技術図書館動力の遮断器は配線より大きくてよい遮断器は短絡、熱動継電器は過負荷という役割分担、定格の4〜8倍の始動電流と保護協調この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は、連載「動力設備の設計マニュアル」の 第4回 ブレーカーとケーブルの選定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
①モーターの始動電流で遮断器が誤って切れないよう、定格を大きめにします。②幹線の遮断器は、電動機の定格合計の3倍に他の機器の定格合計を足した値以下で、幹線の許容電流の2.5倍が上限です。③過負荷は熱動継電器(サーマル)などが受け持ちます。
ペン太ペン太
遮断器の定格が配線の許容電流より大きい図面を見つけました!これミスですよね?
ハリタハリタ
必ずしもミスではありません。遮断器が短絡保護だけを担う設計があるんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 遮断器の定格電流が配線の許容電流より大きくてよいのは、どんなときか
  • 遮断器の定格は、どこまで大きくしてよいか
  • 過負荷保護を担っているのは、どの機器か
この記事でわかること
考え方を整理したい方は、保護の役割分担の項からご覧ください。
この記事の内容を、ツールで計算する幹線・分岐回路 一気通貫計算電流を入れると、遮断器・電線サイズ・電線管まで一度に出ます
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❓そもそも疑問:

電技解釈第148条では、低圧幹線の過電流遮断器の定格は原則として幹線の許容電流以下です。電動機等をつなぐ場合は、電動機等の定格合計の3倍に他の機器の定格合計を足した値以下にでき、ただし幹線の許容電流の2.5倍を超えてはいけません。

「遮断器の定格電流って、配線の許容電流より小さくすべきでは?」
→ 実は 「配線より大きくてもOK」 なケースがあるんです!

ペン太ペン太
え?遮断器の定格電流って、配線の許容電流より小さくないとダメじゃないの?
ハリタハリタ
一般的にはその通りなんだけど、遮断器が“過負荷保護を担っていない”場合は、配線の許容電流より定格が大きくてもOKなんだよ。
ペン太ペン太
えぇ!?どういうこと!?
ハリタハリタ
たとえば、負荷側に別の過負荷保護機器(ヒューズやブレーカ)があるとか、遮断器は短絡保護のみを目的にしている場合なんかがそう。配線の保護は別の機器が担っていれば、遮断器自体は配線の許容電流より大きな定格でも問題ないんだ。
ペン太ペン太
なるほど〜!“遮断器=過負荷も守る”って思い込んでたけど、ちゃんと設計の目的を見ないといけないんだね。

ここまでのポイント
  • 遮断器が過負荷保護を担っていない場合、配線の許容電流より定格が大きくてもよい
  • 負荷側に別の過負荷保護機器(ヒューズやブレーカ)がある場合が該当する
  • 遮断器が短絡保護のみを目的としている場合も同じ
  • 配線の保護を別の機器が担っているかどうかが判断の軸になる

⚙ 遮断器を選ぶときのポイント

動力負荷(モーターなど)には「始動電流」という一時的に大きな電流が流れます。
この電流を遮断器が誤って遮断してしまうのを防ぐために、遮断器は以下のように選定されます。

🔍 だからこうなる!

遮断器は「短絡保護」が主な目的。始動電流では動作しないように設計する必要がある。

そのため、遮断器の定格電流は配線の許容電流よりも大きくなることがあるのです。

主な要素:

👉 遮断器がこの始動電流に反応しないように設計されているのがポイント!

ペン太ペン太
なるほど、モーター始動時の大電流って、ちゃんと前提にした設計になってるんだね!
ハリタハリタ
そうなんだ。遮断器は短絡保護、熱動継電器は過負荷保護。この組合せでモーターを守ってるってわけだね。
ペン太ペン太
つまり、役割に応じた的確な機器選定がトラブルを防ぐカギってことだね!

機器担う保護動作の速さ
遮断器短絡保護短絡時に高速遮断する
熱動継電器過負荷保護数秒〜数分で遮断する
電磁接触器開閉始動中でも壊れない許容電流であること
たとえるなら
遮断器と熱動継電器は、サッカーの「ゴールキーパー」と「ディフェンダー」のようなものです。
ふだんの攻め(過負荷)はディフェンダー(熱動継電器)が止め、強烈なシュート(短絡)はキーパー(遮断器)が止めます。キーパーが前に出て全部止めようとすると、味方の動き(始動電流)まで止めてしまいます。
ここまでのポイント
  • 動力負荷には、始動時に定格の数倍の電流が一時的に流れる
  • 遮断器はこの始動電流で誤動作しないように選定する
  • 遮断器の主な目的は短絡保護、熱動継電器は過負荷を数秒〜数分で遮断する
  • 電磁接触器は始動中でも壊れない範囲であることを確認する

どこまで大きくしてよい?(電技解釈第148条)

「配線より大きくてよい」といっても、上限があります。電気設備技術基準の解釈 第148条では、低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流は、原則として幹線の許容電流以下です。そのうえで、電動機等がつながる幹線では、次のように大きくできます。

