連載第1回で仕組みを、第2回で「載せ得かどうか」の判断軸を整理しました。第3回は最後の詰めです。

「うちは何年で元が取れるのか」——この数字は、業者の試算表を見せられて納得するのではなく、自分の家の検針票から自分で出すべきものです。下のシミュレーターに数字を入れれば、回収年数と20年間の収支がその場で出ます。

まずは計算してみる:回収年数シミュレーター

初期値は「5kW・関東・年間4,800kWh使用・設置費150万円・自家消費率30%」という標準的なケースです。ご自宅の数字に書き換えて「計算する」を押してください。

太陽光発電 回収年数シミュレーター

検針票の年間使用量と見積金額を入れると、回収年数と20年間の収支を計算します。入力はこのページ内だけで処理され、どこにも送信されません。


入力する数字はどこから取るか

精度は入力次第です。それぞれの取り方を押さえてください。

年間の電気使用量(最重要)

検針票または電力会社のWeb明細で、12か月分の「使用量kWh」を合計します。冬と夏で倍近く違うため、1か月だけを12倍すると大きくずれます。中電力会社のマイページなら年間グラフからCSVを落とせる場合が多いので、そこから拾うのが確実です。

買う電気の単価

「12か月分の請求額合計 ÷ 12か月分の使用量合計」で出します。これで基本料金・燃料費調整額・再エネ賦課金まで含んだ実際の単価が出ます。多くの家庭で30〜35円/kWhの範囲に入ります。カタログの「電力量料金」だけを使うと過小評価になります。

設置費用

見積書の税込総額です。足場代・電気工事費・申請費が別項目になっていないか確認してください。「本体価格」だけで入力すると回収年数が短く出ます。

自家消費率

実測しないと分からない数字ですが、生活パターンからおおよそ見当がつきます。

生活パターン 選ぶ値
共働きで平日の日中は無人 20%
一般的な世帯(蓄電池なし) 30%
在宅勤務や小さな子どもがいる 40%
エコキュートを昼間に沸き上げ/EVを昼充電 50%
蓄電池を併用 60%

結果の読み方:3つのケースを並べる

累積メリットの推移と回収年数を示したグラフ。自家消費30%では19年目、50%では13年目、補助金50万円ありなら10年目で回収し、15年目にパワコン交換で累積が下がる
図9:累積メリットの推移と回収年数(5kW・年間発電5,500kWhの試算例)

同じ5kWでも、条件の違いで回収年数はここまで動きます。

条件 回収年数 20年間の最終収支
自家消費30%・補助金なし(標準) 19年目 +15万円
自家消費50%に改善 13年目 +58万円
補助金50万円を使う 10年目 +65万円
3kW・使用量4,000kWh・費用90万円 20年以内に回収せず −1万円

最後の行が重要です。小容量で使用量も少ないケースは、20年かけても元が取れません。太陽光は「載せれば必ず得」な設備ではない——シミュレーターがそれを正直に返してくれる点が、業者の試算表との違いです。

「16年」と「19年」の差=パワコン交換費

同じ前提でも、15年目のパワコン交換費25万円を計上するかどうかで回収年数は16年目と19年目に分かれます。3年ぶんの差です。

ここが業者の試算表で最もよく省略される項目です。パネルは20〜30年もつ一方、パワコンは10〜15年で交換が必要になります。25万円は年あたり約1.7万円——年間メリット8万円のうち2割が消えるインパクトです。

シミュレーターのチェックボックスを外して比べてみてください。外せば16年目——3年ぶん前倒しになります。「どちらが正しいか」ではなく「何を含めた数字か」を確認する習慣が、この連載でお伝えしたいことです。

回収年数を縮める4つのレバー

シミュレーターの数字を動かすと分かりますが、効くレバーは4つだけです。効果の大きい順に並べます。

レバー 効果 難易度
①補助金を取る 50万円で回収が9年短縮(19年→10年) 中(自治体の制度・年度予算次第)
②設置費用を下げる 相見積もりで30万円下げれば約4年短縮 低(3社見積もりを取るだけ)
③自家消費率を上げる 30%→50%で約6年短縮 中(エコキュートの昼間沸き上げ設定など)
④容量を増やす 発電も費用も増えるので回収年数はあまり動かない —(屋根面積の制約)

