標識は営業所に常時掲示し、1日で完了しない工事の施工場所にも掲げる。帳簿は営業所ごとに備え、6項目を記載して5年間保存する。記載事項の中身と、実務で抜けやすいところを整理する。
標識は、7項目を書く 登録業者の場合です。規則第12条が決めています。
掲げるのは、営業所と現場 1日で終わる工事の施工場所は、掲げなくてよい。
帳簿は、営業所ごとに6項目 電気工事ごとに書きます。規則第13条です。
記載の日から、5年残す 怠ると、法第42条で1万円以下の過料です。
標識 ── 何を書き、どこに貼るのか
ひとことで言うと:標識は「この工事は登録した事業者がやっている」ことを外から見える形にする仕組み。だから営業所だけでなく、現場にも要る。
法第25条は、電気工事業者に対して、営業所と電気工事の施工場所ごとに、氏名または名称、登録番号その他の事項を記載した標識を掲げることを求めている。具体的な記載事項は規則第12条で定められている。
登録業者は、7項目 登録番号・年月日から、主任電気工事士等の氏名まで。
通知業者は、5項目 登録番号の代わりに、通知の年月日と通知先を書きます。
主任が変わったら、書き換える 変更の届出と、同じ日に直します。
様式は、決まっている 登録は様式第15、通知は様式第15の2です。
登録電気工事業者の場合、書くのは7項目である。登録番号と登録の年月日、氏名または名称、代表者の氏名、営業所の名称、電気工事の種類、そして主任電気工事士等の氏名。1項目でも欠けていれば、決まった標識にならない。自家用だけを扱う通知電気工事業者の標識は、氏名または名称、代表者の氏名、営業所の名称、通知の年月日と通知先の5項目である(規則第12条第1項第2号)。
見落とされやすいのが「主任電気工事士等の氏名」である。第3回で触れたとおり主任電気工事士は登録事項なので、交代したら30日以内に変更届を出すことになるが、同時に標識の書き換えも必要になる。届出だけ出して標識が前任者の名前のまま、という状態は実際によく見かける。
ここに注意!
「自家用だけの通知電気工事業者には、標識は要らない」ではありません。
法第25条の義務は、電気工事業者すべてにかかります。通知電気工事業者は、氏名または名称、代表者の氏名、営業所の名称、通知の年月日と通知先を書いた標識を掲げます(規則第12条第1項第2号、様式第15の2)。
たとえるなら
標識は、お店の入口に貼ってある営業許可証のようなもの
飲食店では、営業許可を受けていることが、お客さんから見える場所に掲げてありますよね。電気工事の標識も同じで、登録した事業者が工事をしていることを、外から確かめられるようにします。だから営業所だけでなく、2日以上かかる現場にも掲げます。
掲示する場所は2か所ある
営業所は、いつも掲げる 見やすい場所に。法第25条です。
1日で終わる工事は、現場に要らない 規則第12条第2項ただし書です。
2日以上の工事は、現場にも掲げる 改修・増設・盤の更新は、2日を超えることが多いです。
現場用は、持ち運べる形で 営業所の額入りの登録票は、持ち出せません。
営業所は無条件である。登録している営業所すべてに、見やすい場所へ常時掲示する。
もうひとつが施工場所で、こちらには条件がつく。1日で完了する工事は除かれるが、裏を返せば2日以上かかる現場には標識が要る。改修、増設、分電盤の更新といった案件は2日を超えることが多く、対象範囲は思っているより広い。
現場用の標識を用意していない事業者は多い。営業所の登録票は額に入れて壁に掛けてあるが、現場に持ち出せる可搬式のものがない、という状態である。持ち運べる標識を営業所の数だけ作っておくのが、いちばん確実な対応になる。
ここに注意!
