この記事は連載「引込・受電設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
この記事の全体像:契約電力の想定。設備容量から需要率・不等率での割り引き、低圧と高圧の決まり方の違い、将来増設

こんにちは、HARITAの設計室です。

引込・受電設備の設計マニュアル、第2回です。前回は「50kWで設計の世界が変わる」という話をしました。ではその50kWに届くかどうかは、どうやって判断するのか。今回は契約電力の想定です。

新人がいちばん最初につまずくのが、ここだと思います。図面に載っている機器の容量を全部足したら180kW。「じゃあ契約電力は180kWですね」――これが違います。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 設備容量の合計が180kWなら、契約電力は180kWですか
  • 需要率と不等率は、それぞれ何を見ていますか
  • 高圧の契約電力は、設計と使い方のどちらで決まりますか
ペン太ペン太
図面の機器容量を全部足したら180kWでした。契約電力は180kWですね。
はりたはりた
そこが最初のつまずきどころ。全部が同時に、しかも全負荷で動くことはないよ。
ペン太ペン太
じゃあ、どう出すんですか。
はりたはりた
足し算のあとに、割り引きが2回ある。需要率と不等率だよ。
この記事でわかること
  1. 設備容量の合計は、契約電力ではない
  2. 需要率・不等率・負荷率 ― 3つの「率」の違い
  3. 需要率は、用途と使われ方で変わる
  4. 契約電力の決まり方は、低圧と高圧で違う
  5. 将来増設は、どこまで見込むか
  6. よくある質問
引込・受電設備の設計マニュアル 全6回の第2回。前回の「50kWで設計の世界が変わる」に、届くかどうかを判断する回です。

設備容量の合計は、契約電力ではない

トピック1
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図1:設備容量から契約電力へ

建物にある機器の容量を全部足した数字を設備容量といいます。照明、コンセント、空調、給排水ポンプ、エレベーター、厨房機器。設計の初期段階では、まずこれを積み上げます。

ただし、すべての機器が同時に、しかも全負荷で動くことはありません。事務所のコンセントは全口が同時にフル稼働しませんし、空調も外気温に応じて能力を上下させています。そこで設備容量に需要率をかけて、実際に出るであろう最大値――最大需要電力を出します。

さらに、複数の系統や用途をまとめるとき、それぞれのピークが同じ瞬間に重なるとはかぎりません。照明のピークは昼、給湯のピークは朝、というように時刻がずれる。このずれを見込むのが不等率です。個々の最大の合計を不等率で割ると、建物全体としての合成最大需要電力になります。

つまり、契約電力の想定は足し算が1回、割り引きが2回。この構造だけ覚えておけば、数字が合わなくなったときにどこを見ればいいか分かります。

ここまでのポイント
  • 機器の容量を全部足した数字が設備容量。ただしすべての機器が同時に全負荷で動くことはない
  • 設備容量に需要率をかけて最大需要電力を出す。
  • 複数の系統・用途をまとめるとき、ピークの時刻はずれる。そのずれを見込むのが不等率。個々の最大の合計を不等率で割ると合成最大需要電力
  • つまり足し算が1回、割り引きが2回。この構造だけ覚えておけば、数字が合わないときにどこを見ればいいか分かる。

需要率・不等率・負荷率 ― 3つの「率」は見ているものが違う

トピック2
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図2:需要率・不等率・負荷率の違い

よく並べて説明される3つですが、見ているものはそれぞれ別です。

  • 需要率=最大需要電力 ÷ 設備容量。「全部が同時に全開にはならない」を表します。1未満になるのがふつうです。
  • 不等率=個々の最大需要の合計 ÷ 合成最大需要電力。「ピークの時刻がずれる」を表します。定義上1以上になります。
  • 負荷率=平均需要電力 ÷ 最大需要電力。「使い方にムラがあるか」を表します。容量を決める計算というより、運用や電気料金を見るための指標です。

容量計算で直接効いてくるのは需要率と不等率のほうです。負荷率は、竣工後に「契約電力に対して実際どれくらい使えているか」を見るときに出てきます。

3つの定義と使い分けは 【新人講座 第11回】負荷容量と需要率・不等率 でも図解しています。

ここまでのポイント
  • 需要率=最大需要電力 ÷ 設備容量。「全部が同時に全開にはならない」。1未満になるのがふつう。
  • 不等率=個々の最大需要の合計 ÷ 合成最大需要電力。「ピークの時刻がずれる」。定義上1以上
  • 負荷率=平均需要電力 ÷ 最大需要電力。「使い方にムラがあるか」。容量計算ではなく、運用と電気料金を見る指標

