幹線設備の設計|集合住宅の幹線需要率と幹線計算方法について詳しく解説
マンションの幹線計算で、「全戸の容量を足したら、とんでもなく太いケーブルになった」ことはありませんか。集合住宅では、全部の住戸が同時に最大の電力を使うことはありません。そこで戸数に応じた総合需要率を掛けて、幹線の容量を現実的な大きさにします。ここでは、1戸の容量の決め方から、需要率の表の読み方、電流・遮断器・CVTまでの計算、系統ごと・引込ごとにどの戸数で読むか、表が使えない場合まで、順に確かめます。
ブラウザでそのまま使える登録不要ツール
この記事の考え方で集合住宅の幹線計算をするなら、姉妹サイト「セコサポ」のマンション幹線計算ツール(需要率の可視化・区間別計算書・登録不要)が便利です。
総合需要率の目安(1戸4kVAの表)
取り違えやすい4つ
- なぜ需要率を掛けてよいの?
- 1戸の容量はどう決める?
- 需要率の表はどう読む?
- 計算の流れは?
- 遮断器とCVTの目安は?
- 系統ごとにどの戸数で読む?
- 引込はどう計算する?
- 表が使えないのはどんなとき?
- 最後に何を確かめる?
なぜ需要率を掛けてよいか ― 全戸が同時に最大は使わない
1戸ごとの容量をそのまま足すと、全部の住戸が同じ瞬間に最大の電力を使う前提になります。実際には、留守の家もあれば、エアコンだけの家もあります。戸数が増えるほど、ピークは重ならなくなります。この「同時に使う割合」を戸数ごとにまとめたのが、集合住宅の総合需要率です。
一般の建物では、需要率は用途や使い方で変わるため、計画段階で根拠を出すのが難しい値です。その点、集合住宅は内線規程の資料に戸数ごとの値が示されているので、計画段階から根拠をもって使えます。
ペン太
ハリタ- 全戸の単純合計は、全戸が同時に最大を使う前提
- 戸数が増えるほどピークは重ならない
- その割合を戸数ごとにまとめたのが総合需要率
- 集合住宅は内線規程の資料に値があり、根拠をもって使える
1戸の容量 ― 40VA/㎡×床面積+1,000VA
需要率を掛ける前に、1戸あたりの容量を決めます。内線規程の資料では、P=40VA/㎡×床面積+1,000VAで想定し、原則として3kVA以上とします。機器の容量を積み上げて決めてもかまいませんが、この式の値を下回らないようにします。
需要率の表に並んでいる「想定最大負荷」「電流」「遮断器」「CVT」は、1戸4kVAで計算した値です。75㎡を超える広い住戸では1戸の容量が4kVAを超えるので、需要率だけを表から読み、容量は自分で計算し直します(8章)。
- 1戸の容量は40VA/㎡×床面積+1,000VA
- 原則として3kVA以上
- 機器の積み上げでもよいが、式の値を下回らない
- 表の想定最大負荷は1戸4kVA(75㎡相当)で計算した値
総合需要率の表 ― 戸数が増えるほど下がる
総合需要率は、その幹線の先につながる戸数で読みます。1〜5戸は100%で、6戸から下がり始め、10戸で70%、20戸で54%、40戸で46%です。20戸を過ぎると下がり方はゆるやかになります。
| 戸数 | 総合需要率 | 戸数 | 総合需要率 |
|---|---|---|---|
| 5戸まで | 100% | 20戸 | 54% |
| 6戸 | 91% | 25戸 | 51% |
| 8戸 | 78% | 30戸 | 49% |
| 10戸 | 70% | 35戸 | 47% |
| 15戸 | 59% | 40戸 | 46% |
- 需要率はその幹線につながる戸数で読む
- 1〜5戸は100%、6戸から下がる
- 10戸70%・20戸54%・40戸46%
- 20戸を過ぎると下がり方はゆるやか
計算の流れ ― 想定最大負荷から電流へ
計算は3行です。想定最大負荷=1戸の容量×戸数×総合需要率、電流=想定最大負荷÷200V(単相3線式)、そして電流以上の直近上位で遮断器を選び、遮断器の定格以上の許容電流があるケーブルを選びます。
単相3線式で「÷200V」としてよいのは、住戸を2つの電圧線に振り分けて、負荷がほぼ平衡していると見るからです。片寄りが大きいときは、多いほうの線の電流で確かめます。
ペン太
ハリタ- 想定最大負荷=1戸の容量×戸数×総合需要率
- 電流=想定最大負荷÷200V(単相3線式)
- 遮断器は電流以上の直近上位、ケーブルは遮断器の定格以上
- 需要率を表より小さく取る根拠はない
