総合カタログには813本の記事があります。調べたいことがある人には強い武器ですが、
配属されたばかりの新人に「全部あるから読んで」と渡すと、まず間違いなく手が止まります。

足りないのは記事ではなく、順番です。

この記事は、813本のうち「いつ・何を・どの順で読むか」だけを決めたロードマップです。
新人本人が自分で進めることもできますし、教える側が渡す順番として使うこともできます。

連載そのものの目次は 【新人講座・目次】図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎 にあります。

こちらは「1年の時間軸に並べ替えたもの」です。


このロードマップの考え方

覚える順番は、ことば → 図面 → 建物の流れ → 数字 → 法令です。

新人がいちばん困るのは「知識がないこと」ではなく、
打合せや現場で何の話をしているのか分からず、質問すらできないことです。
だから正確さより先に、現場で止まらないことを取りにいきます。

数字と法令は、対象の全体像が見えてからのほうが圧倒的に速く入ります。
順番を逆にすると、計算はできるのに何を計算しているのか分からない、という状態になります。


全体像

時期 テーマ 到達点
配属〜1か月 ことばと図面 打合せの内容が聞き取れる
2〜3か月 建物の電気を1本でたどる どこの話をしているか分かる
4〜6か月 数字を出す 自分でサイズを決められる
7〜12か月 法令と積算 根拠を示して説明できる

PHASE 1(配属〜1か月)ことばと図面

最初の1週間に読むもの

現場と事務所で飛び交う言葉が分かるようになるのが目的です。技術の話はまだ後回しで構いません。

「コロガシ」「スミダシ」「躯体」「通り芯」「FL+300」——
この5語が分かるだけで、現場での立ち位置がまったく変わります。

1か月目に読むもの

1か月目の到達点:図面を渡されたとき、それが配置図なのか単線結線図なのか幹線系統図なのかを言えて、
図面上の「1φ2W」「3φ3W」が読める。ここまで来れば、打合せの内容が半分は聞き取れるようになります。



PHASE 2(2〜3か月)建物の電気を1本でたどる

個々の機器を覚える前に、電気がどこから入ってどこへ行くのかを一本の線でたどれるようにします。
これができていないと、あとから覚える知識が全部バラバラのまま溜まっていきます。

あわせて引く巻引込設備の設計/PASの設計/受変電設備の設計/分電盤の設計

3か月目の到達点:物件の話を聞いたときに「いまは受電の話」「いまは末端の話」と位置が分かる。


PHASE 3(4〜6か月)数字を出す

ここからが設計の本体です。自分でサイズを決められるようになります。

あわせて引く巻:幹線設備の設計/接地設備の設計/サイズの設計/計算ツール

このフェーズだけは、読むだけで終わらせないでください。
自分がいま関わっている物件の数字で、必ず一度やり直すこと。
手を動かした回数がそのまま実力になる区間です。

6か月目の到達点許容電流電圧降下保護協調の3つを自分で確認して、幹線の太さを決められる。


PHASE 4(7〜12か月)法令と積算

なぜそのサイズなのかを、根拠を示して説明できるようにします。
ここを飛ばすと、いつまでも「先輩がそう言ったから」で止まります。

法令

あわせて引く巻内線規程の解説/建築消防の設計/高圧受電設備規程

設計の進め方と積算

1年目の到達点拾い出しから見積までを一度自分で通せて、聞かれたら根拠条文を出せる。



施工側に進む人へ

設計ではなく施工管理に配属された場合は、PHASE 2 のあとに施工実務編を差し込みます。

施工実務編は①現場の1日と安全 → ②墨出し → ③躯体の仕込み → ④接地・地中引込
→ ⑤天井内配線 → ⑥ラック・レースウェイ・露出配管 → ⑦盤の据付・結線 → ⑧竣工前の試験・測定
と、実際の工程順に並んでいます。現場で今やっている工程の回を読むのがいちばん効きます。


1年たったら

  • 第23回 他業種(建築・空調・衛生)との調整のきほん
  • 第24回(終章) 次に取る資格と勉強ロードマップ

資格は、1年やってから選ぶほうが失敗しません。
どの仕事が向いていたかが自分で分かってから決められるからです。


教える側へ|この順番で渡すときのコツ

1回に渡すのは3本まで。
リンクを10本まとめて送ると、まず読まれません。3本なら読み切れます。

必ず現場の何かと紐づけて渡す。
「今日見たあの盤が、第9回に出てくる分電盤です」の一言があるかどうかで定着率が変わります。

数字の回(第11〜15回)は、自分の案件でやり直させる。
読んで分かった気になるのがいちばん危険な区間です。計算ツールを使わせて、手計算と突き合わせさせてください。


カタログの引き方

総合カタログは34巻・813本を分野別に並べたものです。

  • 調べたい分野が決まっているとき:その巻を開く(幹線設備の設計、接地設備の設計、など)
  • 数値や表がほしいとき:設計マニュアル「早見表編」
  • 考え方や式を確認したいとき:設計マニュアル「技術メモ編」

新人には、まずこのロードマップの順に読ませて、
慣れてきたら「分からないことは巻から引く」に切り替えるのがおすすめです。


まとめ

  • 813本は多すぎるので、順番だけ決める
  • 順番は ことば → 図面 → 建物の流れ → 数字 → 法令
  • 数字の区間だけは、必ず自分の案件で手を動かす
  • 教える側は1回3本まで、現場と紐づけて渡す

1年後、根拠を示して自分の設計を説明できるようになっていれば、このロードマップは役目を終えます。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。