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全体像:太陽光+蓄電池が停電時に生きる条件(4パターンの実力と、4つの条件)

本連載は、電気設備の設計・施工に携わるプロが「家の電気の防災」を暮らし目線で解説するシリーズです。今回は第5回の深堀り編として、太陽光と蓄電池が災害時に「本当に生きる」条件を、組み合わせパターン別に整理します。

ペン太ペン太
太陽光も蓄電池もあるのに停電で使えなかった、なんてことあるんですか?
ハリタハリタ
実際に起きます。原因は設備の組み合わせと設定。4つの条件で決まるんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 太陽光と蓄電池の両方があるのに、停電中に電気が尽きてしまうのはなぜか。
  • 停電時に生きるコンセントの範囲は、何で決まるか。
  • カタログの容量(kWh)が大きければ、エアコンは動かせるか。
この記事でわかること
※ 本記事は連載「地震と停電にそなえる家の電気」の深堀り編です。第1回〜最終回・番外編は記事末尾のリンクからご覧いただけます。

「太陽光も蓄電池もあるのに、停電で使えなかった」が起きる理由

トピック1:「あるのに、停電で使えなかった」が起きる理由

大きな災害のあと、こんな声が必ず出ます。「うちは太陽光を載せているのに、停電中まったく使えなかった」「蓄電池を入れたのに、翌朝には空になっていた」。

設備が壊れていたわけではありません。設備の「組み合わせ」と「設定」が、災害時に生きる条件を満たしていなかっただけです。逆に言えば、条件さえ押さえれば同じ予算でも停電時の実力はまるで変わります。今回はその条件を、パターン別に見ていきます。

ここまでのポイント
  • 「太陽光を載せているのに停電中まったく使えなかった」「蓄電池を入れたのに翌朝には空になっていた」は、設備が壊れていたわけではない
  • 設備の「組み合わせ」と「設定」が、災害時に生きる条件を満たしていなかっただけ。
  • 条件さえ押さえれば、同じ予算でも停電時の実力はまるで変わる。

パターン別 ― 停電が3日続いたら、どこまで持ちこたえるか

トピック2:パターン別 ― 停電が3日続いたら、どこまで持つか

太陽光・蓄電池・EVの組み合わせは、大きく4パターンに分けられます。ポイントは「発電する力(昼)」と「ためる力(夜)」がそろっているかです。

設備の組み合わせパターン別・災害時の実力の比較図。パターン1蓄電池だけは数時間〜1日、パターン2太陽光だけは昼だけ1500Wで夜はゼロ、パターン3太陽光+停電時充電対応の蓄電池は晴れが続けば無期限、パターン4太陽光+EVのV2Hは数日から1週間規模

パターン1:蓄電池だけ ― 実力は「大きなポータブル電源」

太陽光がない家に蓄電池だけを入れた場合、停電中はためた電気が減っていく一方です。系統から充電できないため、容量を使い切ればそこで終わり。5〜7kWhクラスで冷蔵庫と照明、スマホ充電に絞れば1日程度はしのげますが、エアコンを使えば数時間です。

これは「悪い選択」ではなく期待値の問題。平常時のピークカットや電気代削減が主目的で、停電対策は「1日分の保険」と割り切るなら十分に価値があります。

パターン2:太陽光だけ ― 昼は無限、夜はゼロ

太陽光だけの家は、第5回で解説した自立運転モードに切り替えれば、晴れた昼間は専用コンセントから1500Wまで使えます。燃料切れがないのは大きな強みですが、日が沈めばゼロ。夜間は完全に停電状態に戻ります。

この構成での正解は、昼のうちにモバイルバッテリーやポータブル電源へ「充電」しておくこと。太陽光を「発電機」ではなく「充電スタンド」として使い、夜はためた電気で過ごす運用です。

パターン3:太陽光+蓄電池 ― これが本命。ただし条件つき

昼に発電して余りをため、夜はためた電気で暮らす。このループが回れば、晴れが続くかぎり事実上無期限に自給自足できます。連載を通じて紹介してきた「数日単位の停電」に、唯一まともに立ち向かえる構成です。

