電圧降下の許容範囲は何%?条件別の判定表と幹線サイズ自動計算
この記事の計算を、その場でツールで
負荷電流・こう長・電線サイズから電圧降下率と末端電圧を計算。許容値に収まる電線サイズの逆算もできます。
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電圧は、変圧器を出たあと電線を通るたびに少しずつ下がっていきます。まるでゆるい下り坂です。では、どこまで下がってよいのか。答えは内線規程1310節にあり、基本は幹線2%・分岐回路2%。ただし、構内の変圧器から送るなら幹線は3%、こう長が60mを超えると合計で4〜7%に広がります。この記事では、その「許容範囲」の読み方を、たとえと動く図でひとつずつ確かめ、計算例と、範囲に入らないときの手まで押さえます。
電圧降下とは ― 電線の中の「下り坂」
100Vの機器に2%の電圧降下なら、届くのは98V。わずかに見えますが、下がる量が大きくなると、機器の側ではっきり困りごとが出ます。
電圧が落ちるとどうなる?
| 機器 | 起きること | なぜ |
|---|---|---|
| 照明 | 暗くなる・ちらつく。器具によっては消える | 光の出力が電圧で変わる。LEDは電源の動ける範囲を外れると不安定になる |
| 電動機 | 力不足・起動しにくい・熱をもつ | トルクは電圧のおよそ2乗。同じ仕事をしようとして電流が増える |
| ヒーター | 温まるのが遅い | 出力は電圧の2乗に比例する |
| 電子機器・制御 | 止まる・再起動する。大きく下がると電磁接触器が外れ設備が止まる | 電源回路や接触器が動ける電圧を下回る |
もう一つ知っておきたいのが、建物に届く前から電圧には幅があることです。電力会社が供給点で保つ電圧は、標準電圧100Vなら101±6V(95〜107V)、200Vなら202±20V(182〜222V)と決められています(電気事業法施行規則 第38条)。引込の時点で下限に近いこともあるので、建物の中の電圧降下が大きいと、機器が動ける範囲を下回りやすくなります。だから内線規程で「ここまでなら下がってよい」という許容範囲が決められています。
- 電線の抵抗で、遠くほど・電流が多いほど電圧が下がる
- 100Vで2%なら、届くのは98V
- 照明は暗く、電動機は力不足、ヒーターは遅く、電子機器は止まる
- 電動機やヒーターは電圧の2乗で効く(1割下がると約81%)
- 供給点の電圧にも幅がある(100Vなら95〜107V)
許容範囲 ― 60mを境に「財布」の数が変わる
| こう長 | 幹線 | 分岐回路 |
|---|---|---|
| 60m以下 | 2%以下(構内の変圧器なら3%以下) | 2%以下 |
60mを超えると、幹線と分岐回路の合計で、次の値以下にします。こう長と、電気の受け方で値が変わります。
| こう長 | 構内の変圧器から | 低圧で受電 |
|---|---|---|
| 120m以下 | 5%以下 | 4%以下 |
| 200m以下 | 6%以下 | 5%以下 |
| 200m超 | 7%以下 | 6%以下 |
実務の考え方 ― 分岐回路は基本2%、見通しが立てば幹線を優先
60m超の配分は自由ですが、実務では分岐回路は基本2%で考え、残りを幹線に配分するのが出発点です。負荷や分岐の長さが読みきれない段階でも、分岐側に2%を確保しておけば、あとで増設や負荷の変更があっても困りません。
そのうえで、負荷の見通しが立つ場合は、分岐回路の分を幹線に振り分ける検討もできます。たとえば住宅やマンションは、分岐回路が住戸の中で完結して短く、つながる負荷も照明やコンセントでおおよそ決まっています。分岐回路の電圧降下を実際に計算して1%程度に収まるなら、その分を幹線にまわせます。幹線は太く長く、費用や納まりへの影響が大きいので、振り分けるなら幹線を優先するのが効果的です。
- 60m以下:幹線2%(構内の変圧器なら3%)+分岐回路2%
- 60m超:合計で4〜7%(こう長と受電のしかたで変わる)
- 60m超の合計は、幹線と分岐回路に自由に振り分けてよい
- 基本は分岐回路2%。負荷の見通しが立てば幹線を優先して振り分ける
こう長 ― 「いちばん遠い負荷まで」を測る
許容範囲を決めるこう長は、幹線だけの長さではありません。供給変圧器の二次側(または引込線取付点)から、いちばん遠い負荷までの電線の長さです。
- こう長は変圧器二次側(または引込線取付点)から最遠端の負荷まで
- 幹線だけの長さで60m以下と判断しない
