結論

停電対策の非常用電源は、規模で選びます。スマホ・照明など最低限ならポータブル電源、家全体を長時間なら蓄電池やV2H。V2Hは電気自動車の大容量バッテリーを家で使えるのが強みです。導入費用と「どこまで動かしたいか」を天秤にかけて選びましょう。

  • 最低限=ポータブル電源(手軽・安価)
  • 家全体・長時間=蓄電池/V2H
  • V2Hは車の大容量を家で使える

「停電に備えたい。ポータブル電源?蓄電池?V2H?」——非常用電源の使い分けを、設計者の視点で整理しました。

💬 はりた&ペン太

🐧 見習いペン太
「停電対策って、何を買えばいいのか迷います…」

🦔 はりた
「ポイントは”どこまで動かしたいか”なんだ。規模で選ぶのがコツ。3つの選択肢を見ていこう」

ペン太ペン太
停電対策なら、手頃なポータブル電源をひとつ買えば家中まかなえますよね?
ハリタハリタ
容量に限りがあり、向くのはスマホ充電や照明など最低限の用途。規模と時間で選ぶんですよ

3つの選択肢の使い分け

非常用電源は、まかないたい範囲と時間で選びます。

方式まかなえる範囲費用の目安
ポータブル電源スマホ・照明・小型家電(短時間)数万円〜十数万円
家庭用蓄電池家の一部〜全体(数時間〜)110〜260万円程度
V2H+EV家全体を長時間(車の容量次第)V2H機器+工事で80〜150万円程度
出典:各社資料・2026年目安/HARITAの設計室。補助金で実質負担は下がります。

💡 ここがポイント

まず「何を・どのくらいの時間」動かしたいかを決めるのが選び方のコツ。最低限ならポータブル電源で十分なことも多いです。

非常用電源を規模で選ぶ(ポータブル電源・蓄電池・V2H)をラベル付きで示した解説図
ペン太ペン太
V2Hは80~150万円もするんですか!ポータブル電源と桁が違う…
ハリタハリタ
その分、電気自動車の大容量バッテリーを家庭で使えるのが強み。補助金で負担も減らせますよ

V2Hの強み

V2Hは電気自動車の大容量バッテリー(家庭用蓄電池の数倍)を家で使えるのが最大の強みです。停電時に長時間、家全体をまかなえる可能性があります。EVをすでに持っている・検討している家庭には有力な選択肢です。

選ぶ前に確認したいこと

蓄電池やV2Hは補助金の対象になることが多く、実質負担が下がります。制度は年度で変わるため、導入前に最新情報を確認しましょう。ポータブル電源は工事不要で手軽ですが、動かせる家電が限られる点に注意します。

💬 はりた&ペン太

🐧 見習いペン太
「規模で選べばいいんですね。まずは何を動かしたいか、から考えます!」

🦔 はりた
「その通り。最低限ならポータブル、家全体ならV2Hや蓄電池。補助金も要チェック。目的から選べば失敗しないよ」

「何時間」ではなく「何Whか」で考える

非常用電源選びでいちばん多い誤解は、カタログの「〇時間使える」という数字をそのまま信じてしまうことです。実際に動く時間は、つなぐ機器の消費電力で決まります。判断の材料になるのは、容量(Wh)÷ 使う機器の合計(W)という単純な割り算です。

機器消費電力1000Whの電源で動く時間
スマートフォンの充電10〜20W約50〜100時間(50〜100回分)
LED照明(1室)10〜30W約30〜100時間
Wi-Fiルーター+ONU15〜25W約40〜60時間
冷蔵庫(400L級)平均100〜150W約7〜10時間
扇風機20〜40W約25〜50時間
電気毛布50〜80W約12〜20時間
電子レンジ1000〜1400W約40分(使えないことも多い)
エアコン(6畳)平均400〜600W約1.5〜2.5時間
ドライヤー1000〜1200W約50分(出力不足で動かない機種も)
実際にはロスがあるため、計算値の8割程度と見てください。冷蔵庫は常時全力で動くわけではないため、平均値で考えます。

💡 ここがポイント

容量(Wh)のほかに、定格出力(W)という数字があります。これは「同時にどれだけの機器を動かせるか」の上限です。容量が大きくても定格出力が小さければ、電子レンジやドライヤーは動きません。逆に、スマホと照明とルーターだけなら、小さな出力で十分です。容量=走れる距離、定格出力=出せる速度と考えると分かりやすくなります。

停電で本当に困るものから決める

「家全体を動かしたい」は理想ですが、費用は跳ね上がります。過去の大規模停電では、多くの家庭が困ったのは次の順でした。ここから逆算すると、必要な容量が現実的な数字になります。

  1. 情報(スマホ・ルーター)——安否確認、被害情報、復旧見込み。消費電力は小さく、優先度は最も高い。
  2. 照明——夜間の安全と精神的な安心。LEDなら消費電力はごくわずか。
  3. 冷蔵庫——夏場は数時間で中身が傷みます。消費電力は中程度。
  4. 冷暖房——真夏・真冬は生命に関わります。ここから消費電力が跳ね上がります。
  5. 給湯・調理——カセットコンロなど、電気以外の手段でも代替できます。
  6. 医療機器——在宅酸素や電動ベッドを使っている場合は、最優先。機器のメーカーに停電時の対応を確認してください。

