この記事は連載「連載」(全5回)の1本です。

前回は、高濃度と低濃度の違いと、期限を過ぎた機器の現実を見ました。今回は実務編です。目の前の機器にPCBが入っているのかどうか、どう調べればいいのか。手順どおりに解説します。

この記事でわかること

  • 何から手を付ければいいか、調べる順番がわかる
  • 銘板のどこを見て、何を記録すればいいかがわかる
  • メーカー照会と濃度分析の使い分けがわかる
  • 分析にかかる費用と日数の目安がわかる

結論から言うと

調べる順番は「銘板 → 照会 → 分析」です。お金がかかるのは最後の分析だけ。銘板の写真を撮り、メーカーや業界団体のリストと照らすところまでは、今日からタダでできます。高濃度かどうかは銘板と型式でほぼ判別でき、低濃度かどうかは最終的に絶縁油の分析でしか確定しません。

調べる順番はこの3ステップです

PCB判別の3ステップ(STEP1 銘板を確認して写真を撮る→STEP2 メーカー・業界団体に照会する→STEP3 判別できなければ絶縁油を濃度分析する)図1:PCB判別の3ステップ

STEP 1|銘板を確認して、写真を撮る——費用ゼロ。今日できます。

STEP 2|メーカー・業界団体のリストと照らす——費用ゼロ。高濃度かどうかはここでほぼ判別できます。

STEP 3|絶縁油の濃度分析——ここで初めてお金がかかります。低濃度かどうかを確定できるのは、この分析だけです。

順番を飛ばして最初から全部の機器を分析に出すと、費用がいくらあっても足りません。逆に、銘板も見ずに「たぶん大丈夫」で済ませると、期限後に見つかる最悪のパターンになります。一段ずつ絞り込むのがコツです。

STEP 1|銘板で見るのは「メーカー・型式・製造年月」の3つ

銘板(機器に付いている、製造者や型式が刻印された金属プレート)で確認するのは、次の3点です。

銘板の見方(メーカー名・型式・製造年月の3点を確認して写真を撮る。1994年以降の変圧器・1991年以降のコンデンサ・1973年以降の安定器は原則対象外)図2:銘板のどこを見るか
  • メーカー名:照会先を決めるために必要です
  • 型式:高濃度PCB使用機器かどうかは、型式でリストと照合します
  • 製造年月:ここが最初のふるい分けです

製造年月がわかれば、第1回でお伝えした目安と照らせます。変圧器(絶縁油を交換できるタイプ)は1994年以降、封じ切りのコンデンサは1991年以降、照明用安定器は1973年以降の製造なら、原則としてPCBの心配はありません。ここで「対象外」と判断できた機器は、調査終了です。

古い機器に該当したら、銘板全体がはっきり写るように写真を撮って記録してください。あとの照会でも分析でも、この写真が出発点になります。

なお、キュービクル内の機器は通電中で銘板に近づけないことがあります。感電の危険があるため、無理に確認せず、電気主任技術者(事業場の電気設備の保安を監督する有資格者)に相談してください。停電点検のタイミングでまとめて確認するのが現実的です。

STEP 2|高濃度かどうかは「リスト照合」でほぼわかる

高濃度PCBは、メーカーが意図して使っていた時代の機器です。だからどの型式に使ったかの記録が残っており、リストと照らせば判別できます。

  • 変圧器・コンデンサ:日本電機工業会(JEMA)のWebサイトに判別方法のページがあり、メーカー各社の問い合わせ窓口一覧も公開されています。銘板の型式・製造番号で個別照会できます
  • 照明用安定器:日本照明工業会(JLMA)のWebサイトに、PCB使用照明器具の情報がまとまっています

たとえば、1970年代の工場の倉庫で古い溶接機が見つかったとします。銘板を撮り、メーカーの窓口に型式を伝えれば、「その型式はPCBコンデンサ内蔵です/違います」という回答が得られます。ここまで費用はかかりません。

注意点がひとつ。照会で「高濃度PCB使用機器」と判明した場合は、第2回でお伝えしたとおり、現在は委託できる処理先がありません。触らず、壊さず、そのままの状態で管轄の自治体に相談してください

STEP 3|低濃度かどうかは「分析」でしか確定しない

やっかいなのは低濃度です。メーカーが使ったつもりのない汚染なので、リストも記録も存在しません。1993年以前製の変圧器は、絶縁油を分析しない限り「白」とも「黒」とも言えないのです。

濃度分析の目安(費用は1検体あたりおおむね1.5〜5万円、結果まで2〜4週間、油の採取は停電作業で専門業者・電気主任技術者に相談)図3:濃度分析の数字

分析の実際は、こうです。

費用は1検体あたりおおむね1.5〜5万円。分析機関や依頼本数によって幅があります。台数が多いなら、まとめて依頼して単価交渉するのが定石です。

日数は結果が出るまで2〜4週間が目安。期限直前は依頼が集中して延びる可能性があります。

採取は絶縁油を少量抜き取る作業です。使用中の機器は停電させる必要があり、感電・油漏れのリスクもあるため、自分で抜かず、分析機関の採油サービスや電気工事業者に依頼し、電気主任技術者と日程を調整してください。停電点検に合わせるのが効率的です。

結果が「0.5mg/kg以下」なら対象外。通常の産業廃棄物として更新・処分できます。「0.5mg/kg超」なら低濃度PCBです。その機器は2027年3月31日までに処分まで終える必要があります。手続きの流れは第5回で解説します。

「全部は調べきれない」ときの優先順位

対象になりそうな機器が多くて手が回らない場合は、次の順で優先してください。

1番目は、すでに使っていない機器。倉庫の廃棄予定品や、電路から外して保管中の機器は、それ自体がPCB廃棄物の可能性があります。届出漏れのリスクが最も高い場所です。

2番目は、更新計画のある機器。どうせ停電を組むので、採油の段取りを更新工事に相乗りさせられます。

3番目が、当面使い続ける古い機器。こちらも期限は同じ2027年3月31日です。残り日数はセコサポの「PCB処分期限カウントダウンタイマー」で確認しながら、停電点検の日程から逆算して調査を組み込んでください。

まとめ

  • 調べる順番は「銘板 → 照会 → 分析」。費用がかかるのは最後の分析だけ
  • 銘板で見るのはメーカー名・型式・製造年月の3つ。写真で記録する
  • 変圧器1994年以降・コンデンサ1991年以降・安定器1973年以降の製造なら原則対象外
  • 高濃度は型式のリスト照合でほぼ判別できる。判明したら触らず自治体に相談
  • 低濃度は分析でしか確定しない。1検体1.5〜5万円・2〜4週間が目安
  • 油の採取は停電作業。電気主任技術者と調整し、専門業者に依頼する
  • 優先順位は「未使用の保管品 → 更新予定の機器 → 使用中の古い機器」

次回は、電気設備の現場でPCBに出会う場面を具体的に見ていきます。キュービクル更新、照明改修、盤改修——どこで、何に気をつけるべきかを整理します。

※費用・日数は執筆時点(2026年8月)の目安です。分析機関・地域により異なるため、複数社の見積りで確認してください。

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