この記事の要点
- 備える器具は営業所ごとに決まる。一般用電気工事のみなら絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計の3点、自家用も行うなら検電器と試験装置が加わって7点になる。
- 継電器試験装置と絶縁耐力試験装置は、必要なときに使用し得る措置が講じられていればよいとされ、借用でも差し支えない。残りの5点は現物を置く。
- 主任電気工事士が不要な通知・みなし通知の区分でも、器具の備付けは免除されない。むしろ自家用を扱うぶん、そろえる数は多くなる。
何を備えるのか
ひとことで言うと:器具の備付けは「測れる状態にしておけ」という要求。測れなければ、帳簿の検査結果が書けない。
法第24条は、電気工事業者に対して営業所ごとに絶縁抵抗計その他の器具を備えることを求めている。品目は規則第11条で定められており、その営業所が扱う工事の種類によって変わる。
一般用電気工事のみを行う営業所は3点。絶縁抵抗計、接地抵抗計、そして抵抗および交流電圧を測定することができる回路計である。回路計は「抵抗と交流電圧が測れること」が条件なので、電圧しか測れないものでは足りない。
自家用電気工事も行う営業所は、これに低圧検電器、高圧検電器、継電器試験装置、絶縁耐力試験装置が加わって7点になる。
このうち継電器試験装置と絶縁耐力試験装置の2点は、必要なときに使用し得る措置が講じられていればよいとされている。年に数回しか使わない高額な装置を全営業所に置く必要はなく、借用の手配ができていれば差し支えない、という整理である。逆に言えば、残りの5点は現物をその営業所に置いておくことになる。
区分ごとの要否 ── 通知でも器具は要る
第2回で触れたとおり、通知電気工事業者の提出書類にも備付器具明細書が含まれている。主任電気工事士が不要なだけで、器具の備付け義務まで免除されているわけではない。
むしろ通知・みなし通知は自家用電気工作物を扱う区分なので、そろえる器具は7点になる。主任電気工事士が要らないぶん手続きは軽いが、設備の負担は重い、という関係になっている。
なぜこの品目なのか
7点の顔ぶれには理由がある。竣工検査で確かめるべき項目と、そのまま対応しているからだ。
第4回で見たとおり、帳簿には検査結果を書くことになっている。絶縁抵抗値、接地抵抗値、電圧と導通。これらを測る道具が営業所にないなら、そもそも検査結果を書きようがない。
つまり器具の備付けは、それ単体の義務というより、検査をして記録に残すという一連の流れの入口にあたる。器具がそろっていない営業所ほど、帳簿の配線図と検査結果が空欄になりやすいのは、偶然ではない。
測定器そのものの使い方と、誤用による事故については、別の記事で詳しく扱っている。器具をそろえたあとは、測定器の正しい使い方と、やってはいけない使い方もあわせて確認しておきたい。
立入検査では何と突き合わされるか
器具を備えていない場合の罰則は、法第39条により3万円以下の罰金である。第3回で扱った主任電気工事士の未選任と同じ条文にまとめられている。
加えて法第27条には、粗雑な工事で危険が生じるおそれがある場合や、器具の備付けの規定に違反している場合に、危険を防止するための措置を命じることができるという規定がある。罰金だけで終わらない可能性がある、ということである。
実務でつまずきやすいところ
注意 01
申請のときだけ借りてくる
備付器具明細書に書いた器具は、その営業所に備え続けている前提で審査されている。申請時だけ他営業所から持ってきて写真を撮り、そのあと戻す、という運用は成り立たない。借用でよいとされているのは、継電器試験装置と絶縁耐力試験装置の2点だけである。
注意 02
回路計の要件を満たしていない
規則が求めているのは「抵抗および交流電圧を測定することができる回路計」である。交流電圧しか測れないもの、導通チェッカーのみのものでは要件を満たさない。手持ちのテスターの仕様を一度確認しておきたい。
注意 03
営業所を増やしたのに器具を増やしていない
器具は営業所ごとである。営業所を新設すれば、その営業所にも一式が要る。第3回の主任電気工事士と同じで、拠点を増やす判断は人と器具の両方とセットになる。
注意 04
校正・点検の記録がない
法令は校正の頻度までは定めていない。ただし測定値を帳簿に残し、それを根拠に合否を判断する以上、器具が正しく測れる状態にあることを説明できたほうがよい。メーカーの推奨に従って点検・校正の記録を残しておくと、検査結果の信頼性がそのまま上がる。
次回
第6回は罰則と監督を扱う。ここまでに出てきた義務それぞれに、どの罰則が対応しているのか。立入検査では何を見られ、どこまで進むと登録の取消しに至るのか、という話で連載を締めくくる。
一次資料で確認するには
- 電気工事業法施行規則 第11条 ── 備え付ける器具の品目
- 各都道府県の担当課 ── 備付器具明細書の様式
- 手持ちの回路計の仕様書 ── 抵抗と交流電圧が測定できるかどうか
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。様式・記載事項の運用は自治体によって細部が異なり、法令も改正されます。実際の対応にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
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次に読むならこれ【電気工事業法の解説 第6回】罰則と監督|立入検査で何を見られるのか電気工事業法の解説
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