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幹線サイズの選定方法を解説してほしい!
- 幹線ケーブルサイズの選定方法を知りたい方
- 参考書を読んでみたけどよくわからなかった方
幹線サイズの決定条件
①幹線材料
幹線材料には一般的なCVTケーブルのほかにバスダクトといった方式があります。
また、使用用途に応じで防災用の幹線であれば耐火用のFPTケーブルを選定します。
②需要率
同時使用率とも呼ばれており、負荷がどれだけ同時に稼働されるかの数値でとなります。
設計上での負荷容量をすべて積み上げた場合、需要率[1.0]となります。
例えば、ホテルの客室や住戸など負荷の個数が多い場合は、
客室数に応じて需要率を採用することが可能です。
③許容電流
幹線の許容電流は、負荷の定格電流の合計以上、かつ配線用遮断器の定格電流以上の値となります。この許容電流は電動機と電動機以外で算出方法が異なるため負荷を確認して算出しましょう。
④敷設方式
ケーブルは敷設方式に応じて許容電流が異なるため、幹線の敷設方法に応じて選定するようにしましょう。一般的に敷設方法は複数含まれる場合が多いです。(地中埋設→空中暗渠など)
その場合は条件の悪いほうに合わせる若しくは比率の多いほう(全体亘長の7割を超える場合)に合わせるなど条件を設定しましょう。
- 空中暗渠
- 地中管路
- 電線管
- 架空
⑤周囲温度
ケーブルの許容電流は周囲の標準温度を基準に設定されているため、設定温度以上の急激な周囲温度の上昇や幹線の多重敷設による熱の発生で、ケーブルの許容電流は低下してしまいます。
これを低減率と言い敷設地域(高温になりやすい)、ケーブルラックによる多重敷設などを考慮して係数をかけ本来の許容電流より低く設定して計算する必要があります。
⑥電圧降下
- 幹線は亘長が長くなるほど電圧が低下していきます。
- これを電圧降下と言い、例えば100Vの負荷であれば2%の電圧降下の発生で供給元には98Vの電圧しか流れないことになります。
- この場合、機器が元々もつする能力を十分に発揮できなくなるため内線規程により定められた降下率以内に抑えた幹線サイズの選定が必要となります。
電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。
⑦分岐幹線の保護
幹線から細い幹線を分岐した場合、細い幹線側に過電流遮断器を施設する必要があります。
しかし次の条件の場合過電流遮断器を省略することはできます。
- 分岐した幹線の許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの55%以上の場合(分岐した幹線の長さに制限なし)
- 分岐した幹線の長さが8m以下で、その許容電流IWが、幹線の過電流遮断器の定格電流IBの35%以上の場合
- 分岐した幹線長さが3m以下で、負荷側に幹線を接続しない場合(分岐した幹線の許容電流IWに制限なし)
許容電流によるサイズの選定手順
- 負荷の特性を理解しよう(電動機若しくは電動機以外)←重要
- kVA換算を理解しよう(kW表示 → kVAに変換)
- 電源方式を理解しよう(単相、三相、何ボルト)
幹線の許容電流を求める際最も重要なことが負荷に電動機が含まれるか否かという点です。理由は、電動機の場合始動電流(機器の起動時に流れる大きな電流)を考慮するためその他の負荷よりもケーブルの許容電流を大きく見込む必要があります。これはケーブルサイズに大きく影響してくるため、十分負荷の特性を理解して計算しましょう。
電動機を含まない場合|主に電灯回路や厨房負荷など
ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM ←を含まない場合
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IW ≧ IH
IW「幹線の許容電流」はIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」
の合計より大きい若しくは等しい値となります
つまり
幹線の許容電流は負荷電流より大きい若しくは等しい値のサイズを選定します
電動機を含む場合|パターン1
ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM ≦ IH の時
IW ≧ IM+IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より等しい場合
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より小さい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります
つまり
電動機の負荷電流値がその他の負荷電流値より小さい場合
幹線の許容電流は負荷電流より
大きい若しくは等しい値のサイズを選定します
電動機を含む場合|パターン2
ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM > IH で
IM ≦ 50A の場合
IW ≧ 1.25IM + IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より大きい場合
