【電気工事業法の解説 第3回】主任電気工事士|誰を置き、何をさせるのか
主任電気工事士は一般用電気工作物等を扱う営業所ごとに置く。なれるのは第一種電気工事士か、第二種電気工事士の免状交付後に3年以上の実務経験がある者。数えはじめは免状の交付日である。置いたあとに何をさせる義務があるのかまで整理する。
誰が置かなければならないのか
ひとことで言うと:分かれ目は建設業許可ではなく、一般用電気工作物等を扱うかどうか。扱うなら、営業所ごとに1人要る。
登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者は、一般用電気工作物等の工事を扱うため、営業所ごとに主任電気工事士を置く義務がある(法第19条)。通知電気工事業者とみなし通知電気工事業者は自家用電気工作物だけを扱うので、この義務はない。
注意したいのは「営業所ごと」という点である。本社に1人置けば足りる、という制度ではない。営業所を3か所持っているなら3人必要で、1人が2つの営業所を兼ねることは、常時その営業所で作業の管理ができない以上、原則として認められない。
第1回・第2回で触れたとおり、2023年3月以降は50kW未満の太陽光も一般用電気工作物等である。自家用だけのつもりで通知を選んでいた事業者が野立て太陽光を受注すると、区分が変わり、主任電気工事士の設置義務も生じる。
なれるのは2通りだけ
第一種電気工事士であれば、免状を持っている時点で主任電気工事士になれる。追加の実務経験は求められない。
第二種電気工事士の場合は、免状の交付を受けた後に電気工事に関し3年以上の実務経験が必要になる。ここが最も間違えられる部分で、試験に合格した日でも、会社に入った日でもなく、免状の交付日が起点である。免状を取る前に何年現場に出ていても、その期間は3年に算入されない。
実務経験は前職の分も使えるが、証明は前の勤務先に実務経験証明書を書いてもらうことになる。相手のある書類なので、登録申請のスケジュールを引くときは、ここに数週間を見込んでおきたい。
あわせて、申請では主任電気工事士本人の誓約書と、主任電気工事士が申請者の従業員であることを示す書面が求められる(施行規則第2条第2項)。登録電気工事業者本人(法人ならいずれかの役員)が第一種電気工事士か、3年以上の実務経験がある第二種電気工事士で、自ら主としてその営業所の業務に従事するなら、その営業所には別に主任電気工事士を置く必要はない(法第19条第2項)。
置いたあと、何をさせる義務があるのか
法第19条が「置け」と言い、法第20条が「何をするのか」を書いている。この2つはセットで読む必要がある。
第20条は、主任電気工事士に対して一般用電気工事の作業の管理の職務を誠実に行うことを求めている。そのうえで、作業に従事する者に対しては、主任電気工事士が職務を行うため必要があると認めてする指示に従わなければならない、という義務を課している。
つまり法律は、指示を出す人と、それに従う人という関係を営業所の中につくることを求めている。名前だけを借りて登録し、その人が実際には別の現場に出ずっぱりで作業の中身を見ていない、という状態は、形式的には選任されていても第20条の求める姿ではない。
主任電気工事士が欠けたときなどに、2週間以内に後任を選任しなかった場合の罰則は、法第39条により3万円以下の罰金である(第19条第3項)。金額としては大きくないが、この規定が想定しているのは罰金で抑止することではなく、営業所ごとに技術的な判断ができる人を確実に置くことのほうである。
兼任はできない ── 営業所ごとに1人
ひとことで言うと:主任電気工事士は、一般用電気工事を扱う営業所ごとに置く。ひとりが複数の営業所を兼ねることはできない。
第19条は「一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに」主任電気工事士を置くことを求めている。営業所が3か所あれば、3人の主任電気工事士が要る。人数の手当てを見誤ると、営業所を増やした時点で要件を欠くことになる。
あわせて押さえておきたいのが、自社の従業員から選任するという点である。他社に在籍している人を名前だけ借りる形は認められない。営業所を新設するときは、資格者の採用または社内での育成を、開設の日程から逆算して進めることになる。
