この記事は、連載「消防設備編」の 第3回 非常放送設備と誘導灯・第4回 非常用照明の設置基準 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
非常用照明の照度は、床面の水平面照度で1lx以上、蛍光灯・LEDは2lx以上です。火災の熱で明るさが下がる性質を見込んで、常温での照度を上乗せしています。根拠は建築基準法の告示(昭和45年建設省告示第1830号)です。
ペン太ペン太
非常照明って床面で1lxあればどの光源でも同じですよね?
ハリタハリタ
蛍光ランプやLEDは2lx以上が必要です。光源の種類で基準が違うんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 非常用照明に求められる床面の水平照度は、いくつ以上か
  • 蛍光ランプやLEDで2lx以上が求められるのは、なぜか
  • 2lxの値は、どの法令に書かれているか
この記事でわかること
照度計算の前に、光源ごとの基準を確認しておくと手戻りを防げます。
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非常用照明はなぜ光源の種類で照度の基準が違うの?

告示1830号では、常温下で床面の水平面照度1lx以上を確保することとし、蛍光灯又はLEDランプを用いる場合は2lx以上としています。

🔦 質問のポイント

非常時の照明は、「通常の床面で水平照度1lx以上」が必要です。でも、蛍光ランプやLEDの場合は「2lx以上」が求められるってどうして?光源の種類で基準が違うのはなぜ?


ペン太ペン太
えっ、火災の熱で明るさが落ちるなんて考えたことなかったです!
ハリタハリタ
周囲の温度が上がると明るさが下がるので、その分を見込んで平常時2lx以上なんです。

💡 なぜ光源の種類で基準が違うの?

平常時は常温で2lxを確保します。火災で周囲の温度が上がると蛍光灯・LEDは光が弱まりますが、その分を見込んでいるので、避難に必要な1lxを保てます。

蛍光ランプやLEDは、火災などで周囲の温度が高くなると、明るさが下がってしまいます。

  • 平常時:常温で基準の明るさを確保

  • 火災時:周囲の温度が上がり、明るさが下がる

なので、普段から「2lx以上」の照度を確保しておかないと、火災時には基準の1lxを下回ってしまう危険があるんです。


状況周囲温度明るさ床面照度の見え方
平常時常温100%設計値どおり
火災時高温下がる平常時2lxなら、下がる分を見込んでも1lxを保ちやすい
火災時(平常時1lxの場合)高温下がる1lxを下回るおそれがある
たとえるなら
2lxは、冬山に登るときの「予備の水筒」のようなものです。
寒さで体力が落ちることを見込んで、ふだんより多めに持っていきます。蛍光灯やLEDも、火災の熱で明るさが落ちることを見込んで、ふだんから多めの明るさを確保しておきます。
ここまでのポイント
  • 蛍光ランプやLEDは、火災などで周囲温度が高くなると明るさが下がる
  • 火災時には周囲の温度が上がり、明るさが下がる
  • だから平常時から2lx以上を確保しておかないと、火災時に基準の1lxを下回る

🏢 法律や基準もこうなってる!

告示1830号では、照度は常温下で床面の水平面照度1lx(蛍光灯・LEDは2lx)以上、照明器具は耐熱性及び即時点灯性を有するもの、予備電源は充電なしで30分間継続して点灯できるものと定めています。

🔸 建築基準法(令和5年度版)

  • 非常用照明は、火災時でも明るさが大きく下がらないような構造にしなければならない。

  • 照明は自動で点灯し、避難できるまでの間、床面に1lx以上の明るさを保つ必要がある。

🔸 告示1830号(非常用の照明装置の構造方法)


よりどころ求められること
建築基準法(令和5年度版)火災時でも明るさが大きく下がらない構造とすること
建築基準法(令和5年度版)自動点灯し、避難できるまで床面1lx以上を保つこと
告示1830号 第三予備電源は充電なしで30分間継続して点灯
告示1830号 第四常温下で床面1lx(蛍光灯・LEDは2lx)以上
告示1830号 第一照明器具は耐熱性及び即時点灯性を有するもの
ひっかけ注意
「2lxは日本照明工業会の JIL 5501 だけの決まり」ではありません。
2lxは、建築基準法にもとづく告示1830号 第四 一に書かれた値です。JIL 5501(非常用照明器具技術基準)は、この告示に合う器具をつくるための業界の技術基準です。
ここまでのポイント
  • 建築基準法(令和5年度版)では、火災時でも明るさが大きく下がらない構造とすることが求められる
  • 照明は自動で点灯し、避難できるまでの間、床面に1lx以上を保つ
  • 告示1830号では、予備電源は充電なしで30分間継続して点灯できることが求められる(階段の長時間定格形は60分)
  • 蛍光ランプやLEDは常温で2lx以上、器具は耐熱性と即時点灯性が必要

❓ よくある質問(FAQ)

Q. 非常用照明の基本の照度はどのくらい必要ですか?
A. 床面で水平照度1lx以上が基本です。避難できるまでの間、自動点灯して1lx以上を保つ必要があります。

Q. なぜ蛍光ランプやLEDは2lx以上が求められるのですか?
A. 蛍光ランプやLEDは火災などで周囲温度が高くなると明るさが下がるためです。温度が上がると明るさが下がるので、普段から2lx以上を確保しておかないと火災時に基準の1lxを下回る危険があります。

Q. 非常用照明は何分間点灯できればよいですか?
A. 告示1830号で、予備電源は充電を行うことなく30分間継続して点灯できるものとされています。

Q. 非常用照明にはどのような耐熱性が必要ですか?
A. 告示1830号で、照明器具は耐熱性及び即時点灯性を有するものとされています。

✅ まとめ

この記事のまとめ

  • 火災時には照明の明るさが下がるため、蛍光ランプやLEDは「余裕を持った明るさ」が必要。
  • 普段から2lx以上の明るさがあれば、火災時でも1lxを保てる。
  • 法律や技術基準でもしっかり定められていて、安全確保のための大事なルール。

1lxと2lxの差は、器具の性能差ではなく「火災時に温度が上がると明るさが落ちる」という性質への備えです。蛍光ランプやLEDは低下分を見込んで平常時2lx以上とすることで、火災時にも基準の1lxを保てるようにしています。

確認する順番見るところ決まること
Step1使用する光源の種類蛍光ランプ・LEDかどうか
Step2必要な床面照度1lx以上か、2lx以上か
Step3照度計算平常時の値で基準を満たしているか
Step4点灯時間予備電源で30分(長時間定格形は60分)点灯できるか
Step5耐熱性耐熱性・即時点灯性のある器具か

照度計算のあとで光源を変更すると、必要な照度そのものが変わってしまいます。器具を選ぶ段階で1lxか2lxかを確定させておくと、計算のやり直しを避けられます。

使う器具が蛍光灯・LEDかどうかを先に決め、必要な照度を1lxか2lxか確定させてから、常温の値で照度計算をします。最後に予備電源で30分(長時間定格なら60分)点灯できるかを確かめます。
ひっかけ注意
「2lxは器具の性能が低いから」ではありません。
1lxと2lxの差は器具の良し悪しではなく、温度が上がると明るさが下がるという光源の性質への備えです。どれだけ明るいLED器具でも、基準は2lxです。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。