この記事は、連載「消防設備編」第4回 非常用照明の設置基準 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

火事や停電で明かりが消えた瞬間、真っ暗な廊下や階段で逃げ道を探すのはとても危険です。そのとき自動で点いて足元を照らすのが非常照明(非常用の照明装置)です。付けるかどうかは建築基準法で決まっていて、判定のしかたと、付ける場所、器具と電源の条件がそろっています。この記事では、それを3つの質問に分けて、動く図で順に確かめます。

①建物が対象かは用途・面積・窓の3つで判定、②付けるのは人がいる部屋と外までの通り道、③床を1lx(LEDは2lx)以上で、停電しても30分以上点くこと。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
非常照明 停電したとき自動で点いて、床や通路を照らす照明。法律上は「非常用の照明装置」
誘導灯 出口や逃げる方向を示す緑の表示灯。消防法の設備
特殊建築物 劇場・病院・ホテル・物販店など、人が多く集まる用途の建物
居室 住む・働く・集まるなどのために、継続して使う部屋
無窓の居室 採光に有効な窓が、床面積の1/20未満しかない居室
予備電源 停電したときに非常照明を点ける電池や発電機
lx(ルクス)は床の明るさの単位。1lxは、月明かりより少し明るい程度です。

非常照明の役割 ― 停電しても、逃げ道を真っ暗にしない

ふだんは天井の照明で明るい部屋も、停電すると真っ暗に。非常照明は停電を感じると電池で自動的に点き、床と通路を照らして、人が出口まで歩けるようにします。

非常照明の役割は、停電の瞬間から、人が建物の外に出るまでの間、足元を見えるようにしておくことです。火事で煙が出ていたり、人が大勢いたりすると、暗い中では転んだり、出口を見失ったりします。そこで建築基準法は、人が集まる建物や大きな建物に、非常照明を付けるよう定めています。

そのために、非常照明には3つの力が求められます。

  • すぐ点く:停電したら、人が操作しなくても自動で、すぐに点く
  • しばらく点き続ける:避難が終わるまで、30分以上点いている
  • 熱に負けない:火事の熱の中でも、明るさが落ちにくい
たとえるなら
非常照明は「足元を照らす懐中電灯」、誘導灯は「出口はこっち」の看板です。
停電した映画館を思い浮かべてください。緑の誘導灯が「出口はあっち」と教えてくれても、足元が真っ暗では階段でつまずきます。非常照明は、みんなの足元を一斉に照らす懐中電灯の役です。両方そろって、はじめて安全に逃げられます。
非常照明は建築基準法の設備で、床と通路を照らす役。誘導灯は消防法の設備で、出口の方向を示す役です。
ここまでのポイント
  • 非常照明は、停電時に自動で点いて足元と通路を照らす設備(建築基準法)
  • すぐ点く・30分以上点き続ける・熱に負けない、の3つが求められる
  • 出口の方向を示す誘導灯(消防法)とは別の設備


質問① この建物は対象? ― 用途・面積・窓の3つで判定

用途が特殊建築物か、3階以上で500㎡超または1,000㎡超か、無窓の居室があるか。どれか1つでも当たれば対象です。

非常照明を付けるかどうかは、建築基準法施行令 第126条の4で決まっています。次のどれか1つでも当たれば対象です。

判定 当たる条件
① 用途 特殊建築物(法別表第1(い)欄(1)〜(4)項の用途)
② 面積 階数3以上で延べ面積500㎡超、または延べ面積1,000㎡超
③ 窓 採光上の無窓の居室がある(令第116条の2第1項第一号)
建築基準法施行令 第126条の4。

