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幹線サイズの選定方法を解説してほしい!
- 幹線ケーブルサイズの選定方法を知りたい方
- 参考書を読んでみたけどよくわからなかった方
幹線サイズの決定条件

幹線材料の種類と選定ポイント
幹線に使用される材料は、代表的な**CVTケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)**のほか、**バスダクト(母線方式)**もあります。
また、防災設備や非常用電源に使う幹線については、**耐火性能を有するFPTケーブル(耐火電線)**の採用が推奨されます。
主な幹線材料の例

-
CVTケーブル:一般的な動力・照明系統用
-
バスダクト:大電流対応、配線レイアウトがフレキシブル
-
FPTケーブル:耐火性能を備え、火災時でも電源供給を確保
設計時には、供給先の設備の特性や**設置環境(耐熱・耐火の必要性)**に応じて、適切な幹線材料を選定することが重要です。
需要率について
需要率とは|同時使用率の考え方
「需要率(同時使用率)」とは、建物内の電気負荷がどの程度同時に使用されるかを数値で表したものです。
設計上、すべての機器が同時に最大出力で稼働すると仮定した場合、**需要率は1.0(=100%)**になります。
しかし実際には、すべての負荷が常に同時に使われるわけではありません。そこで、実情に応じて需要率を掛けて設計することで、幹線や主開閉器の容量を適正化することができます。
特に次のようなケースでは、需要率の考慮が重要です:
-
ホテルの客室や集合住宅の住戸など、同種の負荷が多数ある場合
→ 負荷数に応じた標準的な需要率を適用可能です。
この考え方により、過大設計を避けてコスト削減しつつ、安全性を確保した電気設備設計が可能になります。



許容電流
許容電流とは|幹線設計の基準値
幹線の許容電流とは、その電線が安全に流せる電流の最大値のことです。
幹線設計では、以下の2つの条件を満たす必要があります:
-
接続される負荷の定格電流の合計以上であること
-
選定する配線用遮断器(ブレーカー)の定格電流以上であること
さらに、負荷の内容によって計算方法が異なります。
🔸**電動機(モーター)**が含まれる場合:
始動電流や同時起動の有無を加味した特別な算出式が必要です。
🔸電動機以外の負荷(照明・コンセント等):
定格電流を合算し、使用環境に応じて補正を行います。
適切な許容電流をもとに幹線サイズを選定することで、電線の過熱や事故を未然に防ぐことができます。



敷設方式
幹線の敷設方式と許容電流の関係
ケーブルの敷設方式によって、電線の許容電流値は大きく異なります。そのため、幹線を設計する際には、実際の敷設方法に応じて適正なサイズを選定する必要があります。
🔽主な敷設方式の例
-
空中暗渠(くうちゅうあんきょ)
-
地中管路(地中埋設)
-
電線管内敷設
-
架空配線
通常、1つの幹線経路に複数の敷設方式が混在することも多く見られます(例:地中管路 → 空中暗渠 など)。
このような場合は、以下のいずれかの方法で条件を決定します:
-
より条件の厳しい敷設方式に合わせて選定する
-
その方式が全体の7割以上を占める場合は、比率の高いほうに合わせて設計する
敷設条件を正確に把握し、適切に対応することで、過熱・絶縁劣化などのリスクを防止できます。


周囲温度
周囲温度と許容電流の関係|低減率に注意
電線の許容電流は、通常**周囲温度30℃**を基準として設定されています。
しかし、以下のような環境では、実際の許容電流は標準値よりも低く見積もる必要があります。
🔽許容電流が低下する主な要因:
-
高温環境(機械室・屋根裏・配電盤内など)
-
多重敷設(ケーブルラック上の密集敷設)
-
換気不良による熱のこもり
このような場合には、温度補正係数(低減率)をかけて調整し、本来の許容電流値よりも低めに設定します。
【例:温度補正係数】
-
周囲温度が40℃ → 係数0.88を乗じて補正
-
周囲温度が50℃ → 係数0.75で補正 など
適切な低減率を用いないと、電線の絶縁劣化や過熱による火災リスクにつながります。使用環境を正確に評価し、設計値を調整することが重要です。

⑥電圧降下
電圧降下とは|幹線サイズ選定時の重要ポイント
電線には抵抗があるため、距離(亘長)が長くなるほど電圧が下がる現象が発生します。これを電圧降下といいます。
例えば、100Vの負荷に対して電圧降下率が2%の場合、末端には98Vしか届かないことになります。
このような電圧低下は、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります:
-
機器が正しく動作しない
-
モーターの始動不良
-
ランプのちらつきや明るさ不足
そのため、内線規程では使用目的に応じて許容される電圧降下率が定められており、それを超えないように幹線サイズ(太さ)を選定する必要があります。
【参考:許容される電圧降下率(例)】
-
幹線:2〜3%以内
-
分岐回路:2%以内
幹線が長距離になる現場では、電圧降下計算を行い、適切な太さのケーブルを選ぶことで、安全かつ効率的な電源供給が可能になります。
電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。