ただし絶対条件があります。「停電中に、太陽光から蓄電池へ充電できる構成かどうか」。ここが対応していないと、せっかく両方あってもパターン1と同じ「使い切ったら終わり」になってしまいます。

パターン4:太陽光+EV(V2H)― 容量は最大、ただし車は動かせない

EVの電池容量は家庭用蓄電池の4〜8倍。太陽光と組み合わせれば数日〜1週間規模の停電にも対応できます。ただし家で使った分だけ走行距離が減るのがトレードオフ。「避難や物資調達に車を使う可能性」と「家に電気を回す量」のバランスを、家族で決めておく必要があります。

パターン停電3日間の実力
1 蓄電池だけ系統から充電できないためた電気が減っていく一方5〜7kWhクラスで冷蔵庫・照明・スマホ充電に絞れば1日程度。エアコンを使えば数時間
2 太陽光だけ自立運転モードで専用コンセントから1500Wまで日が沈めばゼロ燃料切れがないのは強みだが、夜間は完全に停電状態に戻る
3 太陽光+蓄電池発電して余りをためるためた電気で暮らす晴れが続くかぎり事実上無期限。ただし停電中に太陽光から蓄電池へ充電できる構成であることが絶対条件
4 太陽光+EV(V2H)太陽光と組み合わせるEVの電池容量は家庭用蓄電池の4〜8倍数日〜1週間規模の停電にも対応。ただし家で使った分だけ走行距離が減る
ここまでのポイント
  • ポイントは「発電する力(昼)」と「ためる力(夜)」がそろっているか
  • 蓄電池だけの家は、系統から充電できないため容量を使い切ればそこで終わり。平常時のピークカットや電気代削減が主目的なら「1日分の保険」と割り切って十分に価値がある。
  • 太陽光だけの家は、自立運転モードで晴れた昼間に専用コンセントから1500Wまで。正解は、昼のうちにモバイルバッテリーやポータブル電源へ充電しておくこと。太陽光を「発電機」ではなく「充電スタンド」として使う。
  • 太陽光+蓄電池が本命。ただし停電中に太陽光から蓄電池へ充電できる構成かどうかが絶対条件で、対応していなければパターン1と同じ「使い切ったら終わり」。
  • 太陽光+EV(V2H)は容量が最大だが、家で使った分だけ走行距離が減る。避難や物資調達に車を使う可能性とのバランスを家族で決めておく。

条件① ハイブリッド型か単機能型か ― 停電時の充電を分ける分岐点

トピック3:条件① ハイブリッド型か単機能型か

パターン3の絶対条件に直結するのが、蓄電池の方式です。

ハイブリッド型単機能型
パワコン1台で太陽光と蓄電池を制御太陽光用と蓄電池用で2台
変換ロス少ない多め(機器を複数通るため)
停電時の太陽光充電基本的に対応機種・接続方法により異なる(要確認)
価格高め安め。既設の太陽光に後付けしやすい
向いている家これから両方入れる/パワコンが寿命(10年前後)を迎える家太陽光を入れて日が浅く、パワコンがまだ使える家

太陽光のパワーコンディショナ10年前後で交換時期を迎えます。ちょうどその時期に蓄電池を検討しているなら、パワコンを1台にまとめられるハイブリッド型が合理的。逆に設置して数年なら、まだ使えるパワコンを活かせる単機能型に分があります。

「単機能型=停電に弱い」ではなく、停電時に太陽光から充電できる接続になっているかを個別に確認するのが正しい見方です。

ここまでのポイント
  • 太陽光のパワーコンディショナは10年前後で交換時期を迎える。ちょうどその時期に蓄電池を検討しているなら、パワコンを1台にまとめられるハイブリッド型が合理的。
  • 設置して数年なら、まだ使えるパワコンを活かせる単機能型に分がある。
  • 「単機能型=停電に弱い」ではない。停電時に太陽光から充電できる接続になっているかを個別に確認するのが正しい見方。

条件② 全負荷型か特定負荷型か ― 停電時に生きるコンセントの範囲

トピック4:条件② 全負荷型か特定負荷型か

もうひとつの大きな分岐が、停電時にどこまで電気が届くかです。全負荷型は家全体のコンセントが生き、特定負荷型はあらかじめ決めた回路(たとえば冷蔵庫・リビング・寝室のコンセント)だけが生きます。