①の特殊建築物は、次のような用途です。

主な用途
(1) 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
(2) 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
(3) 博物館、美術館、図書館など(学校・体育館などの「学校等」は除く)
(4) 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、バー、遊技場、公衆浴場、飲食店、物品販売業の店舗(10㎡以内を除く)など
建築基準法 別表第1(い)欄。用途があいまいなときは、建築の設計者に確認します。
ひっかけ注意
「小さい店だから対象外」ではありません。
飲食店や物販店は特殊建築物なので、面積が小さくてもその居室と通り道は対象です。逆に、事務所や工場のように特殊建築物でない用途でも、3階以上で500㎡超、または1,000㎡超なら対象になります。
ひっかけ注意
無窓の居室の判定は「採光」の1/20です。
令第116条の2には2つの号があり、第一号が採光(窓の有効面積が床面積の1/20以上)、第二号が排煙(開けられる部分が1/50以上)です。非常照明で見るのは第一号の採光のほうです。判定は建築の設計者が行うので、結果を必ず受け取ります。
ここまでのポイント
  • 用途(特殊建築物)・面積・無窓の居室の、どれか1つで対象
  • 面積は、3階以上で500㎡超、または1,000㎡超
  • 無窓の居室は、採光に有効な窓が床面積の1/20未満の居室


質問② どこに付ける? ― 部屋から外までの「逃げる道」

居室と、そこから外に出るまでの廊下・階段に付けます。人が常にいない倉庫などは原則として要りません。

対象の建物でも、全部の部屋に付けるわけではありません。付けるのは次の部分です。

  • 居室:住む・働く・集まるなどのために、継続して使う部屋
  • 無窓の居室
  • 居室から地上へ通じる廊下・階段などの通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く)
  • これらに類する部分:廊下に続くロビー、通り抜けて避難する場所など

一方で、次の部分は除かれます。

  • 一戸建ての住宅、長屋や共同住宅の住戸の中
  • 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室など
  • 学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
  • 避難階などで、出口までが近く避難しやすいとして告示(平成12年建設省告示第1411号)の条件に合う部分
たとえるなら
「居室か、そうでないか」は、そこに人が居続けるかで考えます。
部屋の名前では決まりません。「更衣室」でも、ベンチを置いて休憩に使うなら人が居続ける部屋になりますし、着替えるだけなら短い時間しかいません。建物の使い方を想像して、「停電したとき、そこに人がいるか」を考えます。

判断が分かれやすい部屋の、実務での目安です(法令の定義ではなく、筆者の経験による目安です)。

部屋 付ける方向で考えるとき
更衣室 休憩できるスペースがある(継続して使う)
浴場 ホテルや温浴施設など、不特定多数が使う大浴場
授乳室・多目的トイレ・給湯室 建物の使われ方や、確認申請での指摘に合わせる
最終的には、建物の使い方、確認申請での指摘、設計者・施主の意向で決まります。
ここまでのポイント
  • 付けるのは居室・無窓の居室と、そこから外までの廊下・階段など
  • 住戸の中、病室・寝室、学校等は除かれる
  • 居室かどうかは部屋名でなく、人が居続けるかで考える

質問③ どんな器具と電源? ― 床1lx、30分、予備電源は2択

器具と電源の条件は、昭和45年建設省告示第1830号で決まっています。

条件 内容
明るさ 直接照明で、床面の水平面照度1lx以上(蛍光灯・LEDは2lx以上)。地下街の地下道は10lx以上
点き方 停電したら予備電源に自動で切り替わり、すぐ点く
点く時間 充電しないで30分間以上点き続ける
器具のつくり 主要な部分を難燃材料で造るか覆う。熱の中でも明るさが落ちにくい
配線 電源別置形は、火事でも焼け切れにくい耐火・耐熱の配線にする
昭和45年建設省告示第1830号。器具は、技術基準(JIL 5501)で性能を確かめたものを使います。
予備電源は、蓄電池だけで30分点けるか、蓄電池(10分)と40秒以内に電圧を確立する自家用発電機を組み合わせるか。発電機だけは認められていません。

予備電源は、次の2つから選びます。

  • A 蓄電池だけ:充電しないで30分間点き続ける容量
  • B 蓄電池+自家用発電装置:蓄電池は10分間の容量で、発電機が40秒以内に電圧を確立するもの
ひっかけ注意
「非常用の発電機があるから、非常照明もそれでOK」ではありません。
発電機は、止まっている状態から電気を出せるまでに数十秒かかります。その間は真っ暗です。だから発電機だけの予備電源は認められず(平成12年6月以降)、必ず蓄電池を組み合わせます。古い本には「10秒で始動する発電機なら可」と書かれていることがあるので注意します。

