第13回 電圧降下の計算の全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。第4部の3回目は電圧降下前回許容電流で太さを決めたら検算する」と言った、その検算の正体です。合言葉は——遠くへ送るほど、電圧は痩せる

ペンタ
先輩、「電圧降下」って言葉はよく聞くんですけど…電圧って勝手に下がるものなんですか?盤で105Vなら、どこでも105Vじゃ…
はりた
残念ながら痩せていくんだな、これが。犯人は第1回で学んだ抵抗R。実は電線そのものにも抵抗がある。細くて長い電線ほど抵抗が大きくて、電流が通ると途中で電圧が食われていく。図で見よう。
ペン太ペン太
許容電流でサイズを選んだら、それで設計完了ですよね?
ハリタハリタ
長い回路は電圧降下がサイズを決めます。50m先で105Vが101Vまで痩せる例もあります。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 盤で105Vなら、末端の機器でも105V――これは正しいでしょうか。
  • 電圧降下を決める3つの要素を、比例・反比例まで言えますか。
  • 下がりすぎていたとき、打てる手を3つ挙げられますか。

電圧の“坂道” ― なぜ末端で下がるのか

トピック1:電圧の坂道 ― なぜ末端で下がるのか
分電盤から末端機器まで距離とともに電圧が下がる坂道グラフ
【図1】電圧の坂道。出発105Vでも、50m先の末端では101Vに痩せている(例)
ペンタ
V=IRの、Rが電線側にもあるから…電線で電圧を消費しちゃうってことか。で、末端が101Vになると何がまずいんですか?
はりた
照明が暗い、モーターのトルクが出ない、精密機器がリセットする——機器は決められた電圧範囲で動く前提だからね。だから設計では「降下の割合(%)をこの範囲に収める」というルールがあって、その数値基準は法規の世界(第5部でやるよ)。今日は%を計算で先読みする方法を身につけよう。
ペン太ペン太
電圧降下って、結局何で決まるんですか?
ハリタハリタ
距離と電流に比例し、断面積に反比例。「遠い・大電流・細い」の組み合わせが危険です。
ここまでのポイント
  • 電線そのものに抵抗があるので、遠くへ送るほど末端の電圧は痩せていく。
  • 図1の例では、出発105Vが50m先の末端で101Vまで下がっている。
  • 末端で下がると、照明が暗い・モーターのトルクが出ない・精密機器がリセットするという形で表に出る。

式を分解する ― 犯人はL・I・S

トピック2:式を分解する ― 犯人はL・I・S
電圧降下の簡略式の分解と計算例、対策の3方向
【図2】式の分解。降下を決めるのは距離L×電流I÷太さS。計算例と対策つき
ペンタ
式を見ると…距離に比例、電流に比例、太さに反比例。じゃあ「遠い・大電流・細い」が3つ揃ったら最悪ですね。
はりた
その3点セットが揃う典型が「敷地の奥の屋外灯」「駐車場の遠い盤」「仮設の長い延長」。対策も式から読める——①盤を近くに置く(L減)②電圧を上げる(I減)③太くする(S増)。前回のサイズ選定で許容電流はOKでも、距離が長いと電圧降下でサイズが決まり直すことがある。だから「検算」なんだ。
ペンタ
計算例だと2.0mmで5.8%も下がって、5.5sqに太くしたら3.7%…。許容電流じゃなくて電圧降下でサイズが決まった、ってことですね!
はりた
そう、それが今日いちばんの学び。短い回路は許容電流で、長い回路は電圧降下でサイズが決まる——この感覚があれば、図面の「やけに太い配線」の理由が読めるようになるよ。
要素 式での位置 増えるとどうなる 効かせる打ち手
距離 L 分子(比例) 長いほど降下が増える 盤を負荷の近くへ移す
電流 I 分子(比例) 大きいほど降下が増える 送る電圧を上げて電流を減らす
太さ S 分母(反比例) 太いほど降下は小さくなる 1サイズ上の電線にする
ここまでのポイント
  • 降下は距離Lに比例、電流Iに比例、太さSに反比例。
  • 「遠い・大電流・細い」が3つ揃うと危険。典型は敷地の奥の屋外灯、駐車場の遠い盤、仮設の長い延長。
  • 計算例では2.0mmで5.8%、5.5sqに太くして3.7%。許容電流ではなく電圧降下が太さを決めた。


💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:外構・屋外灯の設計
敷地外周の屋外灯は距離が100mを超えることも。末端の照明器具の電圧を式で先読みし、必要なら太くする・回路を分ける・途中にプルボックスを置いて分岐する。
→ 竣工後の「奥の街灯だけ暗い」クレームは、設計段階の1回の計算で防げます。
📋 実務活用事例:計算ツールと早見表の使いこなし
実務では計算ツールや早見表で一気に確認します。ツールの中身は今日の式そのもの。「この太さで何mまで送れるか」の逆引きができると、ルート検討の初期段階でサイズの当たりが付けられます。
ここまでのポイント
  • 外構・屋外灯は距離が100mを超えることもある。末端の電圧は式で先読みしておく。
  • 打ち手は、太くする・回路を分ける・途中にプルボックスを置いて分岐する。
  • ツールや早見表の中身は今日の式そのもの。「この太さで何mまで送れるか」の逆引きができると初期検討が早い。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 35.6っていう数字はどこから来たの?
銅の電気抵抗率から導かれた係数です(単相2線式の場合。往復2本分の抵抗×銅の抵抗率を計算しやすくまとめたもの)。配電方式が変われば電流の流れ方が変わるので、単相3線式三相3線式では係数が変わります。「方式ごとに係数違いの兄弟式がある」と覚えればOKです。
🐣 電圧降下って、家のコンセントでも起きてるの?
起きています。ただし住宅は距離が短いので通常は気になりません。体感できる例は、古い延長コードでドライヤーを使うと少し暖まる——あれは細いコードの抵抗で電圧が食われ、熱になっている状態。長い・細い・大電流の3点セットは家庭でも同じ理屈です。
ここまでのポイント
  • 35.6は銅の電気抵抗率から導かれた係数(単相2線式、往復2本分)。
  • 単相3線式や三相3線式では係数が変わる。「方式ごとに係数違いの兄弟式がある」と覚える。
  • 家庭でも同じ理屈。古い延長コードでドライヤーを使うと暖まるのは、細いコードで電圧が食われて熱になっている状態。


🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話でもっと分かる
🔎 「電圧降下は幹線と分岐、どっちで見るんですか?」と聞いてみた
はりた「両方。変圧器から末端機器までのトータルで機器の動作電圧を守る必要がある。実務では幹線に何%・分岐に何%と配分して管理するのが定石。幹線で使い切ると分岐で詰むから、配分のバランス感覚が設計の腕の見せどころだよ」
🔎 「太くする以外に、電圧を上げるってどういうことですか?」と聞いてみた
はりた「同じ電力なら電圧を倍にすれば電流は半分(P=VI)。電流が半分なら降下も半分。だから長距離の動力は200V、さらに遠くて大きい負荷は400V級——という選択肢が出てくる。第8回の“運ぶときは高圧”と同じ物流ルールの、建物内バージョンだね」
🔎 「力率は電圧降下に関係しますか?」と聞いてみた
はりた「する。正確な式には力率とリアクタンスの項が入っていて、力率が悪いと降下は大きくなる。今日の簡略式は“抵抗だけ”のやさしい版。実務のツールは正式な式で計算してるから、細かい案件はツールに任せて、君は入力の意味を分かっていればいい」
ここまでのポイント
  • 電圧降下は幹線と分岐の両方。変圧器から末端機器までのトータルで機器の動作電圧を守る。
  • 実務では幹線に何%・分岐に何%と配分して管理する。幹線で使い切ると分岐で詰む。
  • 電圧を上げれば電流は減る。長距離の動力は200V、さらに遠く大きい負荷は400V級という選択肢が出てくる。
  • 正式な式には力率とリアクタンスの項が入り、力率が悪いと降下は大きくなる。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • こう長を「直線距離」で測らない:配線は上がって・曲がって・下りるルートの長さ(こう長)。図面の直線距離より必ず長くなります。
  • 幹線と分岐のトータルで見る:どちらか片方だけ計算してOKにしない。末端機器までの合計で判定。
  • 方式ごとの係数を混同しない:単相2線・単相3線・三相で式の係数が違う。ツールでも方式の選択を間違えると答えがズレます。
ペン太ペン太
下がりすぎていたら、どう対策すればいいですか?
ハリタハリタ
盤を近くに、電圧を上げる、電線を太くするの3つ。幹線と分岐の合計で末端を評価しましょう。
確認する項目 やりがちな見方 正しい見方
こう長 図面上の直線距離で測る 上がって・曲がって・下りる実際のルート長で見る
対象範囲 幹線か分岐、片方だけで判定する 変圧器から末端機器までのトータルで判定する
式の係数 方式を問わず同じ係数を使う 単相2線・単相3線・三相で係数が変わる(35.6は単相2線式)
計算の道具 ツールが出した答えだけを見る 方式・こう長・電流という入力の意味を分かって使う
ここまでのポイント
  • こう長は図面上の直線距離ではなく、上がって・曲がって・下りる実際のルート長で見る。
  • 幹線と分岐のトータルで判定する。どちらか片方だけでOKにしない。
  • 方式ごとの係数を混同しない。ツールでも方式の選択を間違えると答えがズレる。


まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

電圧は、送った先で痩せる。だから許容電流で決めた太さは、電圧降下で検算してはじめて確定します。

回路のタイプ 太さを決める主役 設計での動き
短い回路 許容電流 流れる電流に対して足りる太さを選ぶ
長い回路 電圧降下 許容電流で選んだあと、降下で検算して太くする
外構・屋外灯(100m超) 電圧降下 太くする・回路を分ける・途中で分岐する
遠くの大きい負荷 送る電圧 200Vや400V級を選び、電流そのものを減らす

坂道のしくみ

  • 電線にも抵抗がある。遠くへ送るほど電圧は痩せる(坂道のイメージ)。
  • 末端で下がると、照明・モーター・精密機器の動きに響く。

式の読み方

  • 降下は距離L×電流Iに比例、太さSに反比例。「遠い・大電流・細い」の3点セットに注意。
  • 係数は配電方式で変わる。35.6は単相2線式のもの。

対策と基準

  • 対策は①近くに盤 ②電圧を上げる ③太くする。長い回路は電圧降下がサイズを決める。
  • %の許容値は法規で決まっている(第5部へ)。計算は式でもツールでも、意味が分かってこそ。

図面で「やけに太い」と感じた1本には、たいてい距離という理由があります。式の意味が分かると、その太さは納得に変わります。

次回・第14回は回路の守り神を選ぶ——ブレーカー(遮断器)選定のきほん。「落ちる仕組み」と定格の読み方を図解します。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。