1〜3までなら、1000〜1500Wh程度のポータブル電源でおおむね1日をしのげます。4以降を含めるなら、蓄電池やV2Hの領域です。

方式ごとの弱点

方式弱点・注意点
ポータブル電源使い切ったら充電できない。停電が長引くと役に立たなくなる。太陽光パネルとの併用が前提になることも
家庭用蓄電池設置スペースが要る。特定負荷型だと使える回路が限られる。導入費が高い
V2H+EV車が家にないと使えない。避難で車を使うと電源も失う。機器が高価
太陽光発電(単体)停電時は「自立運転」への切替が必要で、出力は1500W程度。夜は使えない
発電機(ガソリン・カセットガス)屋外専用。排気ガスによる一酸化炭素中毒の事故が起きている。騒音も大きい
どの方式にも弱点があります。1つに頼りきらず、組み合わせて備えるのが現実的です。

⚠️ 発電機は絶対に屋内で使わない

ガソリン発電機やカセットガス発電機を、屋内・ガレージ内・玄関先で使用した一酸化炭素中毒の事故が繰り返し起きています。一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには動けなくなります。換気しているつもりでも危険です。使用は必ず屋外で、建物の開口部から十分に離してください。

導入前に確認しておくこと

  • 「全負荷型」か「特定負荷型」か——蓄電池には、停電時に家全体をまかなうタイプと、あらかじめ決めた回路だけを動かすタイプがあります。特定負荷型は安価ですが、どの回路を選ぶかを契約時に決める必要があります。冷蔵庫とリビングの照明、といった選び方になります。
  • 200Vの機器が使えるか——エアコンやIHクッキングヒーターは200Vのことが多く、機種によっては非常時に使えません。オール電化の家では特に確認が必要です。
  • 設置場所の条件——屋外設置型は基礎工事が必要で、塩害地域や積雪地域では設置条件が変わります。屋内設置型は発熱と騒音を考えた場所選びが要ります。
  • 切替は自動か手動か——停電したら自動で切り替わるタイプと、手動でスイッチを操作するタイプがあります。留守中や就寝中を考えると、自動のほうが安心です。
  • 保証とメンテナンス——蓄電池のバッテリーは10〜15年で容量が落ちます。保証期間と、その後の交換費用まで含めて比較してください。
  • ポータブル電源の保管方法——満充電のまま放置すると劣化します。3か月に1回程度、残量を確認して充電する運用が必要です。使いたいときに空だった、という失敗が最も多いパターンです。

よくある質問

ポータブル電源で家全体は動く?

難しいです。スマホ充電や照明、小型家電など限られた用途向けです。家全体・長時間は蓄電池やV2Hが必要です。

V2Hと蓄電池どちらがいい?

EVを持つ・検討するならV2Hが大容量で有利です。車を持たないなら家庭用蓄電池が選択肢になります。

補助金はありますか?

蓄電池やV2Hは国・自治体の補助対象になることが多いです。年度で変わるため最新情報を確認してください。

容量(Wh)と定格出力(W)はどう違いますか?

容量は「どれだけ長く使えるか」、定格出力は「同時にどれだけの機器を動かせるか」です。容量が大きくても定格出力が小さければ、電子レンジやドライヤーは動きません。走れる距離と出せる速度の関係だと考えてください。

1000Whのポータブル電源で冷蔵庫は何時間もちますか?

400L級の冷蔵庫は平均100〜150W程度なので、計算上は7〜10時間です。実際にはロスがあるため、8割程度と見てください。スマホ充電・照明・ルーターだけなら、同じ容量で丸1日以上まかなえます。

蓄電池の「全負荷型」と「特定負荷型」の違いは?

全負荷型は停電時に家全体をまかなえます。特定負荷型は、あらかじめ決めた回路だけが使えます。特定負荷型のほうが安価ですが、どの回路を非常時に生かすかを契約時に決めておく必要があります。冷蔵庫とリビングの照明、といった選び方が一般的です。

太陽光発電があれば、停電中も自動で電気が使えますか?

自動ではありません。多くの機種は手動で「自立運転」に切り替える操作が必要で、使えるのは専用コンセント1口・1500W程度です。夜間や悪天候では発電しません。蓄電池と組み合わせて初めて、停電中も普段どおりに近い使い方ができます。

発電機を玄関先で使ってもいいですか?

いけません。屋内・ガレージ内・玄関先での使用による一酸化炭素中毒の事故が繰り返し起きています。無色無臭のため、気づいたときには動けなくなります。使用は必ず屋外で、窓や換気口から十分に離してください。

ポータブル電源は買ったまま置いておけばいいですか?

満充電のまま長期間放置すると劣化が進みます。3か月に1回程度、残量を確認して充電する運用が必要です。いざ停電というときに空だった、というのが最も多い失敗です。

電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

ペン太ペン太
導入を決める前に、確認しておくことはありますか?
ハリタハリタ
必要な規模と時間の整理、そして補助金の最新情報の確認です。そこから選べば失敗しませんよ

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。