第5回 防爆工事の施工と点検
防爆は、機器を買っただけでは成立しません。ねじが1山足りない、シールの充てんを忘れた、グランドを市販品に替えた。そのどれか1つで、その部分は防爆でなくなります。この回では、施工の要点と、引渡し後の点検までを扱います。
結論
防爆は、機器・工事・保守の3つがそろって初めて成立するどれかが欠けたところに着火源が残る。図面と合格証がそろっていても、ボルト1本が欠ければ容器は機能しない。
- 金属管工事のねじ込みは完全ねじ部で5山以上。爆発等級3・IICでは6山以上。
- シーリングフィッチングは、機器との間と、危険場所の境界(隔壁があればいずれか一方の3m以内)に設ける。
- ケーブルグランドは機器と一体で検定されている。現場で汎用品に替えた時点で成立しない。
- 耐圧防爆容器の交換の目安は15年、使用限度は20年。
金属管工事 ── 山数と、シールの位置
可燃性ガスが存在する場所の低圧屋内配線は、金属管工事かケーブル工事によることとされている。金属管工事では、電線管そのものと、継手の作り方に条件が付く。
シーリングフィッチングは、管の中を通ってガスや爆発の圧力が伝わるのを止めるための継手である。位置には考え方があり、分岐や端末処理を行う防爆機器との間、そして危険場所どうしの境界や危険場所と非危険場所の境界に設ける。境界に隔壁がある場合は、いずれか一方の3m以内に設けることとされている。
現場で問題になりやすいのが、充てん材の入れ忘れと入れ方である。フィッチングを取り付けただけで充てんしていなければ、シールとして何も働いていない。外からは見えないので、施工中の写真を残しておきたい。
| 項目 | 要求されること |
|---|---|
| 電線管の種類 | 薄鋼電線管、またはこれと同等以上の強度を有するもの |
| ねじ込み | 完全ねじ部で5山以上。爆発等級3およびIICの場所では6山以上 |
| 管相互の接続 | カップリングによる送り接続は行わない。ユニオンカップリングなど、外せる継手を使う |
| シーリングフィッチング | 分岐・端末処理をする防爆機器との間、および危険場所の境界(隔壁があればいずれか一方の3m以内) |
| 可とう部 | 電動機の接続部など。耐圧防爆型または安全増防爆型のフレキシブルフィッチングによる |
- 電線管は薄鋼電線管以上、ねじ込みは5山以上(IICは6山以上)。
- シールは機器の直近と、危険場所の境界に設ける。
- 充てん材の入れ忘れは外から見えない。施工中の写真を残す。
ケーブル工事 ── グランドと保護
⚠️ ケーブルグランドは機器と一体で評価されている
現場で汎用品に替えた時点で、その機器は防爆として成立しなくなります。
ケーブル工事では、機器の引込口に使うケーブルグランドが要点になる。多くの場合、グランドは機器に付属し、型式検定のときに機器の一部として評価されている。汎用のグランドに交換すると、その機器は防爆として成立しなくなる。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| ケーブルの種類 | キャブタイヤケーブル以外のケーブルによる。使用条件に応じた外装を選ぶ。 |
| 機械的保護 | 外傷のおそれのある場所では、鋼板製のダクト(1.2mm以上)やラック(1.6mm以上)、保護管で保護する。露出のサドル留めだけの配線は認められない。 |
| 引込口 | 機器付属のグランドを使い、締付けはメーカーの指定トルクによる。未使用の引込口は指定の閉止プラグで塞ぐ。 |
| 貫通部 | 異なる危険場所の間、危険場所と非危険場所の間は、シール材や砂詰めなどでガスの流動を止める。防火区画の貫通は認定工法による。 |
- グランドは機器付属のものを、指定トルクで締める。
- 未使用の引込口は、指定の閉止プラグで塞ぐ。
- 外傷のおそれがある場所は、ダクトやラックで保護する。
本質安全回路と接地
💡 本安回路は、非本安回路と分けて配線する
シールドの接地は、非危険場所側の1か所に集めます。
本質安全防爆の回路は、回路のエネルギーが抑えられていることが前提になっている。したがって、外部から余計なエネルギーが入り込まないように配線する必要がある。
- 本安ケーブルと非本安ケーブルは、離して敷設するか、仕切りを設けるか、遮へい付きのケーブルを使う。
- 本安回路であることがわかるように、明青色で識別する。
- シールドの接地は、原則として非危険場所側の1か所とする。両端接地は循環電流の原因になる。
- 本安回路と非本安回路の間には、規定の絶縁耐力が求められる。
接地は防爆全体の土台でもある。耐圧防爆の容器も、金属管も、ラックも、確実に接地されていなければ、地絡時に容器そのものが着火源になりうる。接地線の断面積と接続方法は、機器の仕様と社内基準の両方を確認したい。静電気対策としてのボンディングも、同じ考え方で見ておく。
- 本安回路は分離・識別・片端接地の3点で守る。
