技術図書館監督は段階的に進み、検査は4点を見る7段の罰則の重さ、報告の徴収から取消しまでの監督の段階、立入検査で見られる4点この資料をスライドで見る資料一覧を見る

罰則は第36条の無登録営業を最上位に7段階。監督は報告の徴収と立入検査から入り、危険等防止命令、登録の取消しまたは6月以内の事業停止へ段階的に進む。立入検査で見られる標識・帳簿・器具・主任電気工事士の4点を整理し、連載を締めくくる。

最も重いのは、第36条 無登録営業・不正登録・停止命令違反。1年以下の拘禁刑など。
最も軽いのは、第42条の過料 標識・帳簿・登録証の返納など。1万円以下です。
監督は、報告・検査から 危険等防止命令、取消し・事業停止があります。
検査で見るのは、4点 標識・帳簿・器具・主任電気工事士です。

罰則の全体像

ひとことで言うと:罰則は「営業できる状態を偽ったか」が最も重く、「記録を残さなかったか」が最も軽い。並べると法律が何を重く見ているかが分かる。

第36条:無登録営業など 1年以下の拘禁刑・10万円以下の罰金。併科もあります。
第37条:無資格者・下請け先 3月以下の拘禁刑・3万円以下の罰金。
第38条〜第40条:罰金 電気用品10万円、主任・器具3万円、届出・報告・検査2万円。
第42条:過料 標識・帳簿・登録証の返納など、1万円以下。

最上位は法第36条である。登録を受けずに電気工事業を営んだ場合、不正の手段で登録を受けた場合、そして事業停止命令に違反した場合。いずれも1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金で、併科もありうる。第1回で触れた「更新を落として失効したまま請け負う」も、ここに当たる。

次が第37条で、3月以下の拘禁刑または3万円以下の罰金。電気工事士等でない者を作業に従事させた場合(法第21条違反)と、電気工事業者でない者に下請負させた場合(法第22条違反)が対象になる。

第22条は連載でここまで触れてこなかったが、実務では重要である。電気工事業者でない相手に電気工事を下請けに出してはいけない。その工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない相手に出せば、出した側が第37条の対象になる。自家用だけの通知電気工事業者に一般用の工事を出す場合も当たる。下請けを使うなら、登録の有無を確認する手順が要る。

ここに注意!
「下請けに出した先が無登録でも、罰せられるのは下請けの業者だけ」ではありません。
第22条は、請け負った電気工事を、その工事に係る電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせることを禁じています。違反すると、出した側が第37条(3月以下の拘禁刑または3万円以下の罰金)の対象になり、第28条の処分の理由にもなります。自家用だけの通知電気工事業者に、一般用の工事を出す場合も当たります。

第38条は電気用品の使用制限(法第23条)で10万円以下の罰金。電気用品安全法の表示が付いている電気用品でなければ電気工事に使ってはならない、という規定である。

第39条が主任電気工事士の未選任と器具の未備付けで3万円以下の罰金。第3回と第5回で扱った2つが、同じ条文にまとめられている。

第40条は届出をしない・虚偽の届出をした場合、報告を拒んだ場合、検査を拒み・妨げた場合で2万円以下の罰金。第42条が一部の届出(廃止の届出など)をしない場合、登録証の未返納、標識の未掲示、帳簿の記載・保存を怠った場合で1万円以下の過料である。

加えて第41条に両罰規定がある。法人の代表者や従業者が違反行為をしたときは、行為者だけでなく法人にも罰金が科される。「担当者が勝手にやった」で終わる構造にはなっていない。


監督 ── 報告・検査から、命令、取消し・停止へ

第29条:報告と立入検査 営業所や施工場所に立ち入り、帳簿などを検査します。
第27条:危険等防止命令 粗雑な工事、表示のない電気用品、器具の未備付けのとき。
第28条:取消し・6月以内の停止 無資格者の従事、主任の未選任、命令違反などが理由です。
停止命令の違反は、第36条へ 最も重い罰則の対象になります。

入口は法第29条である。経済産業大臣または都道府県知事は、業務に関して必要な報告を求め、営業所などに立ち入って帳簿書類を検査し、関係者に質問することができる。

次の段が法第27条の危険等防止命令。粗雑な工事で危険が生じ、または生じるおそれがある場合や、電気用品の使用制限・器具の備付けの規定に違反している場合に、危険を防止するための措置を命じられる。

