連載第9回。電灯用と動力用を分ける理由、二次電圧105V/210Vが「出口の電圧」である意味、Δ-Δ・Δ-Y・V-Vの読み分け、そして設備容量から
需要率・不等率を経て標準容量に丸めるまでの4ステップを整理します。
図解まとめ:変圧器の3つの仕事、電灯用と動力用を分ける理由、Δ・Y・V の使い分け、そして「同時に使う分」で決める容量計算を1枚に整理しました。こんにちは、HARITAの設計室です。第9回でようやく、6つの役割のうち「変える」ブロックに来ました。変圧器部です。
単線結線図の中央に、丸が2つ重なった記号が並んでいるところ。なぜ変圧器は1台ではなく、何台も分けて置かれているのか――ここが分かると、図面の下半分が読めるようになります。
この3つ、すぐ答えられますか
- 変圧器を1台にまとめず、電灯用と動力用に分けるのはなぜですか。
- 定格二次電圧が100V/200Vではなく105V/210Vなのは、なぜですか。
- 設備容量を全部足した値を、そのまま変圧器容量にしてはいけないのはなぜですか。

変圧器って、大きいのを1台置けば済みませんか?3台に分かれてると、値段も場所も増えますよね…。

いい質問。答えは「負荷の性格が違うから」。エアコンが起動したたびに事務室の照明がちらついたら、誰も納得しないでしょ。分ける理由はそこにあるんだ。
この記事でわかること
単線結線図の中央、丸が2つ重なった記号が並んでいるところ。なぜ何台も分けて置かれているのかが分かると、図面の下半分が読めるようになります。
変圧器の仕事は「電圧を変える」だけではない
変圧器が果たしている2つの役割
① 電圧を変える…6,600Vを、照明や
コンセント、動力が使える電圧へ落とす
② 高圧と低圧を絶縁で切り離す…一次巻線と二次巻線は電気的につながっていない。磁気で結合しているだけ
②は見落とされがちですが重要です。
絶縁されているからこそ、低圧側は「別の世界」として扱える。逆に言えば、この絶縁が破れる(
混触)と、低圧側に高圧が入ってきます。それを防ぐのが
B種接地工事で、第12回で扱います。
ここまでのポイント
- 変圧器の役割は①電圧を変える ②高圧と低圧を絶縁で切り離すの2つ
- 一次巻線と二次巻線は電気的につながっておらず、磁気で結合している
- だから「変える」だけの機器ではなく、高圧を低圧側へ入れない壁でもある
なぜ電灯用と動力用を分けるのか
| 項目 | 電灯用(単相変圧器) | 動力用(三相変圧器) |
| 二次電圧 | 単相3線式 105V/210V | 三相3線式 210V |
| つなぐ負荷 | 照明、コンセント、OA機器 | 空調機、ポンプ、エレベータ、厨房 |
| 負荷の性格 | 小さな負荷が数多く、比較的一定 | 起動時に大きな電流が流れる |
| 分ける理由 | 動力の起動で電圧が一瞬下がっても、照明がちらつかないようにするため。あわせて、片方を停電させてもう片方を生かす運用ができる |
📖 なぜ二次電圧が「105V/210V」なのか
実際に使う電圧は100V/200Vですが、変圧器の定格二次電圧は105V/210Vです。
これは幹線や分岐回路で生じる電圧降下をあらかじめ見込んでいるため。変圧器の出口で210Vにしておけば、末端の機器に200V前後で届きます。
図面に「6600/210V」「6600/210-105V」と書かれていたら、出口の電圧であって、使用電圧ではないと読んでください。
📐 図1 結線の読み方 ― Δ-Δ・Δ-Y・V-V・単相3線
図1:結線は「どんな二次側が欲しいか」で決まります。中性点が要るならY、2台で三相を作るならV、電灯用なら単相3線。V結線のバンク容量は2台合計の86.6%です。
ここまでのポイント
- 電灯用と動力用を分けるのは、動力の起動で照明をちらつかせないため
- あわせて、片方を停電させてもう片方を生かす運用ができる