早見表 ― 戸数から遮断器とCVTの目安まで
内線規程の資料には、1戸4kVAのときの想定最大負荷・電流・遮断器の定格電流・CVTの最小サイズが戸数ごとに並んでいます。1〜40戸をまとめました。
CVTの欄は最小サイズです。縦幹線が長い高層の建物では、電圧降下で1〜2サイズ上がることがよくあります。表は「これより細くしない」ための目安として使います。
- 1戸4kVAなら、戸数から遮断器とCVTの目安まで読める
- 10戸:150A・38mm²、20戸:225A・100mm²、40戸:400A・200mm²
- CVTの欄は最小サイズ
- こう長が長ければ電圧降下で太くする
系統ごとに戸数で読む ― 選定点が変われば需要率も変わる
幹線は、建物の中でいくつかの系統に分かれます。需要率は建物に1つではなく、ケーブルの太さを決める点(選定点)ごとに、その先につながる戸数で読みます。4系統・合計41戸の例で見てみます。
1つの系統が途中で分岐するなら、分岐のたびに戸数が変わり、需要率も読み直します。縦幹線を各階で分岐する場合は、区間ごとに下流の戸数で読み、区間ごとに太さを決めることもできます。
- 需要率は選定点ごとに、その先の戸数で読む
- 例:LA・LC・LDは10戸で70%、LBは11戸で67%
- 分岐のたびに戸数が変わるので読み直す
- 縦幹線は区間ごとに下流の戸数で読める
引込は全戸数で読み直す ― 足し算しない
4つの系統は、最後に引込開閉器盤で1つにまとまります。その1次側の幹線は、各系統の想定最大負荷を足すのではなく、全41戸で需要率を読み直して計算します。
ここで注意したいのが、41戸は表の範囲外だということです。表は40戸までで、40戸の値は46%です。戸数が増えるほど需要率は下がるので、41戸以上でも40戸の46%を使えば安全側になります(35〜39戸の47%を使う必要はありません)。引込の方式や容量は、電力会社との協議で決まる部分もあるので、早めに確認しておきます。
ペン太
ハリタ- 引込開閉器の1次側は全戸数で需要率を読む
- 系統ごとの想定最大負荷を足してはいけない
- 41戸の例:113.5kVA → 75.4kVA(約3分の2)
- 表は40戸まで。41戸以上は46%で安全側
表の外にあるもの ― 40戸超・4kVA超・オール電化・共用部
この表は、1戸4kVA・1〜40戸・オール電化を除く・住戸の分だけの値です。これに当てはまらない4つは、別に考えます。
1戸が4kVAを超える場合は、たとえば1戸5kVA・20戸なら5×20×0.54=54kVA、電流は270Aです。表の「43.2kVA・225A」は使えません。オール電化の住戸は、電気温水器やIHの負荷が重なるため、この表とは別の考え方で検討します。エレベーター・給排水ポンプ・共用灯などの共用部は、住戸の需要率とは別に加算します。
- 40戸超:40戸の46%を使えば安全側。引込は電力会社と協議
- 1戸4kVA超:需要率だけ表から読み、容量は計算し直す
- オール電化:この表は使えない
- 共用部:住戸とは別に加算する
最後の確認 ― 許容電流と電圧降下で太さを決める
需要率で決まるのは「流れる電流の出発点」です。ケーブルの太さは、そこから許容電流(布設方法・条数による低減も含めて)と電圧降下の両方で決めます。高層の縦幹線は、電圧降下で太さが決まることが多くなります。
電圧降下の考え方は電圧降下の許容範囲と幹線サイズ、許容電流によるサイズ選定は幹線設備の設計マニュアル③ 幹線サイズの選定で扱っています。計算そのものはマンション幹線計算ツールの使い方の手順で、ブラウザでもできます。
- 需要率で決まるのは電流の出発点
- 太さは許容電流と電圧降下の両方で決める
- 高層の縦幹線は電圧降下で決まることが多い
- 保護(遮断器とケーブルの組み合わせ)と共用部の加算も確認
よくある質問
集合住宅の需要率はどこに書いてありますか?
内線規程の資料に、集合住宅(オール電化を除く)の幹線の総合需要率が戸数ごとに示されています。1〜5戸は100%、10戸で70%、20戸で54%、40戸で46%です。
1戸の容量は何kVAで計算しますか?
40VA/㎡×床面積+1,000VAで想定し、原則として3kVA以上とします。需要率の表の想定最大負荷は1戸4kVA(75㎡相当)で計算されています。
想定最大負荷はどう求めますか?