需要率は、用途と使われ方で変わる

トピック3
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図3:需要率は用途と使われ方で変わる

需要率は建物の用途によって変わります。ただ、正確には「用途」というより使われ方で変わる、と考えたほうが実感に合います。

共同住宅は各戸の生活時間がばらけるので、全戸が同時にフル稼働することはまずありません。事務所は照明とOA機器が日中そろうので、それより高くなります。店舗や工場は、営業時間・稼働時間のあいだほぼ動き続けるので、さらに高い。

共同住宅の需要率は戸数によっても変わります。戸数が増えるほど「みんなが同時に使う」確率は下がるので、需要率は小さくなっていきます。集合住宅の考え方は 集合住宅の幹線需要率と幹線計算方法 が具体的です。

数値は自分で決めない
需要率の具体的な数値は、内線規程・特記仕様書・施主基準・過去の実績のいずれかに根拠があるはずです。用途名だけを見て「事務所だからこの数字」と決めてしまうと、根拠を聞かれたときに答えられません。どこから取ってきた数字かを、必ずセットで持っておいてください。

変圧器容量の選定でも同じ需要率が出てきます。あわせて 変圧器容量の選定・計算方法と需要率の適用基準 もどうぞ。

ここまでのポイント
  • 需要率は用途というより、使われ方で変わる。共同住宅は生活時間がばらけるので低く、事務所はそれより高く、店舗・工場はさらに高い。
  • 共同住宅は戸数が増えるほど需要率は小さくなる
  • 数値は自分で決めない。内線規程・特記仕様書・施主基準・実績のいずれかに根拠がある。どこから取った数字かをセットで持つ

契約電力の決まり方は、低圧と高圧で違う

トピック4
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図4:低圧と高圧で契約電力の決まり方が違う

ここが実務でいちばん誤解されやすいところです。契約電力の決まり方そのものが、低圧と高圧で違います。

低圧は、契約方式であらかじめ決めます。主開閉器契約なら主幹ブレーカーの容量から、負荷設備契約なら設備を積み上げて算定します。つまり設計で決まる数字です。

高圧は実量制(デマンド制)です。過去1年間のうち最大となった月のデマンド値が、そのまま契約電力になります。つまり使い方で決まる数字です。

この違いが効いてくるのは竣工後です。高圧の場合、たった一度うっかり全機器を同時起動してピークを作ってしまうと、その値が1年間ずっと契約電力として残ります。基本料金も1年間その水準です。

だから高圧の建物では、設計側でも「ピークを作らせない」工夫が意味を持ちます。空調の起動を時間差にする、デマンド監視装置を入れる、といった話は、電気料金の話であると同時に設計の話でもあります。

契約電力の具体的な算定手順(圧縮計算)は 電力会社との契約電力の計算方法【圧縮計算】 にまとめています。

ここまでのポイント
  • 低圧は契約方式であらかじめ決める。主開閉器契約なら主幹ブレーカーの容量から、負荷設備契約なら設備を積み上げて算定=設計で決まる数字
  • 高圧は実量制(デマンド制)。過去1年間のうち最大となった月のデマンド値が、そのまま契約電力=使い方で決まる数字
  • 高圧では一度のピークが1年間ずっと残る。基本料金も1年その水準。
  • だから起動の時間差やデマンド監視は、料金の話であると同時に設計の話になる。

将来増設は、どこまで見込むか

トピック5
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図5:将来増設をどこまで見込むか

「将来の増設を見込んでおいて」と言われます。ではどこまで見込むか。極端な2つを先に見ておきます。

まったく見込まないと、あとでEV充電器や厨房機器が追加されたときに、契約変更・盤の増設・最悪は受電方式の変更まで発生します。

逆に過大に見込むと、契約電力が上がって基本料金が高くなり、変圧器も盤も大きくなります。使われない容量にお金を払い続けることになります。

実務的な落としどころは、余裕を契約電力ではなく「盤とスペース」で持っておくことです。分電盤に予備回路を残しておく、盤を置ける場所を確保しておく、幹線ルートに余裕をみておく。これなら、増設が実際に起きたときだけコストが発生します。

