この連載では9社を横並びで比べてきた。ここからは1社ずつの深掘りを始める。第1回は関電工。売上高・時価総額とも業界トップクラスで、関東の電気設備工事の象徴的な存在だ。会社が何をやっていて、どう稼ぎ、どこに投資しているのか。株主・投資家向けの資料(決算説明会資料・統合報告書・有価証券報告書・中期経営計画)だけを使って読み解く。

この記事の結論

事業の中心は「屋内線・環境設備工事」で完成工事高の約6割。ビルや工場・商業施設の電気・空調設備が主力だ。次いで配電線工事(送配電インフラ)が約2割、工務関係工事(再エネ・原子力など大型電源)が約1.4割、情報通信工事が約0.7割と続く。

業績はこの5年で急拡大。連結売上高は4,956→7,420億円、営業利益は306→831億円(約2.7倍)、営業利益率は6.2→11.2%、ROEは16.8%まで上がった。受注残高(単体)も約6,737億円と厚い。

設備投資・研究開発も拡大中。設備投資は2024年3月期に296億円の大型投資、直近は203億円。研究開発費は33億円。中期経営計画では3年累計で約1,250億円を投じる計画だ。

親会社(東京電力パワーグリッド)の株式売出しで資本関係が変化。2026年2月に持株比率が約46.2%→34.46%へ下がり、同時に約300億円の自社株買いを実施。経営の自由度を高め、株主還元も強化している。

会社の基本情報

関電工は1944年9月1日設立、本社は東京都港区芝浦。資本金102.6億円(10,264百万円)、連結子会社30社で構成され、連結従業員は10,850人(2026年3月末)。設備工事業を中核に、電気機器販売・不動産・リース・発電事業を手がける。提出会社(単体)の平均年間給与は約1,012万円(平均42.4歳・勤続19.3年、賞与等含む)だ。

連結売上高
(2026年3月期)
7,420億円
連結従業員数
(2026年3月末)
10,850
平均年間給与
(単体・2026年3月)
約1,012万円
ROE
(2026年3月期)
16.76%
関電工の施工形態別 完成工事高構成(2026年3月期)

1. 何をやっている会社か

関電工の会計上の報告セグメントは「設備工事業」の単一区分だが、投資家向け資料では施工形態別に事業を開示している。図1のとおり、最大は屋内線・環境設備工事で完成工事高の約6割(3,714億円)。オフィスビル・工場・商業施設・データセンターといった建物の中の電気配線や空調・環境設備がここに入る。私たちがふだん「電気工事会社」と聞いてイメージする仕事の中心だ。

次いで配電線工事が約2割(1,312億円)。これは電柱や地中の送配電線など、街のインフラをつくる仕事で、親会社である東京電力向けの工事が多く含まれる。残りは工務関係工事(再エネ・原子力・特別高圧など大型の電源設備)と情報通信工事だ。「建物の中」と「街のインフラ」の両方を持っているのが関電工の特徴といえる。

なかでも成長がめだつのが工務関係工事のなかの再生可能エネルギーだ。完成工事高は233億円(工務関係の25.4%)で、前年から約1.8倍(+87.3%)に伸びた。風力発電所の建設などを手がけ、子会社では発電事業そのものも展開している。電気設備工事の会社が、エネルギーをつくる側にも広がっているのがわかる。

関電工の連結売上高と営業利益の推移

2. 業績-5年で増収増益、受注残も厚い

図2は連結の売上高と営業利益の推移だ。売上高は5年で4,956億円→7,420億円、営業利益は306億円→831億円と約2.7倍。営業利益率も6.2%から11.2%へと大きく改善した。単に工事量が増えただけでなく、採算のよい案件を選び、資材高を価格に転嫁し、生産性を上げた結果だ。純利益は635億円、ROEは16.8%と、財務効率も業界トップ級の水準にある。

将来の売上の先行指標となる受注残高(次期繰越工事高・単体)も約6,737億円と、年間の完成工事高を上回る水準まで積み上がっている。手持ち工事が厚いということは、当面の売上の見通しが立ちやすいということだ。会社は2027年3月期に売上7,800億円・営業利益900億円を見込んでいる。

関電工の設備投資額の推移

3. 設備投資と研究開発-どこにお金をかけているか

会社の「これから」を映すのが設備投資だ。図3のとおり、関電工の設備投資額は2022年3月期の91億円から、直近は203億円まで拡大した。2024年3月期には296億円の大型投資があり、これはグリーンイノベーション本部の用地取得などによるものだ。投資の中身は、施工力を強化するためのプレハブ化工場、省エネ性能の高い事業所、災害時のBCP対応拠点、生産設備などが中心となっている。

研究開発費も年々増え、直近は33億円。エネルギーの使用量をクラウドで見える化する自社システムや、災害時に通信と電源を供給する移動電源車、蓄電池の安全性評価などに取り組んでいる。中期経営計画では、2024〜2026年度の3年間で約1,250億円を設備(約500億円)・事業やM&A(約550億円)・IT/DX(約150億円)・研究開発(約50億円)に配分する計画だ。稼いだ利益を、次の成長のために振り向けている。