そして法第28条で、登録の取消しまたは6月以内の事業停止命令に至る。理由は、登録拒否の要件の一部(第6条第1項第1号・第3号・第5号)に該当したとき、変更の届出をしない・虚偽の届出をしたとき、主任電気工事士を期限内に選任しない・無資格者を作業に従事させる・電気工事業者でない者に請け負わせたとき、危険等防止命令に違反したとき、不正の手段で登録を受けたときである(第28条第1項)。通知電気工事業者は事業停止の対象で(同条第2項)、建設業者であるみなし登録電気工事業者には、登録の取消しの規定は適用されない(第34条第1項)。

たとえるなら
監督の進み方は、サッカーの審判のようなもの
審判は、ふつうは注意やイエローカードから入りますよね。でも悪質な反則なら、いきなりレッドカードも出します。監督も同じで、多くは報告や立入検査から入りますが、第28条の理由に当たれば、命令を経ずに登録の取消しや事業停止になることもあります。
ここに注意!
「監督は必ず段階を踏むので、いきなり取消し・停止にはならない」ではありません。
第28条は、主任電気工事士を期限内に選任しない、無資格者を作業に従事させる、電気工事業者でない者に請け負わせる、といった違反そのものを、登録の取消しや6月以内の事業停止の理由にしています。危険等防止命令を経ることは、条件になっていません。

検査を拒むのは、最も割に合わない

立入検査そのものを拒んだり妨げたりすると、それ自体が法第40条の対象になる。しかも印象として最悪で、その後の調査が厳しくなる。指摘されそうな不備があるとしても、検査は受けて、指摘を受けてから直すほうが軽く済む。事業停止命令を受けた期間中に工事を請け負えば、命令違反として法第36条まで戻ってしまう。
ここに注意!
「立入検査を拒めば、帳簿を見られずに済む」ではありません。
検査を拒み、妨げ、忌避すると、それ自体が第40条の罰金(2万円以下)の対象になり、両罰規定(第41条)で会社にも科されます。報告をしない、虚偽の報告をする場合も同じです。


立入検査で見られるもの

標識:掲げ続けていたか 営業所と、2日以上の現場です。
帳簿:5年分あるか 記載の日から5年間の保存です。
器具:明細のとおりあるか その営業所にあることが前提です。
主任電気工事士:管理していたか 帳簿の作業者名から、資格の有無へ進むことが多いです。

4点とも、検査の当日にそろえられるものではない。標識は掲げ続けていたか、帳簿は5年分あるか、器具は明細書のとおり営業所にあるか、主任電気工事士は実際に作業を管理していたか。日常の運用がそのまま出る。

進み方としては、帳簿が起点になることが多い。記載された作業者の氏名から、その人が有資格者だったかを確認する。主任電気工事士の欄が空いていれば、選任の実態が問われる。第4回で「帳簿は事業者を守る記録にも、追及の起点にもなる」と書いたのは、この意味である。

罰せられるのは誰か ── 行為者と法人(第41条)

ひとことで言うと:違反をした本人だけでなく、その会社にも罰金が科される。これが両罰規定である。

第41条は、法人の代表者や従業者が業務に関して第36条から第40条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても各本条の罰金刑を科すと定めている。

行為者を罰する 違反をした本人が対象です。
会社にも、各条の罰金 法人や事業主にも科されます。
対象は、第36条〜第40条 第42条の過料は、両罰の対象外です。
仕組みで、会社を守る 無資格者を入れない手順を、先に作っておきます。

現場の判断で無資格の応援を作業に入れた、という場合を考えるとわかりやすい。作業に従事させた側が第37条の対象になるが、それだけで終わらず、会社にも罰金が科されうる。無資格者を入れない仕組みを作っておくことは、現場の安全のためであると同時に、会社を守る手当てでもある。

たとえるなら
両罰規定は、部員の違反で部も出場停止になるようなもの
部員が規則を破ったとき、本人だけでなく部も大会に出られなくなることがありますよね。両罰規定も同じで、従業者が業務に関して違反をしたとき、本人だけでなく会社にも罰金が科されます(第41条)。