特定負荷型は安く、電気を絞る分だけ長持ちするという明確なメリットがあります。危険なのは「どの回路を非常用にするか」を業者任せにしてしまうこと。冷蔵庫、情報機器を充電する場所、夜を過ごす部屋の照明——この3つが非常用回路に入っているか、契約前に図面で確認してください。

ペン太ペン太
カタログの容量kWhが大きい機種を選べば停電に強いんですよね?
ハリタハリタ
容量だけでは判断できません。出力kWと200V対応が使える家電を決めます。
ここまでのポイント
  • 全負荷型は家全体のコンセントが生き、特定負荷型はあらかじめ決めた回路だけが生きる。
  • 特定負荷型は安く、電気を絞る分だけ長持ちするという明確なメリットがある。
  • 危険なのは「どの回路を非常用にするか」を業者任せにしてしまうこと。冷蔵庫、情報機器を充電する場所、夜を過ごす部屋の照明——この3つが非常用回路に入っているか、契約前に図面で確認する。

条件③ 容量(kWh)ではなく出力(kW)と200V ― 見落としがちな落とし穴

トピック5:条件③ 容量ではなく出力(kW)と200V

カタログでまず目に入るのは容量(kWh)ですが、停電時の使い勝手を決めるのは出力(kW・kVA)です。第2回で説明した「タンクの大きさ(kWh)と蛇口の太さ(kW)」の関係がここでも効いてきます。

自立出力の目安停電時に動かせるものの目安
2.0kVA級エアコン1台でほぼ手一杯。最低限ライン
3.0kVA級エアコン+エコキュートくらいまで
5.5kVA級エアコン+エコキュートに少し余裕。ただしIHをフルで使うには不足

さらに重要なのが200V対応です。エアコン・IH・エコキュートは200V機器。蓄電池が100V出力のみだと、容量がいくらあっても停電時にエアコンは動きません。夏や冬の停電で暑さ・寒さをしのぎたいなら、200V対応と出力は妥協できないポイントです。

参考までに、14畳のエアコン(暖房)は運転中およそ990W、起動時は1,500〜2,000Wまで跳ね上がります。ビルトインIH(3口)は最大約5,800W。起動時のピークに耐えられるかまで含めて出力を見るのがプロの見方です。

ここまでのポイント
  • カタログでまず目に入るのは容量(kWh)だが、停電時の使い勝手を決めるのは出力(kW・kVA)
  • さらに重要なのが200V対応。エアコン・IH・エコキュートは200V機器で、蓄電池が100V出力のみだと容量がいくらあっても停電時にエアコンは動かない。
  • 14畳のエアコン(暖房)は運転中およそ990W、起動時は1,500〜2,000Wまで跳ね上がる。ビルトインIH(3口)は最大約5,800W。起動時のピークに耐えられるかまで含めて出力を見る

条件④ 設定 ― 「経済モードのまま」で残量ゼロの悲劇

トピック6:条件④ 設定 ―「経済モードのまま」の落とし穴

見落とされがちですが、運転モードの設定も災害時の実力を左右します。電気代削減を優先する経済モード(深夜にためて日中に使い切る)のままだと、夕方から夜にかけて残量がほぼゼロ。その時間帯に地震が来れば、蓄電池があっても何も使えません。

防災を重視するなら、常に30%程度は非常用に残す設定にしておくこと。多くの機種で残量の下限を設定できます。また、台風など予測できる災害では接近前に手動で満充電にしておくのが鉄則です。

ここまでのポイント
  • 運転モードの設定も災害時の実力を左右する。電気代削減を優先する経済モード(深夜にためて日中に使い切る)のままだと、夕方から夜にかけて残量がほぼゼロ。
  • 防災を重視するなら、常に30%程度は非常用に残す設定にしておく。多くの機種で残量の下限を設定できる。
  • 台風など予測できる災害では、接近前に手動で満充電にしておくのが鉄則。

契約前に必ず聞く5つの質問

トピック7:契約前に必ず聞く5つの質問

ここまでの条件を、そのまま業者への質問リストにまとめました。この5つを聞けば、カタログのスペック競争ではなく「わが家が停電したときの実際の姿」で各社を比較できます。

