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電圧降下計算ツール(内線規程の簡易式・必要サイズの逆算)

負荷電流・こう長・電線サイズから電圧降下率と末端電圧を計算。許容値に収まる電線サイズの逆算もできます。

セコサポ(電気設計・工事ツール集)で開きます。登録不要で、入力した値はお使いのブラウザに保存されます。

この記事は、連載幹線設備の設計マニュアル」第4回 電圧降下の検証 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

電圧は、変圧器を出たあと電線を通るたびに少しずつ下がっていきます。まるでゆるい下り坂です。では、どこまで下がってよいのか。答えは内線規程1310節にあり、基本は幹線2%・分岐回路2%。ただし、構内の変圧器から送るなら幹線は3%、こう長が60mを超えると合計で4〜7%に広がります。この記事では、その「許容範囲」の読み方を、たとえと動く図でひとつずつ確かめ、計算例と、範囲に入らないときの手まで押さえます。

変圧器を出た電圧は、幹線で下がり、分岐回路でまた下がって負荷に届きます。60m以下なら、それぞれ2%までが基本です。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
この記事で読めるようになる用語:電圧降下幹線分岐回路こう長

電圧降下とは ― 電線の中の「下り坂」

たとえるなら
ホースで水をまくとき、蛇口のそばは勢いがあっても、長いホースの先では水の勢いが落ちます。
電線も同じで、抵抗があるぶん、電気が流れるほど・遠くへ行くほど電圧が下がります。これが電圧降下です。

100Vの機器に2%の電圧降下なら、届くのは98V。わずかに見えますが、下がる量が大きくなると、機器の側ではっきり困りごとが出ます。

電圧が落ちるとどうなる?

届く電圧が下がると、照明は暗くなりちらつき、電動機は力不足で起動しにくくなり、ヒーターは温まるのが遅くなり、電子機器は止まったり再起動したりします。
機器 起きること なぜ
照明 暗くなる・ちらつく。器具によっては消える 光の出力が電圧で変わる。LEDは電源の動ける範囲を外れると不安定になる
電動機 力不足・起動しにくい・熱をもつ トルクは電圧のおよそ2乗。同じ仕事をしようとして電流が増える
ヒーター 温まるのが遅い 出力は電圧の2乗に比例する
電子機器・制御 止まる・再起動する。大きく下がると電磁接触器が外れ設備が止まる 電源回路や接触器が動ける電圧を下回る
電圧の下がり方と機器の種類で、影響の出方は変わります。
電動機のトルクやヒーターの出力は電圧のおよそ2乗で効くので、電圧が1割下がると力は約81%、2割近く落ちます。

もう一つ知っておきたいのが、建物に届く前から電圧には幅があることです。電力会社が供給点で保つ電圧は、標準電圧100Vなら101±6V(95〜107V)、200Vなら202±20V(182〜222V)と決められています(電気事業法施行規則 第38条)。引込の時点で下限に近いこともあるので、建物の中の電圧降下が大きいと、機器が動ける範囲を下回りやすくなります。だから内線規程で「ここまでなら下がってよい」という許容範囲が決められています。

ここまでのポイント
  • 電線の抵抗で、遠くほど・電流が多いほど電圧が下がる
  • 100Vで2%なら、届くのは98V
  • 照明は暗く、電動機は力不足、ヒーターは遅く、電子機器は止まる
  • 電動機やヒーターは電圧の2乗で効く(1割下がると約81%)
  • 供給点の電圧にも幅がある(100Vなら95〜107V)


許容範囲 ― 60mを境に「財布」の数が変わる

たとえるなら
電圧降下の許容範囲は、使ってよい「予算」です。
こう長60m以下なら、幹線と分岐回路は別々の財布でそれぞれ2%。60mを超えると財布は1つになり、合計の予算を幹線と分岐回路に好きに分けられます。
60m以下は幹線2%(構内の変圧器なら3%)と分岐回路2%を別々に守る。60m超は合計の中で、幹線4%・分岐1%のように自由に振り分けられます。
こう長 幹線 分岐回路
60m以下 2%以下(構内の変圧器なら3%以下) 2%以下
内線規程1310-1をもとに作成。