- 定格二次電圧105V/210Vは、電圧降下を見込んだ「出口の電圧」。使用電圧100V/200Vとは別物
結線の読み方 ― Δ・Y・V
📐 主な結線と、その意味
Δ―Δ(デルタ)
△ ─ △
動力用の標準。第3調波が環流して外に出にくい。1台が故障してもV結線として運転を続けられるのが強み。
Δ―Y(スター)
△ ─ Y
二次側に
中性点が取れる。
三相4線式(240/415V級)にでき、大規模ビルの幹線を細くできる。
V―V(ブイ)
V ─ V
単相変圧器2台で三相をつくる。3台分より安いが、出力はΔ結線3台の約57.7%にとどまる(2台の合計容量に対する利用率は約86.6%)。
図面での見分け方:変圧器記号のそばに Δ Y V の印か、「3φ Δ-Δ」のような注記が入ります。単線結線図では省略されることも多く、その場合は三線結線図で確認します(第2回)。
📐 図2 容量計算の実例 ― 300kVA級の中小ビル
図2:設備容量をそのまま足すのではなく、需要率で「同時に使う分」に落とし、力率で kVA に直してから標準容量へ丸めます。この例では合計275kVAとなり、PF・S形が使える範囲に収まります。
| 結線 | 特徴 | 使いどころ |
| Δ-Δ | 第3調波が環流して外に出にくい。1台が故障してもV結線として運転を続けられる | 動力用の標準 |
| Δ-Y | 二次側に中性点が取れる | 三相4線式(240/415V級)にして、大規模ビルの幹線を細くしたいとき |
| V-V | 単相変圧器2台で三相をつくる。出力はΔ結線3台の約57.7%(2台合計容量に対する利用率は約86.6%) | 3台分より安く抑えたいとき |
| 単相3線 | 105V/210Vの二次側をつくる | 電灯・コンセント用 |
ここまでのポイント
- 結線は「どんな二次側が欲しいか」で決まる
- 中性点が要るならY、2台で三相を作るならV、電灯用なら単相3線
- 単線結線図では結線が省略されることも多い。その場合は三線結線図で確認する(第2回)
変圧器容量はどう決まるか
「負荷の合計=変圧器の容量」ではありません。全部の負荷が同時に全開で動くことはないからです。実務では次の順で絞り込みます。
📐 容量を決める4ステップ
① 設備容量を積み上げる
照明・コンセント・空調・動力…を全部足す
↓ ×需要率(同時には使わない)
② 最大需要電力を出す
↓ ÷力率、÷不等率(ピークもずれる)
③ 必要な変圧器容量[kVA]を求める
↓ 標準容量へ丸める+将来分を見込む
④ 台数と1台あたりの容量を決める
標準容量(kVA)…10・20・30・50・75・100・150・200・300・500 …
計算値が180kVAなら200kVAを選ぶ、という具合に標準容量へ丸めます。中途半端な容量の変圧器は基本的に作られません。
⚠ 大きすぎる変圧器は「損」をする
余裕を持たせすぎると、無負荷損(鉄損)を24時間365日払い続けることになります。変圧器の損失は、負荷に関係なくかかる無負荷損と、負荷の2乗に比例する負荷損(銅損)の合計。
全損失がいちばん小さくなるのはこの2つが釣り合う負荷率で、一般的な変圧器では40〜60%程度に収まる設計が経済的とされます。
「とりあえず大きめ」は、電気代で毎年跳ね返ってきます。
ここまでのポイント
- 「負荷の合計=変圧器の容量」ではない。全部の負荷が同時に全開で動くことはない
- 設備容量 →(需要率)→ 最大需要電力 →(力率・不等率)→ 必要容量 → 標準容量へ丸める
- 標準容量は10・20・30・50・75・100・150・200・300・500…。中途半端な容量は基本的に作られない
油入か、モールドか
| 項目 | 油入変圧器 | モールド変圧器 |
| 絶縁・冷却 | 絶縁油に浸す | エポキシ樹脂で固める(乾式) |
| 価格 | 安い | 高い |
