長さに制限なし)
- 分岐した幹線の長さが8m以下で、その許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの35%以上の場合
- 分岐した幹線長さが3m以下で、負荷側に幹線を接続しない場合(分岐した幹線の許容電流IWに制限なし)
幹線分岐時における過電流遮断器の省略条件
通常は、幹線から分岐する細い幹線にも過電流遮断器を設置する必要があります。
しかし、次のいずれかの条件を満たす場合に限り、省略が認められます。
条件 |
---|
① 分岐幹線の許容電流IW ≧ 主幹の遮断器IBの55%以上 |
② 分岐幹線の長さが8m以下かつ IW ≧ IBの35%以上 |
③ 分岐幹線が3m以下で、負荷側に幹線を接続しない場合 |
省略適用時のメリット・デメリット
項目 | 内容 |
---|---|
✅ メリット | 分岐幹線に遮断器を設置しなくてよくなるため、コストやスペースの節約につながる |
⚠ デメリット | 遮断器がない代わりに分岐幹線のケーブルサイズを大きくする必要がある場合がある |
🧠 ポイント整理:分岐幹線の遮断器省略条件
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分岐ケーブルの許容電流が充分に大きいかどうか
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幹線からの長さが短いかどうか
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末端に負荷がない配線だけかどうか
これらの条件をしっかり確認して、安全で合理的な配線設計を心がけましょう。
分岐の長さが「3m以下」の場合
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分岐幹線の長さ:3m以下
-
幹線の許容電流:制限なし
🔸分岐側に過電流遮断器を設けない場合
種別 | 機器 | 条件 |
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主幹 | 過電流遮断器 | 幹線全体の負荷電流に対応 |
分岐 | ― | 過電流遮断器を省略(長さ3m以下なら制限なし) |
👉 この条件下では、分岐幹線の許容電流に制限が設けられません。
分岐の長さが「8m以下」の場合
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分岐幹線の長さ:8m以下
-
幹線の許容電流:主幹の過電流遮断器の定格電流 × 0.35以上
🔸分岐側に過電流遮断器を設けない場合
種別 | 機器 | 条件 |
---|---|---|
主幹 | 過電流遮断器 | 幹線全体の負荷電流に対応 |
分岐 | ― | 過電流遮断器を省略 → 幹線ケーブルの許容電流を「主幹の遮断器 × 0.35」以上で設計 |
👉 分岐側に遮断器を設けない場合は、主幹の遮断器に合わせた太いケーブルが必要です。
🔸分岐側に過電流遮断器を設ける場合
種別 | 機器 | 条件 |
---|---|---|
主幹 | 過電流遮断器 | 幹線全体の負荷電流に対応 |
分岐 | 過電流遮断器 | 分岐側の負荷電流に応じたブレーカーサイズを設置 |
👉 遮断器を設置すれば、分岐側の負荷に応じてケーブルを選定できるので、細いケーブルの採用が可能になります。
省略条件|長さに制限がない場合
分岐幹線の長さが8mを超える場合でも、過電流遮断器を省略できるケースがあるんだよ。
そのためには主幹の遮断器定格電流の55%以上の許容電流を持ったケーブルが必要になるんだ。
つまり、どれだけ長くても、細いケーブルだと省略できないってことですね!?
条件 | 内容 |
---|---|
幹線の長さ | 制限なし |
ケーブルの許容電流(IW) | 主幹の過電流遮断器の定格電流(IB)× 0.55 以上 |
過電流遮断器を省略した場合の構成
幹線構成 | 内容 |
---|---|
主幹 | 過電流遮断器(遮断容量IB) |
分岐 | 遮断器なし。代わりにIW ≧ IB × 0.55のケーブルを使用 |
📌 ポイント:遮断器を設けない代わりに、分岐側も太いケーブルが必要になる
分岐に過電流遮断器を設置した場合の構成
幹線構成 | 内容 |
---|---|
主幹 | 過電流遮断器(遮断容量IB) |
分岐 | 過電流遮断器を設置(分岐負荷に応じたサイズ) |
📌 ポイント:分岐負荷に応じて必要最低限のケーブルサイズで設計可能
つまり、遮断器を省略するには「太いケーブルで守る」って発想が大事なんだ。
配線距離に制限はないけど、その分ケーブルが太くなることもあるからコスト面も要チェックだよ。
なるほど!遮断器を省略すればいいって単純な話じゃないんですね。設計って奥が深いです…!
🧠 まとめ|分岐幹線の長さに制限がない場合の省略条件
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分岐幹線に遮断器を設けないなら、ケーブル自体で保護できるように設計する必要がある
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主幹の遮断器定格電流の55%以上の許容電流を持つケーブルを使う
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コスト・スペースを抑える一方で、ケーブルサイズが増すリスクもある
🧮 設計時に考慮すべきポイント|分岐幹線の取り扱い
集合住宅やテナントビルでは、主幹幹線から複数の分岐幹線が派生するケースが一般的です。
このとき「過電流遮断器の省略条件」を設計にうまく組み込むことで、コストやスペースの最適化につながります。
🔍【検討ポイント1】分岐幹線の長さと許容電流
分岐幹線の長さ | 許容電流係数 | 設置条件例 |
---|---|---|
3m以下 | 制限なし(過電流遮断器も不要) | メーターボックス直近に分電盤配置 |
8m以下 | 主幹遮断器の35%以上 | 廊下側配線や上下階を跨ぐ配線 |
制限なし | 主幹遮断器の55%以上 | 離れた住戸、電気室からの引出しなど |
🔧【検討ポイント2】幹線サイズと施工性のバランス
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遮断器を省略できれば、配線盤がシンプルになり、施工スペースやコストを削減できます。
-
一方で、許容電流の制約が増すため、ケーブルサイズが太くなるリスクがあります。
✅設計時のアドバイスまとめ
🔸遮断器を省略できる条件を有効に活用すると、省スペース化・コストダウンに繋がる
🔸分岐長さが3m以内なら制限なし、それ以上は35%・55%ルールが適用
🔸設計時には分岐位置と幹線ルートを図面上で正確に把握・計算しよう
🔸負荷容量だけでなく、「分岐の距離」も電線選定に大きく関わる
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まとめ
分岐した幹線の過電流遮断器を省略する条件
- 分岐した幹線の許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの55%以上の場合(分岐した幹線の長さに制限なし)
- 分岐した幹線の長さが8m以下で、その許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの35%以上の場合
- 分岐した幹線長さが3m以下で、負荷側に幹線を接続しない場合(分岐した幹線の許容電流IWに制限なし)
- 分岐した幹線の長さに制限なしの場合
分岐側に/の | 過電流遮断器を | 設置する場合 | 許容電流の制限なし |
免除する場合 | 幹線の過電流遮断器の定格電流×0.55 |
- 分岐した幹線の長さ8m以下の場合
分岐側に/の | 過電流遮断器を | 設置する場合 | 許容電流の制限なし |
免除する場合 | 幹線の過電流遮断器の定格電流×0.35 |
- 分岐した幹線の長さ3m以下の場合
分岐側に/の | 過電流遮断器を | 設置する場合 | 許容電流の制限なし |
免除する場合 |