電気設備サブコン9社の売上実績|きんでん・関電工が突出、5年で全社が増収増益
電気設備サブコンの「会社の規模」を測るとき、いちばん素直な物差しが売上高だ。今回は大手9社の連結売上高を、直近5期(2022〜2026年3月期)の推移で比較する。あわせて、稼ぐ力を示す営業利益率も見ていく。規模の大きさと、利益を出す効率は別物だからだ。
数字はすべて各社の有価証券報告書・決算短信の連結ベースから採った。決算期はいずれも3月期。売上高は収益認識に関する会計基準が2022年3月期から適用され、それ以前とは金額に段差があるため、本稿は新基準がそろう2022年3月期以降の5期で比べる。
この記事の結論
① 売上規模はきんでん・関電工が突出。9社を共通で比較できる最新期(2025年3月期)で、きんでん7,051億円・関電工6,719億円が7,000億円前後。3位クラフティアが約4,740億円で続き、以下は2,000億円前後に4社、最小の四電工が約1,059億円だ。
② この5年で9社そろって増収。再生可能エネルギー・データセンター・設備更新などの旺盛な工事需要を背景に、各社が売上を伸ばした。関電工・がんでんは5年で1,000億円超の増収だ。
③ 増収だけでなく増益。営業利益率も軒並み改善し、関電工6.2→11.2%、きんでん6.5→12.0%、中電工5.5→11.5%と、5期でほぼ倍した会社が並ぶ。規模の拡大と収益性の改善が同時に進んでいる。
④ 住友電設は2026年3月に上場廃止。大和ハウス工業によるTOBで完全子会社化され、連結の最終開示は2025年3月期。そのため9社を共通で比較できる最新期は2025年3月期とし、2026年3月期は継続8社で示す。

1. 売上規模:きんでん・関電工が突出
まず売上の大きさを見る。図1は、9社を共通で比較できる最新期=2025年3月期の連結売上高を並べたものだ。トップはきんでんの7,051億円、僅差で関電工が6,719億円と、この2社が7,000億円前後で頭ひとつ抜けている。関電工は関東圏の電力・鉄道・ビル、きんでんは関西電力系で全国に展開しており、いずれも売上のスケールが大きい。
3位はクラフティア(旧・九電工)の約4,740億円。ここまでが4,000億円超のグループで、以下はトーエネック・ユアテック・中電工・日本電設工業・住友電設が2,000億円台に密集する。最小は四電工の約1,059億円で、トップのきんでんとは約7倍の開きがある。各社は地域電力会社の系列や特定分野(鉄道・プラント・通信)に強みを持ち、規模は営業エリアの広さをほぼ反映している。
連結売上高(2025年3月期)
連結売上高(2025年3月期)
連結売上高(2025年3月期)
2. この5年で9社そろって増収
次に推移を見る。2022年3月期から2025年3月期にかけて、9社すべてが売上を伸ばした。けん引したのは、再生可能エネルギー関連工事、データセンターや半導体工場などの大型設備投資、そして老朽インフラの更新需要だ。電気設備工事は景気変動を受けつつも、脱炭素とデジタル化という構造的な追い風を受けている。
伸び幅が大きいのは上位2社で、関電工は2022年3月期の約4,956億円から2025年3月期に約6,719億円へ、きんでんも約5,668億円から約7,051億円へと、いずれも5年弱で1,000億円超の増収だ。クラフティアも2024年3月期に大きく伸び、4,000億円台後半に乗せた。2026年3月期まで開示している8社では、関電工がさらに約7,420億円、きんでんが約7,507億円と伸長を続けている。
一方で、単純な右肩上がりばかりではない。四電工は2026年3月期に減収(約1,059億円→約994億円)となり、ユアテックも同期に微減した。中電工は2023年3月期に、トーエネックは同じく2023年3月期に、それぞれ減損などで一時的に純損失を計上している。規模が伸びる局面でも、年度ごとの工事の端境期や採算の悪い案件で、単年の数字は上下することがある。

3. 増収だけでなく「増益」-収益性も改善
売上が伸びても、利益率が下がっていては「安く受けて数をこなしているだけ」ということになりかねない。そこで見たいのが営業利益率(本業の儲けが売上の何%か)だ。図2は、2022年3月期と各社の最新期を線で結んだもの。ひと目でわかるとおり、9社すべてで右肩上がり-増収と増益が同時に進んでいる。
特に改善が大きいのは、関電工が6.2→11.2%、きんでんが6.5→12.0%、中電工が5.5→11.5%。いずれも5期でほぼ倍の水準になった。日本電設工業も4.3→10.3%と大きく伸びている。背景には、工事の選別(採算重視の受注)、資材高の価格転嫁、そして人手不足を映した工事単価の上昇がある。建設・設備業界全体で、量から質への転換が進んでいることの表れだ。
もともと利益率の高かったクラフティアは8.8→11.5%とトップ級を維持。住友電設は最新の2025年3月期で8.8%と安定して高い。相対的に伸びが穏やかなのはトーエネック(6.4→7.9%)だが、それでも改善方向にある。規模の順位(図1)と利益率の順位(図2)は必ずしも一致しない。売上は中位でも利益率は上位、という会社があるのがこの業界の面白いところだ。