また、器具の電池の持たせ方には2つの形があります。

しくみ 向いている建物
電池内蔵形 器具の中に電池が入っている 中小規模。配線が簡単
電源別置形 蓄電池設備を1か所にまとめ、配線で送る 大規模。電池の点検がまとめてできる
電源別置形は、蓄電池から器具までの配線を耐火・耐熱にする必要があります。
ここまでのポイント
  • 床で1lx以上(LEDは2lx)、停電で自動点灯、30分以上
  • 予備電源は「蓄電池30分」か「蓄電池10分+発電機40秒以内」の2択
  • 発電機だけは不可。必ず蓄電池を組み合わせる
  • 電池内蔵形と電源別置形。別置形は耐火・耐熱の配線


計画の手順と配置の決め方

①対象の判定、②付ける部分、③器具の種類、④配置、⑤電源と配線、⑥図面の順に進めます。

器具をどの間隔で並べるかは、採用する器具のメーカーのカタログにある「配置表」で決めます。器具の明るさの広がり方と取付高さから、床で1lx(LEDは2lx)を確保できる最大の間隔が、配置のパターンごとに載っています。

1台で照らす単体配置、廊下に1列に並べる直線配置、広い部屋に格子に並べる四角配置。取付高さが高いほど間隔を広くとれるのが一般的です。
  • 単体配置:小さい部屋や廊下の角など、1台で照らす
  • 直線配置:廊下など、1列に並べる。表の「直線配置の間隔」以下で並べる
  • 四角配置:事務室など広い部屋に、縦横の格子に並べる。表の「四角配置の間隔」以下で並べる

たとえばあるメーカーの表では、取付高さ2.6mの直線配置で14.4m以下、といった値が示されています。器具ごとに値がちがうので、必ず採用品の表で確かめます。壁に反射した光は原則として見込まず、器具の直接の光で床を照らす考え方で配置します。

ひとことで言うと:「用途・面積・窓で判定し、人のいる部屋から外までを、床1lx(LEDは2lx)で30分照らす。電源は電池、発電機だけはダメ」。

よくある質問

非常照明と誘導灯は何がちがいますか?

非常照明は建築基準法の設備で、停電時に床と通路を照らします。誘導灯は消防法の設備で、出口や逃げる方向を示します。両方が必要な建物も多くあります。

どんな建物に非常照明が必要ですか?

特殊建築物(劇場・病院・ホテル・共同住宅・物販店・飲食店など)、階数3以上で延べ面積500㎡超、延べ面積1,000㎡超の建物、無窓の居室がある建物です。どれか1つでも当たれば対象です。

建物の中のどこに付けますか?

居室と無窓の居室、そこから地上へ通じる廊下・階段などの通路、これらに類するロビーなどです。住戸の中、病院の病室、寄宿舎の寝室、学校等は除かれます。

明るさの基準はどのくらいですか?

直接照明で床面の水平面照度1lx以上です。蛍光灯やLEDの場合は2lx以上、地下街の地下道は10lx以上です。

非常用の発電機があれば、非常照明の電源になりますか?

発電機だけではなりません。停電してから発電機が電気を出すまでの間を埋めるため、必ず蓄電池を組み合わせます(蓄電池10分+40秒以内に電圧を確立する発電機)。

器具の間隔はどう決めますか?

採用する器具のメーカーのカタログにある配置表で、取付高さと配置のパターン(単体・直線・四角)ごとの最大間隔以下にします。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
非常照明と誘導灯は同じもの 照らす係(建築基準法)と示す係(消防法)
特殊建築物だけが対象 面積や無窓の居室でも対象になる
小さい飲食店は対象外 特殊建築物なので面積によらず対象
無窓は排煙の1/50で見る 採光の1/20(令116条の2第1項第一号)
部屋の名前で居室かが決まる 人が居続けるかで考える
発電機があれば電池は要らない 発電機だけは不可。必ず蓄電池を併用
どの光源も1lxでよい 蛍光灯・LEDは2lx以上
「判定 → 付ける場所 → 器具と電源 → 配置」の順で確かめれば、抜けを防げます。
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。