技術図書館高調波流出電流計算を9枚のスライドで読む発生機器の抽出 → 検討要否の判定 → 等価容量の計算まで、図解つきで通して確認できます。スライドを見る資料一覧を見る

高調波流出電流計算というと身構えますが、実際に電卓を叩くところまで進む物件は多くありません。指針の手順は第1ステップ(等価容量で判定)と第2ステップ(流出電流で判定)に分かれていて、ほとんどは第1ステップで終わります。この記事では、その第1ステップ=いわゆる簡略方法を、適用範囲の確認から発生機器の抽出、換算係数の確認、検討要否の判定、等価容量との比較まで、計算例つきで順に追いかけます。

結論

第1ステップには3つの出口があります。そこに当たれば流出電流の計算は不要です。

結論:第1ステップには3つの出口があり、当たれば流出電流の計算は不要。1相あたりの入力電流20A以下の機器は拾わない。換算係数Kiは3.4から0.25まで。検討不要の条件は5つ。等価容量P0=Σ(Ki×Pi)、条件つきで×0.9。6.6kV受電の限度値は50kVA、22・33kVは300kVA、66kV以上は2,000kVA
結論:出口は3つ。20A以下は拾わず、Kiは3.4〜0.25。5条件をすべて満たせば検討終了、満たさなければP0=Σ(Ki×Pi)を限度値と比べます。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
第1ステップの道すじ:①適用範囲の確認、②発生機器の抽出、③換算係数Kiの確認、④検討要否の判定、⑤等価容量と限度値の比較。出口A(適用範囲外)、出口B(5条件すべて満たす)、出口C(等価容量が限度値以下)のどれかで降りれば検討終了。どれにも当たらなければ第2ステップで流出電流を計算する
途中で出口A・B・Cに当たれば、そこで検討終了です。①〜⑤が第1ステップ=この記事で扱う範囲です。
この記事で読めるようになる用語:高調波進相コンデンサ直列リアクトル力率

そもそも計算が要るのか(適用範囲)

高調波流出電流計算は、高圧または特別高圧で受電する需要家が対象です。そのうえで、すべての工事で必要になるわけではありません。指針が適用されるのは次の3つの場合です。

高調波流出電流計算が必要になる場面:新設、高調波発生機器の新設・増設、機器の更新(同じ容量の入れ替えも含む)、契約電力相当値または受電電圧の変更は対象。減設によって契約電力相当値が下がるだけの変更は対象外
新設・機器の新設/増設/更新・契約や受電電圧の変更は対象。減設だけは対象外です。
新設○ 対象
何に影響するか建物の高調波発生機器が、はじめてまとめて系統につながります。等価容量も流出電流も、ゼロから全部を積み上げることになります。
どの検討に使うか受電設備の計画そのものに使います。発生機器の対策(リアクトル付の指定)、進相コンデンサと直列リアクトルの仕様を設計の段階で決め、計算書は電力会社への申込みに添えます。
見る資料負荷リスト、機器の仕様(回路種別)、契約電力相当値、受電電圧
高調波発生機器の新設・増設○ 対象
何に影響するか足した機器の Ki×Pi だけ等価容量 P0 が増えます。定格入力容量の合計も増えるので、条件⑤の比率も上がります。
どの検討に使うか既存分を含めた等価容量の計算し直しと、条件④(Kiが1.8を超える機器がない)・⑤(比率35%以下)の確認に使います。限度値を超えれば第2ステップです。
見る資料既存の計算書、足す機器の仕様
高調波発生機器の更新○ 対象
何に影響するか容量が同じでも、回路種別が変われば Ki が変わります。リアクトル付に替えれば3.4→1.8で下がり、対策のない機種に替わると上がります。
どの検討に使うか更新前と更新後の Ki×Pi の差を計算書に反映し、条件④と等価容量を確かめ直すのに使います。
見る資料更新前後の機器の仕様(特記事項欄)
契約電力相当値の更新○ 対象
何に影響するか流出電流の上限値は「1kWあたりの上限値×契約電力相当値」です。契約電力相当値が増えれば上限値(流してよい量)も増え、減れば厳しくなります。条件⑤の比率の分母でもあります。
どの検討に使うか条件⑤の比率の計算と、第2ステップの上限値の計算に使います。
見る資料契約電力相当値(変更前・変更後)
受電電圧の更新○ 対象
何に影響するか限度値(6.6kV:50kVA/22・33kV:300kVA/66kV以上:2,000kVA)と、1kWあたりの上限値が電圧ごとに変わります。6.6kVから特別高圧になると条件①(高圧受電)を満たさなくなり、×0.9も使えません。
どの検討に使うか条件①の判定、等価容量と比べる限度値、第2ステップの上限値の選び直しに使います。
見る資料変更後の受電電圧
減設による変更× 対象外
何に影響するか機器を減らして契約電力相当値が下がるだけの変更は、指針の適用から外されています(計算の対象外)。
どの検討に使うか計算書の提出は要りません。ただし同時に機器の入れ替えや追加があれば、それは「更新」「増設」として対象になります。
見る資料変更の中身が本当に減設だけかどうか
計算しない

