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盤図の MCCB 3P 225AF/175AT 25kA という1行を、すらすら読めますか。分電盤図や盤結線図の遮断器の欄は、慣れないうちは数字と記号の羅列に見えます。でも並んでいるのは5つの部品だけです。この記事では、その5つと付属記号を図で分解して、盤図を「読む」から「照合する」に変えます。

結論

遮断器の表記は、種類・極数・フレーム(AF)・トリップ(AT)・遮断容量(kA)の5要素。設計で決めるのは AT、盤の設計に効くのは AF、接地側の極には素子を入れないのが極数と素子数のルールです。

  • AT はケーブルの許容電流以下、遮断容量は設置点の短絡電流以上
  • AF は AT が収まる箱の大きさ。同じ AF の中で AT を選ぶ
  • 2P1E は 100V 分岐、2P2E は 200V 分岐、3P2E は単三主幹、3P3E は三相
  • 2E・3E は電動機保護、30mA・0.1s は漏電の感度と時間
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
MCCB 3P 225AF/175AT 25kA 2E を種類・極数・フレーム・トリップ・遮断容量・付属記号に分解した図
見慣れない1行も、部品に分ければ5つしかありません。順番はメーカーや設計事務所で前後しますが、要素は同じです。

表記は5つの部品でできている

分電盤図や盤結線図の1行は、たとえば MCCB 3P 225AF/175AT 25kA のように書かれます。暗号に見えますが、並んでいるのは種類・極数・フレーム・トリップ・遮断容量の5つだけです。順番や区切り方は事務所ごとに違っても、この5つを探せば読めます。

部品 書き方の例 意味
種類 MCCB/ELCB(ELB)/MCB 配線用遮断器か、漏電遮断器か。住宅用の小形は MCB と書かれることもある
極数 2P/3P/4P 開閉する線の数。あとに続く E(素子数)とセットで読む
フレーム 100AF/225AF/400AF アンペアフレーム。本体の大きさと、その枠で選べる定格電流の上限
トリップ 20AT/75AT/175AT アンペアトリップ。この電流を超えると動作する。図面の主役
遮断容量 10kA/25kA/50kA 定格遮断容量。この短絡電流までなら安全に切れる
5つの部品と読み方。AT の前後に「/」が入るのは、AF と AT を並べて書く慣習です。
ペン太
「225AF/175AT」って、どっちが大事なんですか? 数字が2つあると、どっちを見ればいいのか迷います。
ハリタハリタ
設計で決めるのは AT のほうです。AF は「その AT が入る箱の大きさ」。だから AT を決めてから、それが収まる AF を選ぶ、という順番になります。
ペン太
じゃあ AF は書かなくてもいい?
ハリタハリタ
盤の寸法や価格、遮断容量は AF で変わるので、盤屋さんにとっては AF が必要なんです。設計者は AT、盤屋さんは AF、両方見ている人が違うだけですね。
ここまでのポイント
  • 1行は「種類・極数・フレーム・トリップ・遮断容量」の5要素
  • 設計者が決めるのは AT、盤の設計に効くのは AF
  • 順番や区切りは事務所ごとに違うが、要素は同じ


AF と AT ― 箱の大きさと、動作する電流

225AFのフレームに125〜225ATの選択肢が並び、175ATが選ばれている図と、AT・AF・遮断容量を選ぶ順番
AF は箱、AT はその箱で選んだ動作電流。選ぶ順番は AT → AF → 遮断容量です。

AT(アンペアトリップ)は、遮断器の定格電流です。この値を超える電流が流れ続けると、時間をかけて引き外します。ケーブルを守るのが役目なので、AT はケーブルの許容電流以下でなければなりません。内線規程幹線や分岐回路で求めているのは、この関係です。

AF(アンペアフレーム)は、遮断器の本体サイズを表す枠の名前です。たとえば 225AF の枠には 125・150・175・200・225AT が用意されていて、同じ寸法・同じ端子で AT だけが違います。逆にいえば、175AT が欲しければ 225AF を選ぶしかないので、図面には「225AF/175AT」と両方書きます。

💡 AF が大きいと何が変わるか

本体寸法と端子サイズが大きくなり、盤の幅・奥行きに効きます。遮断容量の高い品番も AF が大きいほど選びやすくなります。将来増設を見込んで「AF だけ大きく、AT は小さく」と指定する設計もあります。