項目上限の考え方
原則幹線の許容電流以下
電動機等をつなぐ場合電動機等の定格電流の合計×3 + 他の電気機械器具の定格電流の合計 以下
ただし幹線の許容電流×2.5 を超えないこと(2つの式の小さいほうが上限)
電動機の定格合計30A、他の機器10A、幹線の許容電流50Aの例では、3倍の式が100A、2.5倍の式が125Aなので、上限は小さいほうの100Aです。

たとえば、電動機の定格合計30A、他の機器10A、幹線の許容電流50Aなら、30×3+10=100A と 50×2.5=125A の小さいほうで、上限は100Aです。細かい条件(標準定格に合わない場合の扱いなど)は、解釈の本文で確かめます。

ひっかけ注意
「遮断器はいくらでも大きくしてよい」ではありません。
上限は「電動機等の定格合計×3+他の機器の定格合計」と「幹線の許容電流×2.5」の小さいほうです。短絡のときに配線が傷む前に、確実に切れる大きさであることが前提です。

💡 用語解説

用語 意味
遮断器 短絡(ショート)などの重大な異常を高速遮断する装置
始動電流 モーターが動き出す瞬間に流れる非常に大きな電流(定格電流の数倍)
許容電流 配線や機器が安全に流せる最大の電流量

ペン太ペン太
じゃあ過負荷は誰が守ってくれるんですか?
ハリタハリタ
熱動継電器などが担当します。モーター始動時は定格の数倍の電流が流れますから。

図解:保護の役割分担(保護協調)

電源から遮断器、配線、熱動継電器を経てモーターへつながります。遮断器は短絡を高速で切り、熱動継電器は過負荷を切ります。過負荷の担い手がいるから、遮断器は短絡に専念でき、定格を大きめにできます。
電源
→
遮断器
短絡保護
始動電流では動作させない
→
配線
→
熱動継電器
過負荷保護
数秒〜数分で遮断
→
モーター
遮断器は短絡保護、過負荷保護は熱動継電器が担うため、遮断器の定格電流は配線の許容電流より大きくてよい。
取り違えやすいところ正しくは
遮断器の定格は配線の許容電流より小さくしなければならない遮断器が過負荷保護を担っていない場合は、大きくてもよい
遮断器は過負荷も短絡も守ってくれる過負荷保護は熱動継電器などが担う。設計の目的を確認する
始動電流も遮断器で切るべき始動電流では動作しないように選定する
機器を個別に選べば保護は成立する遮断器・熱動継電器・電磁接触器の保護協調で見る
ひっかけ注意
「遮断器が付いていれば過負荷も守られている」ではありません。
遮断器を始動電流に合わせて大きくすると、過負荷では切れないことがあります。負荷側に熱動継電器などの過負荷保護があるかを必ず確かめます。担い手がいなければ、定格の大小にかかわらず設計を見直します。
ここまでのポイント
  • 電源 → 遮断器(短絡保護)→ 配線 → 熱動継電器(過負荷保護)→ モーターという分担
  • 遮断器は短絡保護、過負荷保護は熱動継電器が担う
  • だから遮断器の定格電流は、配線の許容電流より大きくてよい

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ遮断器の定格電流が配線の許容電流より大きくてよいの?
A. 遮断器が過負荷保護を担っておらず短絡保護のみを目的とし、過負荷保護を熱動継電器など別の機器が担っている場合は、配線の許容電流より定格が大きくても問題ありません。

Q2. モーターの始動電流はどれくらい流れる?
A. 定格電流の数倍の大電流が一時的に流れます。直入れ始動か、スターデルタ始動やインバーターかでも大きく変わるため、倍率は電動機やメーカーの資料で確かめます。

Q3. 遮断器と熱動継電器の役割の違いは?
A. 遮断器は短絡保護(高速遮断)、熱動継電器は過負荷保護(数秒〜数分で遮断)を担います。

Q4. 設計上の注意点は?
A. 熱動継電器・電磁接触器との保護協調を考慮して選定することが重要です。

✅ まとめ

内容 ポイント
遮断器の定格電流 配線の許容電流より大きくてよい(上限は電技解釈第148条:電動機等の定格合計×3+他の定格合計、かつ幹線の許容電流×2.5以下)
理由 始動電流で誤動作しないようにするため
注意 熱動継電器・電磁接触器との保護協調を考慮
ペン太ペン太
自分で設計するときは何を確認すれば?
ハリタハリタ
遮断器と熱動継電器の役割分担、つまり保護協調が成立しているかを確認しましょう。

「遮断器の定格が配線の許容電流より大きい」ことが問題になるかどうかは、その配線の過負荷保護を誰が担っているかで決まります。担い手が別にいれば、遮断器は短絡保護に専念してよい、という考え方です。

確認する順番見るところ判断
Step1遮断器の目的短絡保護のみか、過負荷保護も兼ねるか
Step2過負荷保護の担い手熱動継電器やヒューズが負荷側にあるか
Step3始動電流始動電流(定格の数倍)で遮断器が動作しないか
Step4熱動継電器の動作特性過負荷を数秒〜数分で切れるか
Step5電磁接触器の許容電流始動中でも壊れない範囲か

図面のうえで数値だけを見比べると違和感がありますが、保護の役割分担まで含めて眺めると筋が通ります。逆に、過負荷保護の担い手が見当たらないときは、定格の大小にかかわらず設計を見直す必要があります。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。