【新人講座 第3回】電力・電力量・力率ってなに? ― kW・kVA・kvarはビールジョッキで分かる

図面のトランスには「75kVA」、契約書には「50kW」――同じ“電気の大きさ”なのに、なぜ単位が違うの?を今日で解決します。キーワードはkW・kVA・kvarと力率。容量計算やトランス選定、ぜんぶの入口になる回です。
ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- ジョッキのビール・泡・ジョッキ全体は、それぞれどの単位にあたるか
- 負荷80kW・力率0.80のとき、必要なトランス容量は何kVAか
- 図面でkVA表記になる機器とkW表記になるものは何が違うか
- kW・kvar・kVAの関係と力率の意味
- kWとkWh ―「勢い」と「積み重ね」の違い
- kVA表記とkW表記の使い分け
- 力率0.80→0.95で容量に余裕が生まれる計算
- kvarの役割や力率の改善方法
- 力率はゼロを目指す話ではない
- まとめ|kVA=kW÷力率
kWとkVAの違いは「ビールジョッキ」
はりたさん、図面のトランスに「75kVA」って書いてあるんですけど、kWとkVAって何が違うんですか?どっちも電気の大きさですよね…?
これはね、ビールジョッキで考えると一発だよ。図①のバーがその内訳。ジョッキ(=入れ物ぜんぶ)がkVA、中身のビールがkW、上の泡がkvarなんだ。

- kW(有効電力)=ビール。実際に仕事をする電力(光る・回る・温める)。
- kvar(無効電力)=泡。仕事はしないけど、モーターやトランスが磁界を作るために行ったり来たりする電力。
- kVA(皮相電力)=ジョッキ全体。見かけの大きさ。電線やトランスはこのサイズに耐える必要がある。
じゃあ「力率」っていうのは…ビールの割合ってことですか?
大正解!力率=kW÷kVA=ジョッキに対するビールの割合。泡だらけ(力率が低い)だと、同じ仕事をするのに大きなジョッキ=大きなトランスや太い電線が必要になってムダなんだ。数学っぽく描くと図②の「パワー三角形」になる。
| ジョッキのたとえ | 単位 | 中身 |
|---|---|---|
| ビール | kW(有効電力) | 実際に仕事をする電力(光る・回る・温める) |
| 泡 | kvar(無効電力) | 仕事はしないが、モーターやトランスが磁界を作るために行き来する電力 |
| ジョッキ全体 | kVA(皮相電力) | 見かけの大きさ。電線やトランスはこのサイズに耐える必要がある |
| ビールの割合 | 力率 | 力率=kW÷kVA。低いほど大きなトランスや太い電線が要る |
- kW=ビール、kvar=泡、kVA=ジョッキ全体
- 力率=kW÷kVA=ジョッキに対するビールの割合
- 泡だらけ(力率が低い)だと、同じ仕事に大きなトランスや太い電線が必要になる
kWとkWh ―「勢い」と「積み重ね」
もうひとつ似た単位、kWh(キロワットアワー)も一緒に整理しましょう。kW=いま使っている勢い(クルマの速度)、kWh=使った積み重ね(走った距離)です。1kWのヒーターを3時間つけると 1×3=3kWh。電気代の請求は、このkWhに対して来ます。
- kW=いま使っている勢い、kWh=使った積み重ね
- クルマでいえば、kWが速度でkWhが走った距離
図面ではこう使い分ける
- トランス・発電機・UPS → kVA表記。コイルに流せる電流(=見かけの大きさ)で能力が決まるから。
- 照明・ヒーター・機器の消費電力、契約電力 → kW表記。実際にする仕事の量だから。
- この2つをつなぐのが力率:kVA=kW÷力率。
💼 この回が実務でこう生きる
ペン太
ハリタ| 聞かれること | 見る単位 | 理由 |
|---|---|---|
| トランス・発電機・UPSの能力 | kVA | コイルに流せる電流(=見かけの大きさ)で能力が決まるから |
| 照明・ヒーター・機器の消費電力 | kW | 実際にする仕事の量だから |
| 契約電力 | kW | 同じく、実際にする仕事の量で決まるから |
| 使った電気の量(従量の電気代) | kWh | 勢いではなく積み重ねで課金されるから |
- トランス・発電機・UPSはkVA表記。コイルに流せる電流で能力が決まるから
- 照明・ヒーター・機器の消費電力と契約電力はkW表記
- 2つをつなぐのが力率:kVA=kW÷力率
📋 実務活用事例|力率を改善したら、トランスに余裕が生まれた
ケース:工場の負荷は80kW、力率は0.80。トランスは何kVA必要?
