高調波を垂れ流さない
高調波の発生原因ってなに?
対策方法はあるの?
- 高調波という単語と聞いた方
- 高調波の何がいけないのか気になった方
- 結局何をしないといけないのかわからない方など
高調波の定義

🔍 高調波とは?基本的な定義
高調波とは、「ひずみ波交流の中に含まれる、基本波の整数倍の周波数を持つ正弦波成分」のことです。
例えば、商用電源の基本波周波数を東日本では50Hz、西日本では60Hzとします。
この基本波を基準としたときに、
-
2倍 ⇒ 第2次調波(100Hz/120Hz)
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3倍 ⇒ 第3次調波(150Hz/180Hz)
-
5倍 ⇒ 第5次調波(250Hz/300Hz)

といったように、整数倍の周波数を持つ成分が「高調波」と呼ばれます。
そして、これらの高周波成分を含んで流れる電流のことを 「高調波電流」 といいます。
🌊 高調波のイメージとは?
電源系統とは、発電所から複数の需要家(ビルや工場など)へ電力を供給する仕組みです。
この電源系統において「高調波対策」がされていない場合、各需要家に接続されている機器から高調波電流が配電線を通じて逆流してしまいます。
🔻 イメージでいうと…
川の上流から下流にかけて、各地点でゴミが少しずつ流れ込み、最終的に川全体が汚れてしまうような状態です。
このような現象が進むと、他の需要家の電気機器に悪影響を及ぼす恐れがあるため、
高調波抑制対策技術指針(JEAG 9702-2013) に基づいて、電気設計や機器選定における高調波対策の実施が求められています。
📉 高調波による主な影響とは?
🔹 コンデンサ設備への影響
・高調波電流が過剰に流入すると、コンデンサ本体や直列リアクトルが異常発熱したり、
・「ブーン…」という騒音が発生することがあります。
🔹 変圧器・モーター(回転機器)への影響
・高調波成分によって銅損(電気抵抗による熱損失)が増加し、
・機器の過熱や異音の発生、寿命の短縮といったトラブルを招くことがあります。
高調波の発生源となる主な機器
主な高調波発生機器一覧
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など

⚠ 高調波の発生を防ぐには?対策の基本を押さえよう
💡 効率的な対策には「バランス」が重要
過剰な対策はコストアップにつながり、逆に不十分だとトラブルや設備障害の原因となります。
そのため、以下のようなポイントを押さえて、最適な対策レベルを設計段階で協議することが大切です。
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高調波発生源の特定と容量評価
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対象機器の使用状況(昼夜・連続運転など)
-
他設備や電源系統への影響範囲
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運用・点検体制と予算バランス
高調波の対策方法の種類

インバータ用リアクトル(ACL、DCL) | 交流側にリアクトル(ACL)を設置または直流側にリアクトル(DCL)を設置 |
高圧進相 コンデンサ設備 |
高圧側にリアクトルとコンデンサを設置 |
アクティブフィルタ (能動フィルタ) |
高調派電流の逆位相の電流を流すことにより高調波を相殺する |
多相化変圧器 | 12パルス効果で高調波電流を低減。12K±の高調波次数が発生する。(K:正の整数) |
低圧進層 コンデンサ設備 |
低圧側にリアクトルとコンデンサを設置 |
ACフィルタ (受動フィルタ) |
5次、7次、11次の3種類のフィルタ(コンデンサとリアクトルの組合せ)高調波電流を吸収する |
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)
電力系統に接続される機器を保護するため、高圧又は特別高圧で受電する
需要家からの高調波電流流出を抑制する。

平成6年 | 高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-1997)を制定。 |
平成25年 | 高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に改訂され、平成26年4月に発刊。 |
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)指針の改訂内容
- 表現が分かりにくい箇所の改善
- ビル設備の需要家対象に、条件付で規制緩和
(高圧受電、進相コンデンサがL付、換算係数Ki=1.8を超える負荷がない事が条件) - 高調波発生機器の製造業者は、それが高調波発生機器である事を明示する事が義務化
- 負荷の回路分類にあらたな分類を追加
- ビル設備の標準的稼働率の設定、及び補正係数適用範囲の見直し自家用発電機を有する需要家向けに、契約電力相当値を採用
- 直列リアクトル付進相コンデンサを設置する場合の、高調波低減効果に関する規定追加
高調波流出電流計算の手順
高調波流出電流計算が必要な場合、計算のフローは、下記図(高調波抑制対策技術指針JEAG9702-2018)より制定されており、手順にそって計算を行い可否の判定を行います。

(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
- 高調波発生機器の抽出
- 機器毎の回路種別と換算係数の確認
(2)検討要否の判定 ←該当すれば計算の必要なし!
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
- 建物の条件および電気設備の仕様等が上記4項目を満足していれば、高調波流出計算の検討終了となります。
- 高圧受電、ビル、コンデンサがリアクトル付の確認は図面にて確認が可能ですが、換算係数については機器のメーカー仕様を確認する必要があります。
換算係数表の見方とポイント
- 高調波発生機器は電源回路種別に応じて”換算係数”が決まっています
- この換算係数が大きいほど高調波の流出量が多いということになります
- この換算係数 Kⅰ=1.8【6パルス変換装置リアクトルあり】以下の場合条件に応じ計算しなくてもよいという判断が可能です。
- 機器の換算係数は製造メーカーに確認する必要があります
換算係数の確認結果 ←重要ポイント
検討要否の4項目を確認しすべてに該当すれば、検討終了とすることができます。
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討結果の判定
(判定内容により検討終了もしくは、次の検討に移ります)
高圧受電であるか? | 〇 |
ビルであるか? | 〇 |
進相コンデンサが全て直列リアクトル付であるか? | 〇 |
換算係数Ki=1.8を超過する機器はないか? | 〇 |
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まとめ
高調波とは。
- 周波数成分をもつ波を基準としたとき、その整数倍の波を「高調波」といいます
- 基本波周波数を50Hz(東日本)とした場合、第3次調波は150Hzとなります
- 150Hz等より流れる電流を高調波電流という
主な発生機器
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など
高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)の主な改訂内容
- 表現が分かりにくい箇所の改善
- ビル設備の需要家対象に、条件付で規制緩和
(高圧受電、進相コンデンサがL付、換算係数Ki=1.8を超える負荷がない事が条件) - 高調波発生機器の製造業者は、それが高調波発生機器である事を明示する事が義務化
- 負荷の回路分類にあらたな分類を追加
- ビル設備の標準的稼働率の設定、及び補正係数適用範囲の見直し自家用発電機を有する需要家向けに、契約電力相当値を採用
- 直列リアクトル付進相コンデンサを設置する場合の、高調波低減効果に関する規定追加