意外なのは④です。容量を増やしても回収年数はほとんど短くなりません。増えた発電のほとんどが8.3円の売電に回るためです。「せっかくだから大きく載せましょう」という提案は、回収年数の観点では根拠が弱いということになります。

費用対効果でいちばん優秀なのは②の相見積もりです。手間だけで、追加費用ゼロで数年縮まります。

業者の試算表でチェックすべき5点

  1. パワコン交換費が入っているか——入っていなければ、そこから4年前後の下振れを見込んでください。
  2. 5年目以降の売電単価が8.3円になっているか——24円のまま10年通して計算している試算表は明確に過大です。
  3. 11年目以降の売電単価はいくらか——卒FIT後は7〜14円が相場。ここを24円のままにしている資料は要注意です。
  4. 自家消費率の設定値はいくらか——記載がなければ必ず聞いてください。50%以上を前提にしているなら、その根拠を確認します。
  5. 発電量の前提(kWh/kW)——1,300kWh/kW超を使っていれば、地域と方角に照らして妥当か検証してください。

よくある質問(FAQ)

Q. パネルの発電量は年々落ちませんか?

A. 落ちます。一般的に年0.5%前後の出力低下があり、20年で1割程度と考えられています。このシミュレーターは劣化を含めていないため、結果はやや楽観的です。厳しめに見たい場合は発電量の選択肢を1つ下げて計算してください。

Q. ローンで買う場合の金利は含まれますか?

A. 含めていません。ソーラーローンの金利は年1〜3%程度が多く、150万円を15年返済なら総額で15〜35万円ほど増えます。現金一括より回収は2〜4年遅くなる計算になります。

Q. 回収年数は何年以内なら「買い」ですか?

A. 絶対的な基準はありませんが、回収年数がその家に住み続ける年数を超えていたら見送り——これは明確な線です。パネル寿命20〜30年に対して回収20年超なら、投資としての魅力は薄いと判断するのが妥当でしょう。

Q. 電気代が今後さらに上がったら、回収は早まりますか?

A. 早まります。「買う電気の単価」を上げて計算し直してみてください。31円→35円にするだけで回収年数が数年縮みます。逆に言えば、太陽光は電気代の値上がりに対する保険としての性格を持っています。

Q. 蓄電池を足したらどうなりますか?

A. 自家消費率は上がりますが、本体費用が100万円以上乗ります。単純な回収年数では不利になるケースが多く、停電対策としての価値をどう評価するかが判断の分かれ目です。連載第11回で詳しく扱います。

まとめ:自分の数字で出せば、営業トークに揺れなくなる

  • 入力は検針票の年間使用量見積書の税込総額の2つが軸。単価は「請求額合計÷使用量合計」で出す。
  • 標準ケース(5kW・自家消費30%・150万円・補助なし)で回収19年目、20年で+15万円。
  • 補助金50万円で10年目、自家消費50%で13年目。効くレバーは補助金・相見積もり・自家消費率の3つ。
  • 容量を増やしても回収年数はほぼ変わらない——増えた分は8.3円の売電に回るため。
  • 試算表を見たらパワコン交換費と5年目以降の売電単価をまず確認する。

次回(第4回)は「太陽光発電に向いている屋根とは?方角・傾斜・面積・影の見方」——現地調査で実務者が何を見ているかという視点から、5つの条件を効き方の大きい順に解説しています。

連載を通して読む:第1回 太陽光発電の仕組み第2回 2026年に載せ得か?

電気設備の計算に使える無料ツールは電気設備の無料ツール一覧にまとめています。

※本記事のシミュレーターは2026年度FIT(1〜4年目24円/5〜10年目8.3円)を前提とした概算です。発電量の経年劣化・メンテナンス費・金利・税金は含みません。FIT単価と補助金制度は年度ごとに変わるため、契約前に必ず最新の公式情報をご確認ください。本ツールの計算結果は投資判断を保証するものではありません。