ニュースの要点

  • 2026年2月16日、東京電力の柏崎刈羽6号機が発電を再開した。福島第一の事故以来、東京電力としては初の再稼働で、国内の運転可能な原子炉は15基(約1,460万kW)になった。
  • 第7次エネルギー基本計画は原子力を「最大限活用」に転じ、2040年の電源構成で2割程度を担う想定を置いた。背景にはデータセンター・半導体による電力需要の増加見通し(2040年に1.1〜1.2兆kWh)がある。
  • 新設は次世代革新炉が軸で、関西電力が美浜での建て替えを念頭に調査を進め、三菱重工のSRZ-1200は2030年代半ばの実用化を目指す。ただし新設が電気を生むのは早くても10年以上先である。

技術の概要 ── 既設炉の「延命と再稼働」と、次世代炉の「新設」は別の話

原子力発電は、核分裂の熱で蒸気を作りタービンを回す仕組みで、発電の原理は火力と同じである。違いは燃料と、それを扱うための安全設備の規模にある。国内の既設炉は加圧水型(PWR、主に西日本)と沸騰水型(BWR、主に東日本)に分かれ、福島第一の事故後に再稼働したのは長らくPWRばかりだった。2024年の女川2号機・島根2号機、2026年の柏崎刈羽6号機で、ようやくBWRの再稼働が続いた。

いま「原子力」と一括りに語られる話題は、性質の異なる三つに分けて見る必要がある。第一に既設炉の再稼働(審査を通った炉を動かす)、第二に運転期間の延長(40年を超えて動かす)、第三に次世代革新炉の新設である。前二つは数年単位で電力供給に効くが、新設は着工から運転まで10年以上を要する。

区分 内容 供給に効く時期
再稼働 運転中15基。審査合格・未稼働は柏崎刈羽7、東海第二、泊3の3基 2027年ごろまで(泊3は2027年早期目標)
運転延長 GX脱炭素電源法で、停止期間を除いて60年超の運転が可能に 既設炉の閉鎖時期を先送り
革新軽水炉 既存のPWR技術を改良した大型炉(三菱重工SRZ-1200など)。廃炉サイト内の建て替えが対象 2030年代半ば以降
SMR(小型モジュール炉) 出力30万kW級以下を工場で量産する構想。海外で先行、国内は開発段階 国内は2030年代後半以降
高温ガス炉・高速炉 水素製造や燃料サイクルを狙う。三菱重工が中核企業 高温ガス炉は2030年代建設、高速炉は2040年代運転が目標

実用化の現在地 ── 再稼働は「終盤」、新設は「入口の手前」

「実証段階/初期量産/本格普及」の3段階で見ると、再稼働は本格普及の終盤にある。資源エネルギー庁の2026年3月時点の整理では、運転中15基、審査合格で再稼働待ちが柏崎刈羽7号機・東海第二・泊3号機の3基、審査中が8基で、廃炉が決まった炉は20基を超える。動かせる炉はおおむね動き、残りは立地自治体の同意や安全対策工事の完了を待つ段階に入った。

ただし残りの3基はそれぞれ壁がある。柏崎刈羽7号機は、テロ対策施設の完成が2029年8月にずれ込み、柏崎市長は再稼働の判断を2028年末まで先送りすると表明した。東海第二は安全対策工事の完了期限が2026年12月とされるが、4度目の延期を経てなお「達成は非常に難しい」と見られ、周辺自治体の避難計画も未完成である。泊3号機は2025年11月に北海道知事が条件付きで同意し、防潮堤工事を進めて2027年のできるだけ早い時期の再稼働を目指す。浜岡3・4号機は2026年1月に地震評価の不備で審査が中断した。

新設は実証段階の手前にある。関西電力は美浜発電所を念頭に次世代革新炉の建て替えに向けた現地調査を進めており、三菱重工は革新軽水炉SRZ-1200の2030年代半ばの実用化を目指す。2026年8月には、経済産業省の次世代革新炉の技術開発・サプライチェーン構築支援事業に三菱重工の3件(革新軽水炉の要素技術、国産技術による小型軽水炉、サプライチェーン高度化)が採択された。SMRは海外が先行しており、カナダのダーリントンでGE日立のBWRX-300が建設中、米国ではガスタービンとSMRを組み合わせる構想が2027年の投資判断を目指すと報じられている。国内で「新設の電気」が流れるのは、順調に進んでも2030年代後半以降になる。


