この記事は、連載幹線設備の設計マニュアル」第2回 負荷容量の集計 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

マンションの幹線計算で、「全戸の容量を足したら、とんでもなく太いケーブルになった」ことはありませんか。集合住宅では、全部の住戸が同時に最大の電力を使うことはありません。そこで戸数に応じた総合需要率を掛けて、幹線の容量を現実的な大きさにします。ここでは、1戸の容量の決め方から、需要率の表の読み方、電流・遮断器・CVTまでの計算、系統ごと・引込ごとにどの戸数で読むか、表が使えない場合まで、順に確かめます。

ブラウザでそのまま使える登録不要ツール

この記事の考え方で集合住宅の幹線計算をするなら、姉妹サイト「セコサポ」のマンション幹線計算ツール(需要率の可視化・区間別計算書・登録不要)が便利です。

結論 ― 集合住宅の幹線はこう計算する
1戸の容量40VA/㎡×床面積
+1,000VA
×
戸数その選定点に
つながる戸数
×
総合需要率戸数から
表で読む
= 想定最大負荷 → ÷200V(単相3線式)で電流

総合需要率の目安(1戸4kVAの表)

1〜5戸100%
10戸70%
20戸54%
40戸46%
例:10戸 → 4kVA×10×70%=28kVA → 140A → 遮断器150A・CVT38mm²が目安

取り違えやすい4つ

  1. 需要率は選定点ごとに読む。各系統はその系統の戸数、引込開閉器の1次側は全戸数
  2. 系統ごとの値を足さない。41戸の例では113.5kVAが75.4kVAに収まる
  3. 表は40戸まで。41戸以上は40戸の46%を使えば安全側
  4. 1戸4kVA超・オール電化・共用部は表の外。別に計算・加算し、最後は許容電流電圧降下で太さを確かめる
1戸の容量を決め、戸数で需要率を読み、電流・遮断器・ケーブルへ進みます。

なぜ需要率を掛けてよいか ― 全戸が同時に最大は使わない

1戸ごとの容量をそのまま足すと、全部の住戸が同じ瞬間に最大の電力を使う前提になります。実際には、留守の家もあれば、エアコンだけの家もあります。戸数が増えるほど、ピークは重ならなくなります。この「同時に使う割合」を戸数ごとにまとめたのが、集合住宅の総合需要率です。

10戸なら、同時に使うのは7割ほど。戸数が増えるほど需要率は下がります。

一般の建物では、需要率は用途や使い方で変わるため、計画段階で根拠を出すのが難しい値です。その点、集合住宅は内線規程の資料に戸数ごとの値が示されているので、計画段階から根拠をもって使えます。

ペン太ペン太
集合住宅の幹線って、全戸の容量を単純に足し算して決めるんですか?
ハリタハリタ
それだと過大になります。戸数に応じた総合需要率を掛けて、想定最大負荷を出すんです。
ここまでのポイント
  • 全戸の単純合計は、全戸が同時に最大を使う前提
  • 戸数が増えるほどピークは重ならない
  • その割合を戸数ごとにまとめたのが総合需要率
  • 集合住宅は内線規程の資料に値があり、根拠をもって使える

1戸の容量 ― 40VA/㎡×床面積+1,000VA

需要率を掛ける前に、1戸あたりの容量を決めます。内線規程の資料では、P=40VA/㎡×床面積+1,000VAで想定し、原則として3kVA以上とします。機器の容量を積み上げて決めてもかまいませんが、この式の値を下回らないようにします。

75㎡でちょうど4kVA。需要率の表の想定最大負荷は、この4kVAで計算されています。

需要率の表に並んでいる「想定最大負荷」「電流」「遮断器」「CVT」は、1戸4kVAで計算した値です。75㎡を超える広い住戸では1戸の容量が4kVAを超えるので、需要率だけを表から読み、容量は自分で計算し直します(8章)。

ここまでのポイント
  • 1戸の容量は40VA/㎡×床面積+1,000VA
  • 原則として3kVA以上
  • 機器の積み上げでもよいが、式の値を下回らない
  • 表の想定最大負荷は1戸4kVA(75㎡相当)で計算した値