4. 就活・転職でどう読むか
規模と収益性は分けて見る
売上が大きい会社は、扱う案件も大きく、教育・福利厚生の体力もある傾向がある。一方、利益率が高い会社は、一人ひとりの生み出す付加価値が高いとも読める。規模で選ぶか、収益性で選ぶかは目的次第だ。両方を一枚で見られるよう、下の表に売上高・営業利益率・従業員数・1人あたり売上高を整理した。
| 会社 | 連結売上高 (2025年3月期) | 連結売上高 (2026年3月期) | 営業利益率 (最新期) | 連結従業員数 | 1人あたり 売上高(最新) |
|---|---|---|---|---|---|
| きんでん | 7,051億円 | 7,507億円 | 12% 2026年3月期 | 15,440人 | 約4,862万円 |
| 関電工 | 6,719億円 | 7,420億円 | 11.2% 2026年3月期 | 10,850人 | 約6,839万円 |
| クラフティア | 4,740億円 | 4,761億円 | 11.5% 2026年3月期 | 11,122人 | 約4,281万円 |
| トーエネック | 2,710億円 | 2,725億円 | 7.9% 2026年3月期 | 6,487人 | 約4,200万円 |
| ユアテック | 2,572億円 | 2,523億円 | 7.15% 2026年3月期 | 5,818人 | 約4,336万円 |
| 中電工 | 2,219億円 | 2,278億円 | 11.5% 2026年3月期 | 4,697人 | 約4,851万円 |
| 日本電設工業 | 2,169億円 | 2,292億円 | 10.3% 2026年3月期 | 4,645人 | 約4,934万円 |
| 住友電設 | 2,036億円 | 非公表 (上場廃止) | 8.8% 2025年3月期 | 3,547人 | 約5,741万円 |
| 四電工 | 1,059億円 | 994億円 | 8.9% 2026年3月期 | 2,693人 | 約3,693万円 |
『1人あたり売上高』で効率を見る
従業員1人あたりの売上高を見ると、関電工が約6,839万円と最も高く、住友電設が約5,741万円で続く。最小の四電工は約3,693万円で、売上規模の順位とは並び方が変わる。1人あたりが高い会社は、大型案件や施工管理中心の体制で効率よく売上を上げている可能性がある。ただしこれは売上ベースの効率であり、給与や働きやすさに直結する数字ではない点には注意したい。
『増収増益が続いているか』を確認する
会社選びでは、単年の売上より数年の推移とその中身を見たい。増収でも利益率が下がっていれば無理な受注の可能性があり、逆に増収増益が続いていれば、採算を保ちながら成長できている健全なサインだ。9社はいずれも直近で増収増益基調にあるが、その持続性は、公表されている中期経営計画や受注残(受注残高)とあわせて見るとより確かになる。
5. このデータの限界
以下は本稿が示していないこと
① 売上高・利益率はすべて連結ベースで、単体(個別)とは異なる。サブコンは子会社を多く抱える会社もあり、連結と単体で規模感が変わる。本稿は横並び比較のため連結にそろえた。
② 収益認識会計基準の適用(2022年3月期〜)で、それ以前と売上高に段差がある。本稿は新基準がそろう2022年3月期以降で比較しており、それより前の数字とは単純に接続できない。
③ 住友電設は2026年3月に上場廃止(大和ハウス工業のTOB)。連結の最終開示は2025年3月期で、2026年3月期は非公表。9社共通の最新期は2025年3月期とした。
④ 受注高(受注残高)は連結で非公表の会社が多い。将来の売上の先行指標として重要だが、9社を同じ基準で横並び比較できないため本稿では扱っていない。
⑤ 1人あたり売上高の従業員数は、集計時点・範囲が会社でそろっていない。住友電設は2025年3月期、他は最新(多くは2026年3月期)の連結従業員数を用いており、あくまで目安だ。
⑥ 売上・利益率は会社の規模や効率を示すが、給与・働きやすさを直接示すものではない。年収や休日など個人の待遇は別の指標で見る必要がある。
⑦ 転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。数値はすべて各社の有価証券報告書・決算短信・統合報告書(連結)にもとづく。
出典
会計基準・制度:企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準」(2022年3月期から原則適用)。各社の売上高・営業利益・従業員数は、下記各社の有価証券報告書・決算短信・統合報告書(いずれも連結、2026年7月26日取得)。
各社IR(有価証券報告書・決算短信・統合報告書):関電工、きんでん、クラフティア、トーエネック、住友電設、中電工、ユアテック、日本電設工業、四電工。住友電設は大和ハウス工業によるTOBで2026年3月に上場廃止となったため、連結の最終開示(2025年3月期)を用いた。億円表示は百万円を100で除して四捨五入したもの。年度・集計基準は会社により異なる。




