この記事は、連載動力設備の設計マニュアル」第4回 ブレーカーとケーブルの選定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
全体像:遮断器の定格電流と配線の許容電流の関係
ペン太ペン太
遮断器の定格が配線の許容電流より大きい図面を見つけました!これミスですよね?
ハリタハリタ
必ずしもミスではありません。遮断器が短絡保護だけを担う設計があるんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 遮断器の定格電流が配線の許容電流より大きくてよいのは、どんなときか
  • モーターの始動電流は、定格電流の何倍が流れるか
  • 過負荷保護を担っているのは、どの機器か
この記事でわかること
考え方を整理したい方は、保護の役割分担の項からご覧ください。

❓そもそも疑問:

トピック1:遮断器の定格と許容電流

「遮断器の定格電流って、配線の許容電流より小さくすべきでは?」
→ 実は 「配線より大きくてもOK」 なケースがあるんです!

見習いペン太
見習いペン太
え?遮断器の定格電流って、配線の許容電流より小さくないとダメじゃないの?
はりた
はりた
一般的にはその通りなんだけど、遮断器が“過負荷保護を担っていない”場合は、配線の許容電流より定格が大きくてもOKなんだよ。
見習いペン太
見習いペン太
えぇ!?どういうこと!?
はりた
はりた
たとえば、負荷側に別の過負荷保護機器(ヒューズやブレーカ)があるとか、遮断器は短絡保護のみを目的にしている場合なんかがそう。配線の保護は別の機器が担っていれば、遮断器自体は配線の許容電流より大きな定格でも問題ないんだ。
見習いペン太
見習いペン太
なるほど〜!“遮断器=過負荷も守る”って思い込んでたけど、ちゃんと設計の目的を見ないといけないんだね。

ここまでのポイント
  • 遮断器が過負荷保護を担っていない場合、配線の許容電流より定格が大きくてもよい
  • 負荷側に別の過負荷保護機器(ヒューズやブレーカ)がある場合が該当する
  • 遮断器が短絡保護のみを目的としている場合も同じ
  • 配線の保護を別の機器が担っているかどうかが判断の軸になる

⚙ 遮断器を選ぶときのポイント

トピック2:遮断器を選ぶときのポイント

動力負荷(モーターなど)には「始動電流」という一時的に大きな電流が流れます。
この電流を遮断器が誤って遮断してしまうのを防ぐために、遮断器は以下のように選定されます。

🔍 だからこうなる!

遮断器は「短絡保護」が主な目的。始動電流では動作しないように設計する必要がある。

そのため、遮断器の定格電流は配線の許容電流よりも大きくなることがあるのです。

主な要素:

👉 遮断器がこの始動電流に反応しないように設計されているのがポイント!

見習いペン太
見習いペン太
なるほど、モーター始動時の大電流って、ちゃんと前提にした設計になってるんだね!
はりた
はりた
そうなんだ。遮断器は短絡保護、熱動継電器は過負荷保護。この組合せでモーターを守ってるってわけだね。
見習いペン太
見習いペン太
つまり、役割に応じた的確な機器選定がトラブルを防ぐカギってことだね!

機器担う保護動作の速さ
遮断器短絡保護短絡時に高速遮断する
熱動継電器過負荷保護数秒〜数分で遮断する
電磁接触器開閉始動中でも壊れない許容電流であること
ここまでのポイント
  • 動力負荷には、始動時に定格の4〜8倍の電流が一時的に流れる
  • 遮断器はこの始動電流で誤動作しないように選定する
  • 遮断器の主な目的は短絡保護、熱動継電器は過負荷を数秒〜数分で遮断する
  • 電磁接触器は始動中でも壊れない範囲であることを確認する

💡 用語解説

トピック3:用語解説
用語 意味
遮断器 短絡(ショート)などの重大な異常を高速遮断する装置
始動電流 モーターが動き出す瞬間に流れる非常に大きな電流(通常の4〜8倍)
許容電流 配線や機器が安全に流せる最大の電流量

ペン太ペン太
じゃあ過負荷は誰が守ってくれるんですか?
ハリタハリタ
熱動継電器などが担当します。モーター始動時は定格の4~8倍の電流が流れますから。

図解:保護の役割分担(保護協調)

トピック4:保護の役割分担
電源
遮断器
短絡保護
始動電流では動作させない
配線
熱動継電器
過負荷保護
数秒〜数分で遮断
モーター
遮断器は短絡保護、過負荷保護は熱動継電器が担うため、遮断器の定格電流は配線の許容電流より大きくてよい。
取り違えやすいところ正しくは
遮断器の定格は配線の許容電流より小さくしなければならない遮断器が過負荷保護を担っていない場合は、大きくてもよい
遮断器は過負荷も短絡も守ってくれる過負荷保護は熱動継電器などが担う。設計の目的を確認する
始動電流も遮断器で切るべき始動電流では動作しないように選定する
機器を個別に選べば保護は成立する遮断器・熱動継電器・電磁接触器の保護協調で見る
ここまでのポイント
  • 電源 → 遮断器(短絡保護)→ 配線 → 熱動継電器(過負荷保護)→ モーターという分担
  • 遮断器は短絡保護、過負荷保護は熱動継電器が担う
  • だから遮断器の定格電流は、配線の許容電流より大きくてよい

よくある質問(FAQ)

トピック5:よくある質問

Q1. なぜ遮断器の定格電流が配線の許容電流より大きくてよいの?
A. 遮断器が過負荷保護を担っておらず短絡保護のみを目的とし、過負荷保護を熱動継電器など別の機器が担っている場合は、配線の許容電流より定格が大きくても問題ありません。

Q2. モーターの始動電流はどれくらい流れる?
A. 定格電流の4〜8倍の大電流が一時的に流れます。

Q3. 遮断器と熱動継電器の役割の違いは?
A. 遮断器は短絡保護(高速遮断)、熱動継電器は過負荷保護(数秒〜数分で遮断)を担います。

Q4. 設計上の注意点は?
A. 熱動継電器・電磁接触器との保護協調を考慮して選定することが重要です。

✅ まとめ

内容 ポイント
遮断器の定格電流 配線の許容電流より大きくてよい
理由 始動電流で誤動作しないようにするため
注意 熱動継電器・電磁接触器との保護協調を考慮
ペン太ペン太
自分で設計するときは何を確認すれば?
ハリタハリタ
遮断器と熱動継電器の役割分担、つまり保護協調が成立しているかを確認しましょう。

「遮断器の定格が配線の許容電流より大きい」ことが問題になるかどうかは、その配線の過負荷保護を誰が担っているかで決まります。担い手が別にいれば、遮断器は短絡保護に専念してよい、という考え方です。

確認する順番見るところ判断
Step1遮断器の目的短絡保護のみか、過負荷保護も兼ねるか
Step2過負荷保護の担い手熱動継電器やヒューズが負荷側にあるか
Step3始動電流定格の4〜8倍で遮断器が動作しないか
Step4熱動継電器の動作特性過負荷を数秒〜数分で切れるか
Step5電磁接触器の許容電流始動中でも壊れない範囲か

図面のうえで数値だけを見比べると違和感がありますが、保護の役割分担まで含めて眺めると筋が通ります。逆に、過負荷保護の担い手が見当たらないときは、定格の大小にかかわらず設計を見直す必要があります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。