総合需要率の表 ― 戸数が増えるほど下がる

総合需要率は、その幹線の先につながる戸数で読みます。1〜5戸は100%で、6戸から下がり始め、10戸で70%、20戸で54%、40戸で46%です。20戸を過ぎると下がり方はゆるやかになります。

1〜5戸は100%。10戸で70%、20戸で54%、40戸で46%です。
戸数 総合需要率 戸数 総合需要率
5戸まで 100% 20戸 54%
6戸 91% 25戸 51%
8戸 78% 30戸 49%
10戸 70% 35戸 47%
15戸 59% 40戸 46%
集合住宅(オール電化を除く)の幹線の総合需要率。内線規程の資料による。全戸数の値は5章の早見表にあります。
ここまでのポイント
  • 需要率はその幹線につながる戸数で読む
  • 1〜5戸は100%、6戸から下がる
  • 10戸70%・20戸54%・40戸46%
  • 20戸を過ぎると下がり方はゆるやか

計算の流れ ― 想定最大負荷から電流へ

計算は3行です。想定最大負荷=1戸の容量×戸数×総合需要率電流=想定最大負荷÷200V(単相3線式)、そして電流以上の直近上位で遮断器を選び、遮断器の定格以上の許容電流があるケーブルを選びます。

10戸なら28kVA・140A。遮断器は150A、CVTは38mm²が目安です。
需要率を掛けると、40kVAが28kVAに。遮断器は200Aから150Aに下がります。

単相3線式で「÷200V」としてよいのは、住戸を2つの電圧線に振り分けて、負荷がほぼ平衡していると見るからです。片寄りが大きいときは、多いほうの線の電流で確かめます。

ペン太ペン太
需要率を小さめに取れば、ケーブルが細くなってコストが下がりますよね?
ハリタハリタ
表の値より小さく取る根拠はありません。細くしすぎると、竣工後に容量不足で困ります。表の値で計算しましょう。
ここまでのポイント
  • 想定最大負荷=1戸の容量×戸数×総合需要率
  • 電流=想定最大負荷÷200V(単相3線式)
  • 遮断器は電流以上の直近上位、ケーブルは遮断器の定格以上
  • 需要率を表より小さく取る根拠はない


早見表 ― 戸数から遮断器とCVTの目安まで

内線規程の資料には、1戸4kVAのときの想定最大負荷・電流・遮断器の定格電流・CVTの最小サイズが戸数ごとに並んでいます。1〜40戸をまとめました。

遮断器とCVTは表の目安。こう長が長ければ電圧降下で太くします。

CVTの欄は最小サイズです。縦幹線が長い高層の建物では、電圧降下で1〜2サイズ上がることがよくあります。表は「これより細くしない」ための目安として使います。

ここまでのポイント
  • 1戸4kVAなら、戸数から遮断器とCVTの目安まで読める
  • 10戸:150A・38mm²、20戸:225A・100mm²、40戸:400A・200mm²
  • CVTの欄は最小サイズ
  • こう長が長ければ電圧降下で太くする

系統ごとに戸数で読む ― 選定点が変われば需要率も変わる

幹線は、建物の中でいくつかの系統に分かれます。需要率は建物に1つではなく、ケーブルの太さを決める点(選定点)ごとに、その先につながる戸数で読みます。4系統・合計41戸の例で見てみます。

6階建て・41戸のマンション。縦幹線は系統ごとの戸数、引込開閉器盤の1次側は全41戸で読みます。
各系統は10戸・11戸で読み、引込開閉器の1次側は41戸で読みます。
系統の幹線は系統の戸数、引込は全部の戸数で読みます。

1つの系統が途中で分岐するなら、分岐のたびに戸数が変わり、需要率も読み直します。縦幹線を各階で分岐する場合は、区間ごとに下流の戸数で読み、区間ごとに太さを決めることもできます。

