【電気工事業法の解説 第6回】罰則と監督|立入検査で何を見られるのか
この記事の要点
罰則の階層
(法第28条)
標識・帳簿・器具・人
- 罰則の最上位は法第36条の無登録営業で、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。以下、無資格者の従事、電気用品、主任電気工事士と器具、届出、標識と帳簿の順に軽くなる。
- 監督は段階的に進む。報告の徴収と立入検査から入り、危険等防止命令、そして登録の取消しまたは6月以内の事業停止へ至る。命令に従わなければ第36条に戻ってくる。
- 立入検査で見られるのは標識・帳簿・器具・主任電気工事士の4点。どれも当日そろえられるものではなく、日常の運用がそのまま出る。
罰則の全体像
ひとことで言うと:罰則は「営業できる状態を偽ったか」が最も重く、「記録を残さなかったか」が最も軽い。並べると法律が何を重く見ているかが分かる。
最上位は法第36条である。登録を受けずに電気工事業を営んだ場合、不正の手段で登録を受けた場合、そして事業停止命令に違反した場合。いずれも1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金で、併科もありうる。第1回で触れた「更新を落として失効したまま請け負う」も、ここに当たる。
次が第37条で、3月以下の拘禁刑または3万円以下の罰金。電気工事士等でない者を作業に従事させた場合(法第21条違反)と、電気工事業者でない者に下請負させた場合(法第22条違反)が対象になる。
第22条は連載でここまで触れてこなかったが、実務では重要である。電気工事業者でない相手に電気工事を下請けに出してはいけない。相手が登録も通知もしていない業者であれば、出した側も罰則の対象になる。下請けを使うなら、登録の有無を確認する手順が要る。
第38条は電気用品の使用制限(法第23条)で10万円以下の罰金。電気用品安全法の表示が付いている電気用品でなければ電気工事に使ってはならない、という規定である。
第39条が主任電気工事士の未選任と器具の未備付けで3万円以下の罰金。第3回と第5回で扱った2つが、同じ条文にまとめられている。
第40条は届出をしない・虚偽の届出をした場合、報告を拒んだ場合、検査を拒み・妨げた場合で2万円以下の罰金。第42条が登録証の未返納、標識の未掲示、帳簿の記載・保存を怠った場合で1万円以下の過料である。
加えて第41条に両罰規定がある。法人の代表者や従業者が違反行為をしたときは、行為者だけでなく法人にも罰金が科される。「担当者が勝手にやった」で終わる構造にはなっていない。
監督 ── いきなり登録取消しにはならない
入口は法第29条である。経済産業大臣または都道府県知事は、業務に関して必要な報告を求め、営業所などに立ち入って帳簿書類を検査し、関係者に質問することができる。
次の段が法第27条の危険等防止命令。粗雑な工事で危険が生じ、または生じるおそれがある場合や、電気用品の使用制限・器具の備付けの規定に違反している場合に、危険を防止するための措置を命じられる。
そして法第28条で、登録の取消しまたは6月以内の事業停止命令に至る。登録拒否の要件に該当した場合、虚偽の届出をした場合、主任電気工事士の要件を満たさなくなった場合、危険等防止命令に違反した場合などが対象になる。
検査を拒むのは、最も割に合わない
立入検査で見られるもの
4点とも、検査の当日にそろえられるものではない。標識は掲げ続けていたか、帳簿は5年分あるか、器具は明細書のとおり営業所にあるか、主任電気工事士は実際に作業を管理していたか。日常の運用がそのまま出る。
進み方としては、帳簿が起点になることが多い。記載された作業者の氏名から、その人が有資格者だったかを確認する。主任電気工事士の欄が空いていれば、選任の実態が問われる。第4回で「帳簿は事業者を守る記録にも、追及の起点にもなる」と書いたのは、この意味である。
連載のまとめ
6回を通して見ると、この法律の構造は単純である。どの区分かを決め、それに応じた手続きをし、営業所に人と道具を置き、記録を残す。そのうえで、外から確かめられる状態にしておく。
そして違反のほとんどは、最初の段の見立てを誤ったところから始まる。自家用だけのつもりで通知を選んだ事業者が住宅の工事を受ける。建設業許可があるから届出だけでよいと考えて、みなし登録とみなし通知の違いを飛ばす。2023年3月以降は、50kW未満の太陽光を受注した時点で区分が変わる。
迷ったときは第1回の判定に戻る。一般用電気工作物等を扱うかという1問目に、正しく答えられているかどうか。ここさえ外さなければ、後ろの段は自然に決まっていく。
連載の各回
- 第1回 電気工事業法とは何を縛る法律か── 4つの区分と、電気工事士法との違い
- 第2回 登録・通知・届出の手続き── 提出先・期限・書類と費用
- 第3回 主任電気工事士── 誰を置き、何をさせるのか
- 第4回 標識と帳簿── 掲示する場所と、5年間の保存
- 第5回 器具の備付け── 営業所に置く3点と7点
- 第6回(本記事)罰則と監督── 立入検査で何を見られるのか
一次資料で確認するには
- 電気工事業法 第4章(監督)および第5章(罰則)── 条文そのもの
- 所管の都道府県または産業保安監督部 ── 立入検査の実施方針
- 自社の営業所ごとの標識・帳簿・器具 ── まず現物を見に行く
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。様式・記載事項の運用は自治体によって細部が異なり、法令も改正されます。実際の対応にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」(令和5年11月版)
- 茨城県「電気工事業者の義務」
- 神奈川県「電気工事業の法令遵守事項について」
- 東京都電気工事工業組合「電気工事業法」
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」
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