📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら

図面のトランスには「75kVA」、契約書には「50kW」――同じ“電気の大きさ”なのに、なぜ単位が違うの?を今日で解決します。キーワードはkW・kVA・kvar力率。容量計算やトランス選定、ぜんぶの入口になる回です。

kWとkVAの違いは「ビールジョッキ」

ペンタ

ペンタ(新人)
はりたさん、図面のトランスに「75kVA」って書いてあるんですけど、kWとkVAって何が違うんですか?どっちも電気の大きさですよね…?
はりた

はりた(先輩)
これはね、ビールジョッキで考えると一発だよ。図①を見て。ジョッキ全体がkVA、中身のビールがkW、上の泡がkvarなんだ。
図1 ビールジョッキの例え(アニメ):ジョッキ全体がkVA、ビールがkW、泡がkvar。泡が減ると力率が上がる
図① 電気の容量はビールジョッキ ― 泡(kvar)が減るほど力率アップ
  • kW(有効電力)=ビール。実際に仕事をする電力(光る・回る・温める)。
  • kvar(無効電力)=泡。仕事はしないけど、モーターやトランスが磁界を作るために行ったり来たりする電力。
  • kVA(皮相電力)=ジョッキ全体。見かけの大きさ。電線やトランスはこのサイズに耐える必要がある。
ペンタ

ペンタ(新人)
じゃあ「力率」っていうのは…ビールの割合ってことですか?
はりた

はりた(先輩)
大正解!力率=kW÷kVA=ジョッキに対するビールの割合。泡だらけ(力率が低い)だと、同じ仕事をするのに大きなジョッキ=大きなトランスや太い電線が必要になってムダなんだ。数学っぽく描くと図②の「パワー三角形」になる。
図2 パワー三角形(アニメ):kWとkvarの直角三角形の斜辺がkVA。角度が小さいほど力率が良い
図② パワー三角形 ― kvarが減ると三角形がぺたんこになり、kVAがkWに近づく

kWとkWh ―「勢い」と「積み重ね」

もうひとつ似た単位、kWh(キロワットアワー)も一緒に整理しましょう。kW=いま使っている勢い(クルマの速度)kWh=使った積み重ね(走った距離)です。1kWのヒーターを3時間つけると 1×3=3kWh。電気代の請求は、このkWhに対して来ます。

図面ではこう使い分ける

  • トランス・発電機・UPSkVA表記。コイルに流せる電流(=見かけの大きさ)で能力が決まるから。
  • 照明・ヒーター・機器の消費電力、契約電力kW表記。実際にする仕事の量だから。
  • この2つをつなぐのが力率:kVA=kW÷力率。

💼 この回が実務でこう生きる

  • トランス容量の選定・チェックの会話についていける(kW÷力率=kVA)。
  • 受変電図の「進相コンデンサ」の存在理由が分かる(泡を減らす装置)。
  • 契約電力・電気料金の力率割引の話が理解できる。

📋 実務活用事例|力率を改善したら、トランスに余裕が生まれた

ケース:工場の負荷は80kW、力率は0.80。トランスは何kVA必要?

① 必要なkVA=kW÷力率=80÷0.80=100kVA → 100kVAトランスがほぼ満杯。

② 進相コンデンサで力率を0.95に改善すると → 80÷0.95≒84kVA

③ 同じ100kVAトランスに約16kVAの余裕が生まれ、設備の増設に対応できる。しかも高圧契約では力率が良いと基本料金が割引(85%を基準に増減)される制度もある。

結論:泡(kvar)を減らす=トランスにも電気代にも効く。「力率改善」が設備投資として成立する理由が、この計算で説明できます。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。

Q.VAもWも、計算は「ボルト×アンペア」ですよね?単位として何が違うんですか?
→ 鋭い!次元(計算のもと)は同じです。同じだからこそ、「見かけ(VA)」と「実際の仕事(W)」を取り違えないように、わざわざ単位を使い分けています。

Q.泡(無効電力)にも電気代はかかるんですか?
→ 家庭の電気代は有効電力量(kWh)に課金されるので、直接はかかりません。高圧契約では力率によって基本料金が増減します(本文の割引の話)。

🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう

Q.泡(kvar)って、何のためにあるんですか?ただのムダ?

A.完全なムダではないんだ。モーターやトランスは磁界を作らないと動けない。その磁界を作るために電源と行ったり来たりしているのが無効電力。仕事はしないけど磁界づくりに必要な“準備運動”みたいなものだよ。

Q.力率はどうやって良くするんですか?

A.代表選手は進相コンデンサ。コイル(遅れ)と逆の性質(進み)を持つコンデンサを並列に入れて泡を打ち消すんだ。受変電設備の図面に必ず出てくるよ。詳しくは受変電の回で!

Q.kWとkWh、どっちで電気代が決まるんですか?

A.従量料金はkWh(使った量)、基本料金はkW・kVA(契約の大きさ)で決まるのが基本。だから「ピークの勢いを下げる(デマンド管理)」と「総量を減らす(省エネ)」は別の対策になるんだ。

💬 はりたから新人さんへ:まずは「トランスはkVA、機器はkW、つなぐのが力率」。この1行だけ持ち帰れば、容量の打合せで迷子になりません。√3入りの三相計算は、サイズ選定の回でゆっくりやります。

⚠️ ここだけ注意

kvar(無効電力)は「悪者」ではありません。磁界を作るために必要な電力です。問題なのは「多すぎる」こと。だから“ゼロにする”ではなく“ちょうどよく減らす”のが力率改善です(進みすぎもNG)。

まとめ

  • kW=ビール(実際の仕事)、kvar=泡(磁界づくり)、kVA=ジョッキ全体(見かけ)(図①)。
  • 力率=kW÷kVA。パワー三角形で kVA²=kW²+kvar²(図②)。
  • kW=勢い、kWh=積み重ね。電気代の従量分はkWh。
  • トランス・発電機はkVA表記、機器・契約はkW表記。
  • 80kW・力率0.8→100kVA。力率0.95に改善→84kVAで余裕が生まれる。

▶ 次回・第4回(第2部:図面を読めるようになる)

電気設備図面の種類 ― 配置図・単線結線図・系統図・幹線図
ここから第2部。1つの建物が、それぞれの図面でどう表されるのかを俯瞰します。