技術図書館耐震クラスと耐震種別の決め方を、スライド17枚でクラス → 設置階 → 支持間隔の順に、図と表で通して確認できます。ブラウザでそのまま読めます。この資料をスライドで見る資料一覧を見る

設計事務所から「電気設備は耐震クラスAでお願いします」と言われたら、何を変えればよいでしょうか。耐震クラスは、機器を固定する強さ(設計用標準震度)の段階で、配管やケーブルラックの揺れ止め(耐震支持)は、施設の区分と設置する階でSA種・A種・B種と間隔が決まります。この記事では、建築設備耐震設計・施工指針2014年版と公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版をもとに、3つの質問と動く図で整理します。

①耐震クラスは建物の用途(特定の施設か)×機器の重要度でS・A・Bに決まり、機器の設計用標準震度が決まる、②上層階は建物の階数で2〜4層で、配管などは支持する床の階で判定し、天井から吊るものは直上階、③配線は12m以内、ケーブルラックは6・8・12m以内ごとにSA種・A種・B種の耐震支持を行い、小さいものは省略できます。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

あわせて読む:ケーブルラックの耐震支持間隔と架台|立上り部は6m以内・各階固定/仕様の設計|レースウェイの耐震支持方法について詳しく解説

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
耐震クラス 設備機器にどれだけの耐震性を持たせるかの段階(S・A・B)。設計用標準震度が決まる
設計用標準震度 機器を固定するときに見込む地震の力の大きさ(重さの何倍か)
耐震支持 配管や配線が地震で揺れたり外れたりしないようにする振止め。SA種・A種・B種がある
特定の施設 災害応急対策の拠点など、耐震性を高める施設(特記で指定。なければ一般の施設)
上層階・中間階 上層階は建物の階数で決まる上の2〜4層。1階・地階・上層階以外が中間階
建築設備耐震設計・施工指針2014年版(日本建築センター)、公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 2.1.13 によります。

参考にした書籍:

質問① 耐震クラスはどう決まる?

特定の施設の重要機器はクラスS、特定の施設の一般機器と一般の施設の重要機器はクラスA、一般の施設の一般機器はクラスBが目安です。

耐震クラスは、建物の用途(防災拠点・病院など、地震後も機能を続けるべき「特定の施設」か)と、機器の重要度(非常用発電機・消火ポンプ・受変電設備など、地震直後から使う「重要機器」か)の組み合わせで決めるのが基本です。最終的には施主と設計者が決め、設計図書に特記します。

設備機器の設計用標準震度は、上層階・屋上・塔屋でクラスS 2.0・A 1.5・B 1.0、中間階で1.5・1.0・0.6、地階・1階で1.0・0.6・0.4です。
設置場所 S A B
上層階・屋上・塔屋 2.0 1.5 1.0
中間階 1.5 1.0 0.6
地階・1階 1.0 0.6 0.4
建築設備耐震設計・施工指針2014年版の設備機器の設計用標準震度(地階・1階の水槽は1.5・1.0・0.6)。
たとえるなら
耐震クラスは、自転車の「スタンドの頑丈さ」を選ぶようなものです。
強い風の吹く高台(上層階)ほど、大事な自転車(重要機器)ほど、頑丈なスタンドとチェーンで止めます。ふだん使いの自転車を平地に置くなら、ふつうのスタンドで足ります。どこに置くか、何を止めるかで必要な強さが変わります。
ひっかけ注意
「耐震クラスA」と「A種耐震支持」は別の物差しです。
耐震クラス(S・A・B)は機器の固定に使う設計用標準震度の段階、耐震支持の種別(SA種・A種・B種)は配管やラックの振止めの強さの段階です。標準仕様書の配管等の耐震支持は、クラスではなく「特定の施設か一般の施設か」と設置場所で種別が決まります。
ここまでのポイント
  • 耐震クラスは建物の用途×機器の重要度でS・A・B
  • クラスで機器の設計用標準震度が決まる(上層階Sで2.0など)
  • クラスと耐震支持の種別(SA・A・B種)は別の物差し


質問② どの階として扱う?

上層階は4階建てなら最上階、9階建てなら上層2階、12階建てなら上層3階、15階建てなら上層4階。天井から吊る配管などは、支持している直上階の床として扱います。
建物の階数 上層階
2〜6階建 最上階
7〜9階建 上層2階
10〜12階建 上層3階
13階建以上 上層4階
中間階は、1階・地階を除く各階で上層階に該当しない階。例:10階建なら上層階は8〜10階、中間階は2〜7階。

配管や配線がどの階にあたるかは、支持している床の階で判定します。床に据えた架台から支持するものはその階、天井面から吊るものは直上階として扱います。2階の天井(3階の床スラブ)から吊ったケーブルラックは、3階の区分で耐震支持を選びます。

ひっかけ注意
「2階の天井から吊っているから2階」ではありません。
標準仕様書では、天井面より支持する配管等は直上階を適用します。上層階の境目にあたる階の天井から吊る場合は、上層階の厳しい区分になることがあるので、図面で吊り元の階を確かめます。
ここまでのポイント
  • 上層階は階数に応じて最上階〜上層4階
  • 中間階は1階・地階・上層階以外
  • 支持する床の階で判定し、天井から吊るものは直上階

質問③ 耐震支持の種別と間隔は?

