「高調波」という言葉は聞いたことがあっても、何がいけないのか、結局何をすればよいのかが分かりにくい——という方は多いのではないでしょうか。高調波は、いわばきれいな電気の流れに混じる“異物”のようなものです。
本記事では、高調波の定義(基本波の整数倍の成分)から、発生源・影響、対策方法、そして高調波流出電流計算の検討が必要かどうかの判定までを、図解付きで分かりやすく解説します。
はりた
いい質問だね!高調波っていうのは、通常の電気の流れには含まれない“異物”みたいなものなんだ。たとえば川の流れにゴミが混じってるようなイメージかな。
見習いペン太
えぇっ、そんなのが流れてたら、配線がつまったりしませんか!?
はりた
その通り!高調波が増えると、機器の誤作動やケーブルの発熱、電圧の歪みなんかが起きやすくなるんだよ。だから発生源からどれくらい流れているか、きちんと調べて対策することが大事なんだ。
見習いペン太
なるほど~!きれいな電気を流すって、思った以上に大切なんですね!
本記事のおすすめの方
- 高調波という単語と聞いた方
- 高調波の何がいけないのか気になった方
- 結局何をしないといけないのかわからない方など
▲ 高調波の仕組み・発生源・影響
高調波の定義

🔍 高調波とは?基本的な定義
高調波とは、「ひずみ波交流の中に含まれる、基本波の整数倍の周波数を持つ正弦波成分」のことです。

例えば、商用電源の基本波周波数を東日本では50Hz、西日本では60Hzとします。
この基本波を基準としたときに、
-
2倍 ⇒ 第2次調波(100Hz/120Hz)
-
3倍 ⇒ 第3次調波(150Hz/180Hz)
-
5倍 ⇒ 第5次調波(250Hz/300Hz)

といったように、整数倍の周波数を持つ成分が「高調波」と呼ばれます。
そして、これらの高周波成分を含んで流れる電流のことを 「高調波電流」 といいます。
見習いペン太
はりた先輩、結局、高調波ってどういうことなんですか?
見習いペン太
えーと、東日本が50Hzで、西日本が60Hzですよね!
はりた
そのとおり!この50Hzや60Hzが“基本波”なんだ。それを基準にして、2倍・3倍の周波数を持つ成分を「高調波」って呼ぶんだよ。
見習いペン太
つまり、電気に“余計な周波数”が混ざってるってことですね!?
はりた
そうそう!イメージで言えば、僕がリンゴジュースを頼んだのに、いろんな果物を混ぜられてミックスジュースになっちゃうみたいな感じかな🍎🍌🥝
見習いペン太
えっ…それはちょっとイヤかもです…!でも、たしかに純粋な“電気の味”を守るには、高調波の対策って大事ですね!
🌊 高調波のイメージとは?
電源系統とは、発電所から複数の需要家(ビルや工場など)へ電力を供給する仕組みです。
この電源系統において「高調波対策」がされていない場合、各需要家に接続されている機器から高調波電流が配電線を通じて逆流してしまいます。
🔻 イメージでいうと…
川の上流から下流にかけて、各地点でゴミが少しずつ流れ込み、最終的に川全体が汚れてしまうような状態です。
このような現象が進むと、他の需要家の電気機器に悪影響を及ぼす恐れがあるため、
高調波抑制対策技術指針(JEAG 9702-2013) に基づいて、電気設計や機器選定における高調波対策の実施が求められています。
📉 高調波による主な影響とは?
見習いペン太
ねぇ、はりた先輩!高調波って結構やっかいなものらしいけど、具体的にどんな悪影響があるの?
はりた
いい質問だね、ペン太くん!高調波は目に見えないけど、電気設備にいろいろな不具合を引き起こす原因になるんだよ⚡
📉 高調波による主な影響とは?
🔹 コンデンサ設備への影響
・高調波電流が過剰に流入すると、コンデンサ本体や直列リアクトルが異常発熱したり、
・「ブーン…」という騒音が発生することがあります。
🔹 変圧器・モーター(回転機器)への影響
・高調波成分によって銅損(電気抵抗による熱損失)が増加し、
・機器の過熱や異音の発生、寿命の短縮といったトラブルを招くことがあります。
見習いペン太
なるほど~。見えない電気の“ノイズ”みたいなものでも、設備にとってはかなりのストレスなんだね…!
はりた
そうそう!だから高調波を抑えるためのフィルターや対策設計はとっても大切なんだよ🛠️
高調波の発生源となる主な機器
見習いペン太
はりた先輩、高調波って、どんな機器から発生するんですか?
はりた
いい質問だね!高調波は、主にインバーター機器やLED照明、UPS、生産ラインの制御機器などから発生するんだ。
見習いペン太
えっ、それってどの建物にもあるような機器ばかりじゃないですか!?
はりた
その通り!だからこそ、高調波を外に流さないように、各機器ごとにリアクトルやフィルターなどで対策をする必要があるんだよ。
見習いペン太
なるほど〜、高調波を出さないようにする工夫が大切なんですね!
主な高調波発生機器一覧
高調波発生機器
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など

