【1社を深掘り】中電工の業務内容・業績・投資|株主説明資料から読む
1社ずつの深掘り、第5回は中電工。中国電力系の総合設備工事会社で、広島に本社を置く。関電工・きんでん・クラフティア・トーエネックと同じく、会社が何をやっていて、どう稼ぎ、どこに投資しているのかを、株主・投資家向け資料(決算短信・決算説明資料・有価証券報告書)だけを使って読み解く。中電工には、本業とは別のところで出た一度の赤字と、営業利益率が5.5%から11.5%へと大きく上がった収益力の変化という2つの読みどころがある。
この記事の結論
① 事業の柱は屋内電気工事(約45%)。空調管工事(約17%)が第2の柱。ビル・工場・商業施設の電気設備が売上の中心で、空調管工事が配電線工事より大きいのが特徴だ。配電線などの送配電インフラ(中国電力向け中心)は合わせて約2割で、同じ電力系のトーエネック(配電線が約33%)と比べると送配電への依存度は低めといえる。
② 2023年3月期に一度、最終赤字。ただし原因は「本業の外」。営業利益は84億円の黒字だったが、営業外費用(保有有価証券の時価下落等)約127億円で経常・純損失(純損失△69億円)に沈んだ。工事の本業が悪化したわけではない点が読みどころだ。
③ 収益力が大きく改善、営業利益は過去最高。連結売上高は1,907→2,278億円、営業利益は104→262億円、営業利益率は5.5%から11.5%へ。2026年3月期の営業利益は過去最高で、ROEは7.9%になった。
④ 筆頭株主は中国電力(約41%)で、連結子会社ではなく関連会社。中国電力の持株比率は約41.35%(その他の関係会社)。関電工・きんでん・トーエネックと同じ電力会社系サブコンだが、中電工は50%未満の関連会社という位置づけだ。
会社の基本情報
中電工は1944年9月設立、本社は広島市中区小網町。資本金34.8億円(3,481百万円)、連結従業員は約4,697人(2026年3月末)。中国5県(広島・岡山・山口・島根・鳥取)を地盤に、中国電力の電気工事を担ってきた歴史を持つ、中国地方の代表的な設備工事会社だ。筆頭株主は中国電力で、持株比率は約41.35%(2026年3月末)。提出会社(単体)の平均年間給与は約845万円、平均40.2歳・勤続18.8年となっている。
(2026年3月期)
(2026年3月末)
(2026年3月期)
(単体・概算)

1. 何をやっている会社か
中電工の事業を工事種類別に見たのが図1だ(連結)。最大は屋内電気工事で約45.2%(1,029億円)。ビル・工場・商業施設などの電気設備がここに入り、売上のほぼ半分を占める柱だ。次いで大きいのが空調管工事の約16.5%(377億円)で、空調・給排水・衛生など建物の環境設備をつくる。電柱など送配電インフラの配電線工事は約14.8%(336億円)で、中国電力向けが中心だ。
ここが中電工の個性といえる。同じ電力会社系でも、トーエネック(配電線が約33%)より配電線の比率が低く、屋内電気と空調管という民間建築系の工事が中心だ。送変電地中線工事(約4.5%)、情報通信工事(約4.2%)、そしてエネルギー・不動産・機器販売などのその他事業(約15%)が続く。海外はセグメントとして独立開示されておらず、売上規模は非公表となっている。

2. 業績-売上より「利益率」が跳ねた5年
図2は連結の売上高と営業利益の推移だ。売上高も1,907億円→2,278億円と伸びているが、それ以上に目を引くのが利益率だ。営業利益率は5.5%から11.5%へと2倍以上になり、営業利益は104億円から262億円へ拡大した。とくに直近2期(2025・2026年3月期)で利益率が大きく跳ね、2026年3月期の営業利益は過去最高となっている。
背景には、工事の採算改善や大型案件の寄与があるとみられる。会社は2027年3月期に売上2,450億円・営業利益270億円を見込み、中期経営計画2027では最終年度に売上2,600億円・営業利益280億円・ROE8.5%以上を掲げる。さらに長期ビジョンでは2030年度に売上3,000億円・ROE9%以上を目標にしている。

