A工事・B工事・C工事の違いと計画ステップを徹底解説
テナントを開設・設計する際、電気設備の計画を施工会社に“お任せ”にしていませんか?
実は、電気設備の理解が浅いままだと、容量オーバーによるトラブルや仕様不適合などに繋がりかねません。
この記事では、以下の2つのポイントをわかりやすく解説します。
✅ テナント工事における A・B・C工事の違い
✅ 設計者自身でもできる 電気設備計画の基本ステップ
🔌まずは押さえたい「A工事・B工事・C工事」の違い
テナントの電気設備工事では、工事の区分によって「費用負担者」「責任範囲」「業者の指定」が明確に分けられます。件名によって区分が変わる場合もありますが主なパターンです。
🅰 A工事:ビルオーナー側の工事(共用部)
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費用負担:ビルオーナー
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施工業者:指定業者(ビル側が手配)
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内容:主に共用設備・基幹設備の工事
📌A工事の代表例(コンビニテナントの場合):
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動力盤(手元開閉器の設置)
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電灯分電盤(検定済電力量計付)
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自動ドア・全熱交換器等の回路
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IP電話用LAN端子盤の敷設
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自動ドア・防犯設備の電源工事
🅱 B工事:テナント負担+ビル側指定業者が施工
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費用負担:テナント
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施工業者:ビルオーナーが指定
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内容:今回は該当なし(物件による)

🅲 C工事:テナント独自の内装・設備工事

- 費用負担:テナント
- 施工業者:テナントが自由に手配可能
- 内容:テナント内での分電・配線・通信・防犯など独自設備の設置
📌C工事の例:

- 分電盤以降の電灯・コンセント配線
- 動力盤2次側の配線・機器設置
- BGM・電話・FAX・防犯カメラ・出退管理
- LAN・光回線・スプリッターとの接続
- 時計・スピーカー・業務端末 等
📐電力引込計画のステップ【テナント設計者向け】
テナントの電気設備を計画する上で、以下の手順を踏むと安全かつスムーズです。
✅① 区分開閉器を確認する
多くの物件では、各テナントの電源引込口に「区分開閉器(分界点)」が設けられています。
ここが、「この先から先はテナント側の責任ですよ」という電気の境界になります。
📍このブレーカーの容量が、あなたの設計可能な契約容量の上限になります。
内装監理室から「〇〇A以下でお願いします」と言われるのは、このブレーカーの過負荷を防ぐためです。
✅② テナント分電盤を設置・接続
区分開閉器の2次側から、テナント独自の分電盤(主開閉器盤)を設置し、
そこから照明・動力・コンセント・空調など各負荷へ分岐回路を構成します。
📍分電盤の設置位置は、緊急時の点検や保守に支障がない場所を選びましょう。
✅③ 内装監理室からの要求仕様に対応する
よくある設計条件は以下の通りです。
💬 要求内容 | ✅ 対応のポイント |
---|---|
テナント分電盤は点検しやすい位置に設置すること | 共用部からアクセスできるバックヤードや機械室付近などを選定 |
主開閉器(メインブレーカー)は漏電遮断器とすること | 感電・漏電対策としてELB(漏電ブレーカー)を選定 |
分岐回路の負荷容量はブレーカー容量の80%以下に | 20ATのブレーカーの場合(20A×0.8=16Aに抑える) |
🔧分岐回路の設計で重要!「80%ルール」とは?
テナントや店舗の電気設備設計でよく出てくる指示のひとつに、
**「分岐回路の負荷容量はブレーカーの80%以下にしてください」**というものがあります。
これは、電気設備の安全性と安定運用のための設計基準です。
✅なぜ“80%以下”に抑える必要があるの?
ブレーカー(配線用遮断器)は、定格電流までの電流に耐えられるよう設計されていますが、
その最大値ギリギリで常時使用していると、内部の発熱や誤動作の原因になる可能性があります。
そのため、JIS規格や内線規程などでも「定格の80%を目安に負荷容量を抑える」ことが推奨されています。
✅具体例:20Aのブレーカーなら?
たとえば、「20AT」の分岐ブレーカーを使用する場合、計算式は以下のとおりです:
つまり、この回路に接続する照明やコンセント、機器などの合計使用電流は「16A以下」に設計するのが安全です。
💡W(ワット)換算なら?
電流(A)から消費電力(W)に換算するには、電圧(V)をかけます。
低圧電源(単相2線式 100V)の場合:
➡ この回路には、合計で1,600W以下の機器を接続する設計にすべきということです。
📌ポイント
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 分岐回路(照明・コンセントなど) |
目的 | ブレーカーの誤動作防止・安全確保 |
目安 | 定格電流 × 80%以下 |
例 | 20AT → 負荷電流は16A以下で設計 |
🏪【実例付き】コンビニテナントのA・B・C工事区分
コンビニエンスストアを例に、実際の電気設備工事がどの工事区分に該当するかを見てみましょう。
🅰 A工事:ビルオーナー側の負担工事(共用設備)
- 負担者:ビルオーナー
- 設計:A業者(ビル指定)
- 施工:B業者(ビル指定)
✅主な工事項目
- 動力盤:手元開閉器(225AF、32.175kW)を設置
- 電灯分電盤:主幹225AF/150AT、25.74kVA、電力量計付
- 分岐回路:自動ドア、カットリレーコンセント、全熱交換器
- 電話回線:IP電話用LANケーブルを弱電端子盤まで配線
- 防犯設備:自動ドアとその電源工事
- 情報通信:端子盤内にHUB(16ポート分)スペース確保
🅱 B工事:テナント負担+オーナー指定業者の工事
- 負担者:テナント
- 業者:ビルオーナー指定
- 内容:物件によって変動(本件では該当作業なし)
🅲 C工事:テナント独自の内装・設備工事
- 負担者:テナント
- 業者:テナント指定施工者
✅主な工事項目
- 動力:主幹開閉器2次側からの動力配線・機器設置
- 電灯・コンセント:分電盤以降のすべての内装電気設備
- BGM・放送設備:カットリレー電源からの供給含む
- 電話:電話機設置、FAX配線(MDF室から)
- 防犯・監視:監視カメラ・入退室管理などの独自機器導入
- 情報通信:光配線やスプリッター接続(庁舎5Fまたは2F)
- 時計設備:必要に応じて設置(例:POS連携時計など)
📝まとめ:電気設備の“責任範囲”と“仕様”を理解しよう
テナント設計における電気設備計画は、以下の2点がとても重要です。
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A/B/C工事の区分を理解しておくこと(どこまでが誰の責任か)
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区分開閉器や分電盤などの構成を確認し、仕様書に対応した設計を行うこと
💡テナント出店や内装設計を行う方は、ぜひ今回のポイントを押さえて、**“工事任せにしない電気設計”**を目指しましょう!