技術図書館防爆機器の選定はゾーンから始めるゾーンから順に条件を重ねる手順、合格証3年の意味、受入れで照合する4点この資料をスライドで見る資料一覧を見る

ゾーン・機器グループ・温度等級・構造の順に絞り込む手順。合格証の有効期間3年が意味するもの、海外認証との相互承認がないこと、受入れで銘板と突き合わせる4点まで。

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防爆機器の選定でつまずくのは、たいてい順番です。先に機器を決めてしまい、あとから区分に合わないと気づく。この回では、絞り込みの順番と、型式検定まわりで誤解されやすい点を整理します。

結論

選定はゾーンから始める。構造から入ると手戻りになる合格証の有効期間3年は「製造・輸入できる期間」であって、使用できる期間ではない。

  • ゾーン→機器グループ→温度等級→構造→検定の確認、の順に条件を重ねる。
  • ゾーン0で使えるのはEPLがGaの機器だけ。換気で区分が下がれば、選択肢は一気に広がる。
  • ATEXやIECExの認証と日本の型式検定のあいだに、相互承認はない。
  • 受入れで見るのは、合格番号・防爆の表示・周囲温度の前提・付属品の4点。

絞り込みには順番がある

動く図解この記事のポイントを動く図解にまとめました(順番 → EPL → 検定 → 受入れ・くり返し再生)。ジャンル「防爆設備」で見る →

防爆機器の選定は、条件を重ねていく作業である。順番を守れば選択肢は自然に絞られるが、順番を崩すと手戻りになる。よくあるのが、先に「耐圧防爆の照明器具」と決めてしまい、あとからその場所がゾーン0だったとわかる例である。

ゾーン0で使えるのは、保護レベルがGaの機器に限られる。本質安全防爆のiaや、一部の樹脂充填防爆がこれに当たる。ゾーン1にはGb、ゾーン2にはGcの機器が使える。上位の保護レベルの機器は、下位のゾーンでも使える。

ゾーン 必要な保護レベル 使える構造の例 選択肢の広さ
ゾーン0 Ga 本質安全防爆 ia、樹脂充填防爆 ma 狭い。計装以外はほとんど選べない
ゾーン1 Gb 以上 耐圧防爆 d、安全増防爆 e、本質安全防爆 ib、内圧防爆 p、油入防爆 o 標準的。多くの機器が用意されている
ゾーン2 Gc 以上 上記に加えて、非点火防爆 n 広い。費用も抑えやすい
上位のゾーン向けの機器は下位のゾーンでも使えます。逆は使えません。

ここで効いてくるのが、第2回で触れた換気の話である。換気の増強でゾーン1をゾーン2に下げられれば、選べる機器の幅が一気に広がり、費用も下がる。機器を探し始める前に、区分そのものを見直す余地がないかを確認しておきたい。

たとえるなら

防爆機器の選定は、「場所に合った靴選び」です。
雪道・雨の日・室内で靴を変えるように、まずゾーンを確かめてから、そこで使える機器を探します。
ここまでのポイント
  • 選定はゾーンの確認から始める。
  • ゾーン0はEPLがGaの機器に限られ、選択肢が狭い。
  • 機器を探す前に、換気で区分を下げられないかを検討する。

型式検定 ── 誰が受け、ユーザーは何を見るのか

💡 検定を受けるのはメーカー、ユーザーが見るのは合格証と銘板の一致

「検定を受けているか」ではなく「書類と現物が合っているか」を見ます。

労働安全衛生法にもとづき、防爆構造の電気機械器具は型式検定の対象になっている。検定を行うのは登録型式検定機関で、合格すると型式検定合格証が交付され、機器には合格の表示がされる。

型式検定の流れと合格証
検定はメーカーが受け、ユーザーは表示で確認する。

検定で使われる基準には、従来の構造規格の系統と、国際整合防爆指針の系統がある。メーカーはどちらの基準でも検定を受けられるが、1つの機器に両方を部分的に適用することはできない。交付される合格証の様式は同じで、法令上の扱いにも差はない。

国内の型式検定は対象が広い。大型の機械だけでなく、照明器具、携帯電話、測定器、他の機器に組み込まれる電気部品まで含まれる。IECの規格では「簡易機器」として扱いが緩くなるものも、国内では検定の対象になる。「小さい部品だから」という理由で外れることはない。

ひっかけ注意

「海外の防爆認証があれば国内でも使える」ではありません。
海外の認証と国内の型式検定に相互承認はありません。見積の段階で国内の型式検定に合格しているかを確かめます。
ここまでのポイント
  • 検定を行うのは登録型式検定機関。
  • 構造規格の系統と国際整合指針の系統があり、混ぜて適用はできない。
  • 国内の検定は対象が広く、組み込み部品や携帯機器も含まれる。


有効期間3年の意味を取り違えない

⚠️ 有効期間は「作れる期間」であって「使える期間」ではない

期限が切れても、すでに設置した機器はそのまま使い続けられます。

防爆機器の合格証には有効期間があり、3年とされている。更新検定を受ければ、さらに3年延長される。更新の申請は、有効期限の3か月前から可能である。

ここでよく誤解が起きる。「有効期限が切れたら、その機器は使えなくなるのか」という質問である。そうではない。有効期間が意味するのは、その型式の機器を製造または輸入できる期間であって、製品を使用できる期間ではない。

合格証の有効期間の意味
有効期間が意味するのは、製造・輸入できる期間である。

とはいえ、実務上は別の形で効いてくる。更新されなかった型式は、新たに入手できなくなる。同一形式での増設や更新ができなくなり、取付寸法や引込口の仕様まで変わる別形式に切り替えることになる。長寿命の設備を設計するときは、その型式が継続して供給される見込みを、メーカーに確認しておく価値がある。

