この記事は、連載コンセント設備の設計マニュアル」第3回 回路分割 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
全体像:分電盤の構成と計画指針(テナント分電盤の標準図)

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ペン太ペン太
分電盤の中って、ブレーカーがただ並んでいるだけに見えるんですが…。
ハリタハリタ
分電盤は電気の交差点です。引き込んだ電気を各回路へ分配する要なんですよ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 単相3線式で200Vを取り出すには、どの線をつなぐか
  • 「2P・50AF・20AT」の3つの数字は、それぞれ何を表すか
  • 開閉器の容量は、全負荷の合計から決めてよいのか
この記事でわかること
計算だけ確認したい方は、主開閉器容量の項目から読んでください。

電気設備の標準図を読み解く――テナント分電盤の仕組みと設計のポイント

トピック1:電気設備の標準図を読み解く――テナント分電盤の仕組みと設計のポイント

電気設備の図面には、慣れないうちは記号や略語が多くて「何が書いてあるのかわからない」と感じることも多いと思います。今回は、テナント向け分電盤の標準図をもとに、分電盤の基本的な仕組みと、主開閉器容量の決め方をわかりやすく解説します。

    

分電盤とは何か

トピック2:分電盤とは何か

分電盤は、建物に引き込んだ電気を各回路に分けて配る「電気の交差点」です。テナントビルでは各テナントごとに分電盤が設置され、照明・コンセント・空調などに電気を供給します。

標準図では、分電盤の内部構成を回路ごとに整理して記載しています。実際の工事ではこの図をもとに、ブレーカーの種類・容量・回路番号が決定されます。


ここまでのポイント
  • 分電盤は、建物に引き込んだ電気を各回路に分けて配る「電気の交差点」
  • テナントビルでは各テナントごとに設置され、照明・コンセント・空調などに供給する
  • 標準図をもとに、ブレーカーの種類・容量・回路番号が決定される

電源方式:単相3線式(1φ3W 100/200V)を理解する

トピック3:電源方式:単相3線式(1φ3W 100/200V)を理解する

テナント分電盤でよく使われるのが**単相3線式(1φ3W 100/200V)**という電源方式です。これは3本の電線(R相・N相・T相)で100Vと200Vの両方を同時に供給できる方式です。

接続する線 電圧 主な用途
R相 + N(中性線) 100V 照明・一般コンセント
T相 + N(中性線) 100V 照明・一般コンセント
R相 + T相 200V エアコン・給湯器など

水道に例えると、RとTが「水が来る管」、Nが「使った水が戻る管」のようなイメージです。RとNをつなぐと100V、TとNをつなぐと100V、RとTを直接つなぐと200Vが取り出せます。


ここまでのポイント
  • テナント分電盤でよく使われるのが単相3線式(1φ3W 100/200V)
  • 3本の電線(R相・N相・T相)で、100Vと200Vの両方を同時に供給できる
  • R相+NとT相+Nで100V、R相+T相で200Vが取り出せる

回路の種類:制御方式の違いを読む

トピック4:回路の種類:制御方式の違いを読む

標準図には、照明回路の制御方式がいくつか記載されています。現場で選択することになるため、違いを押さえておきましょう。

AS(昼光センサー=自動点滅器)制御

明るさに応じて自動でON/OFFする方式。外灯など屋外照明によく使われます。「日が落ちたら自動点灯、夜明けになったら消灯」という動作です。

TM(タイマー)制御

時刻で点灯・消灯を制御する方式。あらかじめ設定した時間帯だけ点灯させる場合に使います。24H停電補償付きのタイマーを使うことで、停電後も時刻がリセットされません。

AS+TM(昼光センサー+タイマー)複合制御

「ある時間帯の中で、かつ暗くなったらON」という条件を組み合わせた制御です。より細かい管理が必要な外灯回路などに採用されます。

R×n(リモコン)制御

リモコントランスと専用リレーを使い、照明を遠隔操作する方式。大規模なフロア照明の一括制御に使われます。標準図では「R×4」(4回路)などの表記で回路数が示されています。