「営業所に標識を掲げていれば、現場には要らない」ではありません。
法第25条は、営業所と電気工事の施工場所ごとに標識を掲げることを求めています。施工場所で掲げなくてよいのは、電気工事が1日で完了する場合だけです(規則第12条第2項ただし書)。
帳簿 ── 6項目を、営業所ごとに
法第26条は、電気工事業者に営業所ごとの帳簿の備付けと記載、そして保存を求めている。記載事項は規則第13条にある。
注文者・種類と場所・施工年月日 請求書や工事台帳から拾えます。
主任電気工事士等と作業者の氏名 誰が管理し、誰が作業したかです。
配線図と検査結果 現場で意識して残さないと、あとから復元できません。
6項目は、工事ごとに書く 規則第13条第1項です。
並べてみると、この6項目が何のためにあるのかが見えてくる。誰から請け負い、どこで何をして、いつ施工し、誰が管理して誰が作業し、どう配線して、何を確かめたか。あとから工事の中身を再現できるだけの情報を、意図的に選んでいる。
たとえるなら
帳簿は、病院のカルテのようなもの
カルテには、だれを、いつ、だれが診て、どんな検査をして、結果がどうだったかが残りますよね。帳簿の6項目も同じ並びです。注文者、工事の種類と場所、施工年月日、主任電気工事士等と作業者、
配線図、検査結果。あとから工事の中身を確かめられるように残します。
実務で抜けやすいのは、後ろの2つ――配線図と検査結果である。前の4つは請求書や工事台帳から拾えるが、この2つは意識して残さないと消える。第5回で扱う器具の話ともつながっていて、絶縁抵抗計や接地抵抗計で測った値を書き残す場所が、この帳簿になる。
5年間、営業所に置いておく
記載の日から、5年 規則第13条第2項です。施工した日からではありません。
営業所ごとに、備える 法第26条です。立入検査は、その営業所に来ます。
電子での保存も、できる 直ちに表示できる状態なら、帳簿に代えられます(規則第13条の2)。
守らないと、1万円以下の過料 記載しない・虚偽・保存しないとき。法第42条です。
保存期間は5年。起点は、帳簿に記載した日である(規則第13条第2項)。工事が完了して引き渡し、請求も終わったあとも、記録だけは営業所に残り続ける。
ここに注意!
「帳簿は、施工した日から5年」ではありません。
規則第13条第2項は、帳簿を「記載の日から」5年間保存すると決めています。竣工後に検査結果を書き足したなら、その記載の日から数えます。
置き場所も「営業所ごと」と決まっている。支店で施工した工事の帳簿を本社に集約する運用は、条文の求めるところではない。立入検査はその営業所に来るので、そこで出せなければ意味がない。
ここに注意!
「帳簿は、本社にまとめて置けばよい」ではありません。
法第26条は、営業所ごとに帳簿を備えることを求めています。電子で保存するときも、必要に応じて直ちに表示できる状態にしておけば、帳簿の保存に代えられます(規則第13条の2)。その営業所で見せられるかどうかで考えます。
罰則は小さいが、入口になる
記載を怠る、虚偽を記載する、保存しない場合の罰則は、法第42条により1万円以下の過料である。金額としては連載中で最も軽い部類にあたる。ただし立入検査で最初に開かれるのは帳簿であり、そこに書かれた主任電気工事士や作業者の氏名から、無資格者が作業していなかったか、主任電気工事士が実際に管理していたかという別の論点へ進んでいく。帳簿は、事業者を守る記録にも、追及の起点にもなる。
標識には、何をどう書くのか
ひとことで言うと:記載事項は決まっている。書式は自由でも、抜けがあれば掲示していないのと同じ扱いになる。
標識に書く事項は省令で定められている。市販の標識板を買えば枠は用意されているが、営業所名や主任電気工事士の氏名は自分で埋めることになる。埋め忘れが起きやすいのはこの2つである。
主任電気工事士の交代 変更の届出と一緒に、名前を書き換えます。
営業所の名称の変更 営業所の名称の行を、新しい名前にそろえます。
更新の登録 有効期間は5年(法第3条第2項)。新しい登録証と見比べます。
届出と標識は、セットで直す 届出だけで、標識が古いままになりがちです。
主任電気工事士が交代したのに標識だけ前任者のままになっている例は珍しくない。変更の届出とあわせて、標識の書き換えも手順に組み込んでおきたい。施工場所に掲げる標識も同じ内容である。
たとえるなら
標識の書き換えは、名刺の肩書きを直すのと同じ
役職が変わったのに古い名刺を配り続けたら、相手は前の情報のまま受け取ってしまいますよね。届出を出しても、標識が古いままなら、外から見える情報は古いままです。届出と同じ日に、標識も直します。
帳簿は、実際にどう埋まるのか