出典:高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン、JEAG 9702 高調波抑制対策技術指針(2023年版)。下のボタンで、その場面で関係する手順へ移れます。

ペン太ペン太
空調機を同じ容量で入れ替えるだけでも計算が要るんですか?
ハリタハリタ
対象になります。容量が同じでも、リアクトルの有無が変われば換算係数が変わるからです。
たとえるなら
適用範囲は「家の増改築の届け出」
家を建てるとき、増築するとき、設備を入れ替えるときは届け出が要りますが、部屋を減らすだけなら要りません。高調波の計算も、新設・増設・更新・契約の変更では必要で、減設だけなら不要です。
ここまでのポイント
  • 対象は高圧・特別高圧で受電する需要家
  • 新設、高調波発生機器の新設・増設・更新、契約電力相当値や受電電圧の更新が対象
  • 減設によって契約電力相当値が下がるだけの変更は対象外
  • 同じ容量の更新でも、換算係数が変われば結果は変わる


全体の流れ ― 第1ステップとは何か

指針の手順は2段階です。第1ステップは等価容量という「換算した容量」で判定するだけの簡単な段階、第2ステップが次数ごとの流出電流を実際に計算する段階です。この記事が扱う簡略方法は、第1ステップにあたります。

第1ステップと第2ステップの手間の比較:第1ステップは図面・負荷リスト・仕様書からKi×Piを足して等価容量を出すだけで早く判定できる。第2ステップは最大稼働率・補正率・契約電力相当値も使い、5次・7次・11次…と次数ごとに流出電流を計算するので時間がかかる
第1ステップは掛け算と足し算で判定でき、第2ステップは次数ごとに計算します。
ステップ やること 使うもの 終われる条件
第1ステップ 発生機器の抽出 → 換算係数の確認 → 検討要否の判定 → 等価容量の比較 図面・負荷リスト・機器の仕様書 条件を満たす、または限度値以下
第2ステップ 次数ごとの流出電流を計算し、上限値と比較 稼働率・補正率・契約電力相当値 上限値以下
第2ステップの考え方は高調波ってなに?発生原因と対策内容で扱っています。

💡 「簡略方法」は計算を省くことではない

簡略方法という言い方から「ざっくり計算してよい」と読まれることがありますが、そうではありません。流出電流を計算する必要があるかどうかを、少ない手間で判定する手順のことです。判定の結果、必要になれば第2ステップで正規の計算をします。

たとえるなら
第1ステップは「空港の手荷物検査のX線」
まず全部の荷物をX線に通し(第1ステップ)、気になる荷物だけを開けて調べます(第2ステップ)。最初から全部の荷物を開けるのは遠回りです。
ここまでのポイント
  • 手順は第1ステップ(等価容量で判定)と第2ステップ(流出電流で判定)の2段階
  • 簡略方法=第1ステップ。計算の要否を少ない手間で判定する手順
  • 第1ステップには「適用範囲外」「条件を満たす」「限度値以下」の3つの出口がある
  • 図面と機器の仕様書があれば、第1ステップは判断できる

ステップ1 ― 高調波発生機器を抽出する

最初の作業は、建物の負荷から高調波発生機器を拾い出すことです。拾うだけなら負荷リストでできますが、対策がされているかどうかは負荷リストには書かれていません。そこが実務でいちばん時間のかかるところです。