項目 内容
有効期間 3年。更新検定を受ければさらに3年延長される。
更新の申請時期 有効期限の3か月前から申請できる。
期限が切れると その型式を新たに製造・輸入できなくなる。設置済みの機器の使用には影響しない。
設計への影響 同一形式での増設・更新ができなくなる。取付寸法や引込口の仕様が変わる別形式への切替えになる。
長寿命の設備を設計するときは、その型式が継続して供給される見込みをメーカーに確認しておく価値があります。
ここまでのポイント
  • 有効期間3年は、製造・輸入できる期間。
  • 更新は有効期限の3か月前から申請できる。
  • 更新されない型式は入手できなくなり、増設時に別形式へ切り替わる。

海外の認証は、そのまま持ち込めない

⚠️ ATEX・IECEx と日本の型式検定に、相互承認はない

輸入品を検討するときに、いちばん確認すべき点です。

輸入品や海外メーカーの機器を検討するときに、必ず確認すべき点がここである。ATEX(欧州)やIECEx(国際)の認証と、日本の型式検定のあいだに相互承認はない。海外の認証書を持っていても、国内では改めて型式検定を受けた機器でなければ使えない。

海外認証と国内の型式検定
海外の認証があっても、それだけでは国内の危険場所には使えない。

カタログには複数の認証マークが並んでいることが多く、その中に日本の合格番号が含まれているかどうかは、注意して見ないと判別できない。見積の段階で「国内の型式検定合格品か」を明記して照会しておくのが確実である。

なお、船舶安全法の適用を受ける船舶については型式検定の対象外とされている。陸上の設備とは扱いが異なるので、造船や舶用の案件では別に確認が要る。

ここまでのポイント
  • 海外の認証と国内の型式検定に相互承認はない。
  • カタログの認証マークだけで判断しない。
  • 見積段階で「国内の型式検定合格品か」を明記して照会する。


受入れで見る4点

💡 合格証の番号、防爆の表示、周囲温度の前提、付属品の指定

受入れの段階なら差し替えが利きます。

納品時に見るべきは、書類と現物が一致しているかである。銘板が塗装で埋まっていたり、腐食で判読できなくなっていたりする場合は、その時点で指摘しておきたい。あとの点検で機器の適合性を確認できなくなる。

受入れ時に銘板で見る4点
書類と現物が一致しているかを、受入れの時点で見る。
確認するもの どこで見るか 見落とすとどうなるか
型式検定合格番号 銘板と合格証 検定を受けていない機器が紛れ込む。是正は機器交換になる。
防爆の表示(構造・グループ・温度等級・EPL) 銘板 ゾーンやガスに合わない機器を設置してしまう。
周囲温度の前提 銘板と取扱説明書 直射日光や高温配管の近くで、温度等級の前提を外す。
付属品の指定(グランド、閉止プラグ) 取扱説明書と納品明細 現場で汎用品に置き換わり、防爆として成立しなくなる。
据付の条件(取付姿勢、離隔) 取扱説明書 据付けたあとに不適合が判明し、やり直しになる。
いずれも受入れの段階なら差し替えが利きます。設置後に判明すると、費用と工期の両方に響きます。

いずれも、受入れの段階なら差し替えが利く。設置後に判明すると、費用と工期の両方に響く。

ここまでのポイント
  • 見るのは、書類と現物が一致しているか。
  • 銘板が読めない状態は、その場で指摘する。
  • 付属品まで含めて防爆機器である。

💡 この回のまとめ

機器の選定は、区分図と物質の情報が確定していれば、機械的な作業に近い。難しいのはむしろ、区分図がないまま、あるいは古い区分図のまま話が進むことである。選定に入る前に、根拠となる図面の日付を確認しておきたい。

よくある質問

防爆機器は、どういう順番で選びますか?

ゾーンの確認、機器グループの決定、温度等級の決定、防爆構造の選択、検定と表示の確認の順です。構造から入ると、あとからゾーンに合わないとわかって手戻りになります。

型式検定は誰が受けるのですか?

メーカーが受けます。登録型式検定機関が検定を行い、合格すると型式検定合格証が交付され、機器に合格の表示がされます。ユーザー側は、合格証と銘板の表示が一致しているかを確認します。

合格証の有効期間が切れたら、その機器は使えなくなりますか?

なりません。有効期間(3年)は、その型式の機器を製造または輸入できる期間であり、製品を使用できる期間ではありません。すでに設置した機器はそのまま使い続けられます。

更新されないと、どんな影響がありますか?

その型式が入手できなくなります。同一形式での増設や更新ができなくなり、取付寸法や引込口の仕様まで変わる別形式に切り替えることになります。長寿命の設備では、供給の継続性をメーカーに確認しておく価値があります。

ATEXやIECExの認証品は、日本でそのまま使えますか?

使えません。海外の認証と日本の型式検定のあいだに相互承認はないため、国内では改めて型式検定を受けた機器が必要です。カタログの認証マークだけで判断しないでください。

受入れでは何を確認しますか?

型式検定合格番号、防爆の表示(構造・機器グループ・温度等級・EPL)、周囲温度の前提、付属品の指定の4点です。受入れの段階なら差し替えが利きますが、設置後に判明すると費用と工期の両方に響きます。

本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。機器の適合性については、型式検定合格証とメーカーの取扱説明書、および所轄官庁の判断に従ってください。

出典

次に読むならこれ第7回 保管庫の照明とスイッチ防爆電気設備の解説
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。