- 上記かつIM「電動機の定格電流の総和」が50Aと等しい若しくは小さい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」に1.25とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります
つまり
電動機の負荷電流値がその他の負荷電流値より大きいかつ
電動機の負荷電流値が50Aと等しい若しくは小さい場合
IW「幹線の許容電流」は
IM「電動機の定格電流の総和」に
1.25とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」
の合計より大きい若しくは等しい値となる
電動機を含む場合|パターン3
ここで選定に必要な条件として下記を算出します
- 幹線の許容電流:IW
- 電動機の定格電流の総和:IM
- そのほかの負荷の定格電流の総和:IH
IM > IH で
IM > 50A の場合
IW ≧ 1.1IM + IH
- IM「電動機の定格電流の総和」がIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」より大きい場合
- 上記かつIM「電動機の定格電流の総和」が50Aより大きい場合
- IW「幹線の許容電流」はIM「電動機の定格電流の総和」に1.1とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」の合計より大きい若しくは等しい値となります
つまり
電動機の負荷電流値がその他の負荷電流値より大きいかつ
電動機の負荷電流値が50Aより大きい場合
IW「幹線の許容電流」は
IM「電動機の定格電流の総和」に
1.1とIH「そのほかの負荷の定格電流の総和」
の合計より大きい若しくは等しい値となる
まとめ|許容電流によるサイズ選定
- 幹線の許容電流は、負荷電流値の総和以上を持つものを選定します。
- 負荷に電動機が含まれる場合、始動電流を考慮し電動機の負荷電流に係数をかけます
その他の負荷より電動機の定格電流が大きい場合・・・
- 電動機は50Aと小さい若しくは等しい場合1.25倍
- 電動機が50Aを超える場合1.1倍
電圧降下によるサイズの選定方法
電圧降下とは
電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。
電圧降下率の計算手順
電力の供給方法を確認する
高圧受電の場合
ケーブルの亘長を確認する
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 5% |
200m以下 | 6% |
200m超過 | 7% |
もしくは・・・
低圧受電の場合
ケーブルの亘長を確認する
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 4% |
200m以下 | 5% |
200m超過 | 6% |
この % 以下の電圧降下率となるよう計算する
電圧降下の計算例 幹線側|動力負荷【3相3線式】
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|3相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- 計算方式|簡易計算可
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
3相3線の場合 | 30.8 |
ケーブル亘長の実測値 | 幹線による(100mの場合) |
電圧降下率 | 3% |
電流値 | 負荷の電流値【30Aとする】 |
ケーブルの断面積 | 15.4 ≒ 22sq |
電圧降下の計算例 幹線側|電灯負荷【単相3線式】
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|単相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- 計算方式|簡易計算可
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
単相3線の場合 | 17.8 |
ケーブル亘長の実測値 | 幹線による(100mの場合) |
電圧降下率 | 3% |
電流値 | 負荷の電流値【30Aとする】 |
ケーブルの断面積 | 8.9 ≒ 14sq |
電圧降下の計算例 2次側|電灯負荷【単相2線式】
計算条件
- 受電方式|高圧・低圧共通
- 電源方式|単相2線式
- 計算区間|盤~負荷
- 計算方式|簡易計算可
- 電 圧|200V
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
単相3線の場合 | 17.8 |
ケーブル亘長の実測値 | 幹線による(10mの場合) |
電圧降下率 | 3% |
電流値 | 負荷の電流値【10Aとする】 |
ケーブルの断面積 | 1.78 ≒ 2㎜ |
幹線の種類
大分類 | 中分類 | 電源方式 | 電圧 |
幹線 | 低圧幹線 | 単相2線式 | 100V・200V |
単相3線式 | 200/100V | ||
三相3線式 | 200V・400V | ||
三相4線式 | 400/230V | ||
直流 | 100V | ||
高圧幹線 | 3相3線式 | 3kV・6kV |
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