⚠ 高調波の発生を防ぐには?対策の基本を押さえよう
見習いペン太
はりた先輩、高調波を出さないようにするにはどうしたらいいんですか?
はりた
発生する機器によって対策方法が異なるんだ。たとえば、リアクトルや高調波フィルターを使ったり、高調波対策機能付きの機器を選ぶ方法もあるよ!
見習いペン太
ってことは…全部の機器に対策しないとダメなんですか!?
はりた
そうとも限らないよ。高調波を多く発生させる機器だけをピンポイントで対策したり、まとめて一括抑制する方法もあるんだ。
💡 効率的な対策には「バランス」が重要
過剰な対策はコストアップにつながり、逆に不十分だとトラブルや設備障害の原因となります。
そのため、以下のようなポイントを押さえて、最適な対策レベルを設計段階で協議することが大切です。
-
高調波発生源の特定と容量評価
-
対象機器の使用状況(昼夜・連続運転など)
-
他設備や電源系統への影響範囲
-
運用・点検体制と予算バランス
見習いペン太
でも、なんだかコストがすごくかかりそうな気がします…💦
はりた
そのとおり。過不足なく、ちょうどいい対策を行うことが一番大事だよ。事前の負荷調査や協議がカギなんだ!
高調波の対策方法の種類

高調波の対策方法
| インバータ用リアクトル(ACL、DCL) |
交流側にリアクトル(ACL)を設置または直流側にリアクトル(DCL)を設置 |
高圧進相
コンデンサ設備 |
高圧側にリアクトルとコンデンサを設置 |
アクティブフィルタ
(能動フィルタ) |
高調派電流の逆位相の電流を流すことにより高調波を相殺する |
| 多相化変圧器 |
12パルス効果で高調波電流を低減。12K±の高調波次数が発生する。(K:正の整数) |
低圧進層
コンデンサ設備 |
低圧側にリアクトルとコンデンサを設置 |
ACフィルタ
(受動フィルタ) |
5次、7次、11次の3種類のフィルタ(コンデンサとリアクトルの組合せ)高調波電流を吸収する |
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)の目的
電力系統に接続される機器を保護するため、高圧又は特別高圧で受電する
需要家からの高調波電流流出を抑制する。
見習いペン太
建物からどれだけ高調波が流れてるかって、計算でちゃんと出せるんですね!
はりた
そうだよ!高調波流出量は、計算式に基づいてきちんと算出して、必要があれば適切な対策をとることが求められるんだ。
高調波の設計|高調波流出電流計算の解説[簡略方法の解説]ついて詳しく解説高調波対策の実務では、まず「自分の建物で高調波流出電流計算が必要かどうか」を判断し、必要なら等価容量を計算します。とはいえ手順が分かりに...
指針の経緯
| 平成6年 |
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-1997)を制定。 |
| 平成25年 |
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に改訂され、平成26年4月に発刊。 |
はりた
いい質問だね!実は平成25年に規制内容が見直されて、一部が緩和されたんだよ。
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)指針の改訂内容
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)の改訂内容
- 表現が分かりにくい箇所の改善
- ビル設備の需要家対象に、条件付で規制緩和
(高圧受電、進相コンデンサがL付、換算係数Ki=1.8を超える負荷がない事が条件)
- 高調波発生機器の製造業者は、それが高調波発生機器である事を明示する事が義務化
- 負荷の回路分類にあらたな分類を追加
- ビル設備の標準的稼働率の設定、及び補正係数適用範囲の見直し自家用発電機を有する需要家向けに、契約電力相当値を採用
- 直列リアクトル付進相コンデンサを設置する場合の、高調波低減効果に関する規定追加
はりた
大丈夫だよ!今はね、以前より条件を満たすだけでクリアできる場合もあるから、制度をうまく活用するのがポイントなんだ!
高調波流出電流計算の手順
計算のフロー
高調波流出電流計算が必要な場合、計算のフローは、下記図(高調波抑制対策技術指針JEAG9702-2018)より制定されており、手順にそって計算を行い可否の判定を行います。
高調波流出電流計算のフロー
(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
ステップ1
(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
- 高調波発生機器の抽出
- 機器毎の回路種別と換算係数の確認
(2)検討要否の判定 ←該当すれば計算の必要なし!
検討要否の判断項目
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討のポイント
- 建物の条件および電気設備の仕様等が上記4項目を満足していれば、高調波流出計算の検討終了となります。
- 高圧受電、ビル、コンデンサがリアクトル付の確認は図面にて確認が可能ですが、換算係数については機器のメーカー仕様を確認する必要があります。
換算係数表の見方とポイント
換算係数表の見方とポイント
- 高調波発生機器は電源回路種別に応じて”換算係数”が決まっています
- この換算係数が大きいほど高調波の流出量が多いということになります
- この換算係数 Kⅰ=1.8【6パルス変換装置リアクトルあり】以下の場合条件に応じ計算しなくてもよいという判断が可能です。
- 機器の換算係数は製造メーカーに確認する必要があります

