コンセント設備の設計マニュアル⑥ 図面化と拾い・積算の全体像
コンセント設計マニュアル最終回。あとで拾える図面の3条件、平面図と回路表の書き分け、拾い出しの順番、数量が金額になるまでの流れ。全6回の総まとめ付き。

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「コンセント設備の設計マニュアル」もいよいよ最終回、第6回は図面化と拾い・積算第5回までで、決めるべきことはすべて決まりました。残る仕事はひとつ、決めたことを、他人が読める形にして渡すことです。

図面は、設計者から現場と積算担当への引き継ぎ書です。引き継ぎ書は、書いた本人がいなくても読めなければ意味がありません。今回の合言葉は「描いた人がいなくても拾える図面」。これが最終回のすべてです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 「拾える図面」と「きれいな図面」は、どこが違いますか。
  • コンセント平面図と回路表は、何でつないでいますか。
  • 数量に単価を掛けても金額にならないのは、なぜですか。
ペン太ペン太
図面はきれいに描けたので、あとは拾ってもらうだけですね。
はりたはりた
その図面、あなたがいない日に他人が拾えますか。拾えなければ、質問になって戻ってくるか、勝手に判断されたまま金額になります。

今回の全体像 ― 図面は線であり、同時に伝票である

トピック1:線は、そのまま数量と金額になる
図面 → 拾い書 → 内訳書図面拾い書数量・単位・根拠¥内訳書・見積単価・複合単価・金額拾えない図面は、質問になって返ってくるHARITAの設計室
図1:設計者が描いた線が数量になり、数量が金額になる ― 図面から拾い書、内訳書までの一本道

設計者が描いた線は、そのまま数量になり、数量はそのまま金額になります。この一本道のどこかで情報が抜けると、抜けた分は質問として設計者に戻ってくるか、もっと悪い場合は誰かの見落としのまま金額になります。図面の描き方が、そのまま見積の精度なのです。

設計から図面一式ができるまでの全体像は 新人講座 第19回 設計の流れ に、作図そのものの基本は 新人講座 第20回 CAD・作図のきほん にまとめてあります。

ここまでのポイント
  • 設計者が描いた線は、そのまま数量になり、数量はそのまま金額になる
  • どこかで情報が抜けると、質問として設計者に戻るか、見落としのまま金額になる
  • 最終回の合言葉は「描いた人がいなくても拾える図面」

① あとで拾える図面の3条件

トピック2:きれいな図面と、拾える図面は別物

「きれいな図面」と「拾える図面」は別物です。線が整っていても情報が足りなければ拾えませんし、少し粗くても情報が揃っていれば拾えます。条件は3つだけです。

あとで拾える図面の3条件記号と凡例が一致凡例にない記号を図中で使わない形が違えば別物として拾われるありがち:「現場で分かるだろう」の独自記号どのブレーカーの子か図面で追える1個でも無記入なら回路が閉じないありがち:番号は盤図にしか書いていない特記が図面内で完結図面だけ渡しても伝わる状態にありがち:打合せメモにしか残っていない判定基準はひとつ ― 描いた人がいなくても拾えるかHARITAの設計室
図2:あとで拾える図面の3条件 ― 記号と凡例の一致、全器具への回路番号、特記の図面内完結

3つとも、突き詰めれば「図面の外に情報を置かない」という一点に集約されます。頭の中や打合せメモに置いた情報は、必ずどこかで落ちます。

条件図面での書き方抜けると起きること
記号と凡例の一致使った記号は、すべて凡例に載せる凡例にない記号は、拾う人に判断させることになる
全器具への回路番号1個残らず回路番号を書く番号のない1個が、どの回路の何個目か誰にも分からない
特記の図面内完結接地・防水・取付高さを、図面の中に書く頭の中や打合せメモに置いた情報は、必ずどこかで落ちる
ここまでのポイント
  • 「きれいな図面」と「拾える図面」は別物。判定基準は情報が揃っているかどうか
  • 条件は、記号と凡例の一致/全器具への回路番号/特記の図面内完結の3つだけ
  • 突き詰めれば「図面の外に情報を置かない」という一点に集約される

② コンセント図と回路表 ― 番号でつなぐ

トピック3:平面図と回路表を、回路番号で結ぶ

コンセントの図面化は、平面図回路表の2枚1組で考えます。平面図は「どこに何個あるか」、回路表は「それがどのブレーカーに載っているか」。この2枚を回路番号という共通のキーで結びます。

平面図と回路表は「番号」でつながるコンセント平面図事務室会議室給湯室C-1C-2C-3回路用途・室名個数C-1事務室 一般23C-2会議室 一般2口・床下配線2C-3給湯室 専用EET・防水プレート1番号・用途・仕様がそろって、はじめて「数えられる図面」になるHARITAの設計室
図3:コンセント平面図と回路表の対応 ― 2枚を結ぶキーは回路番号

