技術図書館簡略計算式の係数k(35.6・30.8・17.8)の根拠を、スライド7枚で17.8を基準に2倍・√3倍で整理する考え方と、kを定める3つの条件を図で確認できます。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の 第3回 幹線サイズの選定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
簡略計算式 e=k×L×I÷(1000×A) の記号:Lはこう長、Iは電流、Aは電線の断面積、eは電源側と負荷側の電圧の差、kは配電方式で決まる係数
Lは長さ、Iは電流、Aは電線の太さ。長いほど・電流が大きいほど電圧は下がり、太いほど下がりにくくなります。

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幹線の電圧降下を求める「簡略計算式(直流式)」。式の中に出てくる係数「k」の数値(35.6・30.8・17.8)を、丸暗記でなんとなく使っていないでしょうか。 実はこのk値には明確な根拠があり、求め方を理解すれば暗記に頼らず導けるようになります。本記事では、簡略計算式の係数kの意味と求め方、配電方式ごとの算出方法を分かりやすく解説します。
 

幹線は3つの公式で求められる

 
今回の疑問

簡略計算式の係数ってなに?

計算方法ってどうするの?

⚡ 先に結論だけ言うと
結論:係数kは1/58×100/97=0.0178を基準に、単相3線・三相4線は17.8、三相3線は√3倍の30.8、直流2線・単相2線は2倍の35.6
kは1/58×100/97=0.0178(×1000で17.8)が基準。単相3線・三相4線は17.8、三相3線は√3倍の30.8、直流2線・単相2線は2倍の35.6です。
係数kの比較:単相3線・三相4線17.8を基準に、三相3線30.8(√3倍)、直流2線・単相2線35.6(2倍)
17.8を1とすると、三相3線は1.73倍、直流2線・単相2線は2倍。同じ条件なら単相2線式の電圧降下がいちばん大きくなります。
ペン太ペン太
今日は幹線計算をやるぞ!
ハリタハリタ
簡易計算で行うのかな?
ペン太ペン太
えっと3相3線が・・・なんだったっけ?
ハリタハリタ
係数を忘れちゃったかな?
ペン太ペン太
簡単に覚える方法はないのかい?
ハリタハリタ
計算式の根拠を覚えておけば迷わなくて済むから解説していこう!
幹線全般のまとめはこちらから!
ペン太ペン太
電圧降下の係数35.6とか30.8って、丸暗記するしかない数字なんですか?
ハリタハリタ
暗記は不要です。抵抗率1/58や導電率97%といった条件から導ける、根拠のある値なんですよ。

この記事で押さえる3つのこと

  • 係数kは、単相3線・三相4線が17.8、三相3線が30.8、直流2線・単相2線が35.6
  • kは、抵抗率1/58・導電率97%・銅線の温度20℃の3つの条件から求める
  • 三相3線式は、電線1本分(17.8)の√3倍になる
この記事でわかること
見出しをクリックすると、その章へ移動します。

「簡易計算式」の数値の根拠ってなに?

式の1000の意味:0.0178×L×I÷Aと17.8×L×I÷(1000×A)は同じ値。0.01777を1000倍して17.8にしたぶん、式で1000で割っている
0.0178のままでも、17.8にして1000で割っても答えは同じです。kを覚えやすい数字にするための1000です。

「簡易計算式」にて使用される「k」の値の根拠はご存知でしょうか

ケーブルの電圧降下計算において簡略計算式(直流式)の計算式は下記になります。

(1)簡略計算式(直流式)計算方法

計算式e=k×L×I/(1000×A)

 
kの値
直流2線、1相2線 35.6
3相3線 30.8
1相3線、3相4線 17.8
今回はこの数値にて解説したいと思います。
ペン太ペン太
kの値って配電方式ごとにバラバラの数字を覚えるんですよね?
ハリタハリタ
基準は17.8です。2線式は2倍で35.6、3相3線式は√3倍で30.8と関係で覚えましょう。
たとえるなら
簡略計算式は「電線の通行料」の計算
通行料は、走る距離(L)と通る量(電流I)に比例し、道幅(断面積A)が広いほど安くなります。kは料金表の単価で、配電方式ごとに決まっています。
ここまでのポイント
  • 簡略計算式(直流式)は e=kL×I/(1000×A) で表される
  • kの値は「直流2線・1相2線=35.6」「3相3線=30.8」「1相3線・3相4線=17.8」