制御方式どう動くか主な用途
AS(昼光センサー=自動点滅器)明るさに応じて自動でON/OFFする外灯など屋外照明
TM(タイマー)時刻で点灯・消灯を制御する設定した時間帯だけ点灯させたいとき
R×n(リモコン)リモコントランスと専用リレーで遠隔操作する大規模なフロア照明の一括制御
ここまでのポイント
  • ASは明るさに応じて自動でON/OFFする方式。外灯など屋外照明に使う
  • TMは時刻で点灯・消灯を制御する方式
  • R×n(リモコン)はリモコントランスと専用リレーで遠隔操作する方式

ブレーカーの読み方

トピック5:ブレーカーの読み方

回路ごとに記載されている「2P・50/20」という表記は、ブレーカーの仕様を表しています。

  • 2P:2極(2本の電線を同時に遮断)
  • 50AF:フレーム容量50A(ブレーカー本体の最大サイズ)
  • 20AT:トリップ電流20A(実際に遮断が動作する電流値)

ELCB(漏電遮断器)のマークがついた回路は、感電や漏電火災を防ぐための保護機能が加わっています。コンセント回路や水気のある場所の回路には必ずELCBが採用されます。


ペン太ペン太
主開閉器容量は、全負荷の合計を200Vで割れば出ますよね?
ハリタハリタ
それは誤りです。R相とT相の大きい方の電流に、200V負荷電流を加えて決めます。
表記意味
2P2極。2本の電線を同時に遮断する
50AFフレーム容量50A(ブレーカー本体の最大サイズ)
20ATトリップ電流20A(実際に遮断が動作する電流値)
ELCB漏電遮断器。コンセント回路や水気のある場所の回路に採用される
ここまでのポイント
  • 2Pは2極。2本の電線を同時に遮断する
  • AFはフレーム容量(本体の最大サイズ)、ATはトリップ電流(動作する電流値)
  • ELCBのマークがある回路は、感電や漏電火災を防ぐ保護機能が加わっている

主開閉器容量の決め方

トピック6:主開閉器容量の決め方

設計で最も重要なのが、主開閉器(メインブレーカー)の容量選定です。

標準図には次のような計算式が示されています。

【主開閉器サイズ AT】 > 【A or B の大きい方】+【C】

ここでA・B・Cは以下を意味します。

記号 意味
A R相側の100V負荷電流合計
B T相側の100V負荷電流合計
C 200V負荷電流合計

計算例(単相3線式の場合)

  • 200V負荷の合計:6,000 VA → 6,000 ÷ 200 = 30A(C)
  • R相側100V負荷の合計:5,100 VA → 5,100 ÷ 100 = 51A(A)
  • T相側100V負荷の合計:5,000 VA → 5,000 ÷ 100 = 50A(B)

→ 主開閉器サイズ > max(51, 50) + 30 = 81A

→ したがって 100AT を選定

なぜ「全負荷の合計」ではないのか

単純に全負荷を合算して200Vで割るのではなく、相ごとに流れる電流を個別に計算する点が重要です。

単相3線式では、R相とT相に100V負荷が振り分けられます。中性線(N)には差分の電流しか流れないため、R相とT相の電流バランスが偏ると、どちらかの相に集中して大きな電流が流れます。主開閉器はこの「最も大きな電流が流れる相」に合わせたサイズを選ぶ必要があります。

「全体の容量が大きくても、1つの相に集中していれば問題になる」という単相3線式特有の性質を理解することが、適切な主開閉器選定の鍵です。

資料配布のご案内

本記事では、解説で使用した**電気設備標準図(テナント・分電盤)**をPDFにて配布しています。


配布資料について

資料名: 電気設備標準図 テナント分電盤編

内容:

  • 分電盤結線図(照明・コンセント・誘導灯回路)
  • 制御方式別の結線パターン一覧(AS・TM・AS+TM・リモコン)
  • 主開閉器容量の計算方法・計算例
  • 負荷名称・回路番号ストック一覧

