非常照明の設置基準
非常照明の設置基準について詳しく解説
🎯この章で学べること
ハリタ先生
ペン太くん、今日は**非常照明**の設置対象について一緒に学んでいこう。火災などで停電したときに、みんなが安全に避難するために、とても大切な設備なんだよ。
ペン太
はい、先生!でも、どんな建物に必要なんですか?僕のお家にも必要ですか?
この章の学習目標
- ✓**非常照明**の設置が必要な建物の種類を説明できる。
- ✓「**特殊建築物**」とは何か理解できる。
- ✓建物の規模や構造による設置基準の違いを理解できる。
ℹ️特殊建築物について
ハリタ先生
まず、**特殊建築物**から見ていこう。これは、たくさんの人が集まったり、特別な用途で使われたりする建物のことだよ。
対象となる特殊建築物の例
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)
- ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
- 学校等、博物館、美術館、図書館
- 百貨店、マーケット、展示場
- キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール
- 遊技場、公衆浴場、待合料理店、飲食店
- 物品販売業を営む店舗(床面積10㎡以内のものを除く)
ペン太
なるほど、人が集まる場所は特に大切なんですね!
🏫「学校」の定義について
ハリタ先生
特殊建築物の「学校」について、もう少し詳しく見てみよう。ひと口に「学校」といっても、建築基準法で定められている対象は決まっているんだよ。
非常照明の設置対象となる「学校」の範囲
非常照明の設置対象となる「学校」とは、**おおむね学校教育法にいう学校**を指します。具体的には、以下のものが含まれます。
- 小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校
- 盲学校、聾学校、養護学校
- 幼稚園、専修学校、各種学校
他の法令の規制によるその他の学校(例:各省の組織の中にある学校など)は、非常照明の設置対象に含まれません。
ペン太
なるほど!学校って言っても、いろんな種類があるからちゃんと区別しないといけないんだね!
ハリタ先生
注意点として。他の法令の規制によるその他の学校として主に保育園が該当し、設置対象に含まれるのでよく似ている幼稚園との区別して覚えておこう!
📐規模による設置基準
ハリタ先生
次に、建物の規模で決まる設置基準を見ていこう。大きな建物ほど、避難経路も複雑になるからね。この条件に当てはまる場合、建物の用途に関わらず、設置対象となるよ。
階数・延べ面積による設置基準
設置基準 | 詳細 |
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階数・延べ面積 |
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⬛構造による設置基準
ハリタ先生
最後に、建物の構造による基準だ。特に、窓がない部屋は注意が必要だよ。
ペン太
外光の入らない真っ暗な状態だと必要になるってことだね!
無窓の居室による設置基準
設置基準 | 詳細 |
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無窓の居室 |
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📍設置範囲の基準
ハリタ先生
さて、非常照明が必要な建物がわかったところで、次は「その建物の中のどこに設置する必要があるか」を見ていこう。
ペン太
なるほど!非常照明は、建物全体ではなくて、特に危険な場所や避難に使う場所に必要なんですね!
設置義務のある部分
ハリタ先生
もう少し詳しく説明するよ。**居室**は、人が一定時間滞在したり、作業を行ったりする部屋のことだ。そして、**避難経路**や**その他の場所**は、その居室から安全に外へ出るためのルート全体を指すんだ。非常照明は、このルートの明るさを確保するために設置されるんだよ。
ペン太
つまり、人が滞在する場所から外までのルートの明るさを確保できるように考えて設置しましょう!ってことだね!
🏠「居室」の定義
ハリタ先生
さて、次は**居室**について解説しよう。非常照明の設置を判断する上で、居室かどうかの見極めはとても重要なんだ。
ペン太
「居室」…リビングとか寝室のことだよね?
非常照明の設置基準を理解する上で重要な「居室」の定義と、その注意点を解説します。
「居室」の一般的な定義
**建築基準法第2条第4号**に定められており、居住、執務、作業、集会、娯楽、その他これらに類する目的のために**継続的に使用する室**を指します。この「継続的」という点が重要で、一時的な利用を想定した空間は一般的に居室とはみなされません。
居室に該当する例
- 住宅の居間、寝室、台所
- 事務所の事務室
- 工場の作業室
- 学校の教室
- ホテルの客室
- 病院の病室
居室に該当しない例
- 廊下、階段、便所、浴室、洗面所
- 倉庫、車庫
- 機械室、エレベーターシャフト
ペン太
なるほど!ただの「部屋」ではなくて、長い時間使う場所が「居室」ってことなんだね!