60mを超えると、幹線と分岐回路の合計で、次の値以下にします。こう長と、電気の受け方で値が変わります。

60m超の合計は、構内の変圧器から供給するなら120m以下5%・200m以下6%・200m超7%。電力会社から低圧で受電するなら4%・5%・6%です。
こう長 構内の変圧器から 低圧で受電
120m以下 5%以下 4%以下
200m以下 6%以下 5%以下
200m超 7%以下 6%以下
内線規程1310-1をもとに作成。幹線と分岐回路の合計の値です。
ひっかけ注意
「60mを超えたら合計で2%」ではありません。
60m超は、合計の枠が4〜7%に広がる決まりです。たとえば構内の変圧器から150mなら合計6%。幹線4%・分岐回路2%でも、幹線5%・分岐回路1%でもかまいません。分岐回路側に余裕がある建物なら、その分を幹線に回して幹線を細くできます。

実務の考え方 ― 分岐回路は基本2%、見通しが立てば幹線を優先

60m超の配分は自由ですが、実務では分岐回路は基本2%で考え、残りを幹線に配分するのが出発点です。負荷や分岐の長さが読みきれない段階でも、分岐側に2%を確保しておけば、あとで増設や負荷の変更があっても困りません。

構内の変圧器から200m以下なら合計6%。基本は分岐回路2%・幹線4%。負荷の見通しが立つ建物なら、分岐の見込みを減らして幹線へ振り分ける検討もできます。

そのうえで、負荷の見通しが立つ場合は、分岐回路の分を幹線に振り分ける検討もできます。たとえば住宅やマンションは、分岐回路が住戸の中で完結して短く、つながる負荷も照明やコンセントでおおよそ決まっています。分岐回路の電圧降下を実際に計算して1%程度に収まるなら、その分を幹線にまわせます。幹線は太く長く、費用や納まりへの影響が大きいので、振り分けるなら幹線を優先するのが効果的です。

マンションの幹線はEPSを縦に長く走り、全戸で共有する太いケーブル。分岐回路は住戸の中で短く、負荷も照明やコンセントで決まっています。
単相3線式・幹線80m・120Aの例。分岐2%なら幹線2%で100sq、分岐を1%に抑えて幹線3%にすると60sqで済みます。
ここまでのポイント
  • 60m以下:幹線2%(構内の変圧器なら3%)+分岐回路2%
  • 60m超:合計で4〜7%(こう長と受電のしかたで変わる)
  • 60m超の合計は、幹線と分岐回路に自由に振り分けてよい
  • 基本は分岐回路2%。負荷の見通しが立てば幹線を優先して振り分ける


こう長 ― 「いちばん遠い負荷まで」を測る

許容範囲を決めるこう長は、幹線だけの長さではありません。供給変圧器の二次側(または引込線取付点)から、いちばん遠い負荷までの電線の長さです。

変圧器から分電盤、そこから最遠端の負荷まで、黄色の線ぜんぶがこう長です。近い負荷の長さでは判定しません。
たとえるなら
マラソンの距離は、スタートから「ゴールまで」で数えます。
途中の給水所(分電盤)までの距離だけで「何km走るか」を決める人はいません。こう長も同じで、ゴールはいちばん遠い負荷です。
ここまでのポイント
  • こう長は変圧器二次側(または引込線取付点)から最遠端の負荷まで
  • 幹線だけの長さで60m以下と判断しない
  • 外灯など遠い負荷がある建物は、こう長が伸びやすい

計算式は2つ ― ふだんは簡易式、太い幹線は基本式でも確かめる

簡易式は抵抗だけで計算する式、基本式は抵抗・リアクタンス・力率まで入れる式。一般の検討は簡易式でよく、太い幹線は基本式でも確かめます。

実務でよく使うのは、内線規程の簡易式 e = k × L × I ÷(1000 × A)です。係数kは配電方式で変わり、単相2線式35.6、三相3線式30.8、単相3線式(電圧線と中性線の間)17.8です。細い電線では抵抗が支配的なので、簡易式は大きめ(安全側)に出やすく、一般の幹線・分岐回路はこれで足ります。一方、太い幹線ではリアクタンスの影響が出てくるので、力率の低い負荷がつながる幹線は基本式でも確かめます。設計事務所や客先の指定がある場合は、それに合わせます。

簡易式の成り立ちは簡略計算式(直流式)の根拠と計算方法で詳しく扱っています。

ここまでのポイント
  • 簡易式:抵抗だけ。k=35.6/30.8/17.8
  • 基本式:抵抗・リアクタンス・力率を入れる
  • 太い幹線・力率の低い負荷は基本式でも確かめる


