【新人講座 第20回】CAD・作図のきほん ― 「あとで拾える図面」を描く

こんにちは、HARITAの設計室です。第6部の2回目は、毎日の仕事を支える道具の話。前回の5幕でいえば第3〜4幕を回すための実務の道具箱を、描く → 拾う → 積むの3回に分けて開けていきます。今回はその1つめ、「描く」=CAD・作図です。


ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- レイヤを分けずに描いた図面を、あとから分けられるか。
- 盤・器具・配線のうち、いちばん最後に描くのはどれか。
- スキャンPDFしかない改修現場で、描き始める前にやることは何か。
描く → 拾う → 積む ― 図面はお金に変わる



ペン太
ハリタ- 実務の道具立ては描く → 拾う → 積むの一本の川。今日はその上流「描く」。
- レイヤがぐちゃぐちゃ・凡例と違う記号・縮尺バラバラの図面は、拾う人が全部読み解き直すことになる。
- 自分の描いた図面は、未来の自分(か誰か)が拾う——そう思って描くと、作図の丁寧さの意味が変わる。
- 操作は1〜2週間で慣れる。だが操作が速い人=良い図面を描く人ではない。差がつくのは「描き始める前に何を決めているか」。
作図の作法 ― 「あとで拾える図面」を描く4つの基本動作





