第2回 危険場所の区分
危険場所の区分は距離ではなく時間で決まる。給油取扱所の審査基準にある高さ0.6m・水平6〜16mという実際の範囲、放出源の等級と換気による決まり方、旧区分との対応までを整理する。
危険場所の区分は、防爆設計の入口です。ここを取り違えると、機器の選定も工事方法もまとめてずれます。この回では、区分の考え方を押さえたうえで、実際の範囲が何メートル・何センチなのかを審査基準の数値で確かめます。
結論
区分は距離ではなく、爆発性雰囲気が存在する時間の長さで決まるただし図面に落とす段では寸法が要る。実際の範囲は「低くて広い」形になる。
- ゾーン0は年間1,000時間超、ゾーン1は10〜1,000時間、ゾーン2は1〜10時間が目安。
- 給油取扱所の審査基準では、水平6〜16m・高さ0.6mといった値が並ぶ。
- 高さが低いのは、ガソリン蒸気が空気の3〜4倍重く、床面にたまるため。
- 換気を強くすれば範囲は狭くなる。区分が1段階下がれば、機器の選択肢が広がる。
区分は「時間」で決まる
防爆の設計は、危険場所の区分から始まる。ここを取り違えると、機器の選定も工事方法もまとめてずれる。区分は3つで、分け方は単純である。爆発性雰囲気が存在する時間の長さで分ける。
目安として示される年間時間は、法令が数値で定めているものではない。区分は最終的に、その設備を持つ事業者が、物質と工程の実態にもとづいて決めるものである。数値は判断の物差しとして使われる。
- 区分は、爆発性雰囲気が存在しうる時間の長さで決まる。
- 年間時間は判断の物差しで、法令が定めた数値ではない。
- 区分を決めるのは、その設備を持つ事業者である。
実際の範囲は、低くて広い
💡 高さ0.6m、水平6mから16m
この数字の形が、危険場所の実感に近いところです。
「区分は時間で決まる」と言われても、図面に落とす段になると寸法が要る。ここでは、消防本部の審査基準に示されている給油取扱所の例を借りて、範囲の実際の大きさを見ておく。
| 対象 | 区分 | 水平方向の範囲 | 高さ |
|---|---|---|---|
| 固定給油設備(懸垂式)のホース機器の引出口 | 1種 | 引出口から地盤面に下ろした垂線から6mまで | 地盤面から0.6mまで |
| 通気管の先端 | 1種 | 先端の中心から水平方向および周囲1.5mまで | — |
| 充填の開口部の周囲 | 1種 | おおむね半径0.9mの円筒状の範囲 | — |
| 固定給油設備(地上式) | 2種 | 設備の中心から、排水溝までの最大の下り勾配となる直線から水平11mまで | 基礎または地盤面から0.6mまで |
| マンホール | 2種 | 中心から同様の直線から水平14mまで | 地盤面から0.6mまで |
| 注入口 | 2種 | 中心から同様の直線から水平16mまで | — |
注目したいのは高さである。いずれも0.6mという低い値になっている。第1回で見たとおり、ガソリンの蒸気は空気の3〜4倍重い。漏れた蒸気は上に拡散せず、地面を這って低いところにたまる。だから範囲は「低く、広く」なる。
この形を知っていると、図面の見え方が変わる。排水溝や側溝は、勾配に沿って蒸気の通り道になる。範囲の起点が「排水溝までの最大の下り勾配となっている直線」から測られているのは、そのためである。ピットや地下ピットは、換気しないかぎり蒸気がたまり続ける。
逆に、床から1.5mの高さに付ける壁付けの器具は、同じ部屋にあっても範囲の外になることがある。区分図に高さが書かれていない現場では、この判断ができない。平面図だけでなく断面図を描く理由はここにある。
- 範囲は水平で6〜16m、高さは0.6mという形になる。
- 蒸気比重が大きいほど、低い位置にたまる。
- 排水溝やピットは蒸気の通り道になり、範囲が広がる。
範囲はどう決まるのか ── 放出源と換気
💡 放出の頻度でいったん決め、換気の効き方で修正する
ここが設計として効く部分です。
先の数値は、審査基準が施設の形に応じて示している例である。一般の工場では、自分で範囲を組み立てることになる。手がかりになるのが、放出源の等級という考え方である。
放出源の等級が決まると、対応するゾーンが仮に決まる。連続放出源ならゾーン0、第一級放出源ならゾーン1、第二級放出源ならゾーン2、という対応である。そのうえで、換気の度合いと有効性によって修正していく。
換気が十分に効いていれば範囲は狭くなり、ゾーンが1段階下がることもある。逆に、屋内で換気が不十分なら、範囲は広がり、ゾーンが上がる。ここが設計として効く部分である。換気の増強で区分を下げられれば、必要な機器の保護レベルが下がり、費用も下がる。
| 調べる項目 | なぜ要るのか |
|---|---|
| 引火点 | 常温で可燃性の蒸気を出すかどうかが決まる。ここが出発点になる。 |
| 燃焼範囲(爆発下限界・上限界) | 漏れた蒸気が着火しうる濃度の幅がわかる。 |
| 蒸気密度(空気との比) | 空気より重ければ低い場所に、軽ければ高い場所にたまる。範囲の形が変わる。 |
| 発火温度 | 機器の温度等級を決める根拠になる(第3回)。 |
| 最大安全すきま・最小点火電流比 | 機器グループ(IIA・IIB・IIC)の判定に使う(第3回)。 |