建物の中の高調波発生機器の位置:①屋上の空調室外機、②エレベーター、③ホールの調光盤、④電気室のUPS、⑤駐車場のEV充電器。各機器から出た高調波が幹線と引込線を通って配電線へ流れ出す。1相あたりの入力電流20A以下の機器は拾わない
空調室外機・エレベーター・調光盤・UPS・EV充電器。各機器から出た高調波は、引込線を通って配電線へ出ていきます。
負荷リストのふるい分け:空調室外機(インバータ)とUPSは整流回路があるので拾う。直入れの給水ポンプは整流回路がないので拾わない。1相5Aのインバータ換気扇は20A以下なので拾わない。拾った機器は台数と定格入力容量をまとめる
整流回路がない機器と、1相20A以下の機器はふるいから落ちます。
区分 主な機器 備考
インバータ機器 空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータ 建物にほぼ必ずある。台数が多い
電源装置 UPS、直流電源装置、整流装置 リアクトルの有無を仕様書で確認
医療機器 MRI、CT、X線装置 病院では容量が大きく効いてくる
重機・搬送 クレーン、巻上機 サイリスタ制御のものは換算係数が大きい
調光機器 調光盤のあるもの ホール・劇場で拾い漏れやすい
生産設備 工場用生産機器、サーボアンプ 汎用インバータとサーボアンプ単体は全容量が対象
出典:高調波抑制対策技術指針。1相あたりの入力電流が20A以下の機器は、JIS C 61000-3-2により機器側で対策済みのため適用範囲外です。

仕様書のどこを見るか

対策の有無は、機器の仕様書の特記事項欄に書かれていることが多くあります。「高調波抑制リアクトル付」といった記載があれば対策ありと判断できます。記載がなければ、メーカーへの照会が必要です。

ビル用マルチエアコンの仕様書の例を上から読むと、特記事項に「高調波抑制リアクトル付(直流側)」。ここから、対策あり、換算係数Ki=1.8、Pi=13.1kVA×6台=78.6kVAが読み取れる。記載がなければメーカーに照会する
特記事項の「高調波抑制リアクトル付(直流側)」から、Ki=1.8 と Pi が決まります。
ペン太ペン太
負荷リストに「インバータ」と書いてあれば、それで足りますか?
ハリタハリタ
足りません。リアクトルが付いているかどうかで換算係数が3.4にも1.8にもなるので、そこは仕様書で確かめます。
たとえるなら
負荷リストは「名簿」、仕様書は「健康診断書」
名簿で対象の人は拾えても、持病があるかどうか(対策の有無)は健康診断書にしか書いてありません。だから仕様書の特記事項まで見に行きます。
ここまでのポイント
  • 負荷リストから高調波発生機器を拾い、台数と定格入力容量をまとめる
  • 1相あたりの入力電流20A以下の機器は適用範囲外(JIS C 61000-3-2)
  • 対策の有無は機器の仕様書の特記事項欄で確認する
  • 記載がなければメーカーに照会して回路種別を確定させる


ステップ2 ― 換算係数 Ki を確認する

換算係数 Ki は、その機器の容量を「三相ブリッジ6パルス変換装置の容量」に換算するための倍率です。同じ容量でも、リアクトルが付いていれば高調波は少なくなるので、係数も小さくなります。この係数は図面からは読み取れません。回路種別をメーカーに確認するのが基本です。