電気設備の観点から見た課題

電気設備の設計・施工の実務から見ると、原子力の話題は発電所の中よりも「外側」に多くの仕事を生む。

第一に、系統の受け皿。柏崎刈羽(合計約820万kW)のような大規模電源が再稼働すると、送電線の潮流と系統の安定度が変わる。首都圏への送電容量、周波数調整力の配分、事故時の脱落を想定した供給予備力の設計は、再稼働1基ごとに見直しが要る。新設炉が建つ場合は、変電所と送電線の新増設が本体工事と並行して発生する。

第二に、電力需要側の設備。原子力の「最大限活用」の根拠はデータセンターと半導体工場の需要増である。こちらは受変電設備UPS・非常用発電機の設計と施工がそのまま増える領域で、原子力の稼働状況にかかわらず設備需要は先に立ち上がっている。電源の安定性が確保できる地域に立地が集まるため、原子力の再稼働が進む地域ほど、大型受電設備の案件が増えやすい。

第三に、安全対策工事という土木・電気の需要。テロ対策施設、防潮堤、非常用電源の多重化、ケーブルの難燃化・分離といった新規制基準対応の工事は、1基あたり数千億円規模になった例がある。東海第二や柏崎刈羽7号機の遅れは、裏を返せばこの工事がまだ続くことを意味する。

第四に、廃炉。廃炉が決まった20基超の解体は数十年続く。解体に伴う電気設備の切り離し、仮設電源、放射線管理区域内の配線工事は、原子力特有の資格と手順が要る専門領域として残る。

産業構造とお金の流れ

原子力で需要が動く領域を整理する。ここに挙げる企業名は、報道や公開資料で関与が示されている事実の列挙であり、評価や推奨を意味しない。

プラントメーカー。PWRは三菱重工、BWRは日立製作所(日立GEニュークリア・エナジー)と東芝エネルギーシステムズが担う。革新軽水炉SRZ-1200と高温ガス炉・高速炉は三菱重工が中核企業で、SMRのBWRX-300はGE日立が海外で建設している。IHIや日揮は海外SMR事業への出資・参画で名前が挙がる。

電力会社。再稼働は関西電力・九州電力・四国電力(PWR)が先行し、東北電力・中国電力・東京電力(BWR)が続いた。新設の候補は関西電力(美浜)で、建設費は1基1兆円を超えるとの見方があり、資金回収の仕組み(長期脱炭素電源オークションなど)が焦点になっている。

安全対策・土木・電気工事。防潮堤・テロ対策施設・非常用電源の工事は大手ゼネコン、重電メーカー、電気工事会社の領域である。再稼働待ちの3基と審査中の8基には、この工事がまだ残っている。

燃料・サイクル・廃炉。燃料はウラン輸入と国内加工(三菱原子燃料、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンなど)、再処理は日本原燃、廃炉は各電力会社と解体を請け負うメーカー・ゼネコンが担う。廃炉費用と高レベル放射性廃棄物の処分は、次世代炉の建て替えと一体で議論されている。

需要側。データセンター事業者と半導体メーカーは「脱炭素電源の確保が不可欠」とされ、電力会社と長期契約を結ぶ動きがある。原子力の稼働は、こうした大口需要家の立地判断に影響する。


関連する政策・補助金

第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)は、再エネと原子力を「共に最大限活用」する方針を掲げ、2040年の電源構成を再エネ4〜5割、原子力2割程度、火力3〜4割と想定した。GX脱炭素電源法により、審査などで停止した期間を除外して60年を超える運転が可能になり、次世代革新炉は「廃炉を決定した事業者のサイト内での建て替え」を対象に具体化を進めるとされる。技術開発はGX推進の枠組みで、革新軽水炉・小型軽水炉・高温ガス炉・高速炉の開発とサプライチェーン構築が支援対象になっている。制度と予算は年度ごとに更新されるため、最新情報は資源エネルギー庁の原子力小委員会資料で確認されたい。

関連する動きを追うには

  • 資源エネルギー庁 原子力小委員会・革新炉ワーキンググループの資料 ── 再稼働状況と次世代炉ロードマップの一次情報
  • 日本原子力産業協会「日本の原子力発電炉」一覧 ── 運転・審査・廃炉の最新状況(月次更新)
  • 各電力会社・プラントメーカーのIR資料 ── 安全対策費、建設計画、採択事業の一次情報

本記事は公開情報にもとづく技術・産業動向の解説であり、特定の金融商品の売買や投資判断を勧めるものではありません。記載した企業名は報道・公開資料で関与が示された事実の列挙です。投資に関する判断は、ご自身の責任において行ってください。

出典

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。