第1回 防爆とは何を防ぐことか
この記事の要点
- 爆発は可燃性ガス・酸素・着火源の3つがそろったときに起きる。電気設備が受け持つのは着火源を作らないことである。
- 労働安全衛生法が機器を、電気事業法が工事の方法を、消防法が施設を縛る。3つが同時にかかる。
- 防爆の表示には構造規格の系統と国際整合指針の系統があり、読み方が違う。
防爆は、何を防いでいるのか
ひとことで言うと:爆発の3要素のうち、電気設備が断てるのは着火源だけである。
防爆という言葉は「爆発を防ぐ」と読めるが、電気設備の側でできることは限られている。爆発が起きるには、可燃性のガスや蒸気、酸素、そして着火源の3つがそろう必要がある。このうち前の2つは、プラントの工程そのものが持ち込むものであり、電気工事で消すことはできない。
したがって防爆工事の目的は一点に絞られる。危険な雰囲気ができうる場所で、電気設備が着火源にならないようにすることである。着火源になるのは、開閉器の火花やモータのブラシのアークだけではない。電球や巻線の高温部、絶縁不良による地絡、静電気、そして工事中の工具も含まれる。
この視点に立つと、防爆工事で問われるのが「防爆機器を買ったかどうか」ではないことがわかる。機器と工事と保守が一体でなければ、着火源は残る。
法令は3つ重なってかかる
ひとことで言うと:労働安全衛生法が機器、電気事業法が工事の方法、消防法が施設を縛る。
防爆にかかわる法令は1つではない。現場では、次の3つが同じ設備に重なってかかる。どれか1つを満たせば済むものではないので、初めて防爆の案件を担当するときは、まずこの重なりを整理しておきたい。
| 法令 | 所管 | おもな対象 | 現場で効いてくる場面 |
|---|---|---|---|
| 労働安全衛生法 | 厚生労働省 | 防爆構造の電気機械器具 | 機器の選定。型式検定に合格した機器かどうかを、合格証と表示で確認する。 |
| 電気事業法 | 経済産業省 | 電気工作物の工事方法 | 施工。電気設備技術基準の解釈第176条などが、金属管工事やケーブル工事の方法を定める。 |
| 消防法 | 総務省消防庁 | 危険物を貯蔵・取り扱う施設 | 施設としての位置づけ。危険物の規制に関する政令が、施設の構造や設備を定める。 |
このほか、高圧ガス保安法が関係する場合もある。どの法令がかかるかは、扱う物質と施設の種類で決まる。
実務でつまずきやすいのは、機器の検定にばかり目が行って、工事方法の側が抜けることである。検定合格品を使っていても、電線管のねじ込みが足りなければ、その部分は防爆として成立しない。
表示が2系統あるのはなぜか
ひとことで言うと:構造規格による表示と、国際整合指針による表示の2つが並存している。
現場で機器の銘板を見ると、「d2G4」のような表示と、「Ex d IIB T4」のような表示の両方に出会う。これは表記のゆれではなく、拠り所にしている基準そのものが違う。
厚生労働大臣が定めた規格は電気機械器具防爆構造規格だが、実際の検定では、工場電気設備防爆指針にもとづく従来の系統と、国際規格に沿った国際整合防爆指針にもとづく系統の2つが運用されている。メーカーはどちらでも検定を受けられるが、1台の機器に両方の基準を部分的に混ぜて適用することはできない。
交付される型式検定合格証の様式は同じで、法令上の扱いにも差はない。したがって設計側が気にすべきなのは、どちらが上か下かではなく、表示の読み方を両方知っておくことである。読み方は第3回で扱う。
この連載で扱う範囲
防爆は範囲が広いので、現場で判断が必要になる順に並べる。
- 第1回(本記事) ── 防爆とは何を防ぐことか。3つの要素と、重なってかかる3つの法令。
- 第2回 ── 危険場所の区分。ゾーン0・1・2をどう決め、旧区分とどう対応するのか。
- 第3回 ── 防爆構造の種類と表示の読み方。耐圧・安全増・本質安全の使い分け。
- 第4回 ── 機器の選定。型式検定、機器グループ、温度等級から絞り込む手順。
- 第5回 ── 施工と検査。金属管工事、シーリングフィッチング、ケーブルグランド、接地、そして定期の点検。
一次資料で確認するには
- 厚生労働省「電気機械器具防爆構造規格」および関係告示 ── 機器側の根拠を確認する。
- 産業安全技術協会の公開資料 ── 型式検定の対象と手続き、適用される指針の版を確認する。
- 電気設備技術基準の解釈 第175条〜第178条 ── 特殊場所の工事方法を確認する。
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。実際の設計・施工にあたっては、所轄の労働基準監督署・消防機関・産業保安監督部および発注者の社内基準を確認してください。
出典
- 産業安全技術協会「電気機械器具防爆構造規格の構成」
- 産業安全技術協会「機械等の検定制度の概要」
- 労働安全衛生総合研究所「工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006)」
- 防爆技術情報(関連法規と危険場所の区分の整理)
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