【電気工事業法の解説 第1回】電気工事業法とは何を縛る法律か|4つの区分と、電気工事士法との違い
電気工事士法が「作業する人」を縛る法律なのに対し、電気工事業法は「請け負う事業者」を縛る法律である。登録・通知・みなし登録・みなし通知の4区分がどう分かれるのか、2023年3月に変わった電気工作物の区分とあわせて整理する。連載の第1回。
この記事の要点
みなし通知の4つ
登録の有効期間
(法律第96号)
- 電気工事士法が「作業する人」を縛る法律なのに対し、電気工事業法は「請け負う事業者」を縛る法律である。資格を持っていることと、業として請け負ってよいことは別の話になる。
- 自分がどの区分に当たるかは、建設業許可の有無と、一般用電気工作物等を扱うかどうかの2軸で決まる。組み合わせは4通りしかない。
- 登録は5年で切れる。更新を落としたまま請け負えば無登録営業となり、法第36条により1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になる。
この法律は何のためにあるのか
ひとことで言うと:電気工事士法は「人」の資格を決める法律、電気工事業法は「事業者」の業務を決める法律。両方そろって、はじめて仕事として電気工事ができる。
電気工事にかかわる法律は複数あるが、現場で混同されやすいのが電気工事士法と電気工事業法である。名前が似ているうえ、どちらも「電気工事」という同じ言葉を使うためだ。
違いは、縛る相手にある。電気工事士法は、作業に従事する人に免状を求める法律である。これに対して電気工事業法は、電気工事を請け負う事業者に対して、登録や通知の手続きと、営業所ごとの体制づくりを求める法律である。
正式名称は「電気工事業の業務の適正化に関する法律」で、昭和45年(1970年)に制定された。無資格・不良な工事による事故を減らすため、作業者の資格だけでなく、それを請け負う事業者の側にも規律を置いたのがこの法律である。
したがって、有資格者が作業していても、事業者が登録も通知もしていなければ違法になる。逆に、登録している事業者であっても、無資格者に作業をさせれば別の違反になる。人の資格と事業者の登録は、どちらか一方では足りない。
4つの区分 ── 自分はどれに当たるか
この法律で最初につまずくのが、手続きの種類が4つあることだ。ただし分かれ方は単純で、2つの質問に答えれば決まる。
ひとつめの質問は「一般用電気工作物等を扱うか」。住宅や小規模店舗の工事を1件でも請け負うなら、答えは「扱う」になる。自家用電気工作物(高圧受電のビルや工場)だけを扱うなら「扱わない」である。
ふたつめの質問は「建設業許可を持っているか」。持っていれば「みなし」の側に入り、登録や通知ではなく届出になる。
| 区分 | 建設業許可 | 扱う工作物 | 手続き | 有効期間 | 主任電気工事士 |
|---|---|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | なし | 一般用を含む | 登録(法第3条) | 5年・更新あり | 必要 |
| みなし登録電気工事業者 | あり | 一般用を含む | 届出(法第34条) | 定めなし | 必要 |
| 通知電気工事業者 | なし | 自家用のみ | 通知(法第17条の2) | 定めなし | 不要 |
| みなし通知電気工事業者 | あり | 自家用のみ | 届出(法第34条) | 定めなし | 不要 |
「みなし」に有効期間の定めはないが、建設業許可を更新したときや登録事項が変わったときは、そのつど届出が必要になる。
間違えやすいのは、自家用しか扱わないつもりで通知にしたのに、実際には住宅の工事を1件受けてしまうケースである。この瞬間に、通知では足りない状態になる。
「電気工事」とはどこからどこまでか
電気工事業法は「電気工事」という言葉を独自に定義していない。電気工事士法の定義をそのまま借りている。つまり、電気工事士法で電気工事に当たらないものは、電気工事業法でも電気工事ではない。
対象になるのは、一般用電気工作物等と、最大電力500kW未満の需要設備である自家用電気工作物の工事である。500kW以上の需要設備は、この法律の対象から外れる。また、電気工事士法施行令で定める軽微な工事も除かれる。
ここで押さえておきたいのが2023年3月の改正である。それまで事業用電気工作物の側にあった小規模事業用電気工作物――出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備と、出力20kW未満の風力発電設備――が、一般用電気工作物とあわせて「一般用電気工作物等」という区分にまとめられた。
実務への影響は小さくない。50kW未満の野立て太陽光の工事は第二種電気工事士の作業範囲に入り、事業者側の区分判定でも「一般用を扱う」側に立つことになる。自家用だけのつもりで通知を選んでいた事業者が、太陽光を受注した時点で区分が変わる、という事態が起こりうる。
登録は5年で切れる
4区分のうち登録電気工事業者だけは、登録に有効期間がある。5年である。
更新を忘れて期間が満了すると、その時点から無登録の状態になる。気づかずに工事を請け負えば無登録営業であり、法第36条により1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になる。併科もありうる。
厄介なのは、失効しても誰かが止めてくれるわけではないことだ。工事は続き、請求も通り、数か月後に更新の案内や立入検査で発覚する。有効期間の管理は、事業者側が自分で持つしかない。
この連載で扱う範囲
実務で困る順に並べると、次のようになる。第2回以降で1つずつ扱っていく。
- 第1回(本記事)── 電気工事業法とは何を縛る法律か。4つの区分と、電気工事士法との違い。
- 第2回── 登録・通知・届出の手続き。提出先、期限、書類、手数料。
- 第3回── 主任電気工事士。誰を置き、何をさせるのか。
- 第4回── 標識と帳簿。掲示する場所と、5年間の保存。
- 第5回── 器具の備付け。営業所に何を置くのか。
- 第6回── 罰則と監督。立入検査で何を見られるのか。
一次資料で確認するには
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」── 4区分ごとの手続きが整理されている
- 各都道府県の電気工事業担当課のページ ── 様式・手数料・提出先は自治体ごとに異なる
- 所管の産業保安監督部 ── 2以上の都道府県に営業所がある場合の窓口
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。手続きの様式・手数料・提出先は自治体や時期によって異なり、法令も改正されます。実際の申請にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」(令和5年11月版)
- 福岡県「電気工事業登録について(電気工事業の業務の適正化に関する法律)」
- 神奈川県「電気工事業の法令遵守事項について」
- 電気工事技術講習センター「小規模事業用電気工作物と電気工事等」
- 経済産業省「電気工事士等資格が不要な『軽微な工事』とは」
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