ここまでのポイント
  • 需要率は選定点ごとに、その先の戸数で読む
  • 例:LA・LC・LDは10戸で70%、LBは11戸で67%
  • 分岐のたびに戸数が変わるので読み直す
  • 縦幹線は区間ごとに下流の戸数で読める

引込は全戸数で読み直す ― 足し算しない

4つの系統は、最後に引込開閉器盤で1つにまとまります。その1次側の幹線は、各系統の想定最大負荷を足すのではなく、全41戸で需要率を読み直して計算します。

系統ごとの最大を足すと113.5kVA。全戸数で読み直すと75.4kVAに収まります。

ここで注意したいのが、41戸は表の範囲外だということです。表は40戸までで、40戸の値は46%です。戸数が増えるほど需要率は下がるので、41戸以上でも40戸の46%を使えば安全側になります(35〜39戸の47%を使う必要はありません)。引込の方式や容量は、電力会社との協議で決まる部分もあるので、早めに確認しておきます。

ペン太ペン太
系統ごとに出した容量を足せば、引込の容量になりますよね?
ハリタハリタ
足すと過大になります。集まった所では、全戸数で需要率を読み直すんです。41戸なら40戸の46%を使えば安全側です。
ここまでのポイント
  • 引込開閉器の1次側は全戸数で需要率を読む
  • 系統ごとの想定最大負荷を足してはいけない
  • 41戸の例:113.5kVA → 75.4kVA(約3分の2)
  • 表は40戸まで。41戸以上は46%で安全側


表の外にあるもの ― 40戸超・4kVA超・オール電化・共用部

この表は、1戸4kVA・1〜40戸・オール電化を除く・住戸の分だけの値です。これに当てはまらない4つは、別に考えます。

特に共用部の加算を忘れやすい。引込の容量は「住戸×需要率+共用部」で見ます。

1戸が4kVAを超える場合は、たとえば1戸5kVA・20戸なら5×20×0.54=54kVA、電流は270Aです。表の「43.2kVA・225A」は使えません。オール電化の住戸は、電気温水器やIHの負荷が重なるため、この表とは別の考え方で検討します。エレベーター・給排水ポンプ・共用灯などの共用部は、住戸の需要率とは別に加算します。

ここまでのポイント
  • 40戸超:40戸の46%を使えば安全側。引込は電力会社と協議
  • 1戸4kVA超:需要率だけ表から読み、容量は計算し直す
  • オール電化:この表は使えない
  • 共用部:住戸とは別に加算する

最後の確認 ― 許容電流と電圧降下で太さを決める

需要率で決まるのは「流れる電流の出発点」です。ケーブルの太さは、そこから許容電流(布設方法・条数による低減も含めて)と電圧降下の両方で決めます。高層の縦幹線は、電圧降下で太さが決まることが多くなります。

需要率は電流の出発点を小さくするもの。太さは許容電流と電圧降下の両方で決めます。

電圧降下の考え方は電圧降下の許容範囲と幹線サイズ、許容電流によるサイズ選定は幹線設備の設計マニュアル③ 幹線サイズの選定で扱っています。計算そのものはマンション幹線計算ツールの使い方の手順で、ブラウザでもできます。

ここまでのポイント
  • 需要率で決まるのは電流の出発点
  • 太さは許容電流と電圧降下の両方で決める
  • 高層の縦幹線は電圧降下で決まることが多い
  • 保護(遮断器とケーブルの組み合わせ)と共用部の加算も確認


よくある質問

集合住宅の需要率はどこに書いてありますか?

内線規程の資料に、集合住宅(オール電化を除く)の幹線の総合需要率が戸数ごとに示されています。1〜5戸は100%、10戸で70%、20戸で54%、40戸で46%です。

1戸の容量は何kVAで計算しますか?

40VA/㎡×床面積+1,000VAで想定し、原則として3kVA以上とします。需要率の表の想定最大負荷は1戸4kVA(75㎡相当)で計算されています。

想定最大負荷はどう求めますか?

想定最大負荷[kVA]=1戸の容量[kVA]×戸数×総合需要率です。1戸4kVA・10戸なら4×10×0.70=28kVAです。

電流はどう求めますか?