3. 2023年3月期の赤字は「本業の外」で起きた
中電工を読むうえで面白いのが、2023年3月期の純損失△69億円だ。図3のとおり、この年だけ純利益が赤字に沈んでいる。ただし本業(工事)の採算が崩れたわけではない。営業利益は84億円の黒字を確保していた。赤字の原因は、営業外費用(保有有価証券の時価下落等)が約127億円と突出したことにある。本業の利益を、本業とは別の要因(保有株式などの評価)が打ち消してしまった年だ。
これは、前回のトーエネックの赤字(太陽光発電事業の減損という特別損失が主因)とは損失の出どころが違う。トーエネックは損益計算書の「特別損失」で、中電工は「営業外費用」で赤字になった。会社の決算を見るときは、どの段階(営業・経常・特別)で損益が動いたのかを分けて見ると、本業の実力と、それ以外の一過性の要因を切り分けられる。中電工の場合、本業の営業利益はその後も伸び続け、2024年3月期79億円、2025年3月期199億円、2026年3月期185億円の純利益へと回復した。
4. 中国電力系という基盤
中電工の筆頭株主は中国電力(持株比率 約41.35%、その他の関係会社)だ。持株比率が50%未満のため、中電工は中国電力の連結子会社ではなく関連会社という位置づけになる。中電工から中国電力への電気工事の請負、中国電力から中電工への設備資金の貸付といった取引関係が有価証券報告書に記載されている。
関電工(東京電力系)、きんでん(関西電力系)、トーエネック(中部電力系)と同じく、電力会社を背景に持つ設備工事会社(電力系サブコン)の一社だ。中国電力向けの配電・送変電工事という安定した基盤を持ちつつ、屋内電気・空調管など民間建築の工事にも幅広く展開している。電力会社系サブコンは、親会社の設備投資という後ろ盾がある一方、民間・官公庁向けの受注をどれだけ伸ばせるかで、会社ごとの成長力に差が出てくる。
主要指標の5年推移
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結売上高(億円) | 1,907 | 1,890 | 2,010 | 2,219 | 2,278 |
| 連結営業利益(億円) | 104 | 84 | 119 | 217 | 262 |
| 営業利益率 | 5.5% | 4.4% | 5.9% | 9.8% | 11.5% |
| 経常利益(億円) | 120 | △19 | 127 | 234 | 275 |
| 当期純利益(億円) | 67 | △69 | 79 | 199 | 185 |
| ROE | 3.1% | △3.4% | 3.9% | 9.1% | 7.9% |
| 設備投資(億円) | 25 | 52 | 44 | 63 | 56 |
| 1株配当(円) | 104 | 104 | 104 | 120 | 135 |
5. 就活・転職でどう読むか
赤字が出た「場所」を確かめる
中電工の2023年3月期のように、最終赤字でも本業(営業利益)は黒字というケースは珍しくない。損益計算書は営業利益・経常利益・当期純利益と段階があり、どの段階で赤字になったかで意味がまったく違う。本業の営業利益が黒字なら、赤字の主因は保有株式の評価や特別損失など一過性の要因である可能性が高い。会社を選ぶときは、単に「赤字だった年がある」で終わらせず、その赤字が本業で起きたのか、本業の外で起きたのかを決算短信で確かめたい。
売上より利益率の変化を見る
中電工の5年で最も大きく動いたのは、売上高よりも営業利益率(5.5%→11.5%)だ。売上が伸びていても利益率が下がっている会社もあれば、その逆もある。設備工事業は工事ごとの採算がばらつきやすく、利益率の推移はその会社の受注の質や現場管理力を映す。説明会などで、利益率が上がった理由(大型案件か、採算重視の受注方針か)を確認すると、その改善が続くものか一時的なものかが見えてくる。
成長分野と待遇
中期経営計画では売上2,600億円・ROE8.5%以上、2030年度には売上3,000億円を掲げ、成長への意欲は明確だ。1株配当は135円(2027年3月期は140円予想)と、赤字だった2023年3月期も含めて安定的に維持してきた。平均年間給与は単体で約845万円だが、これは賞与等を含む全社員の平均で、職種・年次・地域による差がある点には注意したい。正確な内訳は有価証券報告書で確認できる。
このデータの限界
以下は本稿が示していないこと
① 工事種類別は連結の「収益の分解情報」で、単体の部門別内訳とは金額が異なる。図1は連結の完成工事高の内訳(決算短信)で、単体(個別)の部門別売上高とは範囲・金額が一致しない。
② 2023年3月期の営業外費用の内訳は概要のみ。「保有有価証券の時価下落等」と整理したが、個別銘柄や評価損の正確な内訳までは本稿では特定していない。正確な内訳は有価証券報告書・決算短信で確認できる。
③ 海外事業の売上規模は非公表。セグメントとして独立開示されておらず、金額は把握できない。
④ 中国電力の持株比率の過去からの推移は本稿では扱っていない。本稿は直近(2026年3月末 約41%、その他の関係会社)の状況を示すにとどめ、過去に連結子会社だったか等の時系列は確認範囲外とした。
⑤ 平均年間給与は単体・全社員の平均(賞与等を含む)の概算値。職種・年次・地域による差は示されておらず、個人の実際の年収を保証するものではない。
⑥ 本稿は中電工が公表した資料の範囲の事実整理であり、投資勧誘・投資助言ではない。将来の業績や株価を約束するものではない。転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。
出典
すべて中電工の公式開示(2026年7月30日取得)。2026年3月期 決算短信(連結)、決算説明資料、財務・業績情報(11か年財務サマリー)、中電工 IRライブラリー、および有価証券報告書 第110期(2026年3月期)。売上高・営業利益・経常利益・当期純利益・ROE・設備投資・工事種類別完成工事高は連結、平均年間給与・平均年齢・平均勤続は単体(提出会社)。億円は百万円を100で除して四捨五入した。