罰金と過料は、性格が違う

ひとことで言うと:金額は過料のほうが小さい。ただし、こちらは刑罰ではなく行政上の秩序罰という別の枠組みである。

罰金は、刑罰 刑事訴訟の手続で科され、前科になります。
過料は、行政上の秩序罰 裁判所が非訟事件の手続で科します。
過料は、前科にならない ただし、違反の記録であることは変わりません。
金額だけで、軽重を決めない 器具の未備付けは罰金、帳簿は過料です。

この法律の罰則を眺めると、罰金と過料が混在している。標識と帳簿の義務違反は第42条の過料で1万円以下、器具の未備付けは第39条の罰金で3万円以下といった具合である。金額だけを見ると近いが、両者は性格が異なる。

性格 科される手続き 前科として おもな対象
罰金 刑罰 刑事訴訟の手続 残る 第36条〜第40条(無登録営業、無資格者の従事、器具の未備付けなど)
過料 行政上の秩序罰 裁判所が非訟事件の手続で科す 残らない 第42条(登録証の未返納、標識の未掲示、帳簿の記載・保存を怠った場合)

金額の大小だけを見て軽重を判断すると、性格の違いを見落とすことになる。

過料は前科にならないが、行政の側から見れば違反の記録であることに変わりはない。指導や立入検査の対象になりやすくなる、という形で後に響く。

たとえるなら
過料は、駐車違反の放置違反金に近いもの
放置違反金は、払っても前科にはなりませんよね。行政上の制裁だからです。過料も、刑罰ではなく行政上の秩序罰なので、前科にはなりません。ただ、違反の記録であることは変わりません。

処分を受けると、2年は登録できない

ひとことで言うと:登録の取消しは、その日から2年間、再び登録できない状態を作り出す。

取消しから、2年は登録できない 第6条第1項第2号です。
名前を変えても、役員が同じなら不可 第6条第1項第3号・第5号です。
罰金以上の刑でも、2年 この法律や電気工事士法などの違反です。
金額より、2年間が重い 事業として成り立たなくなります。

第28条による登録の取消しは、事業をいったん止めるだけの処分ではない。第2回で触れたとおり、第6条は、登録を取り消された者は処分の日から2年間、取消しを受けた法人の処分前30日以内の役員だった者も2年間、登録を拒否すると定めている。そうした者が役員にいる法人も、拒否の対象になる。

つまり、取消しを受けた会社が名前を変えて申請しても、同じ役員が並んでいれば通らない。罰則の重さを金額で測ると小さく見えるが、実際に効いてくるのは、この「2年間は事業として成立しない」という部分である。

ここに注意!
「処分を受けても、会社の名前を変えれば、すぐ登録し直せる」ではありません。
第6条は、登録を取り消された者は処分の日から2年間、取消しを受けた法人の処分前30日以内の役員だった者も2年間、登録を拒否すると定めています。そうした人が役員にいる法人も、拒否の対象です(第1項第2号・第3号・第5号)。


連載のまとめ

まず、区分を決める 一般用電気工作物等を扱うかどうかです。
次に、手続きをする 登録・通知・届出のどれかです。
人と道具と記録をそろえる 主任電気工事士、器具、標識と帳簿です。
迷ったら、第1回に戻る 違反の多くは、区分の見立て違いから始まります。

6回を通して見ると、この法律の構造は単純である。どの区分かを決め、それに応じた手続きをし、営業所に人と道具を置き、記録を残す。そのうえで、外から確かめられる状態にしておく。

そして違反のほとんどは、最初の段の見立てを誤ったところから始まる。自家用だけのつもりで通知を選んだ事業者が住宅の工事を受ける。建設業許可があるから届出だけでよいと考えて、みなし登録とみなし通知の違いを飛ばす。2023年3月以降は、50kW未満の太陽光を受注した時点で区分が変わる。

迷ったときは第1回の判定に戻る。一般用電気工作物等を扱うかという1問目に、正しく答えられているかどうか。ここさえ外さなければ、後ろの段は自然に決まっていく。

連載の各回

一次資料で確認するには

  • 電気工事業法 第4章(監督)および第5章(罰則)── 条文そのもの
  • 所管の都道府県または産業保安監督部 ── 立入検査の実施方針
  • 自社の営業所ごとの標識・帳簿・器具 ── まず現物を見に行く

本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。様式・記載事項の運用は自治体によって細部が異なり、法令も改正されます。実際の対応にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。

出典

次に読むならこれ【電気工事業法の解説 第5回】器具の備付け|営業所に置く3点と7点電気工事業法の解説
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。