結論

スマートホームで後悔しないコツは新築・リフォームの設計段階で「有線LAN」と「空配管」を仕込むことです。無線は便利ですが、ルーター位置への有線LAN・各部屋へのLAN・将来用の空配管があると安定性と拡張性が段違い。電源も、ルーターやハブ、スマート機器用に余裕をもって計画します。

  • 設計段階で有線LANと空配管を仕込む
  • ルーター位置・各部屋へLANを配線
  • 将来の増設に空配管が効く

「スマートホームにしたい。配線で気をつけることは?」——後悔しないための配線の基礎を、設計者の視点で解説します。

💬 はりた&ペン太

🐧 見習いペン太
「スマートホームって全部Wi-Fiでいいんじゃないんですか?」

🦔 はりた
「無線も便利だけど、土台に”有線”があると安定するんだ。設計のときに仕込むのがコツ。一緒に見ていこう」

ペン太ペン太
スマートホームって全部無線でつながるから、配線は要らないですよね?
ハリタハリタ
実は有線LANが土台です。設計段階で有線LANと将来用の空配管を壁内に仕込むのが基本ですよ

設計段階で仕込みたい配線

あとから壁に配線を通すのは大変です。新築・リフォーム時に次を仕込んでおきましょう。

項目ねらい
有線LAN(各部屋)安定した通信・大容量データに強い
ルーター/ハブの設置場所家の中心付近+電源とLANを集約
空配管(予備の管)将来のケーブル追加を壁を壊さず可能に
電源の余裕ルーター・ハブ・スマート機器用
出典:HARITAの設計室。無線とあわせて有線の土台を作るのがポイント。

💡 ここがポイント

一番のコツは空配管(予備の管)を通しておくこと。将来ケーブルを足したいときに、壁を壊さず通せます。

スマートホームの有線LAN・ルーター集約・空配管をラベル付きで示した解説図

電源計画も忘れずに

スマートスピーカー、ハブ、防犯カメラ、ルーターなど、常時通電する機器が増えます。設置予定の場所にコンセントを用意し、配線が見えないようすっきりまとめると美観も保てます。

ペン太ペン太
防犯カメラも全部無線にするつもりでした…
ハリタハリタ
据え置き機器は有線、モバイル端末は無線と使い分けると安定します。電源計画も忘れずにね

無線と有線の使い分け

スマホやタブレットは無線、据え置きのPC・TV・ゲーム機・NASは有線、というように使い分けると快適です。土台の有線がしっかりしていると、無線の安定性も上がります。

💬 はりた&ペン太

🐧 見習いペン太
「有線と空配管を先に仕込むのが後悔しないコツなんですね!」

🦔 はりた
「その通り。設計段階が勝負。有線LAN+空配管+電源の余裕。この3つで、将来のスマートホームも自由自在だよ」

スマートホームは「3つの層」で考える

機器を1つずつ検討すると、話がすぐ複雑になります。設計段階では、次の3層に分けて考えると整理しやすくなります。

中身設計で決めること
通信Wi-Fi、有線LAN、Bluetooth、Matter対応の機器同士の通信ルーター・ハブの置き場所、各部屋へのLAN、空配管
電源常時通電する機器の電気コンセントの位置と数、スイッチ部分の配線方式
操作スマホ・音声・壁のスイッチ壁スイッチを残すか、どこに何を置くか
3層のうち、あとから変えにくいのは「通信」と「電源」です。ここを設計時に押さえておけば、機器は後から入れ替えられます。

💡 ここがポイント

スマート機器は数年で世代交代します。特定の製品に合わせて配線を作り込むと、その製品が販売終了したときに困ります。設計で用意するのは「電気と通信が届く状態」までにして、製品選定は引き渡し直前まで引っ張るのが賢いやり方です。

機器別に必要な「下ごしらえ」

やりたいこと設計で仕込むものあとからでも可能か
照明をスマート化調光・調色対応の器具と回路、または常時通電のスイッチ配線電球交換型なら可。器具ごとの制御は工事が必要
壁スイッチをスマート化スイッチボックス内に中性線(白線)があること中性線がないと使えない製品が多い。要確認
電動カーテン・シャッター窓上部への電源。カーテンボックス内が理想電池式なら可。有線式は後付けが難しい
スマートロック玄関内側の電源(あれば給電式が選べる)電池式・貼り付け式なら容易
防犯カメラ設置位置への電源とLAN(PoE対応なら1本で済む)無線+電池式は可。ただし充電の手間が続く
インターホン連携玄関子機への配線と、親機位置でのネットワーク接続機種を選べば可。屋外配線のやり直しは大掛かり
エアコンの遠隔操作特になし(赤外線リモコンで足りる)スマートリモコンで容易に実現できる
給湯・床暖房の遠隔操作メーカー純正のネットワークアダプタ用の配線機種依存。設備選定時に確認が要る
「あとからでも可能」の欄が難しいものほど、設計段階で決めておく価値があります。

⚠️ 中性線の有無は必ず確認を

壁スイッチをスマートスイッチに置き換える製品の多くは、スイッチボックス内に中性線が来ていることを前提にしています。日本の一般的な住宅では、スイッチには電源線と負荷線の2本しか来ておらず、中性線がないことが少なくありません。新築なら「将来スマートスイッチを付けたいので、スイッチボックスに中性線を入れてほしい」と設計段階で伝えてください。あとから通すのは壁を開ける工事になります。