横引き配線の耐震支持は、特定の施設の上層階で電気配線12m・SA種、ケーブルラック6m・SA種。特定の施設の中間階以下で12m・A種と8m・A種。一般の施設の上層階で12m・A種と8m・A種またはB種。一般の施設の中間階以下で12m・A種またはB種です。
施設・設置場所 電気配線 ラック
特定の施設・上層階/屋上/塔屋 12m SA種 6m SA種
特定の施設・中間階/1階/地階 12m A種 8m A種
一般の施設・上層階/屋上/塔屋 12m A種 8m A/B種
一般の施設・中間階/1階/地階 12m A/B種 12m A/B種
横引き配管等の耐震支持(標準仕様書 表2.1.2)。電気配線は金属管・金属ダクト・バスダクト等。数値は「以内ごと」。特記がなければ一般の施設を適用。

縦に立ち上げる配線(垂直配管等)は、電気配線は支持間隔ごとに自重を支持し、ケーブルラックは6m以下の範囲で各階ごとに耐震支持を行います(特定の施設の上層階・屋上・塔屋はSA種、それ以外はA種。表2.1.3)。横引きでは、末端から2m以内、曲がり部・分岐部の付近にも耐震支持を設け、管軸方向の揺れにも備えます。

ここまでのポイント
  • 電気配線は12m以内、ラックは6・8・12m以内ごとに耐震支持
  • 種別は施設(特定・一般)と設置場所で決まる
  • 末端2m以内・曲がり・分岐にも。立上りのラックは6m以下・各階


耐震支持を省略できる場合

呼び径82mm以下の単独配管、周長800mm以下の金属ダクト、幅400mm未満のケーブルラック、定格電流600A以下のバスダクト、つり材の長さが平均0.2m以下の配管等は、耐震支持を省略できます。
耐震支持を省略できる場合(どれか1つ)
呼び径82mm以下の単独配管
周長800mm以下の金属ダクト、幅400mm未満のケーブルラック、幅400mm以下の集合配管
定格電流600A以下のバスダクト
つり材の長さが平均0.2m以下の配管等
標準仕様書 2.1.13(3)(ア)。垂直配管等も(a)〜(c)で省略できます。
ひっかけ注意
省略できるのは「耐震支持」だけです。
条件にあてはまっても、配線の重さを支えるふつうの支持(金属管2m以下、ケーブルラック水平2m以下など)は必要です。「耐震支持が要らない=支持が要らない」ではありません。
ここまでのポイント
  • 82mm以下の単独配管・800mm以下の金属ダクト・400mm未満のラック・600A以下のバスダクト
  • つり材の長さが平均0.2m以下も省略可
  • 省略できるのは耐震支持だけ。ふつうの支持は必要
ひとことで言うと:「耐震クラスは機器の震度の段階。配線の耐震支持は、施設の区分と支持する床の階でSA・A・B種と間隔が決まる。天井吊りは直上階」。

マニュアルでも詳しく解説しています

電気設備設計で迷わないために|経験者が教える実践的ノウハウマニュアル(E-note)

よくある質問

耐震クラスはどう決まりますか?

建物の用途(特定の施設か)と機器の重要度の組み合わせで、S・A・Bに決まるのが基本です。最終的には施主と設計者が決めて設計図書に特記します。

耐震クラスと耐震支持の種別の違いは?

耐震クラス(S・A・B)は設備機器の設計用標準震度の段階、耐震支持の種別(SA種・A種・B種)は配管やラックの振止めの強さの段階です。

上層階はどこからですか?

2〜6階建は最上階、7〜9階建は上層2階、10〜12階建は上層3階、13階建以上は上層4階です。

天井から吊るケーブルラックは何階として扱いますか?

支持している床の階で判定するので、天井面から吊るものは直上階を適用します(標準仕様書 表2.1.2 注)。

耐震支持を省略できるのは?

呼び径82mm以下の単独配管、周長800mm以下の金属ダクト、幅400mm未満のケーブルラック、定格電流600A以下のバスダクト、つり材の長さが平均0.2m以下の配管等です。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
耐震クラスA=A種耐震支持 クラスは機器の震度、種別は振止めの強さ
2階の天井から吊るものは2階 天井から吊るものは直上階
ケーブルラックも12mごと ラックは6・8・12mと区分で変わる
1階は耐震支持が要らない 1階・地階も12m以内ごとにA種またはB種
省略条件なら支持は不要 省略できるのは耐震支持だけ
「クラスと施設区分 → 設置する階 → 種別と間隔 → 省略できるか」の順で確かめます。

参照:建築設備耐震設計・施工指針2014年版(日本建築センター)、公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 2.1.13(国土交通省)。実際の適用は設計図書の特記によります。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。