⑦分岐幹線の保護
分岐幹線の保護|遮断器の省略条件とは
幹線から**細い幹線(分岐幹線)を引き出す場合、原則としてその細い側にも過電流遮断器(ブレーカー)**を設置する必要があります。
しかし、次のいずれかの条件を満たす場合には省略可能とされています。
✅ 過電流遮断器を省略できる条件:
-
許容電流IWがIBの55%以上
→ 幹線側遮断器(定格電流IB)の55%以上の許容電流がある場合
→ 分岐幹線の長さ制限なし -
長さ8m以下かつIWがIBの35%以上
→ 分岐幹線が8m以下で、かつその許容電流IWが
幹線側遮断器IBの35%以上ある場合 -
長さ3m以下かつ末端に負荷がない
→ 分岐幹線が3m以下で、負荷を接続しない(=延長・途中接続専用)場合
→ この場合はIWに制限なし
これらの条件は、過電流による事故リスクを最小限に抑えることができるケースに限って、遮断器を省略してもよいとされています。
電気設備設計では、「遮断器の配置は距離と容量のバランスで考える」ことが非常に重要です。
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幹線設備の設計|幹線分岐のケーブルサイズ選定方法について詳しく解説
でも安心して!このあと特に重要な3つのポイントについて、わかりやすく解説していくね✨
許容電流によるサイズの選定手順
幹線サイズの決定条件|許容電流を左右する3つの視点
幹線のサイズ(ケーブルの太さ)を決めるには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。
✅ 1. 負荷の特性を理解しよう(特に電動機かどうか)

-
電動機負荷(モーターなど)の場合は、始動時に大きな電流(始動電流)が流れるため、それを見越した余裕のある許容電流設計が必要です。
-
電動機以外の負荷(照明やコンセントなど)とは扱いが異なります。
✅ 2. 表示単位をkVAで統一しよう(kW → kVA換算)

-
一般的に機器の表示はkW表記ですが、電線の許容電流や変圧器の容量計算ではkVA単位が基準になります。
-
力率(例:0.8)を用いて【kVA = kW ÷ 力率】の式で換算しましょう。
✅ 3. 電源方式を確認しよう(単相・三相・電圧)

-
電源が単相2線式/単相3線式/三相3線式かによって、計算式や必要電流が異なります。
-
100V・200V・400Vなど系統電圧の違いも設計に大きく影響します。
これら3つの視点を踏まえて初めて、幹線サイズ(許容電流)を正しく選定することが可能になります。
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許容電流計算で最も重要なポイントとは?
幹線の許容電流を求める上で最も重要な要素は、負荷に電動機が含まれているかどうかです。
🔶なぜなら…
-
電動機は、起動時に大きな始動電流が流れるため、通常の定格電流よりも多く見積もる必要があります。
-
この始動電流を考慮しないと、実際の運用時に遮断器の誤動作や電線の過熱などのトラブルにつながります。
そのため、設計初期段階で「どのような負荷があるか?」を正確に把握し、余裕を持ったケーブルサイズを選定することが非常に重要です。
電動機を含まない場合|主に電灯回路や厨房負荷など
ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM ←を含まない場合
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IW ≧ IH
IW「幹線の許容電流」はIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」
の合計より大きい若しくは等しい値となります

電動機を含む場合|パターン1

ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM ≦ IH の時 IW ≧ IM+IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より等しい場合
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より小さい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります

電動機を含む場合|パターン2

ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM > IH で IM ≦ 50A の場合
IW ≧ 1.25IM + IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より大きい場合
- 上記かつIM「電動機の定格電流の総和」が50Aと等しい若しくは小さい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」に1.25とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります

電動機を含む場合|パターン3

ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM > IH で IM > 50A の場合
IW ≧ 1.1IM + IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より大きい場合
- 上記かつIM「電動機の定格電流の総和」が50Aより大きい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」に1.1とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります

許容電流によるサイズ選定
- 幹線の許容電流は、負荷電流値の総和以上を持つものを選定します。
- 負荷に電動機が含まれる場合、始動電流を考慮し電動機の負荷電流に係数をかけます
その他の負荷より電動機の定格電流が大きい場合・・・
- 電動機は50Aと小さい若しくは等しい場合1.25倍
- 電動機が50Aを超える場合1.1倍



電圧降下によるサイズの選定方法
電圧降下とは
電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。
電圧降下率の計算手順

電力の供給方法を確認する
高圧受電の場合
ケーブルの亘長を確認する
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 5% |
200m以下 | 6% |
200m超過 | 7% |
もしくは・・・
低圧受電の場合
ケーブルの亘長を確認する
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 4% |
200m以下 | 5% |
200m超過 | 6% |
この % 以下の電圧降下率となるよう計算する
⚙️例1:動力負荷(幹線・3相3線式)
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|3相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
計算値
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):30.8
-
配線長(L):100m
-
電流(I):30A
-
許容降下率(e):3%

計算式


▶ 求められた断面積:15.4 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:22 sq
💡例2:電灯負荷(幹線・単相3線式)
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|単相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):17.8
-
配線長(L):100m
-
電流(I):30A
-
許容降下率(e):3%

計算式


▶ 求められた断面積:8.9 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:14 sq
🔌例3:電灯負荷(分岐・単相2線式)
計算条件
- 受電方式|高圧・低圧共通
- 電源方式|単相2線式
- 計算区間|盤~負荷
- 電 圧|200V
計算値
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):17.8
-
配線長(L):10m
-
電流(I):10A
-
許容降下率(e):3%


▶ 求められた断面積:約0.30 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:2 sq
幹線の種類

大分類 | 中分類 | 電源方式 | 電圧 |
幹線 | 低圧幹線 | 単相2線式 | 100V・200V |
単相3線式 | 200/100V | ||
三相3線式 | 200V・400V | ||
三相4線式 | 400/230V | ||
直流 | 100V | ||
高圧幹線 | 3相3線式 | 3kV・6kV |
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