📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。第5部の締めくくりは消防・防災設備。第16回で「建物系の法律からも電気に注文が来る」と言いました。その注文の代表——“防災の電気”の世界のさわりを歩きます。

ペンタ
先輩、天井の煙感知器とか緑の誘導灯って、あれも電気設計の仕事なんですか?照明やコンセントとは別世界に見えます。
はりた
立派に私たちの守備範囲だよ。しかも防災の電気は「付けたい」ではなく「付けなければならない」で決まる世界。まず顔ぶれから紹介しよう。

“防災の電気”6人衆 ― 役割で覚える

自火報・非常放送・誘導灯・非常照明・非常電源・連動制御の6設備カタログ
【図1】防災の電気カタログ。「気づく→知らせる→逃がす→支える→動かす」の役割分担
ペンタ
図のピンク枠…誘導灯と非常照明って別モノなんですか!?どっちも「非常時に光るやつ」だと思ってました。
はりた
新人が最初に混同するペアNo.1だね。誘導灯=消防法。「出口はこっち」のサイン非常照明=建築基準法。「避難できる明るさ」の照明。役割も根拠法も別で、両方付く建物が多い。第16回のピラミッドで言えば、別の山から降りてきた注文なんだ。

必要な設備は「用途×規模」で決まる

防火対象物の用途分類と規模から必要設備が決まる流れと対応表イメージ
【図2】決まり方の3ステップと対応表のイメージ(代表例)。実際の判定は早見表+所轄消防で
ペンタ
物販店は300㎡から、事務所は1,000㎡から自火報…。同じ広さでも用途で全然違うんですね。
はりた
そう、建物はまず令別表第一という「用途の戸籍」に分類されて、用途×規模で設備が決まる。物販店や飲食店みたいに不特定多数が集まる用途ほど要求が厳しい。だからテナントの用途変更は設備要件が変わる大イベント——「内装だけの工事」のつもりが自火報の増設工事になる、というのは実務あるあるだよ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:テナント用途変更の一次判断
「2階の事務所を飲食店にしたい」という相談。用途(15)項→(3)項ロへの変更で、自火報・誘導灯・内装制限などの要件が変わる可能性をまず指摘し、当サイトの防火対象物別|消防設備の早見表でアタリを付けてから、所轄消防に事前相談へ。
「工事してから発覚」を防ぐのが設計者の最大の貢献です。
📋 実務活用事例:消防協議の下準備
協議に持っていくのは建物概要(用途・面積・階数)、平面図、設備の設置方針。「うちの判定はこうです、ご指導ください」と整理して臨むと協議が速い。所轄によって指導の細部が違う(第16回の地域ルール)ので、指導内容は必ず記録して設計に反映します。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 誘導灯はなんで緑色なの?
緑は「安全・進め」を示す万国共通の安全色で、煙の中でも比較的視認しやすい色とされています。避難口誘導灯(緑地に白でピクトグラム)と通路誘導灯(白地に緑)の2種類があり、矢印の向きまで設計事項。ちなみに消火器の標識が赤なのは「防火・禁止・危険」系の赤です。
🐣 感知器の「煙」と「熱」はどう使い分けるの?
原則は煙感知器のほうが早く気づけるので居室・廊下の主役。ただし調理の煙や湯気で誤報しやすい厨房・湯沸室などは熱感知器を使います。「早く気づきたい場所は煙、誤報しやすい場所は熱」——場所の性質で使い分けるのが設計です。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「非常電源って、普通のコンセントと何が違うんですか?」と聞いてみた
はりた「防災設備は停電中こそ働く必要があるから、蓄電池設備や非常用発電機といった“専用の命綱”が要求される。設備ごとに必要な容量・時間(例えば誘導灯は20分以上など)が決まっていて、配線も耐火・耐熱配線という特別ルールがある。ここは奥が深いから専門記事でじっくりと」
🔎 「連動制御って、具体的に何が動くんですか?」と聞いてみた
はりた「火災信号をトリガーに、防火戸・防火シャッターが閉じる、排煙口が開く、エレベーターが避難階に降りる、空調が止まる——建物中が一斉に“火災モード”に切り替わる。この連動マトリクス(何の信号で何が動くか一覧)を作るのは電気設計の重要な仕事だよ」
🔎 「消防検査で見られるポイントは?」と聞いてみた
はりた「感知器の位置と警戒範囲、誘導灯の視認性、非常放送の音量、そして連動試験——“実際に動くか”を消防署立会いで確認する。施工実務編⑧の竣工試験の消防版だね。ここで不合格だと使用開始が遅れるから、設計段階の基準確認が効いてくる」

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 「内装だけの工事」と思い込まない:用途変更・間仕切り変更は感知器・誘導灯の増移設に直結します。
  • 消防法と建築基準法の二重チェック:誘導灯(消防)と非常照明(建基法)は別々に判定。片方だけ見て安心しない。
  • 所轄消防への確認を省略しない:地域・所轄で指導差があります。早見表でアタリ→協議で確定が正しい順番。

まとめ ― 今日の1枚

  • 防災の電気6人衆:気づく(自火報)→知らせる(放送)→逃がす(誘導灯・非常照明)→支える(非常電源)→動かす(連動)
  • 誘導灯=消防法、非常照明=建築基準法。別制度の別人。
  • 必要な設備は用途(令別表第一)×規模で決まる。用途変更は要件が変わる大イベント。
  • 判断の型:早見表でアタリ→所轄消防と協議→記録して設計へ。

これで第5部「法規・規程のきほん」完結! 法律の地図・内線規程の引き方・防災の電気と、「根拠」の世界を一周しました。次回からは最終・第6部「実務の進め方」。第19回は、設計の仕事が始まってから図面になるまでの流れ——実務のプロセスを俯瞰します。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
📖次に読むならこれ【新人講座 第19回】設計の流れ ― 案件が図面一式になるまでの5幕新人教育