想定最大負荷[kVA]=1戸の容量[kVA]×戸数×総合需要率です。1戸4kVA・10戸なら4×10×0.70=28kVAです。
電流はどう求めますか?
単相3線式では、想定最大負荷[VA]÷200[V]です。28kVAなら140Aです。
10戸の幹線の遮断器とCVTは?
1戸4kVAなら、140Aに対して遮断器150A、CVTの最小サイズ38mm²が目安です。こう長が長ければ電圧降下で太くします。
需要率は建物に1つですか?
いいえ。ケーブルの太さを決める点ごとに、その先につながる戸数で読みます。系統の幹線と引込の幹線では戸数が違うので、需要率も違います。
引込開閉器の1次側はどう計算しますか?
全戸数で需要率を読み直して計算します。系統ごとの想定最大負荷を足すと過大になります。41戸の例では、足すと113.5kVA、全戸数で読み直すと75.4kVAです。
41戸以上のときの需要率は?
表は40戸までです。戸数が増えるほど需要率は下がるので、40戸の46%を使えば安全側です。引込の方式や容量は電力会社とも協議します。
1戸が5kVAのときは?
需要率だけを表から読み、容量は計算し直します。20戸なら5×20×0.54=54kVA、電流は270Aです。表の想定最大負荷・電流・遮断器・CVTの欄は使えません。
オール電化のマンションにもこの表を使えますか?
使えません。電気温水器やIHの負荷が重なるため、この表とは別の需要率・重畳率で検討します。
共用部の負荷はどう扱いますか?
エレベーター・給排水ポンプ・共用灯などは、住戸の需要率とは別に加算します。引込の容量は「住戸×需要率+共用部」で見ます。
需要率を表より小さく取ってもよいですか?
根拠がなければ取らないほうが安全です。細くしすぎると竣工後に容量不足になり、やり直しは大がかりになります。
CVTの欄は「このサイズでよい」という意味ですか?
最小サイズの目安です。許容電流(布設方法・条数による低減を含む)と電圧降下で確かめ、必要なら太くします。
縦幹線を各階で分岐するときは?
区間ごとに、その区間より下流の戸数で需要率を読みます。区間ごとに太さを決めると、上の階ほど細くできます。
需要率と不等率の違いは?
需要率は1つのグループの中で「同時に使う割合」、不等率はグループ同士のピークのずれです。集合住宅の総合需要率は、戸数による重なりをまとめて表した値です。
計算を早く済ませる方法は?
セコサポのマンション幹線計算ツール(登録不要)で、戸数と容量から需要率を見込んだ幹線容量を出し、区間別の計算書まで作れます。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 全戸の容量を単純に足す | 戸数に応じた総合需要率を掛ける |
| 需要率は建物に1つ | 選定点ごとに、その先の戸数で読む |
| 引込は系統ごとの値を足す | 集まった所で全戸数から読み直す |
| 41戸は47% | 表は40戸まで。40戸の46%を使えば安全側 |
| どの住戸も4kVAで計算 | 40VA/㎡×床面積+1,000VA。4kVA超は計算し直す |
| オール電化も同じ表 | この表は使えない。別に検討する |
| 共用部も需要率に含まれる | 共用部は別に加算する |
| 表のCVTサイズで決まり | 最小の目安。許容電流と電圧降下で確かめる |
| 手順 | やること | 見るところ |
|---|---|---|
| 1|1戸の容量 | 40VA/㎡×床面積+1,000VA | 住戸の床面積 |
| 2|戸数 | 選定点の先につながる住戸を数える | 幹線系統図 |
| 3|需要率 | 戸数から表で読む | 総合需要率の表 |
| 4|想定最大負荷 | 1戸の容量×戸数×需要率 | 計算書 |
| 5|電流と機器 | ÷200V。遮断器とCVTを選ぶ | 早見表 |
| 6|確認 | 許容電流・電圧降下・共用部 | こう長・布設方法 |
📘 あわせて確認したいこと
需要率と不等率の考え方は幹線設備の設計マニュアル② 負荷容量の集計、マンション全体の幹線の組み立てはマンションの電気設計② 幹線の計画で扱っています。需要率の算出表はnote(外部サイト)からダウンロードできます。
あわせて読みたい
30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?
タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。
ご回答ありがとうございます!
よければ、あと3つだけ教えてください(任意・答えなくてもOK)
ありがとうございました。いただいた声は記事の改善に使わせていただきます。
この記事に関連する無料ツール
- マンション幹線計算ツール(セコサポ・ブラウザで無料)
- 変圧器容量・需要率 計算ツール(セコサポ・ブラウザで無料)


