【新人講座 第13回】電圧降下の計算 ― 遠くへ送るほど電圧は痩せる

こんにちは、HARITAの設計室です。第4部の3回目は電圧降下。前回「許容電流で太さを決めたら検算する」と言った、その検算の正体です。合言葉は——遠くへ送るほど、電圧は痩せる。
ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- 盤で105Vなら、末端の機器でも105V――これは正しいでしょうか。
- 電圧降下を決める3つの要素を、比例・反比例まで言えますか。
- 下がりすぎていたとき、打てる手を3つ挙げられますか。
- 電圧の坂道 ― なぜ末端で電圧が痩せるのか
- 式の分解 ― 距離L・電流I・太さS、どれが効くのか
- 実務での使いどころ ― 外構・屋外灯と早見表
- 素朴なギモン ― 係数35.6の正体と、家庭での電圧降下
- 深掘りQ&A ― 幹線と分岐、電圧を上げる、力率
- 注意ポイント ― こう長・トータル・方式の係数
電圧の“坂道” ― なぜ末端で下がるのか

ペン太
ハリタ- 電線そのものに抵抗があるので、遠くへ送るほど末端の電圧は痩せていく。
- 図1の例では、出発105Vが50m先の末端で101Vまで下がっている。
- 末端で下がると、照明が暗い・モーターのトルクが出ない・精密機器がリセットするという形で表に出る。
式を分解する ― 犯人はL・I・S

| 要素 | 式での位置 | 増えるとどうなる | 効かせる打ち手 |
|---|---|---|---|
| 距離 L | 分子(比例) | 長いほど降下が増える | 盤を負荷の近くへ移す |
| 電流 I | 分子(比例) | 大きいほど降下が増える | 送る電圧を上げて電流を減らす |
| 太さ S | 分母(反比例) | 太いほど降下は小さくなる | 1サイズ上の電線にする |
- 降下は距離Lに比例、電流Iに比例、太さSに反比例。
- 「遠い・大電流・細い」が3つ揃うと危険。典型は敷地の奥の屋外灯、駐車場の遠い盤、仮設の長い延長。
- 計算例では2.0mmで5.8%、5.5sqに太くして3.7%。許容電流ではなく電圧降下が太さを決めた。
💼 実務でこう生きる
- 外構・屋外灯は距離が100mを超えることもある。末端の電圧は式で先読みしておく。
- 打ち手は、太くする・回路を分ける・途中にプルボックスを置いて分岐する。
- ツールや早見表の中身は今日の式そのもの。「この太さで何mまで送れるか」の逆引きができると初期検討が早い。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- 35.6は銅の電気抵抗率から導かれた係数(単相2線式、往復2本分)。
- 単相3線式や三相3線式では係数が変わる。「方式ごとに係数違いの兄弟式がある」と覚える。
- 家庭でも同じ理屈。古い延長コードでドライヤーを使うと暖まるのは、細いコードで電圧が食われて熱になっている状態。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
- 電圧降下は幹線と分岐の両方。変圧器から末端機器までのトータルで機器の動作電圧を守る。
- 実務では幹線に何%・分岐に何%と配分して管理する。幹線で使い切ると分岐で詰む。
- 電圧を上げれば電流は減る。長距離の動力は200V、さらに遠く大きい負荷は400V級という選択肢が出てくる。
- 正式な式には力率とリアクタンスの項が入り、力率が悪いと降下は大きくなる。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- こう長を「直線距離」で測らない:配線は上がって・曲がって・下りるルートの長さ(こう長)。図面の直線距離より必ず長くなります。
- 幹線と分岐のトータルで見る:どちらか片方だけ計算してOKにしない。末端機器までの合計で判定。
- 方式ごとの係数を混同しない:単相2線・単相3線・三相で式の係数が違う。ツールでも方式の選択を間違えると答えがズレます。
ペン太
ハリタ| 確認する項目 | やりがちな見方 | 正しい見方 |
|---|---|---|
| こう長 | 図面上の直線距離で測る | 上がって・曲がって・下りる実際のルート長で見る |
| 対象範囲 | 幹線か分岐、片方だけで判定する | 変圧器から末端機器までのトータルで判定する |
| 式の係数 | 方式を問わず同じ係数を使う | 単相2線・単相3線・三相で係数が変わる(35.6は単相2線式) |
| 計算の道具 | ツールが出した答えだけを見る | 方式・こう長・電流という入力の意味を分かって使う |
- こう長は図面上の直線距離ではなく、上がって・曲がって・下りる実際のルート長で見る。
- 幹線と分岐のトータルで判定する。どちらか片方だけでOKにしない。
- 方式ごとの係数を混同しない。ツールでも方式の選択を間違えると答えがズレる。
まとめ ― 今日の1枚
電圧は、送った先で痩せる。だから許容電流で決めた太さは、電圧降下で検算してはじめて確定します。
| 回路のタイプ | 太さを決める主役 | 設計での動き |
|---|---|---|
| 短い回路 | 許容電流 | 流れる電流に対して足りる太さを選ぶ |
| 長い回路 | 電圧降下 | 許容電流で選んだあと、降下で検算して太くする |
| 外構・屋外灯(100m超) | 電圧降下 | 太くする・回路を分ける・途中で分岐する |
| 遠くの大きい負荷 | 送る電圧 | 200Vや400V級を選び、電流そのものを減らす |
坂道のしくみ
- 電線にも抵抗がある。遠くへ送るほど電圧は痩せる(坂道のイメージ)。
- 末端で下がると、照明・モーター・精密機器の動きに響く。
式の読み方
- 降下は距離L×電流Iに比例、太さSに反比例。「遠い・大電流・細い」の3点セットに注意。
- 係数は配電方式で変わる。35.6は単相2線式のもの。
対策と基準
- 対策は①近くに盤 ②電圧を上げる ③太くする。長い回路は電圧降下がサイズを決める。
- %の許容値は法規で決まっている(第5部へ)。計算は式でもツールでも、意味が分かってこそ。
図面で「やけに太い」と感じた1本には、たいてい距離という理由があります。式の意味が分かると、その太さは納得に変わります。
次回・第14回は回路の守り神を選ぶ——ブレーカー(遮断器)選定のきほん。「落ちる仕組み」と定格の読み方を図解します。お楽しみに!
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