AT を決めるには、まず負荷電流とケーブルの許容電流が要ります。幹線から分岐回路まで一気に計算するブラウザツールがあります。

幹線・分岐回路 一気通貫計算を開く

ここまでのポイント
  • AT=動作する電流。ケーブルの許容電流以下に
  • AF=箱の大きさ。同じ AF の中で AT を選ぶ
  • 将来の増設は「AF 大きめ、AT 小さめ」で仕込める

極数と素子数 ― 2P1E・2P2E・3P2E・3P3E

2P1E・2P2E・3P2E・3P3Eの極と素子の配置を並べた図
P は開閉する線の数、E は過電流を見張る素子の数。接地側の極には素子を入れないのが原則です。

P(極数)は、ハンドルを切ったときに一緒に開く線の数です。E(素子数)は、そのうち過電流を検出する引き外し素子が入っている極の数です。E が P より小さい遮断器は、接地側(中性線)の極に素子が入っていないことを意味します。

表記 使う回路 読み方
2P1E 単相2線式 100V の分岐 2線を開閉し、非接地側だけ見張る。住宅の分岐回路の定番
2P2E 単相 200V の分岐(単相3線式の両外線から取る) 両方の線が非接地なので、両方を見張る。IH・エアコン 200V など
3P2E 単相3線式の主幹 3線を開閉し、中性線には素子を入れない。中性線欠相保護付きはここに機能が加わる
3P3E 三相3線式(動力) 3極すべてを見張る。動力回路の基本形
接地側の極に過電流素子を入れないのは、中性線だけが先に切れて異常電圧が出るのを防ぐためです。

⚠️ 2P1E を 200V 回路に使ってはいけない

単相3線式の両外線から 200V を取る回路は、どちらの線も対地電圧 100V の非接地側です。片側しか見張らない 2P1E では、素子のない極の過電流を検出できません。図面で 200V 回路に 2P1E が書かれていたら、確認が必要です。

ここまでのポイント
  • P=開閉する線の数、E=過電流を見張る素子の数
  • 接地側(中性線)の極には素子を入れない
  • 200V 分岐は 2P2E、単三主幹は 3P2E、三相は 3P3E が基本形


遮断容量 ― 何kA まで切れるか

短絡が起きると、通常の何十倍もの電流が流れます。遮断器はその電流を切らなければなりませんが、切れる上限があります。それが定格遮断容量で、盤図には 10kA・25kA・50kA のように書かれます。「AIC」や「IC」と略されることもあります。

ルールは一つです。遮断容量は、その場所で想定される短絡電流以上。変圧器に近い受電盤ほど短絡電流は大きく、幹線をたどって末端の分電盤へ行くほど小さくなります。だから主幹に 25kA、分岐に 10kA、というように場所ごとに値が変わります。

場所 短絡電流の傾向 遮断容量の例
受電盤・変圧器直下の主幹 大きい(変圧器の容量と %Z で決まる) 25〜50kA
幹線の先の分電盤 主幹 ケーブルの分だけ小さくなる 10〜25kA
分電盤の分岐回路 さらに小さい 2.5〜10kA
値は目安です。実際には変圧器容量・%Z・幹線こう長で計算して決めます。
設置点の短絡電流は、変圧器容量と %Z、幹線のこう長から計算できます。遮断容量の判定まで一度にできるツールです。

短絡電流・遮断容量 計算を開く

💡 JIS の 2 つの遮断容量

JIS C 8201-2-1 では、定格限界短絡遮断容量(Icu)と定格使用短絡遮断容量(Ics)を分けています。カタログや図面に書かれる 1 つの kA 値は、多くの場合 Icu です。Ics は「遮断したあとも使い続けられる」条件の値で、Icu の 50〜100% が示されます。

ここまでのポイント
  • 遮断容量=切れる短絡電流の上限。設置点の短絡電流以上にする
  • 変圧器に近いほど短絡電流が大きく、末端ほど小さい
  • 図面の kA は多くの場合 Icu(限界短絡遮断容量)