- 外灯など遠い負荷がある建物は、こう長が伸びやすい
計算式は2つ ― ふだんは簡易式、太い幹線は基本式でも確かめる
実務でよく使うのは、内線規程の簡易式 e = k × L × I ÷(1000 × A)です。係数kは配電方式で変わり、単相2線式35.6、三相3線式30.8、単相3線式(電圧線と中性線の間)17.8です。細い電線では抵抗が支配的なので、簡易式は大きめ(安全側)に出やすく、一般の幹線・分岐回路はこれで足ります。一方、太い幹線ではリアクタンスの影響が出てくるので、力率の低い負荷がつながる幹線は基本式でも確かめます。設計事務所や客先の指定がある場合は、それに合わせます。
簡易式の成り立ちは簡略計算式(直流式)の根拠と計算方法で詳しく扱っています。
- 簡易式:抵抗だけ。k=35.6/30.8/17.8
- 基本式:抵抗・リアクタンス・力率を入れる
- 太い幹線・力率の低い負荷は基本式でも確かめる
計算例 ― 許される電圧から断面積を逆算する
許される電圧降下 e[V]が決まったら、式をひっくり返して必要な断面積を出し、その上のサイズを選びます。 A = k × L × I ÷(1000 × e)。
例1・例2のこう長は100m(60m超)なので、幹線に3%を使うなら、分岐回路には合計の残り(構内の変圧器なら5%−3%=2%)を配分します。
- A = k × L × I ÷(1000 × e)で逆算し、上のサイズを選ぶ
- 三相3線200V・100m・30A・3% → 15.4mm² → 22sq
- 単相3線100/200V・100m・30A・3%(3V)→ 17.8mm² → 22sq
- 短い分岐回路は、電圧降下より最小太さで決まる
範囲に入らないとき ― 太く・短く・方式と電圧を見直す
いちばん確実なのは電線を太くすることです。断面積が2倍になれば、電圧降下は半分になります。そのほか、分電盤や変圧器を負荷の近くに置いてこう長を縮める、単相2線式を単相3線式にする、200V・400Vで送って電流を減らす、といった手もあります。費用と納まり(管やラックの大きさ)も合わせて比べます。
計算は電圧降下計算&幹線サイズの自動選定や、記事冒頭の電圧降下計算ツールでもすぐに試せます。Excel版はnoteで配布しています。
よくある質問
電圧降下の許容範囲は何%ですか?
こう長60m以下なら、幹線・分岐回路それぞれ2%以下が基本です。構内の変圧器から供給する幹線は3%以下にできます。
60mを超えるとどうなりますか?
幹線と分岐回路の合計で決めます。構内の変圧器からなら120m以下5%・200m以下6%・200m超7%、低圧で受電するなら4%・5%・6%です。
60m超なら合計2%以内ですか?
違います。60m超は合計の枠が4〜7%に広がります。その中で幹線と分岐回路にどう分けるかは自由です。
60m超の振り分けは、どう決めればよいですか?
基本は分岐回路を2%で考え、残りを幹線に配分します。住宅・マンションのように負荷の見通しが立つ場合は、分岐回路の電圧降下を計算して余裕があれば、その分を幹線に振り分けます。幹線は費用や納まりへの影響が大きいので、幹線を優先します。
こう長はどこからどこまでですか?
供給変圧器の二次側(または引込線取付点)から、いちばん遠い負荷までの電線の長さです。幹線だけの長さではありません。
簡易式と基本式はどちらを使いますか?
一般の幹線・分岐回路は簡易式で足ります。太い幹線や力率の低い負荷は、リアクタンスの影響があるので基本式でも確かめます。指定があればそれに従います。
単相3線式の3%は何Vですか?
3Vです。係数17.8の式は電圧線と中性線の間(100V)で見るので、3%は3Vになります。
範囲に入らないときはどうしますか?
電線を太くするのがいちばん確実です。こう長を縮める、単相3線式にする、電圧を上げる方法もあります。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| どの回路も必ず2% | 構内の変圧器の幹線は3%。60m超は合計4〜7% |
| 60m超は合計で2% | 合計の枠が4〜7%に広がる |
| こう長は幹線の長さ | 変圧器二次側から最遠端の負荷まで |
| 単相3線の3%は6V | 電圧線と中性線の間で3V |
| 簡易式はいつでも安全側 | 太い幹線は基本式でも確かめる |
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