高調波対策の実務では、まず「自分の建物で高調波流出電流計算が必要かどうか」を判断し、必要なら等価容量を計算します。とはいえ手順が分かりにくく、つまずきやすいところです。
本記事では、高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に基づく簡略計算の流れを、①発生機器の抽出②検討要否の判定③等価容量の計算(P0=Σ(Ki×Pi))の3ステップで、計算例つきに分かりやすく解説します。

はりた
計算対象物がビルの場合で条件と満たせば計算しなくてもOKだよ!
⚡ 先に結論だけ言うと
建物用途が”ビル”の場合だと下記の条件を満たせば簡略化が可能となります
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
本記事のおすすめの方
- 高調波流出電流計算を頼まれたがどうすればいいかわかない方
- 基準値を超えた場合の対策方法を知りたい方など
▲ 高調波流出電流計算の3ステップ
高調波流出電流計算とは
高調波流出電流計算
高調波流出電流計算は、高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に基づいており、指針の目的である””電力系統に接続される機器を保護するため、高圧又は特別高圧で受電する需要家からの高調波電流流出を抑制する。””ための計算方法になります。
指針の適用範囲
高調波流出電流計算が必要な建物
- 新設の場合
- 既存の需要家であって、高調波発生機器を新設、増設又は更新する場合
- 既存の需要家であって、契約電力相当値又は受電電圧を更新する場合
(減設による契約電力相当値の変更は除く)
はりた
高圧又は特別高圧で受電する需要家が対象となっています。
高調波流出電流計算の手順
計算のフロー
高調波流出電流計算が必要な場合、計算のフローは、下記図(高調波抑制対策技術指針JEAG9702-2018)より制定されており、手順にそって計算を行い可否の判定を行います。
高調波流出電流計算のフロー
(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
ステップ1
(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認
- 高調波発生機器の抽出
- 機器毎の回路種別と換算係数の確認
あにまるさん
まずは建物の負荷に高調波発生機器があるか確認するんだな!
はりた
そうだね!発生機器とその機器からの流出量をまとめてみよう!
主な高調波発生機器
高調波発生機器
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など
高調波の発生する機器は、製造業者がその旨を明記する必要があるため負荷リストから、申請建物における高調波発生機器の抽出を行いましょう。
負荷リストの確認
空調室外機負荷リスト
はりた
負荷リストから高調波発生機器をピックアップしていこう!
機器単位で高調波抑制対策がなされている機器(JIS C 61000-3-2第3-2部電磁両立性高調波発生電流限度値1相あたりの入力電流が20A以下)については、適用範囲外となる
はりた
高調波発生機器であっても1相あたりの電流が20Aであれば対象外となります
仕様書の確認方法(高調波対策の有無を確認しよう!)
エレベーターの仕様書
エレベーター仕様書に記載されている内容
エレベータ仕様書の特記内容
あにまるさん
特記項目の欄に”高調波抑制リアクトル付”って記載されているな!
はりた
よくみつけたね!”高調波抑制リアクトル付”のため対策ありと判断するんだよ
エレベーター仕様書の特記事項欄を確認すると高調波抑制リアクトル付と記載されているのが確認できると思います。このように仕様書に記載されている場合もありますので、仕様書を確認して対策の有無を確認しましょう。
(2)検討要否の判定 ←該当すれば計算の必要なし!
検討要否の判断項目
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討のポイント
- 建物の条件および電気設備の仕様等が上記4項目を満足していれば、高調波流出計算の検討終了となります。
- 高圧受電、ビル、コンデンサがリアクトル付の確認は図面にて確認が可能ですが、換算係数については機器のメーカー仕様を確認する必要があります。
はりた
次に先ほど確認した高調波発生機器が”換算係数Ki=1.8を超過する機器なし”に該当するか確認してみよう!
換算係数の確認方法について
換算係数の確認方法
換算係数は、高調波発生機器の回路種別に応じて定められています。高調波電流の発生量が多くなると係数が大きくなり、少ないと係数が小さくなります。
はりた
高調波発生機器の換算係数はメーカーに確認を行う必要があります
換算係数表の見方とポイント
換算係数表の見方とポイント
- 高調波発生機器は電源回路種別に応じて”換算係数”が決まっています
- この換算係数が大きいほど高調波の流出量が多いということになります
- この換算係数 Kⅰ=1.8【6パルス変換装置リアクトルあり】以下の場合条件に応じ計算しなくてもよいという判断が可能です。
- 機器の換算係数は製造メーカーに確認する必要があります

回路種別毎の換算係数と高調波電流発生量(抜粋)
はりた
高調波発生機器の換算係数は機器の製造メーカーに確認する必要があるから依頼して確認する必要があるんだ!
