電圧は、落ちるんです
電圧降下の計算方法について教えてほしい!
- 幹線ケーブルサイズの選定方法を知りたい方
- 参考書を読んでみたけどよくわからなかった方
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幹線サイズの決定条件|電圧降下について
電圧降下について
幹線(電源から負荷までの電線)は、距離が長くなるほど電圧が徐々に下がっていきます。これを「電圧降下」と呼びます。
たとえば、100Vの機器を使っている場合、電圧降下が2%発生すると、実際に届くのは98V。わずかな差に思えますが、照明が暗く感じたり、モーターが力不足になったりと、設備に支障をきたす可能性もあるのです。
配線って、太ければいいってことですか?
こうした電圧降下のトラブルを防ぐため、内線規程では幹線の電圧降下を一定の範囲内に収めるよう規定しています。そのため、配線距離や使用する電流をもとに、電線のサイズを適切に選定することが求められます。
電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。
電圧降下のルール、知ってますか?【内線規程より】
内線規程では、低圧配線における電圧降下は、幹線と分岐回路それぞれで標準電圧の2%以下に抑えることと定められています。
ただし、構内の変圧器(二次側)から供給される場合は、幹線部分に限って電圧降下を3%まで認める特例があります。
幹線が60mとかあったら、2%以内に分けるのキツそう…
このように、配線が長くなる場合には、「幹線2%+分岐2%」と分けて考えるのではなく、両者の合計で2%以内(または条件によって3%以内)に抑えればよいという考え方が採用されています。
そして、電圧降下を計算する際の「電線のこう長」とは、単に幹線部分だけの長さではなく、変圧器の二次端子から、照明器具・コンセント・モーターなどの負荷機器までの全長を指します。
🔍 電圧降下率は“必ず2%”じゃない?|柔軟な考え方とは
内線規程では、電圧降下について次のように記載されています。
「供給変圧器の二次側端子または引込線の取付点から、最も遠い負荷までの電線の亘長」
つまり、全体の電圧降下率(トータル)が規定内に収まっていればOKであり、1次側・2次側の振り分けは固定ではないということです。
🔧 こんな割り振りもOK!
たとえば、ケーブルの全長が150mある場合、高圧受電であれば…
-
1次側:4%
-
2次側:2%
が定番の設計例ですが、次のような振り分けも可能です:
-
1次側:5%・2次側:1%
-
1次側:3%・2次側:3%
2次側に余裕があるなら、その分を1次側に回すことでケーブルサイズを抑える工夫もできるのです。
📌 ポイント
-
電圧降下率は「1次側・2次側」ごとに固定ではなく、全体で規定内に収まればOK
-
標準的な目安:1次側3〜5%、2次側1〜3%
-
外灯・長距離・大容量負荷などは例外として個別に計算が必要

🔌電圧降下計算の2つの方法とは?〜用途に応じて使い分けよう〜
電気設備の設計において欠かせない「電圧降下計算」ですが、実はその計算方法には2つの種類があります。
それが「基本計算式(交流式)」と「簡略計算式(直流式)」です。
✅【基本計算式】(交流式)
交流回路で一般的に使われる計算方法で、「力率(cosθ)」を考慮して計算します。
厳密な電圧降下を求める必要がある場面で活躍します。
📌特徴:
-
力率を含めた計算方式
📘使用シーン例:
-
設計事務所、客先の指示による
✅【簡略計算式】(直流式)
力率を無視して、より簡単に電圧降下を求める方法です。
📌特徴:
-
式がシンプルで使いやすい
-
初期検討に便利
📘使用シーン例:
-
設計事務所、客先の指示による
設計での使いどころ:
-
交流方式よりサイズが太くなる場合が多い
- 基本的に計算方式として直流式が採用されるケースが多い
簡略計算式(直流式)による計算方法
供給方式の種類を確認しよう!
📌 まずは“供給方式”の確認から!
電圧降下を計算する際は、まず電源の供給方式を確認することが基本です。
代表的なものとして、**単相3線式(1φ3W)や三相3線式(3φ3W)**などがあり、それぞれで計算方法や使用する係数が異なります。
どの方式で電気が供給されているかによって、電線1本あたりの電流や電圧降下の計算結果が大きく変わってくるため、設計の最初にしっかりチェックしておきましょう。
電圧降下率の計算手順
電圧降下率の計算手順
電圧降下率を求める際には、まず以下の手順に沿って確認を行いましょう。
✅電力の供給方法を確認する
まずは、その建物や設備が高圧受電か低圧受電かを確認しましょう。
🔷 高圧受電の場合

▶ 次に、**ケーブルの亘長(距離)**を確認します。
基準となるのは、**供給変圧器の二次側端子または引込線の取付点から、最も遠い負荷までの距離(m)**です。
この長さに応じて、許容される電圧降下率は次のとおりです:
電線の亘長 | 許容される電圧降下率 |
---|---|
120m以下 | 5%以下 |
200m以下 | 6%以下 |
200m超過 | 7%以下 |
🔶 低圧受電の場合
▶ 同様に、ケーブルの亘長を確認します。
こちらも、変圧器の二次側端子または引込線の取付点から負荷までの距離を基準とします。
電線の亘長 | 許容される電圧降下率 |
---|---|
120m以下 | 4%以下 |
200m以下 | 5%以下 |
200m超過 | 6%以下 |
📊実際の電圧降下計算例で比較してみよう!
電圧降下計算は、負荷の種類や**回路方式(3相/単相)**によって必要なケーブルサイズが大きく変わります。
ここでは、代表的な3つのケースを比較してみましょう。
✅ケーブル選定で失敗しないためのポイント
-
設計段階では**降下率の許容範囲(例:3%以内)**を基準に
-
長さが長い/電流が大きい/動力回路の場合は余裕を持った選定を