| 防災性 | 油があるため制約が出やすい | 難燃性で有利。屋内に置きやすい |
| 保守 | 絶縁油の管理・分析が必要 | 油の管理が不要。清掃が中心 |
| 設置 | 防油堤などの配慮が要る場合がある | 発熱が大きく換気設計が重要 |
📐 図3 図面での描かれ方と、油入/モールドの選び分け
図3:変圧器のそばには相数・容量・一次二次電圧・用途を必ず併記します。油入は屋外キュービクル向きで安価、モールドは屋内設置と防災に強い、が基本の選び分けです。
ここまでのポイント
- 油入は安価だが、絶縁油の管理と防油堤などの配慮が要る
- モールドは難燃性で屋内に置きやすいが、発熱が大きく換気設計が重要
- 価格で選ぶか、置き場所と防災性で選ぶか、という比較になる
単線結線図では、こう描かれる
変圧器バンク1つ分の記載要素(上から順に)
① 一次側開閉器…
LBS(+PF)。定格と「ストライカ引外し付」
② PF(ヒューズ)…変圧器容量に応じた定格。
励磁突入電流で溶断しない選定が必要
③ 変圧器 T…相数(1φ/3φ)、容量(kVA)、電圧比(6600/210V など)、結線(Δ-Δ など)
④ 二次側計器…CT+電流計、電圧計
⑤ 二次側主幹…MCCB または
ACB(第10回)
⑥ 負荷名称…一般照明、一般動力、非常照明 など
図4:作図イメージ ― 一次側開閉器からPF、変圧器、二次側計器、主幹、負荷名称までを上から順に書きます。下段は設備容量から標準容量へ落としていく4ステップです。
ここまでのポイント
- バンク1つ分の記載要素は①一次側開閉器 ②PF ③変圧器T ④二次側計器 ⑤二次側主幹 ⑥負荷名称
- 変圧器のそばには相数・容量・一次二次電圧・用途を必ず併記する
- PFは励磁突入電流で溶断しない選定が必要
新人がやりがちなミス 3選
① 設備容量をそのまま変圧器容量にする
需要率・不等率を使わずに積み上げると、実際の2倍近い容量になります。過大な変圧器は初期費用も鉄損も無駄。「同時には使わない」を数字にするのが設計です。
③ 二次電圧を100V/200Vと書いてしまう
変圧器の定格二次電圧は105V/210V。図面に100V/200Vと書くと、電圧降下の検討をしていないと受け取られます。出口の電圧と使用電圧は別物です。
ここまでのポイント
- 設備容量をそのまま変圧器容量にすると、実際の2倍近い容量になる
- 単相3線式は2つの相へ均等に振り分ける。内線規程では設備不平衡率30%以下が原則
- 図面に100V/200Vと書くと、電圧降下の検討をしていないと受け取られる
まとめ
変圧器が何台も分かれているのは、負荷の性格が違うからです。そして容量は「同時に使う分」まで落としてから決めます。分ける理由と、絞り込む手順 ― この2つが分かると、単線結線図の下半分は一気に読めるようになります。
決めることと、外したときに起きること
| 決めること | 決め方 | 外したときに起きること |
| 台数と分け方 | 電灯用と動力用を分ける | 動力の起動で照明がちらつく。片方だけ停電させる運用もできない |
| 二次電圧 | 定格は105V/210V(出口の電圧) | 100V/200Vと書くと、電圧降下の検討をしていないと受け取られる |
| 結線 | 欲しい二次側の形で選ぶ(Δ-Δ/Δ-Y/V-V) | 中性点が取れない、あるいは想定より出力が足りない |
| 容量 | 設備容量 →需要率→ 最大需要電力 →不等率→ 標準容量へ丸める | 過大な変圧器になり、初期費用も無負荷損も無駄になる |
| 形式 | 油入かモールドかを価格・防災性・保守・設置で選ぶ | 置けない、あるいは換気が足りず温度が上がる |
なぜ分けるのか
役割と分け方
- 変圧器は電圧を変えると同時に高圧と低圧を絶縁で切り離す
- 電灯用と動力用を分けるのは、動力の起動で照明をちらつかせないため
- 二次電圧105V/210Vは、電圧降下を見込んだ「出口の電圧」