インバータの回路:電源、交流リアクトルACL、整流器、直流リアクトルDCL、平滑コンデンサ、インバータ、モータ。リアクトルなしでは電源側の電流がひずみKi=3.4、ACLを入れると波がなめらかになりKi=1.8、ACLとDCLの両方で1.4
リアクトルを入れるほど電源側の電流の波がなめらかになり、Ki は3.4→1.8→1.4と下がります。
同じ10kVAの機器を6パルス変換装置の容量に換算すると:リアクトルなし(Ki3.4)34kVA、交流側リアクトル(1.8)18kVA、直流側リアクトル(1.8)18kVA、交・直流側(1.4)14kVA、12パルス(0.5)5kVA、24パルス(0.25)2.5kVA
同じ10kVAの機器でも、換算すると34kVAから2.5kVAまで変わります。
回路種別 換算係数 Ki どういう機器か
6パルス変換装置 リアクトルなし 3.4 対策のない汎用インバータ、古いUPSなど
6パルス変換装置 リアクトル付(交流側) 1.8 ACLを入れた状態
6パルス変換装置 リアクトル付(直流側) 1.8 DCLを入れた状態
6パルス変換装置 リアクトル付(交・直流側) 1.4 ACLとDCLの両方を入れた状態
12パルス変換装置 0.5 多相化変圧器を使い、5次・7次を打ち消す
24パルス変換装置 0.25 さらに低い次数まで打ち消す
出典:高調波抑制対策技術指針 表201-2-1(回路種別ごとの換算係数・抜粋)。表には他の回路種別も載っています。

💡 Kiが下がると、二重に効く

換算係数が下がると、等価容量 P0 が小さくなって第1ステップで終われる可能性が上がります。さらに、検討要否の条件にある「Kiが1.8を超える機器がない」も満たしやすくなります。リアクトルを1台足すかどうかの判断は、機器の価格だけでなくそのあとの検討の手間まで含めて比べると判断しやすくなります。

たとえるなら
換算係数は「カロリーの換算」
同じ100gでも、野菜と揚げ物では熱量がまるで違います。同じ10kVAでも、回路のつくりで高調波の出方が違うので、Ki を掛けて「6パルス何kVA分か」にそろえてから足します。
ここまでのポイント
  • Ki は機器の容量を6パルス変換装置の容量に換算する倍率
  • 6パルス・リアクトルなし3.4/交流側または直流側1.8/交・直流側1.4
  • 12パルス0.5/24パルス0.25
  • 回路種別は図面では分からない。メーカーに照会して確定させる


ステップ3 ― 検討要否を判定する

ここが簡略方法の山場です。条件をすべて満たせば、等価容量を計算せずに検討終了にできます。逆に、ひとつでも欠ければ等価容量の計算に進みます。

検討要否の5条件:①高圧受電、②用途がビル、③進相コンデンサがすべて6%直列リアクトル付、④換算係数Kiが1.8を超える機器がない、⑤高調波発生機器の比率が35%以下。物件1はすべて満たして検討終了、物件2は④がそろわず等価容量の計算に進む
物件1は5つすべて○で検討終了。物件2は④がそろわず、等価容量の計算へ進みます。
条件 内容 確認する資料
① 受電方式 高圧受電であること 単線結線図
② 建物用途 用途がビルであること 用途・申請区分
③ 進相コンデンサ すべて6%直列リアクトル付であること 単線結線図・機器表
④ 換算係数 Kiが1.8を超える機器がないこと 機器のメーカー仕様
⑤ 発生機器の比率 高調波発生機器の比率(定格入力容量の合計÷契約電力相当値×100)が35%以下であること 負荷リスト・契約電力相当値
条件は「すべて満たす」ことが必要で、4つ満たしただけでは終了になりません。

⚠ 2023年版で変わったところ

  1. 条件③の「直列リアクトル付」は6%直列リアクトル付を指し、13%直列リアクトル付は該当しないことが明確化されました(JIS C 4902-2を参照)
  2. 第1ステップの判定に、高調波発生機器の比率に関する条件(定格入力容量の合計÷契約電力相当値×100 が35%以下)が加わりました

手元の資料が2013年版のままだと、13%リアクトルの設備で判断を誤ります。着手前に最新版で条件を確認してください。

高調波発生機器の比率のメーター:比率=定格入力容量の合計÷契約電力相当値×100。例1は92kVA÷300kWで約31%なので○、例2は150kVA÷300kWで50%なので×
比率=定格入力容量の合計÷契約電力相当値×100。35%を超えると等価容量の計算へ進みます。
ペン太ペン太
コンデンサが3台あって、2台だけリアクトル付ならどうなりますか?
ハリタハリタ
条件③は満たしません。「すべて」が条件なので、1台でも無しなら等価容量の計算に進みます。
ひっかけ注意
「検討不要の条件は4つ」ではありません。
2023年版で「⑤高調波発生機器の比率が35%以下」が加わり、5つをすべて満たしてはじめて検討終了です。
ここまでのポイント
  • 条件をすべて満たせば、等価容量を計算せずに検討終了
  • ①高圧受電 ②用途がビル ③進相コンデンサがすべて6%直列リアクトル付 ④Kiが1.8を超える機器なし ⑤高調波発生機器の比率35%以下
  • 一部だけリアクトル付では③を満たさない
  • 2023年版で「6%」の限定と、高調波発生機器の比率の条件が加わった


