技術図書館動力負荷の種類と選定の根拠|仕様書が最優先負荷の分類と始動電流の見方、簡便設計(3705-10)が使える範囲を全7枚のスライドで整理この資料をスライドで見る資料一覧を見る
動力負荷の種類によって開閉器サイズの考え方が変わる理由を解説。電動機の定格電流の求め方と、仕様書と内線規程のどちらを優先するかという実務判断まで。
この記事は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の 第6回 分電盤へ落とす の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
動力負荷の種類とブレーカーサイズ選定の全体像

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内線規程を読み込もう

 
今回の疑問

 

動力負荷に応じたブレーカーサイズの

選定方法を知りたい!

 
結論

 

動力負荷には機器種別に応じて

電気特性が異なります。

 
本記事のおすすめの方

  • 動力負荷のブレーカーサイズについて調べている方
  • 選定したブレーカーサイズが大きいがあっているか心配な方
この記事でわかること

  1. ブレーカーサイズの選定方法
  2. 負荷に応じた正しいサイズの選定方法
  3. 選定の根拠資料について
ペン太ペン太
動力のブレーカー選定って、どの負荷でも同じ考え方でいいんですか?
ハリタハリタ
負荷の特性で変わります。モーターや冷凍機、エレベーターでは始動電流も運転パターンも違うんです。

この記事で押さえる3つのこと

  • 最優先は、機器の仕様書に記載された推奨ブレーカーサイズ。
  • 電熱器は始動電流がほとんど流れないので、定格電流で選べる。
  • 簡便設計は、エレベーター・空調機・冷凍機・インバータ付きには使えない。
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動力負荷の種類とブレーカー選定の関係|開閉器サイズは“負荷の特性”で決まる!

電熱器 始動電流がほぼない。
モーター 始動で一時大きく流れる。
トップランナー 従来より大きい傾向。
エレベーター 始動をくり返す。
たとえるなら
動力負荷は、走り出しのちがう車
ヒーターは静かに一定の速さで走るバス、モーターは発進でぐっと踏み込む車、エレベーターは信号のたびに発進し直す配送車。発進のたびの「ドン」と大きな電流に、ブレーカーが反応しないように選びます。
ここに注意!
「トップランナーモーターは高効率だから、ブレーカーを小さくできる」ではありません。
トップランナーモーターは、従来のモーターより突入電流・始動電流が大きくなる傾向があり、配線用遮断器が不要動作することがあります。瞬時引外しの高い遮断器や、定格を上げて選びます。
ここに注意!
「どの動力負荷も、同じ考え方で選べる」ではありません。
電熱器はほとんど始動電流が流れませんが、モーターやエレベーター、冷凍機は始動で大きく流れます。負荷の種類を先に見分けます。

出典:日本電機工業会(JEMA)のトップランナーモータとMCC(モータコントロールセンタ)に関する資料。トップランナーモーターは突入電流・始動電流が大きくなる傾向があり、配線用遮断器・サーマルリレー・電磁接触器の選定に注意が要る、とされています。

電気設備設計で、動力用のブレーカー(開閉器)を選定するときにまず確認すべきこと――それは、「どんな種類の動力負荷か」です。

動力負荷にはいくつかの分類があり、それぞれ電流特性(定格電流・始動電流・運転パターンなど)が異なるため、適切なブレーカー容量も変わってきます。


📦 動力負荷の種類について

下記は、代表的な動力負荷の例です:

負荷の種類 特徴
トップランナーモーター 高効率な省エネモーター。従来品より突入電流・始動電流が大きくなる傾向
空冷ヒートポンプエアコン 外気温に応じて運転電流が変動。過負荷ぎみに動くことあり
エレベーター 繰り返し始動・停止を繰り返す。始動電流が高い
冷凍機 負荷が重く、突入電流が非常に大きい
電熱機(ヒーター) 始動電流なし。運転電流は安定

❓ なぜ分ける必要があるのか

💡 答え:負荷ごとに考慮すべき電流値が異なるため

動力負荷と一口に言っても、始動時の電流が一時的に大きくなる機器と、一定の電流で安定して動作する機器があります。この違いを無視して一律のブレーカーサイズで設計してしまうと、以下のような問題が起きます:

  • 始動電流でブレーカーが誤トリップする(例:エレベーター、冷凍機など)

