強電設備の設計|非常照明の設置基準と計画手順について詳しく解説
火事や停電で明かりが消えた瞬間、真っ暗な廊下や階段で逃げ道を探すのはとても危険です。そのとき自動で点いて足元を照らすのが非常照明(非常用の照明装置)です。付けるかどうかは建築基準法で決まっていて、判定のしかたと、付ける場所、器具と電源の条件がそろっています。この記事では、それを3つの質問に分けて、動く図で順に確かめます。
先に言葉をそろえる
| 言葉 | ひとことで言うと |
|---|---|
| 非常照明 | 停電したとき自動で点いて、床や通路を照らす照明。法律上は「非常用の照明装置」 |
| 誘導灯 | 出口や逃げる方向を示す緑の表示灯。消防法の設備 |
| 特殊建築物 | 劇場・病院・ホテル・物販店など、人が多く集まる用途の建物 |
| 居室 | 住む・働く・集まるなどのために、継続して使う部屋 |
| 無窓の居室 | 採光に有効な窓が、床面積の1/20未満しかない居室 |
| 予備電源 | 停電したときに非常照明を点ける電池や発電機 |
非常照明の役割 ― 停電しても、逃げ道を真っ暗にしない
非常照明の役割は、停電の瞬間から、人が建物の外に出るまでの間、足元を見えるようにしておくことです。火事で煙が出ていたり、人が大勢いたりすると、暗い中では転んだり、出口を見失ったりします。そこで建築基準法は、人が集まる建物や大きな建物に、非常照明を付けるよう定めています。
そのために、非常照明には3つの力が求められます。
- すぐ点く:停電したら、人が操作しなくても自動で、すぐに点く
- しばらく点き続ける:避難が終わるまで、30分以上点いている
- 熱に負けない:火事の熱の中でも、明るさが落ちにくい
- 非常照明は、停電時に自動で点いて足元と通路を照らす設備(建築基準法)
- すぐ点く・30分以上点き続ける・熱に負けない、の3つが求められる
- 出口の方向を示す誘導灯(消防法)とは別の設備
質問① この建物は対象? ― 用途・面積・窓の3つで判定
非常照明を付けるかどうかは、建築基準法施行令 第126条の4で決まっています。次のどれか1つでも当たれば対象です。
| 判定 | 当たる条件 |
|---|---|
| ① 用途 | 特殊建築物(法別表第1(い)欄(1)〜(4)項の用途) |
| ② 面積 | 階数3以上で延べ面積500㎡超、または延べ面積1,000㎡超 |
| ③ 窓 | 採光上の無窓の居室がある(令第116条の2第1項第一号) |
①の特殊建築物は、次のような用途です。
| 項 | 主な用途 |
|---|---|
| (1) | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 |
| (2) | 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等 |
| (3) | 博物館、美術館、図書館など(学校・体育館などの「学校等」は除く) |
| (4) | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、バー、遊技場、公衆浴場、飲食店、物品販売業の店舗(10㎡以内を除く)など |
- 用途(特殊建築物)・面積・無窓の居室の、どれか1つで対象
- 面積は、3階以上で500㎡超、または1,000㎡超
- 無窓の居室は、採光に有効な窓が床面積の1/20未満の居室
質問② どこに付ける? ― 部屋から外までの「逃げる道」
対象の建物でも、全部の部屋に付けるわけではありません。付けるのは次の部分です。
- 居室:住む・働く・集まるなどのために、継続して使う部屋
- 無窓の居室
- 居室から地上へ通じる廊下・階段などの通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く)
- これらに類する部分:廊下に続くロビー、通り抜けて避難する場所など
一方で、次の部分は除かれます。
- 一戸建ての住宅、長屋や共同住宅の住戸の中
- 病院の病室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室など
- 学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場
- 避難階などで、出口までが近く避難しやすいとして告示(平成12年建設省告示第1411号)の条件に合う部分
判断が分かれやすい部屋の、実務での目安です(法令の定義ではなく、筆者の経験による目安です)。
| 部屋 | 付ける方向で考えるとき |
|---|---|
| 更衣室 | 休憩できるスペースがある(継続して使う) |
| 浴場 | ホテルや温浴施設など、不特定多数が使う大浴場 |