付属記号 ― 2E・3E・30mA・中性線欠相保護

5つの部品のあとに、機能を表す記号が付くことがあります。よく見るものを並べます。

記号 意味 読むときの注意
2E 電動機保護(過負荷+欠相) 三相電動機の 1 線が切れて単相運転になるのを検出する。モータブレーカや 2E リレーで実現
3E 電動機保護(過負荷+欠相+反相) 2E に「逆回転」の検出が加わる。ポンプやコンプレッサで逆転が困る回路に
30mA 漏電の定格感度電流 30mA 以下が高感度形。100mA〜1000mA は中感度形。感電保護は 30mA が基本
0.1s 漏電の動作時間 0.1 秒以内が高速形。0.1 秒超〜2 秒以内が時延形。上流と下流で時間差をつけて協調させる
中性線欠相保護付 単相3線式の中性線が切れたときに遮断 住宅・小規模分電盤の主幹で標準的。3P2E の主幹に付く
AL/AX 警報接点/補助接点 遮断器が動作した・入っている、を監視盤へ送る接点
SHT/UVT 電圧引き外し/不足電圧引き外し 外部信号で遮断器を切る。非常停止や火災連動で使う
×2、予備 台数、将来用の空き 「予備」は器具つきか、取付スペースだけかを注記で確認する
記号の綴りは事務所ごとに揺れます(ELB/ELCB、AL/AX の呼び方など)。凡例欄があれば必ず先に見ます。
ペン太
2E と 3E、E が増えるほど良いんですか?
ハリタハリタ
「見張る項目が増える」だけで、良し悪しではありません。反相は配線を間違えたときに起きるので、試運転で確認できる設備なら 2E で十分、という判断もあります。
ペン太
漏電の 30mA と 0.1s は、なぜセットで書くんですか?
ハリタハリタ
感電を防ぐには「小さい漏れを、速く」切る必要があるからです。感度だけ良くても時間が遅ければ意味がない。だから 2 つで 1 つの指定なんです。
ここまでのポイント
  • 2E=過負荷+欠相、3E=さらに反相。電動機回路の付属
  • 漏電は「感度(mA)」と「時間(s)」の 2 つで 1 セット
  • 凡例欄の綴りを先に確認する


実例 ― 盤図の3行を読んでみる

主幹・動力分岐・電灯分岐の3行を読み下した図
読めるようになると、次に「確かめること」が見えてきます。図面は読むだけでなく、照合するものです。

読み方が分かると、図面は「読む」から「照合する」に変わります。主幹の AT を見たら幹線の許容電流を、遮断容量を見たら受電点の短絡電流を、極数を見たら回路の電圧と接地方式を、それぞれ確認します。この 3 つの照合が、盤図チェックの基本動作です。

💡 チェックの順番(3つだけ)

  1. AT ≦ ケーブル許容電流 幹線・分岐のケーブルサイズと照合
  2. 遮断容量 ≧ 短絡電流 受電点からの位置で照合
  3. 極数・素子数と回路の電圧 200V 分岐に 2P1E がないか、三相に 3P が付いているか

次回は、盤から出ていく配線のほう――「CV 3C-38sq(E38)×2(FEP80)」のような配線表記を分解します。

よくある質問

AF と AT はどちらを図面に書けばよいですか?

両方書くのが一般的です。設計で決めるのは AT(動作電流)ですが、本体寸法・端子・遮断容量は AF(フレーム)で決まるため、盤の製作には AF が必要です。「225AF/175AT」のように並べて書きます。

3P2E と 3P3E はどう使い分けますか?

3P2E は単相3線式の主幹に使い、中性線の極には過電流素子を入れません。3P3E は三相3線式(動力)の基本形で、3極すべてに素子があります。接地側の極に素子を入れないのが原則です。

遮断容量の kA はどう決めますか?

設置点で想定される短絡電流以上にします。短絡電流は変圧器の容量と %Z、そこまでの幹線のこう長から計算します。変圧器に近い受電盤ほど大きく、末端の分電盤ほど小さくなります。

2E と 3E の違いは何ですか?

2E は電動機の過負荷と欠相(1線断線による単相運転)を検出します。3E はそれに反相(逆回転)の検出が加わります。逆転が困るポンプやコンプレッサの回路では 3E が選ばれます。

漏電遮断器の 30mA 0.1s とはどういう意味ですか?

定格感度電流 30mA、動作時間 0.1 秒以内という意味です。30mA 以下が高感度形、0.1 秒以内が高速形で、感電保護にはこの組み合わせが基本です。上流の漏電遮断器には時延形を使い、下流から順に切れるよう協調させます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。