  • 電流に対してブレーカーが過大・過小になり、保護協調が取れなくなる

  • 無駄に大きな開閉器を使い、コストが上がる


📊 比較:負荷特性と開閉器選定の考え方

負荷 始動電流の考慮 ブレーカー選定の特徴
トップランナーモーター 要(従来より大きめ) 始動時に配線用遮断器が不要動作しないよう選ぶ(瞬時引外し・定格の見直し)
空冷ヒートポンプ 要 過負荷気味でもトリップしない選定が必要
エレベーター 要(大) 始動トルク大。トリップ防止が必須
冷凍機 要(非常に大) 始動電流を十分に見込んで設計
電熱機 不要 始動電流なし。定格電流での選定でOK
ここまでのポイント
  • 動力負荷は種類ごとに電流特性が異なる
  • 始動電流の大きい負荷は、誤トリップしない選定が必要
  • 電熱機は始動電流がなく、定格電流での選定でよい

電動機の定格電流の求め方

仕様書 機器に合わせた推奨サイズ。
内線規程 やや大きめ(余裕あり)。
くらべると 仕様書≦内線規程。
施工時 根拠を確かめる。
たとえるなら
仕様書と内線規程は、オーダーメイドと既製服
仕様書の推奨サイズは、その機器に合わせて採寸したオーダーメイド。内線規程の表は、だれが着ても入るよう余裕をもたせた既製服のサイズ表です。既製服のほうが大きめになるのは自然なことです。
電流値の選定を明確にする

動力負荷が電灯負荷と異なる点は機器の仕様、設置環境により電流値が大きく変動するという点です。同じ負荷容量【kW】でも参照先・求め方で結果にずれが生じてきますので根拠と検討先を間違えないことが重要です。

定格電流を求める方法

  1. 負荷容量による規約電流によって求める
  2. メーカーの仕様書から求める(推奨のブレーカーサイズが記載されている場合もある)
三相かご形誘導電動機のKVA換算値 三相かご形誘導電動機(インバータ制御)のkVA換算値
  • 仕様書に記載のあるブレーカーサイズを選定するのが一番適正です
  • しかし設計時にすべての仕様書を参照し選定するのは時間を要するため内線規程などの資料から求める方法もあります。
  • 基本的に内線規程から求めた方がサイズは大きくなるため、施工時は設計者に選定方法を確認しましょう。
ここまでのポイント
  • 同じ負荷容量【kW】でも、参照先で電流値はずれる
  • 求め方は「規約電流による方法」と「仕様書による方法」
  • 内線規程から求めた方がサイズは大きくなる

【実務ポイント】ブレーカーサイズの選定方法|仕様書?内線規程?どちらが正しいの?

最優先 仕様書の推奨サイズ。
ないとき 内線規程で仮に選ぶ。
決まったら 仕様書で確かめる。
現場 設計者に確認。
ここに注意!
「内線規程の表が、いちばん正しい値」ではありません。
最優先は、機器の仕様書に記載された推奨サイズです。内線規程の表は、仕様書がまだないときに使う、余裕をもった目安です。
ここに注意!
「図面のブレーカーが内線規程より小さいのは、間違い」ではありません。
設計者が仕様書をもとに選んでいる可能性があります。勝手に変えず、選定の根拠を設計者に確かめます。

電気設備設計において欠かせない「ブレーカー(開閉器)の容量選定」。
このサイズ選びを間違えると、機器の誤動作や過負荷トラブル、施工ミスにもつながるため、慎重に判断する必要があります。

では実際に、どの資料を元に選定するのが最も正しいのでしょうか?


✅ 原則:機器の仕様書に記載された値が最優先

メーカーが機器ごとに定めた「推奨ブレーカーサイズ」は、始動電流・運転特性・使用条件すべてを踏まえた適正値です。

📌 結論:仕様書に記載されているサイズが最も適正です。


⚠️ しかし、すべての仕様書を確認するのは大変…

設計段階では、以下のような理由で「全ての仕様書を確認するのが難しい」ケースもあります:

  • 機器選定が未確定の段階で設計が進んでいる

  • 機種の納入が後工程にずれる(仕様不明)

  • 設備点数が多く、一つ一つ確認するのに時間がかかる


🧰 そのため「内線規程」などの汎用資料を使うこともある

内線規程やJEAC、JIS規格などには、電動機の容量[kW]に対して目安となるブレーカーサイズの表があります。
これらを使えば、仕様書なしでも概算で選定が可能です。

ただし――

📌 内線規程から選定したブレーカーサイズは、仕様書より大きめになる傾向があります。


👷 現場施工時の注意点

施工現場で設計図の指示に従ってブレーカーを取り付ける際、
「内線規程のサイズより小さい!」というケースに遭遇することがあります。

この場合、設計者が仕様書を基に適正サイズで選定している可能性が高いため、
必ず以下を確認しましょう:

  • ✅ そのブレーカーサイズは機器の仕様書に基づいた選定か?