ステップ4 ― 等価容量を限度値と比べる

条件を満たせなかったら、等価容量を求めて限度値と比べます。式は次のとおりで、機器ごとに「換算係数 × 定格容量」を出して足し合わせるだけです。

式 P0 = Σ(Ki × Pi)[kVA]
記号 Ki:換算係数/Pi:定格容量[kVA]/i:回路種別
低減 高圧受電かつ進相コンデンサがすべて直列リアクトル付なら P0 × 0.9
等価容量の計算例:エレベーター6.77kVA×2台×Ki3.4=46.0kVA、エアコン13.1kVA×6台×Ki1.8=141.5kVAを積んで合計187.5kVA。高圧受電で進相コンデンサがすべて直列リアクトル付なので×0.9で168.8kVA。6.6kV受電の限度値50kVAを超えるので第2ステップへ進む
P0は187.5kVA、×0.9で168.8kVA。限度値50kVAの線を大きく超えるので第2ステップへ。
受電電圧 限度値 判定
6.6 kV 50 kVA これ以下なら検討終了
22 kV・33 kV 300 kVA これ以下なら検討終了
66 kV以上 2,000 kVA これ以下なら検討終了
等価容量の求め方をもっと詳しく見る場合は高調波流出電流計算[等価容量の計算方法]へ。

💡 0.9倍が使えるかどうかを先に確認する

「高圧受電かつ進相コンデンサが全て直列リアクトル付」であれば、求めた P0 に0.9を掛けられます。等価容量が限度値のぎりぎりにあるときは、この1割が結果を分けます。リアクトルの要否そのものは6%・13%の意味とリアクトルの選定方法で扱っています。

出典:高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン、JEAG 9702 高調波抑制対策技術指針(2023年版)、JIS C 61000-3-2、JIS C 4902-2、日本電気技術者協会「高調波抑制対策要否の判断と流出電流の計算」。数値は指針の版によって変わることがあります。

ひっかけ注意
「0.9倍はいつでも掛けられる」ではありません。
掛けられるのは、高圧受電で、しかも進相コンデンサがすべて直列リアクトル付のときだけです。1台でもリアクトルなしのコンデンサがあれば、P0をそのまま限度値と比べます。
ここまでのポイント
  • P0 = Σ(Ki × Pi)で、機器ごとの換算容量を足し合わせる
  • 高圧受電かつ進相コンデンサがすべて直列リアクトル付なら P0 × 0.9
  • 限度値は6.6kV:50kVA/22・33kV:300kVA/66kV以上:2,000kVA
  • 限度値以下なら検討終了。超えていれば第2ステップへ進む

よくある質問

高調波流出電流計算の「簡略方法」とは何ですか?

指針の手順のうち第1ステップにあたる部分で、流出電流を計算する必要があるかどうかを少ない手間で判定する方法です。計算を省略してよいという意味ではなく、判定の結果必要になれば第2ステップで正規の計算をします。

どんなときに計算が必要ですか?

新設の場合、高調波発生機器を新設・増設・更新する場合、契約電力相当値または受電電圧を更新する場合です。減設によって契約電力相当値が下がるだけの変更は対象外です。

どの機器を拾えばよいですか?

インバータ機器(空調・ポンプ・昇降機)、UPS・整流装置、医療機器、クレーン・巻上機、調光機器、生産設備などです。1相あたりの入力電流が20A以下の機器はJIS C 61000-3-2により適用範囲外になります。

換算係数Kiはどこで調べますか?