なお、一般用電気工事を扱わず自家用電気工作物の工事だけを行う営業所には、主任電気工事士の設置義務はない。この場合は第一種電気工事士や認定電気工事従事者などの資格者が作業に従事する形になる。
3年の実務経験は、何を数えるのか
ひとことで言うと:第二種電気工事士で主任電気工事士になるには3年の実務経験が要る。数えられるのは、免状を受けたあとの工事の作業である。
第一種電気工事士であれば実務経験の要件はない。第二種電気工事士の場合は、3年以上の実務経験が求められる。ここでつまずきやすいのが、何を「実務経験」として数えるかである。
| 経験の内容 | 3年に数えるか | 補足 |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物等の電気工事 | 数える | 第二種電気工事士免状の交付後に、登録または通知のある電気工事業者に勤めて施工したもの(県の手引きの例) |
| 自家用電気工作物(最大電力500kW未満)の600V以下の工事 | 数える | 認定電気工事従事者の認定証を受けて行ったもの(県の手引きの例) |
| 自家用電気工作物(最大電力500kW以上)・発電所・変電所の工事 | 数える | 電気主任技術者の指導・監督のもとでの作業(県の手引きの例) |
| 免状の交付を受ける前の作業 | 数えない | 法第19条第1項が「交付を受けた後」の経験と決めている |
| 設計・検査・監督だけで、自ら施工しない業務 | 数えない例が多い | 対象外とする手引きがある。申請先で確かめる |
| 軽微な工事・特殊電気工事(ネオン・非常用予備発電装置) | 数えない例が多い | 対象外とする手引きがある。申請先で確かめる |
実務経験は証明書で申請することになる。前職の分は、当時の勤務先に証明を求める必要がある。
申請では実務経験証明書を添えることになる。転職を経ている場合、以前の勤務先に証明を依頼する必要があるため、時間がかかることがある。主任電気工事士の交代を予定しているなら、証明の手配を早めに始めておきたい。
選任した人が変わったときの届出
ひとことで言うと:主任電気工事士の氏名は登録事項。交代したら変更の届出が要る。
主任電気工事士の氏名は、登録申請書の記載事項であり、登録簿にも載る。したがって、退職や配置換えで主任電気工事士が変わったときは、変更の届出をしなければならない。届出は変更の日から30日以内で(法第10条)、怠ったり虚偽の届出をしたりした場合は、第40条により2万円以下の罰金の対象になる。
現実には、交代そのものより「後任が決まらないまま日が過ぎる」ことのほうが問題になりやすい。法律は、主任電気工事士が欠けたことを知った日から2週間以内に、後任を選任することを求めている(第19条第3項)。選任しなければ、第39条の罰金のほか、第28条により登録の取消しや事業の停止の対象にもなる。後任のめどを立ててから交代の日を決めるのが実務的である。
実務でつまずきやすいところ
制度の側から見れば、主任電気工事士は営業所ごとに置かれた技術的な責任者である。誰が判断したのかを後から追えるようにするための仕組みでもあり、次回の帳簿の話につながっている。
次回
第4回は標識と帳簿を扱う。営業所と施工場所に何を掲示するのか、帳簿に何を書き、なぜ5年間保存するのかという話になる。
一次資料で確認するには
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」── 主任電気工事士に関する様式
- 各都道府県の担当課 ── 実務経験証明書と従業員証明書の書式
- 電気工事士免状の交付日 ── 実務経験の起点になるので、まず免状を確認する
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。手続きの様式・手数料・提出先は自治体や時期によって異なり、法令も改正されます。実際の申請にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
- 神奈川県「電気工事業の法令遵守事項について」
- 福岡県「電気工事業登録について」
- 関東東北産業保安監督部「登録電気工事業者として登録申請を行う場合」
- 愛知県「登録電気工事業者の変更の届出について」
- 経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」(令和5年11月版)