  • ✅ 設計者による特別な意図・制約条件があるか?

  • ✅ 安全マージンが足りているか?(始動電流・許容電流)

項目 内容
基本原則 仕様書に記載されたサイズが最も適正
設計時の対応 機器仕様が不明な場合は「内線規程」等の資料で仮選定
内線規程の特徴 やや大きめに見積もられる(安全側)
現場対応の注意点 設計者の選定根拠(仕様書 or 汎用資料)を必ず確認すること
取り違えやすいところ正しくは
どの動力負荷も同じ考え方で選べる始動電流の有無で選び方が変わる
内線規程の表が最も正しい値最優先は機器の仕様書に記載された推奨サイズ
内線規程から求めると小さめになる内線規程から求めた方が大きくなる傾向がある
簡便設計はどの電動機にも使える標準的な三相誘導電動機1台のみが対象
図面が内線規程より小さいのは誤り仕様書に基づく選定の可能性があるため設計者に確認
ここまでのポイント
  • 最優先は機器の仕様書に記載された推奨ブレーカーサイズ
  • 仕様書が揃わない段階では内線規程などの汎用資料を使う
  • 図面が規程より小さい場合は、設計者に選定根拠を確認する

開閉器サイズの簡易選定

トップランナー 始動電流が大きい傾向。
起きること 遮断器の不要動作。
対策 瞬時引外し・定格を上げる。
あわせて 電線・上流も見直す。

開閉器サイズは負荷の特性に応じて内線規程に簡易表の記載があります

動力ブレーカー・ケーブルサイズ早見表|内線規程3705-3+自動計算 .kt-wrap{overflow-x:auto;-webkit-overflow-scrolling:touch;margin:1....
ペン太ペン太
簡便設計って、どんな電動機にも使えるんですか?
ハリタハリタ
標準的な三相誘導電動機だけです。エレベーターや空調機など特殊用途には使えません。
ここまでのポイント
  • 内線規程には負荷の特性に応じた簡易表がある
  • 簡易表は概算であり、最終確認は仕様書で行う

【内線規程3705-10】電動機回路の簡便設計とは?|分岐回路や幹線サイズの決め方

使える 三相誘導電動機。
使える トップランナーモーター。
使えない エレベーター・空調・冷凍機。
使えない インバータ駆動。
ここに注意!
「簡便設計は、どの電動機にも使える」ではありません。
エレベーター、空調機、冷凍機、チラーなどの特殊用途や、インバータで動かす電動機には使えません。機器の仕様書で選びます。

三相誘導電動機の回路設計において、「仕様書がまだ出ていない」「時間がない」といった状況で頼りになるのが簡便設計(内線規程3705-10)です。

この記事では、200V/400V三相誘導電動機を対象に、幹線・分岐回路の設計を効率よく行う方法や、特殊な用途の注意点をわかりやすく紹介します。


✅ 簡便設計の対象となる電動機とは?

以下の標準的な電動機1台のみを接続する場合に限り、簡便設計が適用可能です。

適用できるケース 内容
✅ 適用可能 200Vまたは400Vの三相誘導電動機(トップランナーモーター含む)
❌ 適用不可 エレベーター、空調機、冷凍機、ウォーターチリングユニットなどの特殊用途、およびインバータ付きの電動機

📘 使用する設計資料(表)

簡便設計においては、内線規程の下記の表に従って幹線・分岐回路を設計します:

  • 3705-1表:負荷の算定

  • 3705-2表:幹線の太さ

  • 3705-3表:分岐開閉器・遮断器の定格

  • 3705-4表:幹線に使用する開閉器・遮断器

📌 トップランナーモーター専用の表です。

旧型モーターが混在する場合は注意!


⚠ 特殊な用途の電動機は簡便設計NG!

下記のような負荷は、機器ごとに運転特性や突入電流が異なるため、簡便設計ができません。

❌ 特殊用途の例と対応

機器 対応方法
エレベーター 最大負荷での起動・加速を考慮し電圧降下に注意。資料3-7-9参照
空冷・水冷チラー(ウォーターチリングユニット) 圧縮機の冷却方式で選定。資料3-7-10参照
パッケージ型エアコン メーカー仕様が必須(始動電流がまちまち)
冷凍機 組込モーターの形式ごとに資料参照
インバータ駆動のモーター 出力特性・電流波形が異なるため必ずメーカー資料を参照

✅ 開放形冷凍機や汎用モーターは簡便設計OK

  • 圧縮用電動機に汎用モーターを使用した開放型冷凍機については、
     → 3705-1表および3705-2表で設計可能です。


📌 トップランナーとの混在にも注意!