契約電力そのものに大きな余裕を持たせるのは、増設の計画が具体的に決まっている場合に限る――くらいの感覚がちょうどいいと思います。

作図イメージ:契約電力の算定フローと、低圧・高圧で異なる契約電力の決まり方
図6:契約電力の組み立てと、低圧・高圧で異なる決まり方(作図イメージ)
ここまでのポイント
  • 見込まないと、EV充電器や厨房機器の追加で契約変更・盤の増設・最悪は受電方式の変更まで発生する。
  • 過大に見込むと基本料金が上がり、変圧器も盤も大きくなる。使われない容量に払い続けることになる。
  • 実務的な落としどころは、余裕を契約電力ではなく「盤とスペース」で持つこと。予備回路、盤を置ける場所、幹線ルートの余裕。
  • 契約電力そのものに大きな余裕を持たせるのは、増設の計画が具体的に決まっている場合に限る
ペン太ペン太
高圧なら、契約電力は設計で決めた数字になりますよね。
はりたはりた
高圧は実量制。過去1年で最大だった月のデマンド値が、そのまま契約電力になる。使い方で決まる数字なんだ。

まとめ ― 契約電力は、設備容量の合計ではない

トピック6
  • 契約電力の想定は足し算が1回、割り引きが2回(設備容量 → ×需要率 → ÷不等率)
  • 需要率は「同時に全開にならない」、不等率は「ピークがずれる」、負荷率は「使い方のムラ」
  • 需要率の数値は内線規程・特記・実績から取る。用途名だけで決めない
  • 低圧の契約電力は設計で決まる、高圧は実量制で使い方で決まる
  • 高圧では一度のピークが1年きいてくる
  • 余裕は契約電力ではなく、盤とスペースで持っておく

3つの「率」を、並べて見る

見ているもの容量計算での位置づけ
需要率最大需要電力 ÷ 設備容量全部が同時に全開にはならない1未満容量計算に直接効く
不等率個々の最大需要の合計 ÷ 合成最大需要電力ピークの時刻がずれる1以上容量計算に直接効く
負荷率平均需要電力 ÷ 最大需要電力使い方にムラがあるか運用と電気料金の指標

いちばん右の列が、混同を防ぐところです。容量計算に直接効くのは需要率と不等率のふたつ。負荷率は、容量を決める計算ではなく、運用や電気料金を見るための指標です。並べて説明されるので混ざりやすいところですが、役目が違います。

そして需要率の数値は自分で決めないこと。内線規程・特記仕様書・施主基準・実績のいずれかに根拠があります。どこから取ってきた数字かを、必ずセットで持っておいてください。用途名だけで決めると、根拠を聞かれたときに答えられません。

今回の合言葉
契約電力は、設備容量の合計ではない。
足したあとに、2回の割り引きがあります。

よくある質問

トピック7

Q1. 需要率の数値は、どこを見れば載っていますか?

内線規程や設計資料に用途別の目安が示されています。加えて、特記仕様書や施主の設計基準で指定されていることも多いので、まずそちらを確認してください。同じ用途でも運用時間や機器構成で変わるため、採用した数値と出典をセットで記録しておくことをおすすめします。

Q2. 不等率は必ず使うのですか?

必ずではありません。系統がひとつしかない小規模な建物では、不等率を見込む場面がそもそもありません。複数の変圧器や複数用途をまとめて受電するときに効いてきます。使う・使わないの判断も、根拠を残しておくと後で説明しやすくなります。

Q3. 想定した契約電力と、竣工後の実績がずれたらどうなりますか?

低圧の契約方式であれば、設備や主開閉器を変えないかぎり契約電力は動きません。高圧の実量制では、実績が想定より大きければその値が契約電力になり、基本料金が上がります。

逆に実績が小さければ契約電力も下がっていきます。想定は「初期の契約と設備を決めるための数字」であって、その後は使い方が決めていく――と理解しておくと混乱しません。

次回予告

トピック8

第3回は「引込方式とルート」です。架空か地中か、どこから敷地に入れて、どこから建物に入れるか。引込線と引込口配線の区分、高圧ケーブルのサイズと保護管、そして1引込・2引込の考え方までを扱います。

合言葉は「引込は、敷地の入口ではなく建物の入口で決まる」。→ 第3回 引込方式とルート を公開しました。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。