| 作法 | 何を決めるか | 省略するとどうなるか |
|---|---|---|
| 下敷き | 建築図の版と日付を確認して敷く | 下敷きが古いと、描いた電気は全部やり直しになる |
| レイヤ | 強電・弱電・防災・幹線・文字/寸法・下敷きの6つを目安に分ける | あとから分けるのはほぼ不可能。用途別に抜き出せなくなる |
| 縮尺 | 図面の縮尺を決め、PDF下敷きなら寸法値と1か所合わせ込む | 縮尺がズレていると長さが拾えず、配線の数量が出せない |
| 凡例 | 使う記号を凡例に載せる | 読めない記号は、描いていないのと同じ |
| 描く順番 | なぜこの順番か |
|---|---|
| 1 盤 | 動かないものを先に置く |
| 2 器具 | 盤の次に位置が決まるもの |
| 3 配線 | 先に描くと、器具が1個増えるたびに引き直しになる |
| 4 回路番号 | 配線が決まってから振る |
| 5 凡例 | 使った記号を最後に整える。この順番は「拾う」順番ともほぼ同じ |
- 作図の作法は下敷き・レイヤ・縮尺・凡例の4つ。
- レイヤを強電・弱電・防災で分けておけば、表示のON/OFFだけで用途別の図面が作れる。分けずに描いた図面は、あとから分けるのがほぼ不可能。
- 描く順番は盤 → 器具 → 配線 → 回路番号。配線から描き始めると、器具が1個増えるたびに引き直しになる。
- この順番は次回の「拾う」順番ともほぼ同じ。描く順で拾えるように描く——これが上流の丁寧さの正体。
💼 実務でこう生きる
- スキャンPDFしか残っていない改修現場で、PDFを背景に貼って器具だけ描き足すと、縮尺が微妙にズレていて長さが拾えず、あとで配線の数量が出せない。
- 正解は、まずPDFを1か所実測して縮尺を合わせ込むこと。柱スパンや廊下幅など、寸法が書いてある部分に合わせてスケールを調整してから描き始める。作図の前の5分が、拾い出しの半日を救う。
- レイヤを強電・弱電・防災で分けて描いていれば、「防災だけ抜き出して」と言われても、防災レイヤと建築下敷きだけを表示にして印刷、5分で提出できる。
- 全部レイヤ0で描いていたら、図面を複製して不要な線を1本ずつ消す作業になり、半日仕事のうえに消し漏れのリスクまで背負う。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- 建築・設備の世界ではAutoCAD系(DWG形式)が事実上の共通言語。図面のやり取りはDWGかPDFで行われることがほとんど。
- 互換CADや電気設備専用CAD(シンボルや集計機能が最初から入っているもの)を使う会社も多く、最近はBIM(Revitなど)も増えてきた。
- 正式な成果図面はほぼ100%CAD。ただし手描きは今も現役で、使う場面が変わっただけ。打合せ中のスケッチ、現場での指示、盤の中身のポンチ絵は今も手描きが最速。
- CADは記録して残すための道具、手描きはその場で伝えるための道具。
🔎 深掘りQ&A
- レイヤは細かすぎると管理が破綻する。目安は「あとで単独で表示したくなる単位」で、強電・弱電・防災・幹線・文字/寸法・下敷きの6つ。器具ごとに分けるのはやりすぎ(記号で区別できる)。
- 自分ルールで増やさない。会社の作図標準のレイヤ名に従う。図面は他人と共有する道具だから、レイヤ名も共通語であるべき。
- 作業中に建築図の版が変わったら、鉄則は「新しい建築図を下敷きに差し替えて、ズレたところだけ直す」。古い下敷きのまま描き続けてはいけない。
- 差し替えたら、まず柱と壁の通り芯を重ねてどこが動いたかを目で確認し、図面枠の版数と日付を必ず更新する。
- CADは「決めたことを図面に翻訳する道具」。何を決めるかを考えるのが設計。ただし作図が遅い人は考える時間を作図に食われるので、操作は早めに体に入れる。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 建築図の版を確認せずに描き始めない:下敷きが古いと、描いた電気は全部やり直し。最初に日付を見る。
- レイヤを分けずに描かない:あとから分けるのはほぼ不可能。分けるのは描き始めの一瞬、分けないツケは一生。
- 凡例にない自己流の記号を使わない:読めない記号は、描いていないのと同じ。使ったら必ず凡例に追加。
- 配線から描き始めない:盤→器具→配線の順。動かないものを先に置くと、手戻りが激減する。
ペン太
ハリタ- 建築図の版を確認せずに描き始めない。下敷きが古いと、描いた電気は全部やり直し。最初に日付を見る。
- レイヤを分けずに描かない。分けるのは描き始めの一瞬、分けないツケは一生。
- 凡例にない自己流の記号を使わない。読めない記号は、描いていないのと同じ。使ったら必ず凡例に追加。
- 配線から描き始めない。盤→器具→配線の順。動かないものを先に置くと、手戻りが激減する。
まとめ ― 今日の1枚
良い図面かどうかは、描いた本人ではなく、次に拾う人が決めます。だから作図の目標は「速く描けた」ではなく「あとで拾える」です。
| 上流が丁寧だと | 省略すると | |
|---|---|---|
| 下敷き | 建築図の版と日付が残り、責任の所在がはっきりする | 下敷きが古ければ、描いた電気は全部やり直し |
| レイヤ | 表示のON/OFFだけで用途別の図面が5分で作れる | 複製して不要な線を1本ずつ消す半日仕事+消し漏れのリスク |
| 縮尺 | そのまま長さが拾えて、配線の数量が出せる | 縮尺のズレで数量が出せず、描き直しになる |
| 凡例 | 誰が見ても記号の意味が分かる | 読めない記号は、描いていないのと同じ |
| 描く順番 | 手戻りが激減し、そのまま拾える | 配線から描くと、器具が1個増えるたびに引き直し |
作図が置かれている場所
- 実務の道具立ては描く → 拾う → 積むの一本の川。今日はその上流「描く」。
描く前に決めること
- 作図の作法は4つ:下敷き・レイヤ・縮尺・凡例。CADの操作より、描く前の決めごとで差がつく。
- 描く順番は盤 → 器具 → 配線 → 回路番号 → 凡例。動かないものから置く。
良い図面の第一条件
- 自分の描いた図面は、未来の誰かが拾う——「あとで拾える図面」が、良い図面の第一条件。
CADの操作は、覚えれば誰でもできるようになります。差がつくのはその手前——どの建築図を敷いたか、レイヤをどう分けたか、縮尺を合わせたか。ここを省略した図面は、描いた瞬間だけ速く、その後ずっと遅くなります。次回はその図面から数量を拾う番です。
次回・第21回は川の中流——拾い出しのきほん。描いた図面から数量を数え出す手順と、数え漏れを防ぐコツを5ステップで解きほぐします。お楽しみに!
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