| 授乳室・多目的トイレ・給湯室 | 建物の使われ方や、確認申請での指摘に合わせる |
- 付けるのは居室・無窓の居室と、そこから外までの廊下・階段など
- 住戸の中、病室・寝室、学校等は除かれる
- 居室かどうかは部屋名でなく、人が居続けるかで考える
質問③ どんな器具と電源? ― 床1lx、30分、予備電源は2択
器具と電源の条件は、昭和45年建設省告示第1830号で決まっています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 明るさ | 直接照明で、床面の水平面照度1lx以上(蛍光灯・LEDは2lx以上)。地下街の地下道は10lx以上 |
| 点き方 | 停電したら予備電源に自動で切り替わり、すぐ点く |
| 点く時間 | 充電しないで30分間以上点き続ける |
| 器具のつくり | 主要な部分を難燃材料で造るか覆う。熱の中でも明るさが落ちにくい |
| 配線 | 電源別置形は、火事でも焼け切れにくい耐火・耐熱の配線にする |
予備電源は、次の2つから選びます。
- A 蓄電池だけ:充電しないで30分間点き続ける容量
- B 蓄電池+自家用発電装置:蓄電池は10分間の容量で、発電機が40秒以内に電圧を確立するもの
また、器具の電池の持たせ方には2つの形があります。
| 形 | しくみ | 向いている建物 |
|---|---|---|
| 電池内蔵形 | 器具の中に電池が入っている | 中小規模。配線が簡単 |
| 電源別置形 | 蓄電池設備を1か所にまとめ、配線で送る | 大規模。電池の点検がまとめてできる |
- 床で1lx以上(LEDは2lx)、停電で自動点灯、30分以上
- 予備電源は「蓄電池30分」か「蓄電池10分+発電機40秒以内」の2択
- 発電機だけは不可。必ず蓄電池を組み合わせる
- 電池内蔵形と電源別置形。別置形は耐火・耐熱の配線
計画の手順と配置の決め方
器具をどの間隔で並べるかは、採用する器具のメーカーのカタログにある「配置表」で決めます。器具の明るさの広がり方と取付高さから、床で1lx(LEDは2lx)を確保できる最大の間隔が、配置のパターンごとに載っています。
- 単体配置:小さい部屋や廊下の角など、1台で照らす
- 直線配置:廊下など、1列に並べる。表の「直線配置の間隔」以下で並べる
- 四角配置:事務室など広い部屋に、縦横の格子に並べる。表の「四角配置の間隔」以下で並べる
たとえばあるメーカーの表では、取付高さ2.6mの直線配置で14.4m以下、といった値が示されています。器具ごとに値がちがうので、必ず採用品の表で確かめます。壁に反射した光は原則として見込まず、器具の直接の光で床を照らす考え方で配置します。
よくある質問
非常照明と誘導灯は何がちがいますか?
非常照明は建築基準法の設備で、停電時に床と通路を照らします。誘導灯は消防法の設備で、出口や逃げる方向を示します。両方が必要な建物も多くあります。
どんな建物に非常照明が必要ですか?
特殊建築物(劇場・病院・ホテル・共同住宅・物販店・飲食店など)、階数3以上で延べ面積500㎡超、延べ面積1,000㎡超の建物、無窓の居室がある建物です。どれか1つでも当たれば対象です。
建物の中のどこに付けますか?
居室と無窓の居室、そこから地上へ通じる廊下・階段などの通路、これらに類するロビーなどです。住戸の中、病院の病室、寄宿舎の寝室、学校等は除かれます。
明るさの基準はどのくらいですか?
直接照明で床面の水平面照度1lx以上です。蛍光灯やLEDの場合は2lx以上、地下街の地下道は10lx以上です。
非常用の発電機があれば、非常照明の電源になりますか?
発電機だけではなりません。停電してから発電機が電気を出すまでの間を埋めるため、必ず蓄電池を組み合わせます(蓄電池10分+40秒以内に電圧を確立する発電機)。
器具の間隔はどう決めますか?
採用する器具のメーカーのカタログにある配置表で、取付高さと配置のパターン(単体・直線・四角)ごとの最大間隔以下にします。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 非常照明と誘導灯は同じもの | 照らす係(建築基準法)と示す係(消防法) |
| 特殊建築物だけが対象 | 面積や無窓の居室でも対象になる |
| 小さい飲食店は対象外 | 特殊建築物なので面積によらず対象 |
| 無窓は排煙の1/50で見る | 採光の1/20(令116条の2第1項第一号) |
| 部屋の名前で居室かが決まる | 人が居続けるかで考える |
| 発電機があれば電池は要らない | 発電機だけは不可。必ず蓄電池を併用 |
| どの光源も1lxでよい | 蛍光灯・LEDは2lx以上 |
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