🧐「居室」の解釈についての詳しい解説
ハリタ先生
居室の定義は分かったかな?実は、居室の解釈には少し注意が必要なんだ。実際の設計では、検査機関によって判断が異なることもあるから、このセクションでポイントを確認しておこう。
ペン太
へぇ、そうなんだ!じゃあ、この「注意事項」で詳しく教えてもらえるんだね。
非常照明の設置判断を誤らないための注意点と、特定の空間に対する居室の解釈について解説します。
非常照明の設置に関する注意点
非常照明の設置基準は、建物の用途や空間の解釈によって判断が異なる場合があります。そのため、設計や申請の際には以下の点に特に注意が必要です。
テレビや椅子が設置され、継続的に使用される場合は、居室として判断され、非常照明の設置が必要となることがあります。
利用者が一定時間滞在する可能性があるため、居室と見なされることがあります。特に多目的トイレや授乳室は、非常照明の設備基準の対象となることがあるため注意が必要です。
浴室も居室とみなされる場合があり、非常照明の設置が求められることがあります。
■ 対応のポイント
🏞️屋外でも非常用照明が必要になるケース
ハリタ先生
ペン太くん、非常照明が要らないケースもあるんだよ。例えば、外に面した廊下や階段なんかは、特別に扱いが違うんだ。なぜだと思う?
ペン太
うーん、外だから明るいからかな?
非常照明の設置が免除される屋外空間でも、特定の条件下では設置が必要になります。ここでは、その例外について解説します。
**建築基準法施行令第126条の4**では、以下の条件を満たす場合、非常用照明の設置が免除されます。
- **直接外気に開放されていること**:
壁や窓などで囲まれておらず、常に外の空気や光が入る状態であること。
- **採光上有効であること**:
日中、自然光が十分に届き、避難に支障がない明るさが確保されていること。
- **排煙に支障がないこと**:
火災時に煙が滞留せず、スムーズに排出される構造であること。
庇や屋根があることで、以下のような問題が生じる可能性があります。
- **採光が遮られる**:
日中でも自然光が十分に届かず、照度が不足する。
- **排煙が妨げられる**:
火災時に煙が滞留し、避難の妨げになる。
- **開放性が低下する**:
通路や階段が「屋内的な空間」とみなされる。
このような場合、屋外であっても非常用照明の設置が義務付けられることがあります。
🚫設置免除の基準
ハリタ先生
これまでは設置義務がある場合を学んできたけど、逆に設置しなくても良いケースもあるんだ。でも、勝手な判断は禁物だよ!
設置義務が免除される建物または部分
ペン太
免除されるケースもあるんですね!でも、しっかり確認しないとダメだね。
🏥特定の居室における設置免除
ハリタ先生
ペン太くん、非常照明の設置が免除される場所にも、いくつか注意すべき居室があるんだ。病室や宿泊室なんかは、どう思う?
ペン太
うーん、患者さんや宿泊している人がいるから、必要なんじゃないかな?
ハリタ先生
そうだね。でも、実は一定の条件を満たせば、設置が免除されるんだ。なぜかというと、これらの部屋は**一定期間滞在する場所**であり、避難に際しても利用者の状況を把握しやすいためだよ。
病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室などの設置免除
これらの居室は、**一定期間滞在する場所**であり、避難に際しても利用者の状況を把握しやすいため、非常照明の設置が免除される場合があります。
■ 設置免除の主なポイント
- **病院の病室**:
患者の安全を確保するための設備が既に整っていることや、看護師等のスタッフが常駐していることが前提となります。
- **下宿の宿泊室・寄宿舎の寝室**:
利用者が個人の生活スペースとして使用するため、個人の判断で避難することが可能とみなされます。
ただし、これらの居室であっても、**廊下や共用部分**については、避難経路を確保するために非常照明の設置が必要です。また、一定期間滞在する場所であっても、避難時に窓や扉が施錠されることがないよう、管理体制を整えることが重要です。
また、設置の適用を受けない居室として、**養護施設やデイサービス**といった建築物の部屋は記載されていないんだ。病院の病室と用途がよく似ているから、十分注意しよう!