- 接地は防爆全体の土台。容器も管もラックも確実に接地する。
- 静電気対策としてのボンディングも、同じ考え方で見る。
引渡しで終わらない ── 点検の深さと周期
💡 目視・近接・詳細の3段階を使い分ける
全部をばらす点検を毎回やる必要はありません。
防爆設備は、据え付けたあとの状態が保たれて初めて機能する。ボルトが1本欠けた耐圧防爆容器は、もはや耐圧防爆ではない。点検には深さの段階があり、対象と周期を分けて回すのが実務的である。
| 構造 | おもな点検項目 |
|---|---|
| 耐圧防爆 d | 容器の腐食・損傷・変形/締付ボルトの腐食・緩み・欠落/ガラス部のキズ・損傷/接合面の腐食・変形/操作軸など可動部の摩耗 |
| 安全増防爆 e | ゴムパッキンのひび割れ/ケーブルグランド・蓋締付ネジの緩み/容器外面の亀裂・損傷/絶縁抵抗値の低下/裸充電端子部への水分・埃の付着 |
| 内圧防爆 p | 容器・締付ねじ・引込部・透光部の緩みや損傷/給排気管・エアフィルタの緩みや目詰まり/保護装置の作動確認/塵埃の堆積/湿度上昇による絶縁劣化 |
| 本質安全防爆 i | 構造区分と機器グループが接続条件を満たすか/電圧・電流・電力の適合/回路の静電容量とインダクタンス/仕様どおりの接地/汚損・腐食・振動からの保護 |
周期は一律ではない。腐食性の雰囲気にさらされる場所、振動の大きい場所、屋外で日射と雨を受ける場所では短くする。点検の記録は、次の点検の周期を決める根拠になるので、判定だけでなく測定値と写真を残しておきたい。
- 点検は目視・近接・詳細の3段階に分ける。
- 周期は環境で決める。腐食・振動・日射のある場所は短くする。
- 判定だけでなく、測定値と写真を残す。
機器には寿命がある
⚠️ 耐圧防爆容器の適正交換時期の目安は15年、使用限度は20年
年数は目安であって、合格ラインではありません。
点検を続けていても、容器そのものが劣化していきます。一般に、耐圧防爆構造の容器は適正交換時期の目安が15年、使用限度が20年とされています。屋外や腐食性の雰囲気にさらされる場所では、これより早く進みます。
設備の更新計画を立てるときは、この年数を頭に入れておくと話が早くなります。第4回で触れたとおり、型式検定の合格証が更新されなければ同一形式は入手できなくなります。15年から20年という更新の周期と、機器の供給の継続性は、セットで見ておきたいところです。
- 耐圧防爆容器は15年で交換を検討し、20年が使用限度。
- 錆・減肉・ガラスのキズがあれば、年数にかかわらず取り替える。
- 更新計画は、型式の供給継続性とセットで考える。
💡 この回のまとめ
防爆工事は、機器・工事・保守の3つがそろって初めて成立する。どれかが欠けたところに着火源が残る。図面と検定合格証がそろっていても、現場で1本のボルトが欠けていれば、その容器は防爆として機能しない。
よくある質問
金属管工事のねじ込みは何山必要ですか?
完全ねじ部で5山以上ねじ合わせます。爆発等級3およびIICの危険場所で使用される場合は6山以上とされています。カップリングによる電線管相互の送り接続は行わず、ユニオンカップリングなど外せる継手を使います。
シーリングフィッチングはどこに入れますか?
分岐や端末処理をする防爆機器との間と、危険場所どうし・危険場所と非危険場所の境界です。境界に隔壁がある場合は、いずれか一方の3m以内とされています。管路が長い場合は15m以下ごとに1か所という考え方もあります。
ケーブルグランドは市販品に替えてもよいですか?
いけません。グランドは機器に付属し、型式検定のときに機器の一部として評価されていることが多いためです。汎用品に交換すると、その機器は防爆として成立しなくなります。外径が合わない場合は、ケーブルの側を選び直します。
本安回路の配線で気をつけることは?
非本安回路と分けて敷設するか、仕切りを設けるか、遮へい付きケーブルを使います。本安回路であることがわかるよう明青色で識別し、シールドの接地は原則として非危険場所側の1か所とします。両端接地は循環電流の原因になります。
点検はどのくらいの周期で行いますか?
法令で一律に決まっているものではなく、設備の使われ方と環境で決めます。腐食性の雰囲気、振動の大きい場所、屋外で日射と雨を受ける場所では短くします。目視・近接・詳細の3段階を使い分け、全部をばらす点検を毎回行う必要はありません。
防爆機器は何年くらい使えますか?
耐圧防爆構造の容器は、適正交換時期の目安が15年、使用限度は20年とされています。ただし錆の進行や減肉、ガラス部のキズがある場合は、年数にかかわらず早期の取替えが必要です。
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。実際の施工と検査にあたっては、適用される指針の版、発注者の仕様書、および所轄官庁の指導に従ってください。



