消防設備編② 自動火災報知設備のきほん

前回の消防設備編①「消防用設備、全体像のつかみ方」では、消防用設備の5分類と、電気設計が深く関わるのは「警報設備」だという話をしました。今日はその警報設備の代表格、自動火災報知設備を扱います。
感知器・受信機・地区音響装置――名前は聞いたことがあっても、それぞれが何をしていて、どうつながっているのかは、意外と整理されていないものです。今日はそこを、会話でひとつずつほぐしていきましょう。




感知器、場所でどう選ぶか





| 場所 | 基本となる感知器 | 選定の理由 |
|---|---|---|
| 居室・廊下 | 煙感知器(廊下は必須) | ― |
| 厨房 | 熱感知器 | 調理の湯気や煙を火災と誤認しやすい |
| 駐車場 | 熱感知器 | 排気ガスや粉じんを火災と誤認しやすい |
| 高天井・大空間 (倉庫・アトリウム) | 炎感知器、差動式分布型 | 煙や熱が拡散し、通常のスポット型まで届くのに時間がかかる |
- 感知器には熱・煙・炎で反応する種類があり、設置する場所によって正解が変わる
- 厨房は湯気や調理の煙、駐車場は排気ガスや粉じんが誤作動の原因。共通するのは「煙感知器だと環境要因を火災と誤認しやすい」こと
- だから厨房・駐車場は熱で感知するタイプを選ぶ
- 高天井・大空間では、炎感知器や差動式分布型を検討する
- 環境条件を見てから種類を選ぶ、という順番が大事
「非火災報」という落とし穴
感知器の選定を間違えると起きるのが「非火災報」――火災でもないのに警報が鳴ってしまう現象です。実務でも意外とよく耳にする言葉なので、ここで押さえておきましょう。




- 非火災報=火災でもないのに警報が鳴ってしまう現象
- いちばん怖いのは、鳴りすぎて利用者が「どうせ誤作動だろう」と警報を軽視するようになること
- 本当に火災が起きたときの避難の遅れにつながる
- だからこそ最初の感知器選定で誤作動を防ぐことが重要
- 意匠図や用途を見ながら「この部屋は何をする場所か」を想像して決める。単に天井に丸いものを置く作業ではない
感知器〜受信機〜地区音響装置の系統





- 系統は①見つける(感知器)→ ②知らせる(受信機)→ ③伝える(地区音響装置・他設備連動)の3段階
- 感知器はただのセンサー。どの警戒区域で発報したかを判断し、音響や他設備に指示を出すのは受信機の役割
- 受信機は防災センターに置かれる、あの大きな盤
- 防火戸の閉鎖、排煙設備の起動、エレベーターの避難階への呼び戻しも、受信機からの移報信号で動く
- 感知器1つの反応が、建物全体の安全動作の引き金になる
警戒区域という考え方
受信機の表示を理解するうえで欠かせないのが「警戒区域」という考え方です。感知器1個ごとの反応ではなく、区域単位で管理されている点を押さえておきましょう。




- 建物をいくつかのブロック(警戒区域)に分けて管理し、受信機にはその区域番号が表示される
- 防災センターの担当者は、番号から「どのあたりで発報したか」を読み取って初動対応にあたる
- 区域を細かく分けるほど精度は上がるが、感知器の配線や受信機の回路数も増える
- 精度と設備規模のバランスを取るのも設計の仕事
P型受信機とR型受信機のちがい
先ほどのQ&Aで少し触れた「P型」「R型」という受信機の種類についても、ここでもう少し掘り下げておきましょう。図面や仕様書で必ず目にする言葉です。






- 一番の違いは信号の送り方
- P型は、感知器の警戒区域ごとに電線を1本ずつ受信機までつなぐ方式
- R型は、各階に設置した中継器を経由して、少ない配線でまとめて信号を送る方式
- 優劣ではなく向いている規模が違う。P型は警戒区域が少ない小規模、R型は区域が多い大規模・高層
- 最終的な機種選定は消防設備士や専門業者との協議で決まる。設計者は「P型かR型かで配線ルートの考え方が変わる」ことを押さえておく
電気設計者が配置図で見るポイント
ここまでの内容を踏まえて、実際に配置図を見るときに電気設計者が確認すべきポイントを整理します。




- 最初に見るのは部屋の用途と感知器の種類が一致しているか。厨房に煙感知器が入っていないか、居室に熱感知器だけで済ませていないか
- 次に感知器の設置間隔や、梁・空調吹き出し口との位置関係。ここは感知性能に影響する
- 専門的な計算が絡む部分なので、新人のうちは「種類の妥当性」を見られるようになるだけでも十分な第一歩
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🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 部屋の用途を確認せず、すべて同じ種類の感知器で統一してしまう
- 厨房・駐車場に煙感知器を配置し、非火災報の原因を作ってしまう
- 感知器を「センサー」、受信機を「頭脳」という役割の違いで理解していない
- 警戒区域という考え方を知らず、受信機の表示を読み違える
- 地区音響装置だけに注目し、防火戸・排煙などへの移報信号を見落とす
- 高天井・大空間の感知器を、通常のスポット型のまま計画してしまう
まとめ ― 今日の1枚
感知器は「天井にある丸いもの」ではなく、場所の環境条件に合わせて種類を選ぶ設備です。そして反応した信号を判断し、建物全体の安全動作の引き金を引くのが受信機。①見つける → ②知らせる → ③伝える、という3段階でつながっています。
P型とR型を、並べてみる
図面や仕様書で必ず目にする2つです。優劣ではなく、向いている規模が違います。
| 項目 | P型受信機 | R型受信機 |
|---|---|---|
| 信号の送り方 | 警戒区域ごとに電線を1本ずつ受信機までつなぐ | 各階の中継器を経由し、少ない配線でまとめて送る |
| 向いている規模 | 警戒区域が少ない小規模な建物 | 警戒区域が多い大規模・高層の建物 |
| 配線の考え方 | 区域が増えると配線本数が膨大になる | 中継器方式で配線量を抑える |
最終的な機種選定は消防設備士や専門業者との協議で決まることがほとんどです。電気設計者としては「P型かR型かで配線ルートの考え方が変わる」ことを知っておけば、打合せで置いていかれずに済みます。
選ぶ ― 場所が決める
- 感知器は場所の環境条件(湯気・排気ガス・天井高)に合わせて選ぶ
- 居室・廊下は煙感知器、厨房・駐車場は熱感知器が基本
- 感知器の種類を誤ると「非火災報」の原因になり、警報の信頼性が下がる
つながる ― 3段階と警戒区域
- 系統は「①感知器(見つける)→②受信機(知らせる)→③地区音響・他設備(伝える)」の3段階
- 受信機は「頭脳」、感知器は「センサー」という役割分担
- 建物は警戒区域という単位で管理され、受信機にはその区域番号が表示される
最後に ― 配置図で、まず見るところ
- 電気設計者はまず「部屋の用途と感知器の種類の一致」をチェックできればよい
関連記事として、受変電設備の設計|建築基準法・消防法による規制について詳しく解説もあわせてどうぞ。
次回・消防設備編③「非常放送設備と誘導灯」では、今日出てきた「地区音響装置」をさらに掘り下げつつ、避難のサインとなる誘導灯の設置要否についても見ていきましょう。
- 自動火災報知設備(自火報)の設置基準 ― 用途・規模から必要かを判断する
- 【新人講座 第18回】消防・防災設備の設計のさわり ― 自火報を含む防災設備の位置づけ
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