⚙️例1:動力負荷(幹線・3相3線式)
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|3相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
計算値
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):30.8
-
配線長(L):100m
-
電流(I):30A
-
許容降下率(e):3%

計算式


▶ 求められた断面積:15.4 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:22 sq
💡例2:電灯負荷(幹線・単相3線式)
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|単相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):17.8
-
配線長(L):100m
-
電流(I):30A
-
許容降下率(e):3%

計算式


▶ 求められた断面積:8.9 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:14 sq
🔌例3:電灯負荷(分岐・単相2線式)
計算条件
- 受電方式|高圧・低圧共通
- 電源方式|単相2線式
- 計算区間|盤~負荷
- 電 圧|200V
計算値
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
-
係数(k):17.8
-
配線長(L):10m
-
電流(I):10A
-
許容降下率(e):3%


▶ 求められた断面積:約0.30 mm²
▶ 選定ケーブルサイズ:2 sq
✨どうすればいいの?【最終的な解決策】
ここまで電圧降下計算の種類や実例を見てきましたが、
結局のところ、一番シンプルで効果的な対策は「適切な太さのケーブルを選ぶこと」です。
❌ 細いケーブルは危険
電気の通り道が細いと、抵抗が大きくなって電圧が下がりやすくなります。
その結果、機器の誤動作や発熱、最悪の場合はトラブルに繋がることも…。
✅ 太いケーブルが安心
電気の流れがスムーズになり、電圧を安定して届けることができます。
コストが多少かかっても、安全性と性能を両立するには「適切な太さ」がカギです!
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まとめ
電圧降下の基本式(直流計算・簡易計算方式)

電圧降下の表

電圧降下(内線規程より)
- 「低圧配線中の電圧降下は、幹線及び分岐回路においてそれぞれ標準電圧の2%以下
とすること。」と定めている。ただし、電気使用場所内の変圧器より供給される場合の幹線の電圧降下は3%とすることができる。」 - 60mを超える場合は、経済性、合理性の観点から、幹線部分と分岐回路の各々の部分について規定するのではなくて合計で電圧降下率を決めてある。すなわち、幹線部分と分岐部分それぞれの割合は任意に決めてよい。
- 電圧降下計算をするときの“電線のこう長”とは、幹線部分のみの長さではなく,変圧器二次端子から負荷(照明器具,コンセント,電動機など)までをいう。
電圧降下率の計算手順
幹線側|動力負荷【3相3線式】
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|3相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- 計算方式|簡易計算可
- e=電圧降下率
- k=係数
- L=ケーブル長さ
- I=電流値
- A=断面積
幹線側|電灯負荷【単相3線式】
計算条件
- 受電方式|高圧受電
- 電源方式|単相3線式
- 計算区間|キュービクル~盤間
- 計算方式|簡易計算可
2次側|電灯負荷【単相2線式】
計算条件
- 受電方式|高圧・低圧共通
- 電源方式|単相2線式
- 計算区間|盤~負荷
- 計算方式|簡易計算可
- 電 圧|200V
電圧降下率の考え方について
高圧の場合
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合 | |
120m以下 | 5% |
200m以下 | 6% |
200m超過 | 7% |
ポイント
- 高圧の場合、電圧降下率が低圧よりも大きくなる(許容範囲が広くなる)
- 変圧器二次側から負荷の末端までを考慮する ←高圧ケーブルは含まれない
低圧の場合
供給変圧器の二次側端子又は引込線取付点から最遠端の負荷に至る間の電線の亘長(m) | 電圧降下(%) |
電気事業者から低圧で電気の供給を受けている場合 | |
120m以下 | 4% |
200m以下 | 5% |
200m超過 | 6% |
ポイント
- 低圧の場合、電圧降下率が高圧よりも小さく(条件が悪くなる)
- 変圧器二次側から負荷の末端までを考慮する ←引込ケーブルも含まれる
高圧受電方式の場合
120m以下 | 3% |
200m以下 | 4% |
200m超過 | 5% |
120m以下 | 2% |
200m以下 | 2% |
200m超過 | 2% |
低圧受電方式の場合
- 受電点~引込開閉器盤
- 引込開閉器盤~分電盤
120m以下 | 2% |
200m以下 | 3% |
200m超過 | 4% |
120m以下 | 2% |
200m以下 | 2% |
200m超過 | 2% |
コスト的に1次側の降下率を上げた方がケーブルサイズを抑えられるため2次側の降下率に余裕がある場合(1%前後)は、余裕分を1次側の計算に割り振ることもできます。
負荷に外灯や容量の大きいもの、ケーブル亘長の長い回路がある場合は、2%に収まっていない可能性があるため、計算を行いましょう。