回路表の「備考」に、接地の種別(E・EET)、プレートの防水・防塵、取付高さの指定を書いておくと、拾い出しの担当者は図面を往復せずに数えられます。

回路と盤の関係が曖昧な人は 新人講座 第9回 幹線・分電盤・回路のきほん を先に読むと、この表の意味がはっきりします。回路分割そのものは 第3回 に戻って確認してください。

ここまでのポイント
  • コンセントの図面化は、平面図と回路表の2枚1組で考える
  • 2枚をつなぐ共通のキーは回路番号
  • 備考に接地の種別(E・EET)、防水・防塵、取付高さを書けば、拾う人は図面を往復しない

③ 拾い出し ― 数える順番を先に決める

トピック4:数える順番を、先に決めておく

拾い出しでミスが出るのは、数える力が足りないからではありません。数える順番を決めていないからです。行き当たりばったりで数えると、二重に数えるか、まるごと飛ばすかのどちらかになります。

数える順番と、落ちやすい場所数える順番1室ごとに数える部屋を1周して閉じる。飛ばした部屋が分かる2回路ごとに突き合わせる回路表の個数と合うか。合わなければ図面を疑う3材料ごとにまとめる器具・プレート・ボックス・電線を品目に集約落ちやすい3か所ボックスとプレート器具だけ数えて付属材を忘れる。連数も要確認EET同じ記号の中の仕様違い防水・EET・200Vは別品目。まとめて数えないHARITAの設計室
図4:拾い出しの順番と、数え漏れが起きやすいポイント

拾い出しの基本動作は 新人講座 第21回 拾い出しのきほん、様式のつくり方は 積算編② 拾い書のつくり方、実際に金額が狂った事例は 積算編③ 拾いミスの事例集 にまとめてあります。特に事例集は、一度読んでおくと同じ穴に落ちなくなります。

盤側の容量を積み上げながら数量を整理したいときは 単相3線式 盤図作成用 容量積み上げツール も使えます。

ここまでのポイント
  • 拾い出しのミスは、数える力ではなく、数える順番を決めていないことから起きる
  • 順番は、室ごと→回路ごと→材料ごと
  • 順番がないと、二重に数えるか、まるごと飛ばすかのどちらかになる

④ 積算へ ― 数量が金額に変わる場所

トピック5:材料費だけでは、金額にならない

拾い書ができたら、あとは単価を掛けるだけ……と言いたいところですが、ここに複合単価という関門があります。材料費だけでは金額になりません。取り付ける手間(労務費)が乗って、はじめて1個いくらになります。

数量が金額に変わるまで数量拾い書から×複合単価材料費 + 労務費(歩掛)条件が違えば単価も違う金額品目ごとの計内訳書見積の中身歩掛は「条件」で動く高所・改修・夜間。同じ器具でも手間が違う比べるのは総額ではなく中身安い見積は、何かが入っていないことがある数量が同じでも、単価の中身が違えば金額は変わるHARITAの設計室
図5:数量が金額になるまで ― 拾った数量に複合単価を掛ける

複合単価と歩掛の考え方は 積算編④ 複合単価と歩掛内訳書の読み方と見積の比べ方は 積算編⑤ 内訳書の読み方・見積比較、改修案件で外しやすい点は 積算編⑥ 改修・増設の積算 に詳しくあります。

作図イメージ:コンセント平面図と回路表を回路番号でつなぎ、拾い書から内訳書へ数量が金額に変わるまで
図6:作図イメージ ― 平面図と回路表を回路番号でつなぎ、拾い書から内訳書へ数量が金額に変わるまで
言葉中身どこで使うか
拾い書図面から数えた数量を並べた表設計から積算への受け渡し
複合単価材料費に労務費(取り付ける手間)が乗った単価数量を金額に変えるとき
歩掛作業1単位あたりに要する手間の目安複合単価を組み立てる根拠
内訳書数量×複合単価を項目ごとに並べた書類見積の比較・査定
ここまでのポイント
  • 拾い書ができても、単価を掛けるだけでは金額にならない。複合単価という関門がある
  • 複合単価は、材料費に取り付ける手間(労務費)が乗って、はじめて1個いくらになる
  • 見積を比べるときは、総額ではなく内訳書の中身を比べる