ひとことで言うと:1件の工事につき1行ではなく、記載事項をひととおり埋めた記録を1件分として残す。
受注したら、前の3項目 注文書・工事台帳から、そのまま写せます。
施工中は、人と配線図 配線図は、別紙を綴じてもよい。
竣工時は、測ってすぐ書く 基準値ではなく、測った値と判定を書きます。
検査の様式を、帳簿の一部に 二重に管理せずに済みます。
帳簿の記載事項は省令で定められている。様式は自由なので、自社の工事台帳に項目を足す形でも、市販の帳簿を使う形でもよい。次は、架空の1件を例に、どう埋まるのかを並べたものである。
| 帳簿の記載事項 |
記入例 |
| 注文者の氏名または名称および住所 |
みどり商事 株式会社/○○市○○町1-2-3 |
| 電気工事の種類および施工場所 |
一般用電気工事/○○市○○町1-2-3 事務所 |
| 施工年月日 |
令和8年5月12日 |
| 主任電気工事士等および作業者の氏名 |
青木 二郎(主任)/白井 三郎 |
| 配線図 |
別紙のとおり(引込〜分電盤) |
| 検査結果 |
絶縁抵抗 50MΩ(基準 0.1MΩ以上)、接地抵抗 85Ω(D種 100Ω以下)、導通・極性 良 |
| 請負金額 |
—(記載は任意) |
記載事項は省令で定められている。記入例は架空のもの。請負金額は法定の記載事項ではないが、実務では併記されることが多い。
検査結果の欄が空欄のまま回ってくることが多い。竣工時の測定値をその場で書き留める運用にしておくと、あとから探し直す手間がなくなる。配線図は帳簿に直接描かず、別紙を綴じて「別紙のとおり」と記す形でも差し支えない。
ここに注意!
「検査結果の欄は、基準値を書いておけば足りる」ではありません。
規則第13条が求めるのは、その工事の検査結果です。「0.1MΩ以上」のような基準値を書き写すだけでは、何を測ってどうだったかが残りません。測った値と判定を、その場で書き残します。
実務でつまずきやすいところ
標識が、前の主任のまま 届出と書き換えを、同じ手順に入れます。
2日以上の現場に、標識がない 掲げないと、法第42条の過料の対象です。
帳簿を、本社にまとめる その営業所で見せられるようにしておきます。
どちらも、外から確かめるための義務 日々の運用に組み込みます。
注意 01
標識の書き換えを忘れる
主任電気工事士の交代、営業所の名称変更、更新の登録。いずれも変更届は出すのに、標識だけ古いままになりやすい。登録の有効期間は5年なので(法第3条第2項)、更新の登録のたびに、新しい登録証と標識を見比べておくとよい。
注意 02
現場用の標識がない
2日以上かかる現場には施工場所にも標識が要る。営業所の額入り登録票は持ち出せないので、可搬式のものを別に用意する。掲示を怠った場合も法第42条の過料の対象である。
注意 03
配線図と検査結果が残っていない
帳簿の6項目のうち、この2つだけは現場で意識して残さないと後から復元できない。測定値は測ったその場で書く。
竣工検査の記録様式を帳簿の一部として設計しておくと、二重管理にならずに済む。
注意 04
本社にまとめてしまう
帳簿は営業所ごとに備え付ける。電子データで一元管理する場合も、その営業所で速やかに出力・提示できる状態にしておく必要がある。クラウドに置くこと自体は問題なく、必要に応じて直ちに表示できる状態で保存すれば、帳簿の保存に代えられる(規則第13条の2)。現地で見せられるかどうかで考える。
標識と帳簿は、どちらも「外から確かめられるようにする」ための義務である。技術的な難しさはないが、日々の運用に組み込んでおかないと必ず抜ける。
次回
第5回は器具の備付けを扱う。営業所に何を置くのか、一般用と自家用で何が違うのか、借りて済ませてよいものはどれか、という話になる。
一次資料で確認するには
- 各都道府県の担当課 ── 標識の様式(様式第15など)が公開されている
- 電気工事業法施行規則 第12条・第13条 ── 標識と帳簿の記載事項
- 自社の竣工検査記録の様式 ── 帳簿の記載事項を満たしているかを突き合わせる
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。様式・記載事項の運用は自治体によって細部が異なり、法令も改正されます。実際の対応にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
次に読むならこれ【電気工事業法の解説 第6回】罰則と監督|立入検査で何を見られるのか電気工事業法の解説
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