結線と容量
決め方
- 結線はΔ-Δ(標準)/Δ-Y(中性点が取れる)/V-V(2台で三相・出力は約57.7%)
- 容量は設備容量 →(需要率)→ 最大需要電力 →(不等率)→ 標準容量へ丸める
- 大きすぎる変圧器は無負荷損を払い続ける。負荷率40〜60%程度が経済的
- 油入は安価、モールドは防災性で有利。ただし換気設計に注意
最後に ― 記号の数には、理由がある
丸が2つ重なった記号が3つ並んでいれば、そこには3つの理由があります。「大きいのを1台」で済まないのは、負荷の性格と運用が違うからです。図面から台数の理由を読み取れるようになれば、次の低圧配電部(第10回)はもっと素直に読めます。
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. 電灯用と動力用の変圧器を分ける主な理由は?
A.必要な相数・電圧が違い、負荷の性質も異なるから
B.法令で必ず分けるよう定められているから
C.2台にしたほうが効率が上がるから
答えと解説を見る
正解:A
電灯は単相100/200V、動力は三相200Vと、必要な相数・電圧が違います。負荷の変動の仕方も違うため、分けたほうが電圧変動や不平衡を抑えられます。
Q2. V結線の特徴として正しいものは?
A.Δ結線と同じ容量を取り出せる
B.変圧器2台で三相が得られるが、利用率はΔ結線の約86.6%になる
C.三相からは単相しか取り出せない
答えと解説を見る
正解:B
Δ結線の1台を外した形がV結線です。2台で三相を供給できる代わりに、2台分の容量をすべては使えません(√3/2≒86.6%)。
Q3. 変圧器容量の決め方として適切なのは?
A.接続負荷の合計をそのまま採用する
B.需要率・不等率・負荷率を考慮した最大需要電力から決める
C.建物の延床面積だけで決める
答えと解説を見る
正解:B
全負荷が同時に最大で使われることはありません。需要率で同時使用を、不等率でピークのずれを見込んだうえで容量を選定します。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。
よくある質問
Q. 電灯と動力を1台にまとめることはできますか?
技術的には可能ですが、おすすめしません。動力の起動電流で照明がちらつくほか、片方だけを停電させる運用ができなくなります。小規模で動力がごくわずかな物件では、単相変圧器1台にまとめる例もあります。
Q. V結線は「安くて得」ということですか?
2台で三相を作れるので初期費用と設置スペースは有利ですが、Δ結線3台に比べて出力は約57.7%にとどまります。同じ出力を得るには1台あたりを大きくする必要があり、必ずしも割安とは限りません。容量が中途半端になりやすい点も含めて比較してください。
Q. 将来の増設分はどれくらい見込むべきですか?
一律の正解はありません。建物の用途と、増設が実際に起こりうるかで判断します。テナントビルや工場のように用途変更が見込まれるなら余裕を、用途が確定した施設なら現状に合わせるのが基本。余裕は変圧器容量ではなく、盤のスペースや主遮断装置の容量で確保するという考え方もあります(第6回)。
Q. 変圧器の一次側にヒューズが入っているのはなぜですか?
その変圧器で事故が起きたときに、そのバンクだけを切り離して他を生かすためです。主遮断装置まで動作させないための、下位の保護にあたります。第8回の保護協調がここでも効いてきます。
次回予告
参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/JIS C 4304・JIS C 4306(配電用変圧器)/エネルギーの使用の合理化等に関する法律(トップランナー制度)
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