単相3線式では、想定最大負荷[VA]÷200[V]です。28kVAなら140Aです。

10戸の幹線の遮断器とCVTは?

1戸4kVAなら、140Aに対して遮断器150A、CVTの最小サイズ38mm²が目安です。こう長が長ければ電圧降下で太くします。

需要率は建物に1つですか?

いいえ。ケーブルの太さを決める点ごとに、その先につながる戸数で読みます。系統の幹線と引込の幹線では戸数が違うので、需要率も違います。

引込開閉器の1次側はどう計算しますか?

全戸数で需要率を読み直して計算します。系統ごとの想定最大負荷を足すと過大になります。41戸の例では、足すと113.5kVA、全戸数で読み直すと75.4kVAです。

41戸以上のときの需要率は?

表は40戸までです。戸数が増えるほど需要率は下がるので、40戸の46%を使えば安全側です。引込の方式や容量は電力会社とも協議します。

1戸が5kVAのときは?

需要率だけを表から読み、容量は計算し直します。20戸なら5×20×0.54=54kVA、電流は270Aです。表の想定最大負荷・電流・遮断器・CVTの欄は使えません。

オール電化のマンションにもこの表を使えますか?

使えません。電気温水器やIHの負荷が重なるため、この表とは別の需要率・重畳率で検討します。

共用部の負荷はどう扱いますか?

エレベーター・給排水ポンプ・共用灯などは、住戸の需要率とは別に加算します。引込の容量は「住戸×需要率+共用部」で見ます。

需要率を表より小さく取ってもよいですか?

根拠がなければ取らないほうが安全です。細くしすぎると竣工後に容量不足になり、やり直しは大がかりになります。

CVTの欄は「このサイズでよい」という意味ですか?

最小サイズの目安です。許容電流(布設方法・条数による低減を含む)と電圧降下で確かめ、必要なら太くします。

縦幹線を各階で分岐するときは?

区間ごとに、その区間より下流の戸数で需要率を読みます。区間ごとに太さを決めると、上の階ほど細くできます。

需要率と不等率の違いは?

需要率は1つのグループの中で「同時に使う割合」、不等率はグループ同士のピークのずれです。集合住宅の総合需要率は、戸数による重なりをまとめて表した値です。

計算を早く済ませる方法は?

セコサポのマンション幹線計算ツール(登録不要)で、戸数と容量から需要率を見込んだ幹線容量を出し、区間別の計算書まで作れます。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
全戸の容量を単純に足す 戸数に応じた総合需要率を掛ける
需要率は建物に1つ 選定点ごとに、その先の戸数で読む
引込は系統ごとの値を足す 集まった所で全戸数から読み直す
41戸は47% 表は40戸まで。40戸の46%を使えば安全側
どの住戸も4kVAで計算 40VA/㎡×床面積+1,000VA。4kVA超は計算し直す
オール電化も同じ表 この表は使えない。別に検討する
共用部も需要率に含まれる 共用部は別に加算する
表のCVTサイズで決まり 最小の目安。許容電流と電圧降下で確かめる
「1戸の容量・選定点の戸数・表の範囲」の3つを押さえれば、需要率を取り違えません。
手順 やること 見るところ
1|1戸の容量 40VA/㎡×床面積+1,000VA 住戸の床面積
2|戸数 選定点の先につながる住戸を数える 幹線系統図
3|需要率 戸数から表で読む 総合需要率の表
4|想定最大負荷 1戸の容量×戸数×需要率 計算書
5|電流と機器 ÷200V。遮断器とCVTを選ぶ 早見表
6|確認 許容電流・電圧降下・共用部 こう長・布設方法
この6手順で、集合住宅の幹線を根拠つきで決められます。

📘 あわせて確認したいこと

需要率と不等率の考え方は幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計、マンション全体の幹線の組み立てはマンションの電気設計② 幹線の計画で扱っています。需要率の算出表はnote(外部サイト)からダウンロードできます。

引込・受電の計画のなかで読む
この内容は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第2回 契約電力の想定 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。