これらは安全データシート(SDS)や物性の資料から拾う。電気の設計者も、最低限どこに書いてあるかは知っておきたい。
- 放出源の等級で、ゾーンが仮に決まる。
- 換気の度合いと有効性で、範囲とゾーンを修正する。
- 換気の増強で区分を下げられれば、機器の選択肢が広がる。
旧区分とどう対応するのか
💡 0種・第1種・第2種は、そのままゾーン0・1・2に対応する
古い図面と新しい機器を突き合わせるときに使います。
古い図面や社内基準、そして消防の審査基準には、0種危険場所、第1種危険場所という表記が残っている。国際整合指針ではゾーン0・ゾーン1・ゾーン2という呼び方になるが、区分の考え方は対応している。
| 区分 | 使える防爆構造の例 |
|---|---|
| 0種場所(ゾーン0) | 本質安全防爆 ia、樹脂充填防爆 ma |
| 1種場所(ゾーン1) | 本質安全防爆 ia・ib、耐圧防爆 d、内圧防爆、油入防爆 o、樹脂充填防爆 ma・mb |
| 2種場所(ゾーン2) | 上記に加えて、非点火防爆 n、安全増防爆 e など |
粉じんを扱う場所については、ゾーン20・21・22という別の系列がある。可燃性の粉じんは、堆積したものが舞い上がって爆発性の雰囲気を作るため、清掃と堆積の管理が区分に直結する。ガスの区分をそのまま当てはめることはできない。
- 従来の呼び方と、ゾーンの呼び方は対応している。
- 上位区分向けの機器は下位でも使えるが、逆は使えない。
- 粉じんはゾーン20・21・22という別の系列になる。
図面に落とすところが、電気の仕事
⚠️ 平面図だけの区分図は、施工の段階で必ず解釈のずれを生む
「その壁付けスイッチは範囲の中か外か」は、高さの情報がないと判断できません。
区分の決定は、扱う物質と、どこからどれだけ漏れうるか、換気がどれだけ効くかで決まる。したがって、区分を決める作業はプロセス側と一緒に進めることになる。電気の設計者が単独で線を引くものではない。
ただし、決まった区分を図面に落とすのは電気の仕事である。平面図と断面図の両方に境界を描き、寸法を入れる。ゾーンの境界は立体で、床面から一定の高さまで、開口部から一定の距離まで、という形になる。
| 確認すること | 見落とすとどうなるか |
|---|---|
| 区分図に日付が入っているか | 10年前の区分図のまま話が進む。設備は改修のたびに変わっている。 |
| 断面が描かれているか | 壁付け機器が範囲の内か外か判断できず、施工で解釈がずれる。 |
| 排水溝とピットが反映されているか | 蒸気の通り道とたまり場が図から抜け、実態より狭く見える。 |
| 所轄と事前に相談したか | 審査基準は自治体ごとに差がある。後戻りの原因になる。 |
危険場所の区分は、防爆設計の入口であると同時に、あとから直しにくい部分でもある。区分が1段階厳しくなれば、機器も工事方法もまとめて変わる。着工前に、区分図が確定しているか、そこに寸法と断面が入っているかを確かめておきたい。
- 区分は事業者が決め、電気の側はそれを図面に翻訳する。
- 平面図と断面図の両方に、寸法入りで境界を描く。
- 区分が1段階変われば、機器も工事方法もまとめて変わる。
よくある質問
危険場所の区分は、何で決まりますか?
爆発性雰囲気が存在しうる時間の長さで決まります。ゾーン0は連続または長時間(年間1,000時間超が目安)、ゾーン1は通常の状態でときどき(年間10〜1,000時間)、ゾーン2は通常は生成せず短時間(年間1〜10時間)です。距離で決めるものではありません。
危険場所の範囲は、具体的にどのくらいですか?
施設の形態によりますが、給油取扱所の審査基準では、懸垂式のホース引出口から水平6m・高さ0.6mまでが1種、地上式の固定給油設備から水平11m、マンホールから14m、注入口から16mまでが2種、といった値が示されています。
なぜ範囲の高さが0.6mと低いのですか?
ガソリンの蒸気は空気の3〜4倍重く、上に拡散せず地面を這って低いところにたまるためです。範囲は「低く、広く」なります。排水溝や側溝は、勾配に沿って蒸気の通り道になります。
ゾーンを下げることはできますか?
換気の増強で範囲が狭くなり、ゾーンが1段階下がることがあります。区分が下がれば必要な機器の保護レベルも下がり、選べる機器が増えて費用も下がります。機器を探す前に、区分そのものを見直す余地があるか確認する価値があります。
0種・第1種という呼び方は、いまも使いますか?
使われています。従来の0種・第1種・第2種危険場所は、国際整合指針のゾーン0・1・2に対応します。古い図面や消防の審査基準では従来の呼び方が残っているため、両方を読めるようにしておく必要があります。
区分図には何を描けばよいですか?
平面図には放出源の位置、ゾーンの境界線と記号、水平方向の寸法、排水溝やピット、換気口を。断面図にはゾーンの高さ、ピットの深さ、機器の取付高さ、換気口の高さを描きます。高さの情報がない区分図では、壁付け機器が範囲の内か外かを判断できません。
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。記載した範囲の数値は特定の消防本部の審査基準の例であり、全国一律のものではありません。危険場所の区分は設備の実態にもとづいて事業者が決定するものであり、実際の判断は所轄官庁および発注者の基準に従ってください。