回路種別毎の換算係数と高調波電流発生量(抜粋)
換算係数の確認結果 ←重要ポイント
(2)検討要否の確認
検討要否の4項目を確認しすべてに該当すれば、検討終了とすることができます。
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討結果の判定
(判定内容により検討終了もしくは、次の検討に移ります)
| 高圧受電であるか? |
〇 |
| ビルであるか? |
〇 |
| 進相コンデンサが全て直列リアクトル付であるか? |
〇 |
| 換算係数Ki=1.8を超過する機器はないか? |
〇 |
関連記事
▲ 高調波の対策方法と検討要否の判定
よくある質問(FAQ)
Q. 高調波とは何ですか?
A. ひずみ波交流に含まれる、基本波(50Hz/60Hz)の整数倍の周波数を持つ正弦波成分のことです。第2次(100/120Hz)、第3次(150/180Hz)、第5次(250/300Hz)などがあり、これらを含んで流れる電流を高調波電流といいます。
Q. 高調波は何が問題なのですか?
A. 機器の誤作動、ケーブルの発熱、電圧の歪みなどを引き起こします。電力系統に流出すると他の機器にも悪影響を与えるため、JEAG9702-2013で高圧・特別高圧受電需要家からの流出抑制が求められています。
Q. 高調波はどんな機器から発生しますか?
A. インバーター機器、LED照明、UPS(無停電電源装置)、生産ラインの制御機器などから発生します。
Q. 高調波流出電流の計算は必ず必要ですか?
A. 次の4項目をすべて満たせば計算は不要です。①高圧受電である②用途がビルである③進相コンデンサが全て直列リアクトル付④換算係数Kiが1.8を超過する機器がない。①〜③は図面で確認でき、④は機器メーカーに確認します。
まとめ
高調波ってなに?
高調波とは。
- 周波数成分をもつ波を基準としたとき、その整数倍の波を「高調波」といいます
- 基本波周波数を50Hz(東日本)とした場合、第3次調波は150Hzとなります
- 150Hz等より流れる電流を高調波電流という
主な発生機器
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)の主な改訂内容
- 表現が分かりにくい箇所の改善
- ビル設備の需要家対象に、条件付で規制緩和
(高圧受電、進相コンデンサがL付、換算係数Ki=1.8を超える負荷がない事が条件)
- 高調波発生機器の製造業者は、それが高調波発生機器である事を明示する事が義務化
- 負荷の回路分類にあらたな分類を追加
- ビル設備の標準的稼働率の設定、及び補正係数適用範囲の見直し自家用発電機を有する需要家向けに、契約電力相当値を採用
- 直列リアクトル付進相コンデンサを設置する場合の、高調波低減効果に関する規定追加
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