換算係数の確認結果 ←重要ポイント
(2)検討要否の確認
検討要否の4項目を確認しすべてに該当すれば、検討終了とすることができます。
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討結果の判定
(判定内容により検討終了もしくは、次の検討に移ります)
| 高圧受電であるか? |
〇 |
| ビルであるか? |
〇 |
| 進相コンデンサが全て直列リアクトル付であるか? |
〇 |
| 換算係数Ki=1.8を超過する機器はないか? |
〇 |
はりた
それじゃあ検討は完了できないね!次に進んでみよう!
(3)等価容量の計算
等価容量の計算方法
換算係数×定格容量
- 検討要否の項目に該当しない場合、等価容量を集計し限度値以下になるかの計算を行います。等価容量の計算式は下記になり前工程にて調べた機器ごとの換算係数と定格容量を掛け合わせて合計します
上限値との確認
- 受電電圧が6.6kVであれば上限値は50[kVA]となり等価容量は50[kVA]以下となれば検討終了となります
はりた
そうだね!換算係数に定格容量をかけて等価容量を算出するんだよ
等価容量の計算式
等価容量の計算式
P0 =Σ( Ki × Pi)[ kVA ]
等価容量とは、高調波発生機器毎にその容量を三相ブリッジ6パルス変換装置(6相整流器)の回路構成容量に換算したものの総和をいう。 換算係数Kiとして、例えば12パルス変換装置は0.5倍、三相ブリッジ(コンデンサ平滑、リアクトル有り)は1.8倍など
Ki :換算係数、Pi :定格容量(kVA)、i :回路種別
等価容量の上限値
第1ステップの判定に用いる限度値
| 受電電圧 |
限度値 |
| 6.6kV |
50kVA |
| 22/33kV |
300kVA |
| 66kV以上 |
2,000kVA |
はりた
一般的な高圧受電だと6.6kVの50kVAが等価容量の上限値になるんだよ
等価容量の計算手順
等価容量の計算手順
高調波発生機器の抽出
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など
| 機器名称 |
製造業者 |
型式 |
相数 |
定格入力容量[kVA] |
台数 |
定格入力容量(合計)Pi[kVA] |
| エレベーター |
* |
* |
3 |
6.77 |
2 |
3.4 |
| ビルマルチエアコン |
* |
* |
3 |
13.1 |
6 |
78.6 |
換算係数の確認
| 回路種別№ |
換算係数Ki |
等価容量Ki×Pi[kVA] |
| 31 |
3.4 |
23.0 |
| 33 |
1.8 |
141.5 |
はりた
回路種別№と換算係数は製造メーカーに確認しましょう!
計算結果の検証
等価容量の比較検証
P0 =Σ( Ki × Pi)[ kVA ]の計算式より表中の数値を合計した値が受電電圧ごとの上限値を超えていない場合、高調波対策不要とし検討終了となります。
- 「高圧受電かつ進相コンデンサが全て直列リアクトル付」の場合は、P0×0.9
| 受電電圧 |
限度値 |
| 6.6kV |
50kVA |
| 22/33kV |
300kVA |
| 66kV以上 |
2,000kVA |
受電電圧6.6[kV]=限度値50[kVA]
となるため、第2ステップの検討要否判定 [要]となります。
▲ 等価容量の計算と判定
よくある質問(FAQ)
Q. 高調波流出電流計算とは何ですか?
A. 高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に基づき、高圧・特別高圧で受電する需要家からの高調波電流の流出を抑制するための計算です。
Q. どんな場合に計算が必要ですか?
A. ①新設の場合、②既存需要家で高調波発生機器を新設・増設・更新する場合、③既存需要家で契約電力相当値または受電電圧を更新する場合(減設による変更は除く)が対象です。
Q. 計算しなくてよいケースはありますか?
A. 次の4項目をすべて満たせば検討終了で計算は不要です。①高圧受電②用途がビル③進相コンデンサが全て直列リアクトル付④換算係数Kiが1.8を超過する機器がない。
Q. 等価容量はどう計算しますか?
A. 機器ごとの換算係数Kiと定格入力容量Piを掛け合わせて合計します(P0=Σ(Ki×Pi))。受電電圧6.6kVなら上限値は50kVAで、P0が50kVA以下なら検討終了です。
まとめ
高調波流出電流計算方法について[ステップ1]
計算対象の条件
- 新設の場合
- 既存の需要家であって、高調波発生機器を新設、増設又は更新する場合
- 既存の需要家であって、契約電力相当値又は受電電圧を更新する場合
(減設による契約電力相当値の変更は除く)
高調波発生機器の抽出
- インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
- 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
- クレーン・巻上機
- 調光機器(調光盤があるもの)
- 工場用生産機器など
検討要否の条件その1(最重要)
- 高圧受電
- ビル
- 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
- 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし
検討要否の条件その2
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