「簡易計算式」の「k」の求め方

kの正体:20℃の銅線1m・1mm²の抵抗。抵抗率1/58=0.01724Ωを導電率97%で割って0.01777Ω、1000倍して17.8
20℃の硬銅線1m・1mm²の抵抗が0.01777Ω。これを1000倍した17.8がkの基準です。
「簡易計算式」の「k」を定めるための条件は下記になります。
  1. 抵抗率:1/58(Ω㎟/m)
  2. 導電率:97%
  3. 銅線の温度:20°C
この3点が定数「k」を求めるために必要な条件になります
送電線路の抵抗は、電線の長さ、断面積、抵抗率(電線の単位断面積、単位長当たりの抵抗値で、電線の材質により異なっている)、導電率(抵抗率の逆数で、電線の種類により異なる)などによって決まっています。
導電率は、硬銅線では97〔%〕、硬アルミ線では61〔%〕、耐熱アルミ合金線(送電用)では60〔%〕を標準としている。
導電率の標準値:硬銅線97%、硬アルミ線61%、耐熱アルミ合金線(送電用)60%。標準の軟銅を100%とした割合で、17.8などのkは硬銅線97%の値
17.8などのkは硬銅線(97%)の値です。アルミ線は導電率が違うので、そのまま使えません。
取り違えやすいところ正しくは
kの値は配電方式ごとに丸暗記するしかない抵抗率と導電率から導ける値で、17.8を基準に倍率で整理できる
どの配電方式でも電線1本分で考える直流2線式・1相2線式は電線2本分となるため2倍する
3相3線式は3倍になる単相回路の√3倍ではなく、電線1本分(17.8)の√3倍となるため30.8になる
導電率はどの電線でも同じ硬銅線97%、硬アルミ線61%など、電線の種類により異なる
抵抗率は電線の太さで決まる抵抗率は電線の材質で決まり、太さは断面積Aとして式に入る
たとえるなら
導電率は「水道管の内側のなめらかさ」
同じ太さの管でも、内側がなめらかなほど水は流れやすくなります。硬銅線は標準の軟銅より少しだけ流れにくい(97%)ので、そのぶん抵抗を100/97倍して計算します。
ひっかけ注意
「アルミ線でも17.8を使える」ではありません。
17.8は硬銅線(導電率97%)の値です。硬アルミ線(61%)なら1/58×100/61≒0.0283となり、kは大きくなります。
ここまでのポイント
  • kを定める条件は、抵抗率1/58(Ω㎟/m)、導電率97%、銅線の温度20℃の3点
  • 導電率は硬銅線97%、硬アルミ線61%、耐熱アルミ合金線(送電用)60%が標準

配電方式ごとの算出

配電方式ごとの電線の本数:単相2線(直流2線)は行きと帰りの2本分で×2、単相3線(三相4線)は平衡なら中性線0Aで1本分×1、三相3線は線間で1本分の√3倍
行きと帰りの2本に電流が流れる単相2線は2倍。平衡した単相3線は中性線に電流が流れず1本分。三相3線は線間で1本分の√3倍です。
1相3線式、3相4線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率)
=0.01777
≒0.0178
  1. 1相3線式、3相4線式の場合の電圧降下は電線1本分の値となる
  2. この抵抗率と導電率を掛け合わせた値が、定数「k」となる
この式を「簡易計算式」に当てはめると・・・
e=L×I×1/58(抵抗率)×1/A×100/97(導電率)
≒0.01777×L×I/A
≒17.8×L×I/(1000×A)
直流2線式、1相2線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率)×2(本)
=0.03555
≒0.0356
  1. ※直流2線式、1相2線式の場合の電圧降下は電線2本分の値となる
  2. この抵抗率と導電率を掛け合わせた値が、定数「k」となる
この式を「簡易計算式」に当てはめると・・・
e=L×I×1/58(抵抗率)×1/A×100/97(導電率)×2(本)
≒0.03555×L×I/A
≒35.6×L×I/(1000×A)
3相3線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率)×√3
=0.03078
≒0.0308
  1. 3相3線式の場合の電圧降下は電線1本分の√3倍となる
  2. この抵抗率と導電率を掛け合わせた値が、定数「k」となる
この式を「簡易計算式」に当てはめると・・・
e=L×I×1/58(抵抗率)×1/A×100/97(導電率)×√3
≒0.03078×L×I/A
≒30.8×L×I/(1000×A)
上記計算式より各配線方式の「簡易計算式」が定められています。
ハリタハリタ
この3つの式をみて気づいたことはあるかい?
ペン太ペン太
基準を”17.8”としたときに2倍、√3倍となっている気がするぞ!
ハリタハリタ
そうなんだよ!だから係数としては1つ覚えておき配線方式に応じて値を変えればいいんだよ!
ペン太ペン太
それなら迷わなくて済みそうだな!
配線方式 係数 17.8の
1相3線、3相4線 17.8 ー
3相3線 30.8 √3倍
直流2線、1相2線 35.6 2倍
ハリタハリタ
1相3線だけども覚えておくといつでも計算できるね!
たとえるなら
単相2線は「往復きっぷ」、単相3線は「片道きっぷ」
単相2線は行きと帰りの2本に電流が流れるので、運賃(電圧降下)は往復分の2倍。平衡した単相3線は中性線に電流が流れないので、片道分(1本分)で済みます。
ひっかけ注意
「三相3線式は単相2線式の√3倍」ではありません。
√3倍するのは電線1本分の17.8です。単相2線式の35.6と比べると、三相3線式の30.8は約0.87倍(√3/2倍)です。
ひっかけ注意
「単相3線式は電線3本分」ではありません。
負荷が平衡していれば中性線に電流は流れず、外線と中性線の間の電圧降下は外線1本分です。だからkは17.8になります。
ここまでのポイント
  • 1相3線式・3相4線式は電線1本分で、1/58×100/97≒0.0178(k=17.8)
  • 直流2線式・1相2線式は電線2本分で2倍となり、k=35.6
  • 3相3線式は電線1本分の√3倍となり、k=30.8