  • トップランナーモーター のみで構成された回路 → 3705-3・4表でOK

  • トップランナー以外と混在 → 資料3-7-6 or 3-7-7を参照する


✅ 簡易設計のまとめ

項目 内容
簡便設計の対象 標準的な三相誘導モーター(1台)
適用資料 内線規程3705-1〜4表(トップランナー基準)
注意点 特殊用途・インバータ使用・混在回路には適用不可
特殊用途対応 メーカー資料 or 内線規程の補足資料(3-7系)を参照
現場の対応 設計図や仕様書に簡便設計使用の有無を確認すること
ここまでのポイント
  • 簡便設計の対象は標準的な三相誘導電動機1台のみ
  • エレベーター・空調機・冷凍機・インバータ付は適用不可
  • トップランナー以外と混在する場合は資料3-7-6 or 3-7-7を参照

よくある質問(FAQ)

Q. ブレーカーサイズの選定で最も優先すべき資料は?
A. メーカーの機器仕様書に記載された推奨ブレーカーサイズが最も適正で、最優先されます。

Q. 仕様書がない設計段階ではどうすればよいですか?
A. 内線規程などの汎用資料の表を使って概算で仮選定します。ただし、内線規程から求めたサイズは仕様書より大きめになる傾向があります。

Q. 簡便設計(内線規程3705-10)が使えないのはどんな負荷ですか?
A. エレベーター、空調機、冷凍機、ウォーターチリングユニットなどの特殊用途、およびインバータ付きの電動機には適用できません。

Q. 現場で図面のサイズが内線規程より小さい場合は?
A. 設計者が仕様書に基づき適正に選定している可能性が高いため、選定根拠を必ず設計者に確認しましょう。

Q. トップランナーモーターでブレーカー選定に気をつけることは?
A. トップランナーモーターは従来のモーターより突入電流・始動電流が大きくなる傾向があり、配線用遮断器が始動時に不要動作することがあります。瞬時引外し電流値の高い遮断器にするか、定格電流を上げて選びます。遮断器を上げたときは、電線や上流側の遮断器の見直しも確かめます。

Q. 電熱器(ヒーター)のブレーカーはどう選びますか?
A. 電熱器はモーターのような始動電流がほとんど流れないので、定格電流をもとに選べます。仕様書に推奨サイズがあれば、それに従います。

ペン太ペン太
内線規程の表と機器の仕様書、どちらを優先すればいいですか?
ハリタハリタ
原則は仕様書が最優先です。設計図の値が規程の表より小さくても、根拠を確認してから判断を。

まとめ

動力負荷のブレーカーサイズは、負荷の特性を見分けたうえで、仕様書の値を最優先するのが基本です。

こんな場面どう選ぶ根拠
機器の仕様書が手元にある仕様書の推奨ブレーカーサイズを採用始動電流・運転特性・使用条件を踏まえた適正値のため
設計段階で機種が未確定内線規程などの表で概算選定すべての仕様書を確認するのが難しいため
標準的な三相誘導電動機が1台内線規程3705-1〜4表で簡便設計3705-10の簡便設計の対象になるため
エレベーター・空調機・冷凍機簡便設計は使わない特殊用途は適用不可のため
トップランナー以外と混在する資料3-7-6 or 3-7-7を参照3705-3・4表はトップランナー基準のため
図面が内線規程より小さい設計者に選定根拠を確認仕様書に基づく適正な選定の可能性が高いため

負荷の特性で押さえること

  • 始動電流が大きい負荷(エレベーター・冷凍機など)は誤トリップ対策が要る
  • 空冷ヒートポンプは運転電流が変動するため、過負荷でトリップしない選定にする
  • 電熱機は始動電流がなく、定格電流での選定でOK

選定の根拠で押さえること

  • 第一は機器の仕様書に記載された推奨ブレーカーサイズ
  • 仕様書がない段階は内線規程などの汎用資料で仮選定する
  • 内線規程から求めた値は仕様書より大きくなる傾向がある
  • 簡便設計は標準的な三相誘導電動機1台のみが対象

負荷の種類を見分けるところから始めれば、サイズ選定の判断は迷いません。施工時は、設計者に選定方法を確認しておきましょう。

動力設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「動力設備の設計マニュアル」の 第4回 ブレーカーとケーブルの選定 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。