⑤ 連載の総まとめ ― コンセント設計の6ステップ

トピック6:6回ぶんの道を、1枚に畳む

全6回で歩いてきた道を、1枚に畳んでおきます。次の案件でコンセントの計画を始めるとき、この順番どおりに手を動かせば、大きな抜けは起きません。

コンセント設計の6ステップ(総まとめ)1負荷の想定「何が挿さるか」を数えるところから始まる2配置計画どこに・いくつ・どの高さ。家具と動線で決まる3回路分割14E/ET・200V・EV・非常用。理由から覚えれば忘れない5施工・検査締めて・測って・写真に残す6図面化と拾い描いた人がいなくても拾える図面にして渡す6つそろって、はじめて「設計した」ことになるHARITAの設計室
図7:コンセント設備の設計 6ステップまとめ

各ステップの詳細は、第1回 全体フローと負荷の想定第2回 配置計画第3回 回路分割第4回 接地と特殊コンセント第5回 施工・検査 に戻ってご確認ください。

ペン太ペン太
6ステップ、最後の図面化までつながって見えてきました。
はりたはりた
この順番どおりに手を動かせば、大きな抜けは起きません。あとは一度、自分の図面を自分で拾ってみることです。どこが不親切か、すぐ分かります。

まとめ

トピック7:拾える図面が、見積の精度になる

図面は、描いた人がいなくても拾えて、はじめて図面です。線・数量・金額は一本道でつながっていて、どこかで情報が抜ければ、その分は必ず誰かの手間か、実態と合わない金額になって現れます。

決めることと、外したときに起きること

場面設計者がすべきこと外したときに起きること
図面記号・回路番号・特記を、図面の中で完結させる質問が返るか、誰かの判断のまま金額になる
回路表平面図と回路番号でつなぎ、備考に接地・防水・取付高さを書く拾う人が図面を往復し、時間も精度も落ちる
拾い出し室ごと→回路ごと→材料ごとの順番を、先に決める二重に数えるか、まるごと飛ばす
積算数量に複合単価を掛ける(材料費だけで済ませない)金額が実態と合わず、見積の比較もできない

図面 ― 他人が読める形にして渡す

  • 図面は線であり、同時に数量と金額の元になる伝票でもある
  • 拾える図面の条件は、記号と凡例の一致・全器具への回路番号・特記の図面内完結の3つ
  • 平面図と回路表は「回路番号」でつなぐ。備考に接地・防水・高さを書けば往復が減る

拾いと積算 ― 数量が金額に変わる

  • 拾い出しは順番を先に決める。室ごと→回路ごと→材料ごと
  • 金額は数量×複合単価。材料費だけでは金額にならない

最後に ― 自分で一度、拾ってみる

自分の図面を自分で拾うと、どこが不親切かがはっきりします。拾う人が別でも、拾える図面を描く責任は設計側にあります。その視点を持てたとき、コンセントは「軽く見られがちな設備」から「金額まで一本で通して語れる設備」に変わります。

よくある質問

トピック8:現場でよく出る、3つの疑問

Q1. 回路番号は全部のコンセントに書かないとダメですか?
A. 拾う側の立場で考えると答えが出ます。1個でも番号のない器具があれば、その1個がどの回路の何個目か誰にも分かりません。結果、質問が来るか、勝手に判断されるかのどちらかです。全数に書くのが結局いちばん早い方法です。

Q2. 拾い出しは設計者の仕事ですか?
A. 会社や案件によって分担は変わります。ただ、拾う人が別でも拾える図面を描く責任は設計側にあります。自分で一度拾ってみると、自分の図面のどこが不親切かがよく分かるので、新人のうちに一度は経験しておくと効きます。

Q3. 見積が2社で大きく違うときは、どこを見ればいいですか?
A. 総額ではなく内訳書の中身を比べます。数量が違うのか、単価が違うのか、そもそも項目が入っていないのか。安い側に何かが抜けていることは珍しくありません。詳しくは積算編⑤をどうぞ。

連載を終えて ― 次はどこへ

トピック9:次の設備へ、同じ地図を持っていく

全6回、おつかれさまでした。コンセントは、電気設備のなかでいちばん身近で、いちばん軽く見られがちな設備です。けれど「何が挿さるか」から「いくらになるか」までを一本で通して考えられる人は、そう多くありません。ここまで読んだあなたは、もうその一人です。

他の工事項目の計画ステップは、ハブページ 設計・施工マニュアル にまとめてあります。引込・受変電・幹線動力・電灯・接地・弱電・防災まで、工事項目ごとに「何を・どの順番で決めるか」を並べてあるので、次の案件の入口としてお使いください。

受変電設備については、すでに 高圧受変電設備の設計マニュアル が連載として走っています。コンセント編と同じく、手順と判断基準だけを追える構成です。

今後は、ハブの「(準備中)」になっている電力会社との協議・申込み照明器具の選定・配置計画医用接地などの特殊な接地LAN・テレビ共聴・放送設備を順に埋めていく予定です。連載として次に取り上げてほしいテーマがあれば、ぜひ教えてください。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。