対象: 電気設備設計に携わる方、設備図面を読み始めた方、施工管理や積算業務に関わる方

E-00 電気設備標準図(テナント:分電盤)

ご利用にあたって

  • 本資料は学習・業務参考用としてご自由にお使いください。
  • 実際の設計・施工にあたっては、関係法令および各種基準を確認のうえ、有資格者による適切な判断を行ってください。
  • 無断での再配布・転載はご遠慮ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 単相3線式(1φ3W 100/200V)とはどんな方式ですか?

A. 3本の電線(R相・N相・T相)で100Vと200Vを同時に供給できる方式です。R相とN(中性線)、またはT相とNをつなぐと100V、R相とT相を直接つなぐと200Vが取り出せます。

Q. 主開閉器(メインブレーカー)の容量はどう決めますか?

A. 全負荷を単純に合計するのではなく、相ごとの電流で考えます。R相側100V負荷電流(A)とT相側100V負荷電流(B)の大きい方に、200V負荷電流(C)を足した値より大きい容量を選びます。記事の計算例では max(51, 50) + 30 = 81A となり、100AT を選定しています。

Q. なぜ全負荷を合計して200Vで割らないのですか?

A. 単相3線式ではR相とT相に100V負荷が振り分けられ、中性線には差分の電流しか流れません。相のバランスが偏ると片方の相に電流が集中するため、最も大きな電流が流れる相に合わせて相ごとに計算する必要があります。

Q. ELCB(漏電遮断器)はどの回路に必要ですか?

A. 感電や漏電火災を防ぐため、コンセント回路や水気のある場所の回路には必ずELCBが採用されます。

ペン太ペン太
標準図の読み方がわかってきました。次は何を練習すれば?
ハリタハリタ
計算例のように51Aと30Aから100ATを選ぶ流れを、自分の手で追ってみましょう。

まとめ

テナント分電盤の標準図には、単なる機器リスト以上の情報が詰まっています。

結論です。主開閉器の容量は、全負荷を合計して割るのではなく、相ごとに流れる電流から決めます。単相3線式ではR相とT相に100V負荷が振り分けられるため、偏るとどちらかの相に電流が集中します。主開閉器は、その最も大きな電流が流れる相に合わせて選びます。

手順やること計算例
200V負荷の合計を200Vで割る(C)6,000VA ÷ 200 = 30A
R相側100V負荷の合計を100Vで割る(A)5,100VA ÷ 100 = 51A
T相側100V負荷の合計を100Vで割る(B)5,000VA ÷ 100 = 50A
AとBの大きい方に、Cを加える51 + 30 = 81A
その値を超えるサイズを選ぶ100AT を選定

この記事の要点

  • 電源方式(単相3線式)の特性
  • 制御方式の使い分け(AS・TM・リモコン)
  • ブレーカーの仕様の読み方
  • 主開閉器容量を「相ごとの電流」で考える必要性

取り違えやすいところ

  • 全負荷の合計を200Vで割るのは誤り。相ごとに計算する
  • AFはブレーカー本体の最大サイズ、ATは実際に遮断が動作する電流値
  • 全体の容量が同じでも、1つの相に集中していれば問題になる

単相3線式の分電盤は、図面の記号さえ読めれば構成が見えてきます。そのうえで設計者の判断が要るのが主開閉器の容量です。合計ではなく相ごとの偏りで決まる、というこの一点が、単相3線式の性質そのものを表しています。

これらを理解すると、図面を見るだけで「この建物の電気の使い方」が見えてきます。設備設計の入口として、ぜひ分電盤の標準図を手がかりにしてみてください。

照明設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「照明設備の設計マニュアル」の 第5回 回路分割と分電盤 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
幹線設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の 第1回 全体フローと系統計画第6回 分電盤へ落とす でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
動力設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「動力設備の設計マニュアル」の 第5回 動力盤の構成 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。