回路種別ごとに技術指針の表で決まっています。6パルス・リアクトルなしが3.4、リアクトル付(交流側または直流側)が1.8、交・直流側の両方が1.4、12パルスが0.5、24パルスが0.25です。実機の回路種別は図面では分からないため、メーカーに照会します。

計算しなくてよい条件を教えてください。

①高圧受電である②用途がビルである③進相コンデンサがすべて6%直列リアクトル付である④換算係数Kiが1.8を超える機器がない⑤高調波発生機器の比率(定格入力容量の合計÷契約電力相当値×100)が35%以下、の5つをすべて満たすことです。⑤は2023年版で加わった条件です。

進相コンデンサは一部だけリアクトル付でも条件を満たしますか?

満たしません。「すべて」が条件なので、1台でも直列リアクトルなしのコンデンサがあれば等価容量の計算に進みます。

13%の直列リアクトルでも条件③を満たしますか?

満たしません。2023年の改定で、条件にある「直列リアクトル付」は6%直列リアクトル付を指し、13%は該当しないことが明確にされました。

等価容量はどう計算しますか?

P0=Σ(Ki×Pi) です。機器ごとに換算係数Kiと定格入力容量Pi(台数を掛けた合計)を掛け、すべて足し合わせます。高圧受電かつ進相コンデンサがすべて直列リアクトル付であれば、求めたP0に0.9を掛けられます。

限度値はいくつですか?

受電電圧で決まります。6.6kVなら50kVA、22kV・33kVなら300kVA、66kV以上なら2,000kVAです。これ以下なら検討終了になります。

限度値を超えたらどうなりますか?

第2ステップに進み、次数ごとの高調波流出電流を計算して上限値(6.6kV受電なら5次3.5mA/kWなど)と比べます。超えていれば対策を決めて、もう一度計算します。

まとめ ― 取り違えやすいところと手順

条件③「進相コンデンサがすべて6%直列リアクトル付」を点検:3台中2台だけ直列リアクトル付は「すべて」でないので×、全台13%直列リアクトル付は「6%」でないので×、全台6%直列リアクトル付なら○
「すべて」と「6%」の両方がそろって、はじめて条件③を満たします。
取り違えやすいところ 正しくは
簡略方法=ざっくり計算してよい 計算の要否を判定する手順のこと。必要になれば第2ステップで正規に計算する
高圧受電なら必ず最後まで計算する 第1ステップには3つの出口がある。多くの物件はここで終わる
進相コンデンサは一部がリアクトル付なら該当する 「すべて」が条件。1台でも無しなら該当しない
「直列リアクトル付」なら6%でも13%でもよい 2023年版で6%限定と明確化。13%は該当しない
5項目のうち4つ満たせば検討終了 すべてに該当してはじめて検討終了
換算係数は図面から読み取れる 回路種別はメーカーの仕様で確認する必要がある
換算係数が小さいほど高調波が多い 大きいほど多い。6パルス・リアクトルなしの3.4が最大級
高調波発生機器はすべて計算対象 1相あたりの入力電流20A以下の機器は適用範囲外
「すべて」と「6%」の2語を見落とすと、条件を満たしていないのに終了にしてしまいます。
手順 やること 使う資料・値
1|適用範囲 計算が必要な場面かを確かめる 新設/機器の新設・増設・更新/契約・受電電圧の更新
2|抽出 高調波発生機器を拾い、台数と定格容量をまとめる 負荷リスト、20A以下は対象外
3|換算係数 回路種別からKiを確認する 仕様書の特記事項欄、メーカー照会
4|検討要否 条件をすべて満たすか判定する 高圧受電/ビル/6%SR付/Ki≦1.8/比率35%以下
5|等価容量 P0=Σ(Ki×Pi)(必要なら×0.9) 6.6kV:50kVA と比較
6|次の判断 超えていれば第2ステップへ 次数ごとの流出電流を計算する
この6手順なら、どこで止まってよいかが分かるので、不要な計算をしなくて済みます。

📘 あわせて確認したいこと

高調波そのものの考え方は高調波ってなに?発生原因と対策内容、等価容量の計算は等価容量の計算方法、力率改善設備の全体像は設計マニュアル⑪ 力率改善設備で扱っています。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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次に読むならこれ参考文献『2023年度版』|高圧受電設備規程高圧受電設備規程
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。