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配電方式ごとの係数kの表:単相3線・三相4線は外線1本分で×1の17.8、三相3線は1本分の√3倍で30.8、直流2線・単相2線は2本分で×2の35.6
配電方式ごとの倍率とkを1枚の表にまとめました。

よくある質問(FAQ)

計算例:三相3線、こう長30m、電流50A、断面積22mm²なら e=30.8×30×50÷(1000×22)≒2.1V。単相2線式のk=35.6なら約2.4V
三相3線・30m・50A・22mm²の例です。単相2線式のk(35.6)で計算すると約2.4Vになり、答えが変わります。

Q. k値はいくつですか?

A. 直流2線式・単相2線式は35.6、三相3線式は30.8、単相3線式・三相4線式は17.8です。

Q. kはどうやって求めますか?

A. 抵抗率1/58(Ω・mm²/m)、導電率97%(100/97)、銅線温度20℃を条件に算出します。1/58×100/97=約0.0178(×1000で17.8)が基準で、2線式は×2、三相3線式は×√3した値になります。

Q. 導電率の標準値は?

A. 硬銅線97%、硬アルミ線61%、耐熱アルミ合金線(送電用)60%が標準です。抵抗率は導電率の逆数で、電線の材質により異なります。

ペン太ペン太
根拠が分かったら、次は何をすればいいですか?
ハリタハリタ
配電方式ごとの算出を自分で追ってみることです。導出できれば現場でも迷いませんよ。

まとめ

kが使える前提:硬銅線(導電率97%)であること、銅線の温度20℃で求めた値であること、リアクタンスを入れない直流式(簡略式)であること
k=17.8・30.8・35.6は、硬銅線・20℃・直流式(簡略式)の3つの前提で決めた数字です。

係数kは抵抗率1/58と導電率97%から求めた17.8が基準で、電線2本分なら2倍の35.6、3相3線式なら√3倍の30.8になります。

記号意味単位
e電圧降下V
k配電方式で決まる係数ー
Lこう長(電線の長さ)m
I電流A
A電線の断面積㎟

kを導くときの前提

  • 抵抗率:1/58(Ω㎟/m)
  • 導電率:97%
  • 銅線の温度:20℃

以下に、係数の条件と配電方式ごとの算出をあらためて整理します。

簡略計算式(直流式)の係数について
  • 簡略計算式(直流式)
計算式 e=k×L×I/(1000×A)
  • 条件
  1. 抵抗率:1/58(Ω㎟/m)
  2. 導電率:97%
  3. 銅線の温度:20°C
  • 1相3線式、3相4線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率) =0.01777 ≒0.0178
  • 直流2線式、1相2線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率)×2(本) =0.03555 ≒0.0356
  • 3相3線式の場合
1/58(抵抗率)×100/97(導電率)×√3 =0.03078 ≒0.0308
配線方式 係数 17.8の
1相3線、3相4線 17.8 ー
3相3線 30.8 √3倍
直流2線、1相2線 35.6 2倍
   

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。