ペン太
なるほど!部屋の中は免除されても、廊下とかみんなが使う場所は必要ってことですね!
📏平12建告第1411号による設置免除
ハリタ先生
次は、少し専門的だけど「**平12建告第1411号**」について解説しよう。これは、居室の広さと避難経路の距離に関する基準なんだ。これを理解すると、非常照明が必要な範囲をより正確に判断できるようになるよ。
ペン太
へぇ、居室の広さや距離で変わるんですね!
平12建告第1411号による居室等の設置免除
- **避難階**:避難階(屋外に出られる階)はその出入り口から歩行距離**30m以内**(部屋の角まで)に含まれる居室は設置免除となります。
- **避難階の直上階・直下階**:避難階の直上階、直下階の場合、歩行距離**20m以内**(10m厳しくなる)(部屋の角まで)に含まれる居室は設置免除となります。
ハリタ先生
その通り!避難階はすぐに外に出られるから、避難経路の距離が少し長くても大丈夫なんだ。でも、そこから離れるほど、避難が難しくなるから基準が厳しくなっているんだよ。
ペン太
避難する階以外の上下階だと、より厳しくなるんですね。
✍️設置義務免除となる部分の拡大
ハリタ先生
ペン太くん、2018年に法律が少し変わったんだ。これによって、非常照明を設置しなくても良くなる範囲が広がったんだよ!
ペン太
えっ、そうなんですか!?どんな条件で免除されるようになったんですか?
💡平成30年3月29日国土交通省告示第516号による改正
**平12建告第1411号**が改正され、以下の居室も設置義務が免除される対象となりました。
- 床面積が**30㎡以下**の居室で、地上への出口を有するもの
- 床面積が**30㎡以下**の居室で、地上まで通じる部分が以下のいずれかに該当するもの
- 非常用照明装置が設けられたもの
- 採光上有効に直接外気に開放されたもの
この改正により、ホテルや旅館などの個室が、より広範囲にわたって設置義務免除の対象となりました。
床面積30㎡以下
地上への出口あり
ハリタ先生
そうだよ。特にホテルや旅館などの個室は、この改正によって設置しなくても良くなるケースが増えたんだ。これにより、設計の自由度も少し上がったんだよ。
注意点として、設置の適用を受けない居室に養護施設やデイサービスといった建築物の部屋は記載されていないんだ。病院の病室と用途がよく似ているから、十分注意しよう!
改正の経緯
- 国土交通省が、非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を合理化する告示を、平成30年3月29日に公布・施行しました。
- ホテル、旅館等の多数の者が利用する建築物等については、原則として、すべての居室(共同住宅の住戸、寄宿舎の寝室等は対象外)とその避難経路に非常用の照明装置の設置が義務付けられていました。
- 避難行動に関する調査研究等を踏まえ、非常用の照明装置を設置すべき居室の基準が合理化されました。
- 本改正により、ホテル、旅館等の整備費用の低減に加え、既存の建築物における用途変更が円滑化されることが見込まれます。
📖設置基準に関するまとめ
設置基準一覧
- 劇場、映画館、集会場など
- 病院、ホテル、共同住宅など
- 学校、図書館など
- 商業施設、飲食店など
- 階数が3以上、延べ面積が500㎡超
- 延べ面積が1000㎡超
- 無窓の居室を有する建物
設置範囲の基準(設置義務のある部分)
無窓の居室は設置が必要
廊下、階段、通路は設置が必要
ロビー、通り抜けに使う場所など
設置免除の基準
- 病院の病室、下宿の宿泊室など
- 共同住宅、長屋の住戸
- 直接外気に開放された屋外通路や階段
- 平12建告第1411号による居室等
その他、法令で定められた部分
ペン太
先生、今日は非常照明がどんな建物に必要なのか、よくわかりました!僕のお家には必要ないけど、知っておくべきことですね。
ハリタ先生
非常照明の設置は電気設備の設置計画において必須の項目だから十分理解しておくようにしよう!