計算例 ― 許される電圧から断面積を逆算する

許される電圧降下 e[V]が決まったら、式をひっくり返して必要な断面積を出し、その上のサイズを選びます。 A = k × L × I ÷(1000 × e)。

三相3線200V・100m・30Aは15.4mm²で22sq。単相3線は100Vで見るので3%は3V、17.8mm²で22sq。短い分岐回路は最小太さで決まります。
ひっかけ注意
単相3線式の「3%」は3V。6Vではありません。
係数17.8の式は、電圧線と中性線の間(100V)の電圧降下を出す式です。200Vの3%(6V)で計算すると必要な断面積を半分に見誤り、例2なら22sqのところを14sqと細く選んでしまいます。

例1・例2のこう長は100m(60m超)なので、幹線に3%を使うなら、分岐回路には合計の残り(構内の変圧器なら5%−3%=2%)を配分します。

ここまでのポイント
  • A = k × L × I ÷(1000 × e)で逆算し、上のサイズを選ぶ
  • 三相3線200V・100m・30A・3% → 15.4mm² → 22sq
  • 単相3線100/200V・100m・30A・3%(3V)→ 17.8mm² → 22sq
  • 短い分岐回路は、電圧降下より最小太さで決まる

範囲に入らないとき ― 太く・短く・方式と電圧を見直す

電線を太くする、こう長を短くする、配電方式を変える、電圧を上げる。いちばん確実なのは太くすることです。

いちばん確実なのは電線を太くすることです。断面積が2倍になれば、電圧降下は半分になります。そのほか、分電盤や変圧器を負荷の近くに置いてこう長を縮める、単相2線式を単相3線式にする、200V・400Vで送って電流を減らす、といった手もあります。費用と納まり(管やラックの大きさ)も合わせて比べます。

ひとことで言うと:「こう長を最遠端まで測る → 許容範囲を決める → 断面積を逆算する → 入らなければ太く・短く」。

計算は電圧降下計算&幹線サイズの自動選定や、記事冒頭の電圧降下計算ツールでもすぐに試せます。Excel版はnoteで配布しています。


よくある質問

電圧降下の許容範囲は何%ですか?

こう長60m以下なら、幹線・分岐回路それぞれ2%以下が基本です。構内の変圧器から供給する幹線は3%以下にできます。

60mを超えるとどうなりますか?

幹線と分岐回路の合計で決めます。構内の変圧器からなら120m以下5%・200m以下6%・200m超7%、低圧で受電するなら4%・5%・6%です。

60m超なら合計2%以内ですか?

違います。60m超は合計の枠が4〜7%に広がります。その中で幹線と分岐回路にどう分けるかは自由です。

60m超の振り分けは、どう決めればよいですか?

基本は分岐回路を2%で考え、残りを幹線に配分します。住宅・マンションのように負荷の見通しが立つ場合は、分岐回路の電圧降下を計算して余裕があれば、その分を幹線に振り分けます。幹線は費用や納まりへの影響が大きいので、幹線を優先します。

こう長はどこからどこまでですか?

供給変圧器の二次側(または引込線取付点)から、いちばん遠い負荷までの電線の長さです。幹線だけの長さではありません。

簡易式と基本式はどちらを使いますか?

一般の幹線・分岐回路は簡易式で足ります。太い幹線や力率の低い負荷は、リアクタンスの影響があるので基本式でも確かめます。指定があればそれに従います。

単相3線式の3%は何Vですか?

3Vです。係数17.8の式は電圧線と中性線の間(100V)で見るので、3%は3Vになります。

範囲に入らないときはどうしますか?

電線を太くするのがいちばん確実です。こう長を縮める、単相3線式にする、電圧を上げる方法もあります。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
どの回路も必ず2% 構内の変圧器の幹線は3%。60m超は合計4〜7%
60m超は合計で2% 合計の枠が4〜7%に広がる
こう長は幹線の長さ 変圧器二次側から最遠端の負荷まで
単相3線の3%は6V 電圧線と中性線の間で3V
簡易式はいつでも安全側 太い幹線は基本式でも確かめる
「最遠端まで測り、財布の数を決め、逆算して太さを選ぶ」の順で取り違えを防げます。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。