① 必要なkVA=kW÷力率=80÷0.80=100kVA → 100kVAトランスがほぼ満杯。
② 進相コンデンサで力率を0.95に改善すると → 80÷0.95≒84kVA。
③ 同じ100kVAトランスに約16kVAの余裕が生まれ、設備の増設に対応できる。しかも高圧契約では力率が良いと基本料金が割引(85%を基準に増減)される制度もある。
結論:泡(kvar)を減らす=トランスにも電気代にも効く。「力率改善」が設備投資として成立する理由が、この計算で説明できます。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。
Q.VAもWも、計算は「ボルト×アンペア」ですよね?単位として何が違うんですか?
→ 鋭い!次元(計算のもと)は同じです。同じだからこそ、「見かけ(VA)」と「実際の仕事(W)」を取り違えないように、わざわざ単位を使い分けています。
Q.泡(無効電力)にも電気代はかかるんですか?
→ 家庭の電気代は有効電力量(kWh)に課金されるので、直接はかかりません。高圧契約では力率によって基本料金が増減します(本文の割引の話)。
🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう
Q.泡(kvar)って、何のためにあるんですか?ただのムダ?
A.完全なムダではないんだ。モーターやトランスは磁界を作らないと動けない。その磁界を作るために電源と行ったり来たりしているのが無効電力。仕事はしないけど磁界づくりに必要な“準備運動”みたいなものだよ。
Q.力率はどうやって良くするんですか?
A.代表選手は進相コンデンサ。コイル(遅れ)と逆の性質(進み)を持つコンデンサを並列に入れて泡を打ち消すんだ。受変電設備の図面に必ず出てくるよ。詳しくは受変電の回で!
Q.kWとkWh、どっちで電気代が決まるんですか?
A.従量料金はkWh(使った量)、基本料金はkW・kVA(契約の大きさ)で決まるのが基本。だから「ピークの勢いを下げる(デマンド管理)」と「総量を減らす(省エネ)」は別の対策になるんだ。
- VAとWは次元(計算のもと)は同じ。だからこそ「見かけ」と「実際の仕事」を取り違えないよう単位を分けている
- kvarは磁界づくりに必要な“準備運動”で、完全なムダではない
- 力率を良くする代表選手は進相コンデンサ。コイル(遅れ)と逆の性質を並列に入れて泡を打ち消す
⚠️ ここだけ注意
kvar(無効電力)は「悪者」ではありません。磁界を作るために必要な電力です。問題なのは「多すぎる」こと。だから“ゼロにする”ではなく“ちょうどよく減らす”のが力率改善です(進みすぎもNG)。
ペン太
ハリタ
まとめ
結論。単位が違うのは、見ている場所が違うだけ。ビール・泡・ジョッキで置き換えれば、容量の会話は一気にほどけます。
| 場面 | 出てくる式 |
|---|---|
| トランス容量を出す | kVA=kW÷力率 |
| 力率を出す | 力率=kW÷kVA |
| 三角形で確かめる | kVA²=kW²+kvar² |
| 改善効果を見る | 80÷0.80=100kVA → 80÷0.95≒84kVA |
言葉の中身
- kW=ビール(実際の仕事)、kvar=泡(磁界づくり)、kVA=ジョッキ全体(見かけ)(図①)。
- 力率=kW÷kVA。パワー三角形で kVA²=kW²+kvar²(図②)。
- kW=勢い、kWh=積み重ね。電気代の従量分はkWh。
図面と実務での効き方
- トランス・発電機はkVA表記、機器・契約はkW表記。
- 80kW・力率0.8→100kVA。力率0.95に改善→84kVAで余裕が生まれる。
ここまでがつながれば、容量の打合せで迷子になりません。√3の入った三相の計算は、サイズ選定の回でゆっくり扱います。
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