4. 中期経営計画と成長分野

関電工は「2024-2026年度 中期経営計画」を掲げるが、好業績で目標を前倒し達成したため、計画を2度上方修正した。最終年度(2026年度)の目標は売上高7,800億円・営業利益900億円・ROE16%程度・配当性向40%程度。すでに2026年3月期の実績(売上7,420億円・営業利益831億円・ROE16.8%)でほぼ到達している。

会社が成長ドライバーとして具体的に挙げているのは、AI・半導体、データセンター、再生可能エネルギー、大型再開発だ。半導体工場やデータセンターの建設ラッシュ、脱炭素に向けた再エネ・送配電網の増強、都心の大規模再開発(内幸町・東京海上ビル・成田空港設備更新など)といった案件を、資料のなかで受注物件として明示している。前回までの記事で見た『電設セクター全体の追い風』が、関電工の計画にもはっきり表れている。

5. 親会社・資本関係の変化

関電工を語るうえで外せないのが東京電力グループとの関係だ。筆頭株主は東京電力パワーグリッドで、関電工は同社の「その他の関係会社」にあたる。もともと東電向けの配電線工事などが事業の一角を占めてきた。

ところが2026年2月、東京電力パワーグリッドが保有株の一部を売り出し、持株比率が約46.2%から34.46%へ低下した。関電工はこれを『新たな株主層の開拓』『戦略的M&A・アライアンスを含む経営の自由度向上』と説明している。同時に約300億円の自社株買いを実施し、需給への影響をやわらげつつ株主還元も強めた。親会社への依存度が下がり、独立した成長企業としての色を強めている局面だといえる。

主要指標の5年推移

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高(億円)4,9565,4165,9846,7197,420
連結営業利益(億円)306327409583831
営業利益率6.2%6%6.8%8.7%11.2%
経常利益(億円)318341426595850
当期純利益(億円)203212273424635
ROE7.33%7.27%8.65%12.08%16.76%
新規受注高(単体・億円)4,6684,9335,7256,4737,315
受注残高(単体・億円)4,4084,6415,1585,7996,737
設備投資(連結・億円)9197296151203
研究開発費(連結・億円)1717242733
1株配当(円)28324182124
出典:関電工 有価証券報告書(第112期)・2026年3月期 決算参考資料(売上高・利益・ROE・設備投資・研究開発は連結、受注高・受注残高は単体)。1株配当の2025年3月期には創立80周年記念配当を含む。億円は百万円を100で除して四捨五入。2027年3月期は会社予想で売上7,800億円・営業利益900億円・1株配当130円。

6. 就活・転職でどう読むか

受注残の厚さは「安定」のサイン

学生や若手が会社を選ぶとき、売上や利益の大きさに目が行きがちだが、受注残高(手持ち工事)の厚さも見ておきたい。関電工のように受注残が年間売上を上回る水準なら、当面の仕事量が見通せる=経営が安定しているサインだ。景気に左右されやすい建設・設備業界では、この『先の見えやすさ』は働くうえでの安心材料になる。

給与・還元の水準

提出会社の平均年間給与は約1,012万円と、業界のなかでも高い水準にある。配当も5年で28円→124円へと大きく増え(2027年3月期予想130円)、配当性向40%を目標に株主還元を強化している。業績連動賞与や持株会(従業員持株会が大株主の一角)がある会社なので、会社の成長が処遇に反映されやすい構造だ。ただし平均給与は単体・全社員の平均で、職種・年次・地域によって実際の水準は異なる点には注意したい。

成長分野で何を担うか

データセンター・半導体・再エネといった成長分野は、まさに関電工が力を入れている領域だ。面接や説明会では、自分がどの施工形態(屋内線・配電線・工務・情報通信)に関わりたいか、そしてその分野の受注が伸びているかを、決算参考資料の施工形態別データで確かめると、志望動機に具体性が出る。会社の人的資本KPI(女性管理職・育休取得率・資格保有者数など)も統合報告書で公開されており、働く環境を測る手がかりになる。

このデータの限界

以下は本稿が示していないこと

会計上の報告セグメントは「設備工事業」単一。データセンターや半導体だけを取り出したセグメント売上は非公表で、施工形態別(屋内線・配電線・工務・情報通信)が最も細かい公式の開示粒度だ。成長分野の規模は完成工事高の内訳から推し量るしかない。

受注高・受注残高は単体、売上高・利益は連結。集計範囲が異なるため、受注残と連結売上を単純には比べられない。連結の受注高は非公表。

設備投資額は連結ベースで、単体の年間額は非公表。有価証券報告書の『設備の状況』は連結+主要設備一覧で、事業別の細かい投資額までは開示されていない。

平均年間給与は提出会社(単体)・全社員の平均。職種・年次・地域による差、残業や手当の内訳は示されておらず、個人の実際の年収を保証するものではない。

本稿は関電工が公表した資料の範囲の事実整理であり、投資勧誘・投資助言ではない。将来の業績や株価を約束するものではない。転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。

出典

すべて関電工の公式開示(2026年7月28日取得)。有価証券報告書(第112期・2026年3月期)2026年3月期 決算短信・決算参考資料中期経営計画(2024-2026年度、2026年4月28日見直し)関電工 IR情報。売上高・利益・ROE・設備投資・研究開発費は連結、受注高・受注残高・平均年間給与は単体(提出会社)。施工形態別の完成工事高は決算参考資料による。億円は百万円を100で除して四捨五入した。