太陽光と蓄電池の契約前に必ず聞く5つの質問。停電中も太陽光で蓄電池を充電できるか、全負荷型か特定負荷型か、停電時の出力と200V対応、停電時に自動で切り替わるか、非常用の残量を何パーセント残せるか
ここまでのポイント
  • 5つの質問を聞けば、カタログのスペック競争ではなく「わが家が停電したときの実際の姿」で各社を比較できる。

設備を入れない、という選択も合理的です

トピック8:設備を入れない、という選択も合理的です

ここまで読んで「うちには荷が重い」と感じた方へ。蓄電池は100〜200万円、V2Hは工事込みでさらに数十万円という買い物です。停電対策だけを目的に導入するのは、費用対効果としては決して良くありません。

平常時の電気代削減や太陽光の自家消費といった「ふだんのメリット」が主で、停電対策はおまけ——この順番で考えるのが健全です。防災だけが目的なら、第2回で紹介したポータブル電源+ソーラーパネルのほうが、はるかに安く同じ安心が手に入ります。賃貸でも使え、引っ越しにも持っていけます。

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ペン太ペン太
契約前の打ち合わせでは、何を聞けばいいですか?
ハリタハリタ
記事の5つの質問を業者にそのまま。防災目的ならポータブル電源も候補ですよ。
ここまでのポイント
  • 蓄電池は100〜200万円、V2Hは工事込みでさらに数十万円という買い物。停電対策だけを目的に導入するのは、費用対効果としては決して良くない
  • 平常時の電気代削減や太陽光の自家消費といった「ふだんのメリット」が主で、停電対策はおまけ——この順番で考えるのが健全。
  • 防災だけが目的なら、ポータブル電源+ソーラーパネルのほうがはるかに安く同じ安心が手に入る。賃貸でも使え、引っ越しにも持っていける。

まとめ

トピック9:まとめ

停電で生きるかどうかを決めるのは、設備の値段ではなく組み合わせと設定です。同じ予算でも、4つの条件をどう選ぶかで実力はまるで変わります。

条件見るところこうなっていないと
① 方式ハイブリッド型か単機能型か停電中に太陽光から蓄電池へ充電できないと、使い切ったら終わり
② 範囲全負荷型か特定負荷型か特定負荷なら、冷蔵庫・情報機器を充電する場所・夜を過ごす部屋の照明が非常用回路に入っているか
③ 出力容量(kWh)ではなく出力(kW・kVA)と200V対応100V出力のみだと、容量がいくらあっても停電時にエアコンは動かない
④ 設定運転モードと残量の下限経済モードのままだと、夕方から夜にかけて残量がほぼゼロ

停電時の実力を決めるもの

  • 停電時の実力は「昼に発電する力」と「夜にためた電気を使う力」がそろっているかで決まる
  • 太陽光+蓄電池でも、停電中に太陽光から充電できない構成なら「使い切ったら終わり」

契約前に図面と仕様で確認すること

  • 全負荷/特定負荷で停電時に生きるコンセントが変わる。特定負荷なら回路の中身を図面で確認
  • 容量(kWh)より出力(kVA)と200V対応。エアコンを動かしたいなら妥協しない

設定と、そもそもの選び方

  • 残量30%を残す設定にしておかないと、いざというとき空っぽ
  • 防災だけが目的ならポータブル電源+ソーラーパネルのほうが費用対効果は上

設備は買った瞬間に完成するものではありません。どの回路を非常用にするか、残量を何%残すか——決めるのは施主です。契約前の打ち合わせで図面を1枚めくり、設定画面を1度開いておく。それだけで、停電した夜の景色は変わります。

連載「地震と停電にそなえる家の電気」:第1回第2回第3回第4回第5回最終回深堀り編:感震ブレーカー完全ガイド番外編:防災グッズ買い物リスト

参考資料:エコでんち「家庭用蓄電池の機能 ハイブリッドとは?」/エネテックラボ「蓄電池の200V対応と自立出力早見表」/ソーラーメイト「全負荷型と特定負荷型の比較」

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。