通信規格の使い分け

規格特徴向いている用途
有線LAN最も安定。速度・遅延ともに有利ルーター、ハブ、据置きの機器、防犯カメラ
Wi-Fi配線不要で自由度が高い。台数が増えると混雑するスマートスピーカー、カメラ、家電
Bluetooth近距離・低消費電力。到達距離が短いスマートロック、センサー類
Thread / Matter機器同士が中継し合う。メーカーをまたいで連携しやすい照明、センサー、これから増える機器
Matterは規格そのものではなく「共通言語」に近い仕組みです。対応製品を選ぶと、メーカーが違っても同じアプリで扱える可能性が高くなります。

すべてを無線にすると、機器が20台、30台と増えたときに通信が不安定になります。動かさないもの(ルーター、ハブ、カメラ、テレビ)は有線、動かすもの・電池で動くものは無線——この切り分けが基本です。

空配管は「太さ」と「曲がり」で決まる

将来のために管だけ通しておく、というのが空配管です。ただし、入れておけば何でも通るわけではありません。実際に後から使えるかどうかは、次の3点で決まります。

  • 太さ——細い管では、コネクタの付いたLANケーブルが通りません。将来何を通すかを想定して、余裕のあるサイズを指定してください。
  • 曲がりの数と角度——直角に何度も曲がっていると、ケーブルが引けなくなります。ゆるやかなカーブで、曲がりは少ないほど有利です。
  • 呼び線(通線ワイヤー)が入っているか——管の中にあらかじめ細いワイヤーが入っていれば、それを引くことで新しいケーブルを通せます。これが入っていない空配管は、使えないことが多いという点は覚えておいてください。

打ち合わせでは「空配管を入れてください」だけでなく、「呼び線を入れたうえで、両端の位置を図面に残してください」と伝えてください。10年後に管の出口が分からなくなる、というのはよくある話です。

よくある失敗

  • ルーターを納戸や玄関収納に押し込んだ——見た目はすっきりしますが、電波が届かず放熱もできません。扉付きの収納に入れるなら、有線で各部屋に配るか、アクセスポイントを別に置く前提が必要です。
  • スマート機器の電源が足りない——ハブ、スピーカー、カメラ、充電器が集中する場所は、想定より多くの口が要ります。テレビ裏とルーター置き場は、多めに用意して困りません。
  • 壁スイッチを全部なくした——スマホや音声だけで照明を操作する設計にすると、来客や子ども、機器の不調時に困ります。壁のスイッチは残しておくのが安全です。
  • 通信が止まったときの逃げ道がない——インターネットが切れても、鍵は開き、照明は点き、エアコンは動く必要があります。ネット接続が前提の機器ばかりにしないでください。
  • 電池式機器を高い場所に付けた——電池交換は必ず来ます。脚立が要る位置に電池式のセンサーを付けると、いずれ放置されます。

よくある質問

全部Wi-Fiではダメ?

使えますが、据え置き機器や大容量通信は有線が安定します。土台に有線があると無線も快適になります。

空配管とは?

将来ケーブルを通すための空の管です。壁内に仕込んでおくと、後から配線を追加しやすくなります。

後付けはできますか?

可能ですが壁の工事が必要でコストがかかります。新築・リフォーム時に仕込むのが最も効率的です。

スマートスイッチを付けたいのですが、何を確認すればいいですか?

スイッチボックス内に中性線(白線)が来ているかを確認してください。日本の住宅では電源線と負荷線の2本しかないことが多く、その場合は中性線が不要なタイプの製品を選ぶ必要があります。新築なら、設計段階で「スイッチボックスに中性線を入れてほしい」と伝えるのが確実です。

空配管を入れておけば、将来どんなケーブルでも通せますか?

通せるとは限りません。管が細い、曲がりが多い、呼び線(通線ワイヤー)が入っていない、といった条件では引けなくなります。「呼び線を入れたうえで、両端の位置を図面に残す」ところまで依頼してください。

Matterに対応していれば、どのメーカーでも連携できますか?

Matterは各社の機器を共通の仕組みで扱えるようにする取り組みで、対応製品同士なら同じアプリから操作できる可能性が高くなります。ただし、すべての機能が使えるとは限らず、細かい設定は各社のアプリが必要なこともあります。

スマート機器が増えるとWi-Fiは不安定になりますか?

台数が増えるほど電波が混み合い、応答が遅くなることがあります。ルーター、ハブ、テレビ、防犯カメラなど動かさない機器は有線にして、無線は動かすもの・電池で動くものに絞ると安定します。

インターネットが止まったら、家電は使えなくなりますか?

製品によります。クラウド経由でしか動かない機器は、ネットが切れると操作できません。鍵・照明・エアコンなど生活に直結するものは、ネットなしでも物理操作できる状態を残しておいてください。

賃貸でもスマートホーム化できますか?

配線を触らない範囲であれば可能です。スマートプラグ、スマートリモコン、電池式のセンサーや貼り付け式のスマートロックなど、置く・差す・貼るで完結する機器を選んでください。壁スイッチの交換や配線工事は、管理会社の許可が必要です。

電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

ペン太ペン太
これから間取りの打ち合わせです。何を伝えればいいですか?
ハリタハリタ
ルーターを家の中心付近に置ける場所と、各部屋への配線・空配管を要望しておきましょう
弱電設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「弱電設備の設計マニュアル」の 第2回 配管・配線ルート第3回 LAN・電話 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。